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海外情報 野菜情報 2021年10月号

ペルーのえんどうの生産・流通および輸出動向

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調査情報部

【要約】

 ペルーでは山岳地域および沿岸地域を中心にえんどうが生産されている。生産されたえんどうの大半は国内市場向けであり、国内では人口増加に伴い引き続き需要が増加するとみられる。また、輸出向けは、北半球の国・地域を中心に輸出先の端境期に当たる7~10月を中心に輸出されている。輸出先は米国が最も多く、欧州、日本が主要な輸出先であり、このうち欧州、日本向けは近年増加傾向で推移している。

1 はじめに

(1)日本におけるペルー産えんどうの位置づけ
 日本のえんどう輸入量は、2013年まで年間2000トン程度であったが、主要輸入先のタイで他作目への転換や気候変動により生産量が著しく減少したことなどから、2014年以降、年間600トンから900トン台で推移している。このうち、ペルー産えんどうの輸入は2014年からと後発であるが、増加傾向で推移し、2019年には431トンとタイを抜いて最大の輸出先となった(図1)。ペルー産えんどうは、日本の国産品が品薄となる7~10月に収穫を迎え、日本における端境期の業務用および小売用需要を補完する役割を担っており、この点において年間を通して輸入される中国産と異なる。国内市場では北海道産えんどうと競合するが、北海道産だけでは供給量が十分でないため、ペルーからの輸入が増加しているものとみられる。
 

 
(2)ペルーの概要
 ペルーは南米大陸北西部の太平洋岸に位置し、国土面積は日本の約3.4倍の128万5000平方キロメートルであり、南米ではブラジル、アルゼンチンに次ぐ大きさである。また、国土は南北に2000キロメートル超に渡って長く、赤道直下の南緯0度から18度に位置するため地理的には熱帯と亜熱帯にまたがっているが、気候は地勢状の3地域により異なる。同国は国土の南北をアンデス山脈が走っており、3つに大別すると28%がアンデスの山岳地域(シエラ)、12%が太平洋に面する沿岸地域(コスタ)、60%が内陸部の熱帯雨林地域(セルバ)となる。
 農地面積は、国土面積の19%に相当する24万4000平方キロメートルであり、えんどうは山岳地域および沿岸地域の比較的冷涼な気候の地域で栽培されている。
 本稿では、えんどうの主要輸入先の一つであるペルーのえんどうの生産、流通および輸出動向について報告する。なお、本稿中の為替レートは、1ヌエボ・ソル=27円、1米ドル=111円(2021年8月末TTS相場:1米ドル=110.90円)を使用する。

2 生産動向

(1)概要
 ペルーでは南米原産の豆類が古くから栽培され、スペイン人がアメリカ大陸に上陸する以前から食料として利用されてきた。外来種のえんどう豆(Pisum sativum L.)は、現在、豆類の中でインゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、ソラマメ(Vicia faba)に次いで多く栽培されている。
 えんどう豆は完熟豆(硬莢種(こうきょうしゅ))と未熟豆(軟莢種(なんきょうしゅ))があり、前者は乾燥した状態で収穫されるのに対して、後者は 未熟なうちに、または乾燥する前に収穫される。ペルーではその両方を生産しており、その生産地はほぼ重なっている。一般的には飼料や缶詰などに用いられる完熟豆は乾燥の状態で機械により収穫される。そのため、豆が小さく、多収の品種が好まれる。他方、未熟豆の場合は生食やさや付きで食されることが多く、形が良く、豆が大きい品種が好まれる。
 本稿では、断りのない限り、えんどうは未熟豆のことを表すこととする。
 
(2)農家戸数、作付面積、生産量
 2012年農業センサスによると、えんどう(完熟豆を含む)を栽培していた農家戸数は6万195戸である。経営規模別では、1ヘクタール未満の生産者が全体の32.9%、1~3ヘクタール未満を合わせると全体の72.0%を占めており小規模経営が多い(表1)。
 

 
 2018年のえんどうの作付面積は3万4425ヘクタール、生産量は13万5912トンであった。2013年以降は、作付面積、生産量とも大きな変化は見られないが、2010年と比較すると作付面積は13.7%、生産量は32.9%といずれも増加している(図2)。
 

