(1)中国のしょうがの主産地と生産概況
中国のしょうが作付面積は、2016年以降、増加傾向で推移しており、これに伴い生産量も増加傾向にあり、おおむね1000万トン程度となっている。一方で、単収は10アール当たり3500~4000キログラムで推移している(表1)。
中国のしょうがの主な産地は、北部では山東省、河北省、
遼寧省、
河南省、南部では
雲南省、
湖南省、
貴州省、
広東省などとなっている(表2、図6)。作付面積では、山東省が最も大きく、次いで、雲南省、湖南省の順となる。
最大のしょうが作付面積を有する山東省では、作付面積は2019年の10万1534ヘクタールから2020年には11万2001ヘクタール(前年比10.3%増)へとかなりの程度増加し、同国の作付面積の3分の1を占めている。(表3)。
山東省の主な産地は、
莱蕪市、
濰坊市、
青島市などであり、その中で、莱蕪市は中国のしょうが輸出拠点でもある(図7)。しょうがの貯蔵・加工企業は2019年時点で600社を超えており、輸出先は日本をはじめ、EU、米国、中東、東南アジアなど80以上の国・地域に及んでいる。
同省の単収は、10アール当たり7300~8700キログラムと全国平均と比較して高い水準で推移している。しょうがの栽培には砂壌土
(注)が適しており、例えば濰坊市の
青州、
昌邑、
安丘などは砂壌土で、品種によっては単収が10アール当たり10トンに達するものもある(写真1)。一方で、粘土質の土壌はしょうがの栽培にはあまり適していない。このため、同一品種であっても単収は同4500~6000キログラムとなる。
(注) 砂と壌土の中間の性質で、やや乾きやすい土のこと。粘土含量15%以下、砂含量65~85%の土壌で、感触は、ザラザラとした砂の感触とつるつるとした粘土の感触が少しある。
河北省も中国北部の主要なしょうが産地の1つで、作付面積は2016年の2767ヘクタールから2020年には6667ヘクタール(同2.4倍)と、この5年間で作付面積、収穫量ともに大幅に増加した。
近年、天候状況に恵まれ、中国国内のしょうがの売れ行きが好調であったため、農家の栽培意欲が高まり、作付面積と収穫量はともに増加傾向で推移している(表4)。
(2)主産地の栽培暦および栽培品種
山東省のしょうが栽培は、露地栽培とハウス栽培とがあり、露地栽培が9割程度を占めている。ハウス栽培の定植と収穫時期は、露地栽培よりそれぞれ1カ月程度早く、生産量は露地栽培と比べ10~15%多い(表5)。露地栽培の定植期は一般的に4月下旬から5月上旬までの時期であるが、近年では労働者不足の解消の一策として、フィルムで被覆するなどして時期をずらす対応もとられている。種しょうがは50~100グラムが適当で、50×15センチメートルの間隔の場合、1ヘクタール当たり2.25~3.75トンの量が必要となる。
栽培品種は地域によって、北部の「北方大姜」と、南部のやや小ぶりな「南方小黄姜」の大きく二つに分けられる。山東省などで主に作られている品種と、その特徴は以下のとおりである(表6、写真2)。
(3)栽培コスト
山東省のしょうが生産の栽培コスト(10アール当たり)を見ると、2020年産は人件費が約4割を占めており、次いで種苗費が3割、農業機械・器具費の1割弱と続く(表7)。
2017年産から2020年産の3年間で、諸材料費以外の経費が増加している。この間の増加幅を見ると、種苗費が1035元(2万161円、2017年産比39.2%増)、借地料が150元(2922円、同20.0%増)、農薬費が15元(292円、同25.0%増)となっている。一方、栽培コストの4割以上を占める人件費は、収穫作業での機械化が進んだことで150元(2922円、同3.0%増)と微増にとどまっている。なお、収穫作業の機械化が進んだことで作業効率が高まり、栽培期間の長期化(およそ7~10日程度の延長)が可能になったことで、平均収穫量を10アール当たり150キログラム程度の増産に寄与している。
一方、河北省のしょうが生産の栽培コスト(10アール当たり)を見ると、山東省と同様に、2020年産は人件費が4割以上を占めており、次いで種苗費が3割、農業機械・器具費が1割弱と続き、2017年産対比では、全ての項目で増加している(表8)。3年間の増加幅を見ると、種苗費が1035元(2万161円、同40.4%増)、借地料が142元(2766円、同19.1%増)、農薬費が15元(292円、同25.0%増)となっている。
このように近年の中国のしょうが生産を取り巻く状況として、他の品目と同様に栽培コストが上昇傾向にあることが課題となっている。主な原因は借地料、種苗費、農薬費の上昇などが挙げられ、その中でも、借地料は場所によっては年間1ヘクタール当たり2200元(4万2856円)程度まで上昇しているケースも確認されている。また、人件費については、収穫作業など一部作業では機械化が進んではいるものの、2020年は依然として若年層を中心とした都市部への出稼ぎ労働者(農民工)の増加が続き、労働力の確保は農業現場共通の課題となっている。
(4)調製コスト
山東省のしょうが調製コスト(1トン当たり)を見ると、2020年産では人件費が454元(8843円、2017年産比38.4%増)と大幅に増加して調製費全体の5割を超え、次いで包装材料費が3割弱と続いている(表9)。2017年産から2020年産の3年間で、包装材料費、設備の減価償却費、輸送費、水道光熱費の変動は見られなかった。
また、河北省のしょうが調製コスト(1トン当たり)を見ると、2020年産は人件費が約4割を占めており、次いで包装材料費が4割弱と続いている(表10)。2017年産から2020年産の3年間では、人件費が180元(3506円、2017年産比25.0%増)と大幅に増加して加工費全体の4割を占めた(写真3、4)。これは、2017年の賃金が1日当たり平均120元(2338円)程度であったものが、2020年は同150元(2922円)に上昇したことが一因となっている。なお、その他経費の変動は見られなかった。