「かぼちゃ類」の生産はメキシコ全土で広く行われる一方で、「かぼちゃ」の生産はメキシコ北西部から中西部で行われている(図1)。中でも米国と国境を接するソノラ州では、かぼちゃ作付面積および生産量はいずれもメキシコ全土の約83%(2019年)という圧倒的な割合を占め、最大の生産州となっている(表3)。
メキシコでのかぼちゃ生産の始まりは、1980年代に日本のかぼちゃ輸入業者が、ソノラ州の南に位置するシナロア州クリアカン地区の農家に生産を依頼したことだといわれている。その後、栽培により適した気候条件や土壌をもつソノラ州エルモシージョ地区などに主要産地が移った。2019年のかぼちゃ生産は、ソノラ州が最大となり、その約10分の1の規模でシナロア州、チワワ州が続き、さらに、その約10分の1の規模でナヤリット州およびハリスコ州で行われている(表3)。
(1)作付面積
メキシコのかぼちゃの作付面積は、この10年間で38.5%増加し、2019年には3657ヘクタールとなった。2010年から2019年までの10年間のかぼちゃの平均作付面積は約3234ヘクタールであり、2012年と2016年には4000ヘクタールを超えた。作付面積の増減は主に海外市場からの需要の増減と連動している(表4)。
かぼちゃの作付面積を生産地区別に見ると、ソノラ州の中でも中央部に位置する州都のエルモシージョ地区での栽培が際立っており、同地区の栽培面積はこの10年でおよそ2000~4000ヘクタールで推移している。また、同地区から南に100キロメートル程に位置するグアイマス地区の栽培面積は、同500~1200ヘクタールの間で推移しており、2019年はソノラ州のこの2地区で全国の8割の栽培面積を有している(図2、写真2)。
(2)生産量
2019年のかぼちゃ類生産量は13万1292トンであり、そのうち、かぼちゃの生産量は5万4001トンであった。直近10年間の推移を見ると、ソノラ州、シナロア州、ハリスコ州ではこの3年ほど比較的安定した生産量で推移しているが、その他州では生産量にばらつきが見られる(表5)。
また、かぼちゃ類作付面積に対するかぼちゃ作付面積の割合を見ると、ソノラ州ではこの10年間でおおむね30~70%前後とばらつきが目立つのに対し、シナロア州では2016年以降、その比率はほぼ倍増し、2019年に100%となった。また、チワワ州も約92%と高い割合となっている。このため、ソノラ州の作付面積の動向が同割合を大きく左右する形となっている(表6)。
かぼちゃの最大の生産州であるソノラ州の最大手の生産者(企業)からの聞き取りによると、同社では、同州で生産されるかぼちゃは、ほぼ全量が輸出向けであり、国内向けの生産は行っていないとのことである。また、2018年には輸出需要に対応したオーガニックかぼちゃの生産も開始している。ソノラ州では、複数の大手企業が米国農務省(USDA)のオーガニック認証を取得しており、輸出市場拡大への可能性を高める動きとして注目されている
(注2)。
ソノラ州政府の発表によれば、2016/17農業年度(10月~翌9月)に同州では5種類のかぼちゃ類が生産されており、メキシコから輸出されるかぼちゃ生産量の93.9%は同州産としている。
(注2)日本のJAS認証を取得している企業もある。
(3)品種および栽培暦
日本では1960年代以降、ほくほくした粉質系のセイヨウカボチャが市場に出回り、1980年前後より国内の青果物専門商社や卸売業者が、種苗メーカーとともに海外の産地開発に乗り出した。現在、メキシコで栽培されている主な品種としては、「味平」「
味皇」「こふき」「えびす」「みやこ」「くりゆたか7」などであり、生産される品種は日本市場に合わせて採用されている。
かぼちゃの栽培時期は、メキシコ北西部では春~夏、もしくは、夏~秋の間にかけて行われる。ただし、主な輸出先である日本市場のかぼちゃ需要が冬至に合わせて年末に高まることから、その生産と収穫は夏から秋にかけて行われることが多い。また、この時期は日本のかぼちゃ市場で他国産品との競争が比較的少ないことが、2000年代以降、メキシコの大手企業が輸出産品であるかぼちゃの生産を強化した背景となる。
(4)播種から収穫までの流れ
ソノラ州の主要生産地であるエルモシージョ地区の場合、年に2回栽培が行われる。春栽培の場合、土壌温度が比較的低いため、ハウスで苗床による育苗が行われた後、手作業で移植が行われる。また、植物を寒風から守るためカバーシートもつけられ、栽培期間は100~110日程度となる。一方、日本向けの輸出が多い夏栽培の場合、土壌温度が適温であることから手作業での
直播が行われ、栽培期間も90~95日と短い。これらの収穫は、いずれも手作業で行われる。
なお、ソノラ州は農業が盛んな州であり、乾燥した気候でもあるため、農場の95%はかんがいが整備されており、現在では点滴かんがいが主流である。