 
(3)主な生産地
 前述の通り、ペルーのえんどうは、主に山岳地域および沿岸地域で栽培されている(図3)。品種にもよるが、栽培の最適気温は摂氏10~12度(最高28度)程度とされ、海抜1500~2500メートルの比較的冷涼な高地で栽培されることが多い。また、水はけのよい土壌が好まれ、pH6~7の中性土壌が最も適している。播種(はしゅ)は、主に沿岸地域では気温が下がる2~4月、山岳地域では気温が上がる9~11月にかけて行われ、収穫はそれぞれ7~9月、3~6月に行われる(地域や標高により異なる)。降水量も生育に重要な要件であり、年間降水量は1500~2000ミリメートルが必要とされ、干ばつに弱いという特徴がある。
 

 
 えんどうは露地栽培がほとんどであり、沿岸地域では支柱立てでの栽培が増え、単収向上に大きく役立っている。また、えんどうは連作障害を起こすため、通常は大麦、小麦、トウモロコシ、ばれいしょとの輪作が推奨されている。なお、未熟豆を収穫する生産者の場合、3~4期の連作後、土地を休耕するという動きも見られる。他方で、豆科であるため根粒菌による窒素固定が行われ、土壌にとって有益である。
 州別生産量(2018年)を見てみると、山岳地域中部のフニン州が2万9402トンと最も多く、ワヌコ州、ワンカベリカ州、カハマルカ州と続く。近年の傾向を見ると、フニン州は横ばいで推移しているのに対し、主要な生産地である山岳地域北部のカハマルカ州は減少傾向で推移している。一方、山岳地域中部に位置するワンカベリカ州、ワヌコ州および山岳・沿岸地域北部のラ・リベルタ州では2010年から2018年の間に生産量が倍増している。その他山岳地域と沿岸地域を有するアンカシュ州でも生産量が大きく増加している(表2)。
 
 

 なお、日本に輸出されるえんどうの種類はスナップえんどう(sugar snap pea)とさやえんどう(snow pea)であり、主要な生産は沿岸地域のアンカシュ州のHuaral、リマ州のChancay、Santa Rosa、Chillonなどである。
 
(4)単収
 えんどうの単収は、2011年から2018年の間に1ヘクタール当たり3697キログラムから同3948キログラムへと6.8%増加した。これは、改良品種の導入、かんがい施設の整備、農業技術(条播(じょうは)、支柱立てなど)の向上などによるものである。
 州別で見ると、リマ州が最も多く同1万908キログラム(2018年)と突出している。同州では、国内市場向けのほか輸出向けも栽培しており、輸出拡大に呼応し近代的かつ効率的な生産体制が整備されたためとみられる。一方、作付面積が最大のカハマルカ州では、同1770キログラムと全国平均の半分以下である。同州では古くからえんどうが栽培されているが小規模生産者が多く、生産体制の近代化が進んでいないためとみられる(図4)。
 

 
(5)品種
 ペルーで栽培されるえんどうの品種は地域、標高および気候などにより異なる(表3、写真)。主な品種のうちAlderman種およびRondon種は米国からの外来種の商業品種である。また、Usui種とRemate種はペルーの国立農業研究所(ⅠNⅠA)が開発した品種である。
 

 

 
 なお、輸出向けに栽培されているえんどう(スナップえんどうとさやえんどう)の主な品種はDwarf Grey Sugar、Mammoth Melting Sugar、Oregon Sugar Pod II、Snowflakeである。
 
(6)生産サイクル
 ペルーでは、えんどうは露地栽培での直播(じかまき)が主流であり、伝統的に散播(さんぱ)(バラ播き)による播種が行われているが、近代的な農業法を取り入れている生産者や大規模農家では条播または点播(てんぱ)を行っている。
 えんどうの播種時期は、地形や気候などにより差があるが、主に9月に始まり3月頃まで行われ、地域によっては6月まで行われる。一方、収穫は3月から11月に行われ、収穫が最も集中するのは冬の終わりから春に当たる7~9月頃となる(図5)。通常、播種は雨季の時期に行われるが、かんがい施設が整備されている場所であればいつでも行うことができる。なお、2012年農業センサスによると、何らかのかんがい施設を有している農家は全体の4割あり、作付面積ベースでは全体の半分に相当する(そのほとんどは重力かんがい)。
 

