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海外情報 野菜情報 2021年3月号

中国産野菜の生産と消費および輸出の動向(第4回:キャベツ)

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調査情報部

【要約】

 中国産キャベツは、国内で流通する輸入生鮮キャベツの9割以上を占め、価格の優位性などから、業務用を中心に広く利用されているとともに、日本国内の需給の調整弁としての役割も担っている。中国産は東南アジアを中心とした近隣の地域に輸出されているところ、令和2年においては新型コロナウイルス感染症および中国国内の豪雨の影響を受け、輸出量は昨年を下回るものと見込まれる。

1 はじめに

 中国は、日本の輸入生鮮野菜の65%(令和元年、数量ベース)を占める最大の輸入先国であり、同国の動向は、わが国の野菜需給にも大きく影響を与えるものである。そこで本誌においては令和2年9月号から6回にわたり、生産者から流通関係業者、消費者まで広く関心が高い品目を対象に、同国における野菜生産と消費および輸出の最新の動向について報告している。
 今回はその第4弾として、主要な野菜のうち、日本における一世帯当たりの購入数量が最も多い品目であるキャベツを取り上げる。キャベツは、前回取り上げたにんじんと同様に、中国産が生鮮輸入数量の9割以上を占めている(図1)。本稿では代表的な主産地である山東(さんとう)省での聞き取りを中心とした調査結果について、統計データと併せて報告する。

図1

 なお、本稿中の為替レートは、1中国元=16円(2021年1月末日TTS相場:1中国元=16.45円)を使用した。

2 日本における中国産キャベツの位置付け

 平成30年産の日本産キャベツの作付面積は3万4600ヘクタール(前年比0.6%減)、収穫量は146万7000トン(同2.7%増)となっており、収穫量、作付面積ともに、近年は3万4000ヘクタール、収穫量は140万トンを維持するなど、安定的な需要を背景に、いずれもほぼ横ばいで推移している(図2)。

図2

 輸入キャベツのほとんどは生鮮の形態で輸入されており、輸入元を見ると中国を筆頭にベトナム、台湾、韓国と近隣アジア地域からの輸入が多く、近年はベトナム産の伸びなどが見られるものの、特に中国産以外の産品については、年により輸入量の変動が大きくなっていることがわかる(図3)。なお、日本では平成29年の台風や低温、長雨などの天候不順の影響を受け、冬期の主産地を中心とした生育不良により、平成29年11月~翌2月ごろまで高値で推移し、特に30年1~2月は東京都中央卸売市場にて一時、例年の2倍以上の卸売価格で取引されるなど非常に厳しい需給状況となっていた。そのため、業務筋を中心に輸入物の手配が急増したことから、30年の生鮮野菜輸入量はキャベツを含めた多くの品目で前年を上回った。30年を除き近年の輸入量はおおむね3万トン台で推移し、これは日本の収穫量の約2%にあたる。

図3

 月別の輸入量を見ると、国内需給の影響を受けるため、年によって傾向は異なるが、おおむね10月~翌4月にかけて輸入量が多く、日本のキャベツ大産地の一つである群馬県産の出荷が始まる初夏頃において、輸入量が少ない傾向がみられる(図4)。


図4

 輸入単価は、東京都中央卸売市場における国内産の平均卸売単価の約3~4割の価格であり、近年の輸入単価はおおむね横ばいで推移している(図5)。

図5

3 生産動向

(1)中国における主産地と生産概況
 キャベツは中国国内で広く生産されており、関係機関からの聞き取りによると中国全土で約40万ヘクタールの作付けがされているとされ、主産地として山東、河北(かほく)省、河南(かなん)省、()(せん)省などが挙げられる(図6)。

図6

 そのうち山東省の作付面積(令和2年産)は約3万7000ヘクタールと全国の1割弱を占め、近年はおおむね3万ヘクタールから5万ヘクタールの間で推移している(図7)。単収は1ヘクタール当たり50トン前後で推移しており、それほど大きくは変化していない。同省における主産地は青島(ちんたお)市、臨沂(りんぎ)市、濰坊(いほう)市、済南(さいなん)市、徳州(とくしゅう)市などがあり、青島市の作付面積は同省の約35%、臨沂市は約30%を占めているとされる。

図7

 山東省では主に家族経営などの個人の生産者が多く、合作社(注1)などのような団体による生産はあまり多くない。関係機関からの聞き取りによると個人の生産者の平均的な作付面積は2~5ムー(13~33アール:1ムー=6.67アール)である。
注1:合作社とは、日本の協同組合にあたる。生産、運輸、販売、信用など部門別に組織され、主に個人経営の経済を集団化する役割を果たしている。

(2)主産地の栽培スケジュールおよび栽培品種
 山東省における作型および栽培スケジュールは露地栽培と施設栽培に大別され、露地栽培はさらに春キャベツと夏秋キャベツに分けられる(表1)。施設栽培は主にビニールなどの樹脂フィルムで被覆したハウスでの栽培であり、一般的な面積は一棟当たり1~2ムー(7~13アール)ほどである。作型ごとの作付面積比では露地春キャベツが約10%、露地夏秋キャベツが約55%、施設栽培が約35%となっている。なお、春キャベツは収穫後期が夏の高温期にあたり、品質が安定しないことが多いことから、近年、生産者に回避される風潮にあり、同省における春キャベツの作付は減少傾向にある。

表1

 山東省で栽培される主な品種は「中甘」「奥奇娜」の二種類が挙げられる(表2)。一般に「奥奇娜」の販売価格は「中甘」よりも高く、近年、「中甘」から「奥奇娜」へ栽培品種のシフトが進んでいる。

