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海外情報 野菜情報 2021年5月号

新型コロナウイルス感染症関連の情報

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調査情報部
 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。
(掲載URL: https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは、3月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【欧州】

1 (令和3年3月3日付)英国及びEUの生鮮青果物団体、植物検疫証明書導入に対する懸念を表明

 EUと英国における生鮮野菜・果物のサプライチェーンを代表する団体である欧州生鮮青果物協会(Freshfel Europe)と英国生鮮青果物協議会(Fresh Produce Consortium)は2月16日、4月1日から導入される植物検疫証明書の導入に対する懸念を記した書簡をマイケル・ゴーブ英国内閣府大臣に送付した。
 
 英国のEU離脱は、英国内の生鮮食品需要の40%以上に相当する約300万トンを輸出しているEU産生鮮青果物の輸出に多大な困難をもたらしている。青果物部門は、すでに新たな国境管理、税関手続き等に対応するため、少なくとも年間5500万ユーロ(70億4000万円、1ユーロ:128円)の追加コストに直面している(注1)。4月1日以降は、75万通以上の植物検疫証明書の発行と公的検査のコストが新たに追加され、消費期限がきわめて短い生鮮青果物の「ジャストインタイム(注2)」物流継続能力を阻害するおそれがあるとしている。
 
 大臣に宛てた書簡の中で、両団体は、EUから英国への生鮮青果物の輸出量の4分の3超に相当する約250万トンについて植物検疫証明書が必要とされると主張している。これは、生鮮青果物の貿易のために少なくとも毎年75万通の証明書が発行されなくてはならないことを意味するため、青果物部門及び行政にとって非常に困難な作業となるとしている。リンゴのような大きなロットでの輸出では、トラック1台につき1通の証明書の発行となる一方で、大部分の貿易は、小規模な消費者や卸売業者の委託によって行われるため、トラック1台につき10個以上の荷口が混載され、それぞれ証明書が必要となることも多い。その結果、植物検疫証明書の発行が輸出入の障害となり、注文毎に遅延が生じ、輸出入に必要とされる時間が長くなることによる品質低下や食品ロスをもたらすとしている。これにより、すでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けている青果物部門にさらなるコストが追加されることになるとしている。
 
 欧州生鮮青果物協会と英国生鮮青果物協議会は、40年間の自由貿易の経験から、英EU間の生鮮青果物の貿易によるリスクが非常に低いという事実を考慮して、植物検疫証明書の発行を免除することを求めている。欧州生鮮青果物協会は、「私たちは、40年間にわたって、自由で安全な貿易を行ってきており、生鮮青果物の貿易における植物防疫上のリスクが限られていることや英国とEUの植物防疫法制が少なくとも中期的にはほぼ同一であるという現実を反映して、植物検疫証明書の発行を免除することを考慮するよう求めている。」と強調した。また、英国生鮮青果物協議会は、「電子証明書が導入されるまで、EUからの輸入品に関して植物検疫証明書の導入を延期することが、生鮮青果物の供給を維持するために最低限必要なことである」としている。
 
(注1)海外情報「BREXITによるEUの生鮮食品部門に対するコスト増は5500万ユーロと推計(EU)」を参照されたい。
(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002878.html)
(注2)いわゆるトヨタ生産方式の一部を構成する概念として知られており、物流で用いられる場合、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ配送する物流システムを意味する。
(国際調査グループ 小林 智也)
2 (令和3年3月17日付)世界の食料安全保障指数ランキング、フィンランドが首位、日本は第9位(EU)

 農業調査会社コルテバ社の委託を受けてエコノミスト誌が取りまとめた世界の食料安全保障指数が公表された。
本調査は2012年から実施されており、2020年は、113カ国を対象に、100を最も高い値とし、食料の「所得に対する値頃感(affordability)」、「入手しやすさ(availability)」、「品質・安全性(quality and safety)」、「資源及び強靭性(resources and resilience)」
の4つの主要項目を、59の指標を基準として各項目の点数が計算されている。なお、今回発表されたランキングは、2020年に「資源及び強靭性(resources and resilience)」が主要項目に追加されたことに伴い、2012年以降の数値も再集計されている。
 
 本調査によると、2020年の食料安全保障指数が最も高かった国は前年に続きフィンランドで、前年から0.2ポイント上昇の85.3であった(図)。次いで、アイルランド(83.8)、オランダ(79.9)、オーストリア(79.4)と欧州連合(EU)加盟国が続いた。



 項目別にそれぞれの最高値をみると、「所得に対する値頃感」はアイルランドとデンマークの92.2、「入手しやすさ」はフィンランドの82.0、「品質・安全性」はカナダの94.5、「資源及び強靭性」はノルウェーの73.5であった。
 
 調査では、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック当初には、食料安全保障指数の高い国であっても、必需品のパスタや米などの買いだめによってスーパーマーケットの食品棚が空になるなど、その影響の大きさに言及されている。
 また、調査によると、世界の食料安全保障の状況は、2012年から2018年までは改善傾向にあったものの、パンデミック前の2019年には集約的農業、気候変動、天然資源の減少などの要因が相まって悪化に転じ、2020年のパンデミックが状況をさらに悪化させる要因になったとした。
 
 なお、日本については、前年から0.5ポイント下げて77.9となったものの、前年と同じ9番目となった。項目別にみると、「所得に対する値頃感」は6番目、「入手しやすさ」は8番目と比較的上位にある一方、「品質・安全性」は34番目、「資源及び強靭性」は15番目となっている。
 
(国際調査グループ)