 
 スナップえんどうなどの場合、さやおよび中の豆が熟す前に収穫しなければならないため、手作業による収穫が行われている。これは、スナップえんどうがさやごと食されることから、商品価値に大きな影響を及ぼす外観に細心の注意を払う必要があるためである。収穫は実の生長を見ながら通常2回に分けて行われ、1回目は全体の7割程度、2回目はその15~20日後に残りの3割を収穫する。収穫作業は、花梗(かこう)(または花柄(かへい))部分を切断する細かい手作業を伴い、女性が従事することが多い。寒冷な気候が続くとさやが黄色く変色し、変形することもあり、商品価値が下がる。また、収穫後のさやは乾燥しやすいため、風通しの良い日陰に置かれる。
 
(7)主な病害虫およびその対策
 INIAによると、えんどうの生長に大きな被害を与える病害には土壌病害を引き起こすフザリウム菌(fusarium)、リゾクトニア菌(Rhizoctonia solani)およびピシウム菌(Phytium)がある。INIAでは、根腐病の発生を予防するため、輪作、水はけの良い土壌の整備そして品質の良い種苗の使用を推奨している。
 また、主な害虫としては、ホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)、フェルチア属(Feltia spp.)およびアグロチス属(Agrotis spp.)などの虫、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、マメクロアブラムシ(Aphis fabae)などがあり、現状では、農薬による防除対策がとられている。

3 流通、消費動向

(1)流通
 ペルーのえんどうは国内市場向けが主体である。生産されたえんどうは、生産者が直接卸売市場に出荷するか、仲買人を通じて出荷する。一方、輸出向けは、生産者が輸出業者にえんどうを販売し、輸出業者の工場に輸送される。搬入されたえんどうは、工場内で検品・計量され、輸出先市場の注文に応じてさやの先端をカットするなどの作業も行われる。輸出向けの場合、輸出業者は自前の冷温保管庫を所有しており、輸出港や空港への輸送は低温輸送車が使われる。
 
(2)輸出業者
 えんどうの生産者は大半が小規模経営であり国内市場向けに生産している。一方、輸出向けに生産している生産者や企業は限られる。大手輸出業者では、自社生産を行う場合もあるが、その量は限定的であり、大半は工場近郊の生産者からえんどうを購入している。えんどうの主な輸出業者は2015年に8社あったが、2019年7月時点では大手3社で全体の9割を占めるまでに寡占化が進んでいる。大手3社の概況は次の通りである(表4)。
 

 
(3)価格
 えんどうの出荷価格は、2018年には1キログラム当たり1.72ヌエボ・ソル(46円)であった。2010~2018年の価格の推移を見ると、同時期のインフレ率に呼応して一貫して上昇している(図6)。
 

 
 月別の出荷価格を見ると、収穫の最盛期となる春(8~10月頃)には価格が低下する。10月が1キログラム当たり1.31ヌエボ・ソル(35円)と最も安く、出回り量が少なく最も高い6月の同1.98ヌエボ・ソル(53円)と比べると5割程度の価格差がある(図7)。
 

 また、えんどうの生産者出荷から小売までの価格を対比すると、卸売価格は生産者出荷価格より20%程度高く(首都のリマ卸売市場の場合は40%程度高)取引されている。小売価格は卸売価格(リマ卸売市場)の2倍程度の水準で取引されている(表5)。
 

 
(4)消費
 ペルーでは、子実用えんどうと並び、アジア系住民が好むえんどうとして、スナップえんどうとさやえんどうが栽培されている。さやえんどうは中華料理によく使われる食材で「Holantao」と呼ばれるが、これは「オランダ豆」の中国語に由来している名称である。
 近年、スナップえんどうを中心に輸出は増えているが、依然として生産されるえんどうの大半は国内市場向けであり、人口の増加に伴い、国内消費は引き続き拡大するとみられる。
 なお、前述の通り、在来種とスナップえんどう(さやえんどうを含む)のどちらも国内で需要があるものの、輸出向けとしてはスナップえんどうが主流である。