表2

(3)栽培コスト
 キャベツ生産における主要な栽培コストとして、地代が約半分を占めており、次いで肥料費、人件費と続く(表3)。

表3

 平成29年産から令和2年産の3年間でコストが増加したのは、地代、肥料費、人件費であり、増加幅をみると、地代で450元(7200円、平成29年比30%増)、肥料費で132元(2112円、同比20%増)、人件費で120元(1920円、同比25%増)となっている。
 このように近年のキャベツ生産を取り巻く状況として、他の品目と同様に主要コストの増加が顕著であり、栽培コストの増加傾向が継続していることが課題となっている。また、依然として若手を中心とした都市部への出稼ぎ労働者の増加傾向は継続しており、労働力の確保に苦労している点も同様である。

(4)調製コスト(注2)
 調製コストのうち、最も多いのは人件費であり、全体の約4割を占めている(表4)。3年間の増減をみると、増加しているのは人件費と管理費であり、その他のコストに変動はみられない。人件費は、調製工場の従業員の給与が毎年5~10%ほど上昇している一方、ダンボールなどの包装資材費や輸送費では長期契約を締結していることが多く、契約単価がさほど変わらない。

表4

注2:ここでは、収穫後に輸出向けに整える工程である、キャベツの調製コストについて取り上げる。

4 国内販売動向

 近年の山東省で収穫されたキャベツの販売先の内訳を見ると、約9割が国内向けとなっており、山東省内、天津(てんしん)市、南京(なんきん)市、上海(しゃんはい)市、(しん)セン市、広州(こうしゅう)市などの地域に出荷されている(図8)。残りの1割程度が輸出に仕向けられる。
 山東省の代表的なキャベツ産地の一つである青島市にある卸売市場の山東青島莱西市東庄頭野菜卸売市場服務有限公司の卸売価格を見ると、平成28年は1キログラム当たり0.2元~3.4元(3円~54円)と大きく価格が変動した。29年以降は0.3元~2.5元(5円~40円)で推移しており、最高値は最安値の約8倍となっている(図9)。他作物と同様にキャベツにおいても販売単価が翌年の作付面積に影響を与え、価格は隔年で上下しており(注3)、生産コストの増加基調との関係性は薄いと言える。   

図8

図9

注3:中国の野菜は当年の価格により次作の作付面積が左右されることが往々にしてあり、一般的に、1)高値で取引される→2)次期作付けを増やす→3)収穫量が増えることで価格が低下→4)次期作付けを減らす→5)収穫量が減ることで価格が上昇―というサイクルを繰り返すことが多い。

 また、キャベツは春キャベツが出荷最盛期を迎え、他の葉茎菜類も出荷盛期を迎える初夏に価格が低下する傾向にあり、10~11月も夏秋キャベツが出荷最盛期を迎えることから、価格が低下する傾向がみられる。
 令和2年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により買い占めが起こるとともに、交通規制による物流制限などを受け、1~3月は高値で推移したものの、COVID-19拡大の鎮静化に伴い、4月以降の価格は落ち着いて推移した。6月下旬に入ると、豪雨に見舞われ、長江(ちょうこう)流域で広く洪水被害が発生したことから、長江周辺の産地の多くが減収または収穫ができない状況となるなど、大きな被害を受け、山東省のキャベツの卸売価格は再度高騰し、夏秋キャベツが出回る前の9月まで高値で推移した。

5 輸出動向

 中国の税関統計によると、平成29年から令和元年の中国産生鮮キャベツの輸出量は44万~50万トンで推移し、主な輸出先であるベトナムとマレーシア向けが全体量の約6割を占め、ついで香港、タイ、日本と続いた。近年、日本は輸出先として4~5番目に位置し、総輸出量の5~10%強が仕向けられている(図10)。

図10

 現地の輸出企業によると、輸出量は中国国内の需給状況に影響を受け、需給がひっ迫すると輸出量は減少し、需給が緩むと国内の販売先がなくなったキャベツを輸出業者が多く買い付け、輸出に回す傾向にあるということである。
なお、令和2年1月~10月の中国産キャベツの輸出量を見ると37万5236トン(前年同期比13.1%減)と、前年をかなり大きく下回っている。今年はCOVID-19の拡大による世界的な需要減退や物流制限に加え、中国国内の夏季の豪雨による供給力低下の影響も受け、輸出量は前年を下回るものと見込まれている。

6 おわりに

 中国産キャベツは価格の優位性や国内需給のひっ迫時を中心とした供給元としての役割などが評価されるなどして、業務用を中心に日本国内での業務用需要は依然として根強く、日本国内産の需給の調整弁として、ベトナムをはじめとした(注4)近隣アジア諸国を含めた他国産の追随を許さないものと考えられる。一方で、中国産キャベツの令和2年の輸出量は、中国国内で発生した夏季の豪雨被害に加え、COVID-19の発生により中国国内の需給ともに影響を受け、前年割れが見込まれている。
 日本国内においても、COVID-19拡大の影響が依然持続している中ではあるが、近年の異常気象など、予測困難な要因で国産の作柄が影響を受けるリスクを踏まえ、引き続き中国におけるキャベツの需給動向について注視が必要な状況にあると言えよう。

注4:ベトナムにおけるキャベツの生産動向については、海外情報(野菜情報2020年12月号)「ベトナムにおけるキャベツの生産および輸出動向」を参照されたい。
   https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/kaigaijoho/2012/kaigaijoho01.html