(1)中国における主産地と生産概況
キャベツは中国国内で広く生産されており、関係機関からの聞き取りによると中国全土で約40万ヘクタールの作付けがされているとされ、主産地として山東、
河北省、
河南省、
四川省などが挙げられる(図6)。
そのうち山東省の作付面積(令和2年産)は約3万7000ヘクタールと全国の1割弱を占め、近年はおおむね3万ヘクタールから5万ヘクタールの間で推移している(図7)。単収は1ヘクタール当たり50トン前後で推移しており、それほど大きくは変化していない。同省における主産地は
青島市、
臨沂市、
濰坊市、
済南市、
徳州市などがあり、青島市の作付面積は同省の約35%、臨沂市は約30%を占めているとされる。
山東省では主に家族経営などの個人の生産者が多く、合作社
(注1)などのような団体による生産はあまり多くない。関係機関からの聞き取りによると個人の生産者の平均的な作付面積は2~5ムー(13~33アール:1ムー=6.67アール)である。
注1:合作社とは、日本の協同組合にあたる。生産、運輸、販売、信用など部門別に組織され、主に個人経営の経済を集団化する役割を果たしている。
(2)主産地の栽培スケジュールおよび栽培品種
山東省における作型および栽培スケジュールは露地栽培と施設栽培に大別され、露地栽培はさらに春キャベツと夏秋キャベツに分けられる(表1)。施設栽培は主にビニールなどの樹脂フィルムで被覆したハウスでの栽培であり、一般的な面積は一棟当たり1~2ムー(7~13アール)ほどである。作型ごとの作付面積比では露地春キャベツが約10%、露地夏秋キャベツが約55%、施設栽培が約35%となっている。なお、春キャベツは収穫後期が夏の高温期にあたり、品質が安定しないことが多いことから、近年、生産者に回避される風潮にあり、同省における春キャベツの作付は減少傾向にある。
山東省で栽培される主な品種は「中甘」「奥奇娜」の二種類が挙げられる(表2)。一般に「奥奇娜」の販売価格は「中甘」よりも高く、近年、「中甘」から「奥奇娜」へ栽培品種のシフトが進んでいる。
(3)栽培コスト
キャベツ生産における主要な栽培コストとして、地代が約半分を占めており、次いで肥料費、人件費と続く(表3)。
平成29年産から令和2年産の3年間でコストが増加したのは、地代、肥料費、人件費であり、増加幅をみると、地代で450元(7200円、平成29年比30%増)、肥料費で132元(2112円、同比20%増)、人件費で120元(1920円、同比25%増)となっている。
このように近年のキャベツ生産を取り巻く状況として、他の品目と同様に主要コストの増加が顕著であり、栽培コストの増加傾向が継続していることが課題となっている。また、依然として若手を中心とした都市部への出稼ぎ労働者の増加傾向は継続しており、労働力の確保に苦労している点も同様である。
(4)調製コスト
(注2)
調製コストのうち、最も多いのは人件費であり、全体の約4割を占めている(表4)。3年間の増減をみると、増加しているのは人件費と管理費であり、その他のコストに変動はみられない。人件費は、調製工場の従業員の給与が毎年5~10%ほど上昇している一方、ダンボールなどの包装資材費や輸送費では長期契約を締結していることが多く、契約単価がさほど変わらない。
注2:ここでは、収穫後に輸出向けに整える工程である、キャベツの調製コストについて取り上げる。