4 輸出動向

(1)輸出量
 2019年のえんどうの輸出量は前年比23.4%増の8677トン、輸出額は2990万米ドル(33億1890万円)と大幅に増加した。直近10年間の輸出量を見ると、年間5000~8000トン台で増加傾向で推移している。輸出されるのは、さやえんどうとスナップえんどうで、アジア系料理が世界的に広まった結果、えんどうの需要が高まっているとみられる。
 輸出先別で見ると、米国向けが一貫して最大であり、年間2000~4000トン程度で安定して輸出している。次いで英国およびオランダ向けが多く、いずれも増加傾向で推移している。なお、オランダについては、EU圏への再輸出拠点としての役割があるとみられる。また、日本向け輸出は2014年に開始したが、その後、増加傾向で推移しており、2019年には423トンと第4位の輸出先となった(表6)。
 

 月別の輸出動向を見ると、収穫が開始される4~12月の9カ月間にかけて行われ、収穫の最盛期を迎える9~10月の輸出量が最も多い。主な輸出先は北半球の国・地域であり、この時期はこれらの国・地域が端境期に当たるためとみられる(図8)。
 

 
(2)輸出形態など
 輸出形態は生鮮または冷凍である。冷凍の場合IQF(個別急速凍結)の場合が多い。輸出規格は、さやの長さ7.6~8.9センチメートル、幅が1.9センチメートルで、さやの先端が尖っておらず、濃い緑色が収穫時期となる。
 賞味期限の目安は、生鮮は5度で保存した場合10日間、冷凍は0度以下の場合半年間保存が可能である。主な輸出用の包装形態は、2キログラムまたは4.5キログラムの箱に梱包され、自動計量器でその重さが測定される。
 輸出用に処理加工された製品は輸出地に輸送される。Intipa Foodsの場合、輸出港はパイタ港とカヤオ港である。パイタ港はペルーの北部(ピウラ州)に位置しており、パナマ運河に比較的近いことから、欧州向け輸出に利用される。一方、リマ州に隣接しているカヤオ港は、アジア向けや米国向け輸出に利用される。また、海運以外に空輸での輸出も行われており、リマ国際空港が利用される(図3)。
 
(3)貿易協定
 ペルーは、1990年代からEUおよび米国との間で優遇条件での輸出を可能にする協定を締結し、対外貿易が拡大した。しかし、これらの協定は期限付きであったため、2000年代に入り自由貿易協定の交渉が本格化した。日本貿易振興機構(JETRO)によると、ペルーは、アンデス共同体(CAN)、タイ、米国、チリ、カナダ、中国、韓国、日本、EU、環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)、英国など20の国・地域と自由貿易協定(F T A )/経済連携協定(E P A)を締結している(2021年4月時点)。
 なお、えんどうの主要輸出先である米国、EUおよび日本とはすでに貿易協定を締結しており、それぞれの国・地域の輸入関税は撤廃されている(表7)。

5 おわりに

 ペルーにおけるえんどうは主に山岳地域および沿岸地域で生産され、近年生産量は増加傾向で推移している。生産者の約7割は経営規模が3ヘクタール未満で、生産性は総じて高くないものの、品種改良やかんがい施設の整備、農業技術の改善により輸出向けを中心に生産性が向上していくものとみられる。

 一方、需要についてみると、生産されたえんどうは主に国内市場向けとなるが、国内では今後も人口増加に伴い引き続き需要の増加が見込まれている。また、輸出向けについてもおおむね増加傾向で推移している。主な輸出先が北半球にあり、輸出先における端境期の需要を補完できるという有利性は今後も続くとみられる。日本向けについても近年増加傾向で推移しているが、日本国内におけるえんどうの消費量が伸び悩んでいることや遠隔地にあることから輸送コスト上昇に伴う価格競争力の低下などが今後の日本向け輸出に影響を及ぼす可能性があるとみられる。

 また、ペルーでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、すでに発令されている国家緊急事態令が延長(2021年8月付け官報)され、陸路国境の一部閉鎖や各都市での都市閉鎖が9月30日まで継続される。このため、農産物の生産、流通に何らかの影響を及ぼす可能性があるとみられる。