調査情報部
欧州における生鮮野菜・果物のサプライチェーンを代表する団体である欧州生鮮青果物協会(FRESHFEL EUROPE)は10月30日、欧州議会・理事会規則に基づく農産品販売促進に関する予算等を定めた2021年の年次作業計画を分析し、2億ユーロ(248億円、1ユーロ:124円)の全体予算を維持すると同時に、青果物の欧州内の消費拡大策のための配分を従来の2倍の1600万ユーロ(19億8400万円)にするよう、欧州委員会に強く求めた。青果物部門は、今後数年間、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響、英国のEU離脱(BREXIT)や国際市場での激しい競争など、多くの課題に直面するため、全体の予算を維持しながら、青果物に対する予算を増やすことは極めて重要であるとしている。
同協会は、欧州委員会の当初予算が、市場シェアが小さい有機栽培や他のEU品質制度に対して非常に手厚く配分されていることに強い懸念を表明した。こうした配分は、青果物の消費拡大のための一般的な宣伝活動を危機にさらすほど制限することになるとしている。
現在、EUでは、青果物の1日1人当たりの消費量が345グラムと停滞しており、世界保健機関(WHO)が推奨している同400グラムを下回っていることから、野菜や果物の消費拡大は、青果物部門の最大の課題である。同協会は、「バランスのとれた適切な食事習慣の中でEUにおける野菜や果物の消費量増加に焦点を当てて、少なくとも青果物部門への予算配分を倍増させるよう欧州委員会に強く要望する」と表明した。また、「予算が増額されることで、2021年の国際果実野菜年(注)が青果物部門にもたらす機運と相まって今後数年間のEUの消費拡大活動が活発化し、健康的で持続可能な食事の推進を強化することになるだろう」と付け加えた。さらに、予算の大幅な増額は、COVID-19によって果物と野菜の健康・栄養上の利点に消費者が再注目している現状を、消費拡大に生かすことにもなるだろうと説明している。
(注) 2019年12月に開催された第74回国連総会にて、2021年を「国際果実野菜年(International Year of Fruits and Vegetables)」とすることが採択された。(「野菜情報」2021年1月号74ページ参照)
(http://www.fao.org/japan/portal-sites/int-year/fruitsveges-2021/en/)
同協会は、欧州委員会に対し、農産品販売促進に関するEU規則の趣旨を尊重し、2021年の年次作業計画が、「農場から食卓へ(Farm to Fork)」戦略のような政治的な枠組みの下、人為的に管理された野心にのみ基づくものでなく、EU域内市場の販売と消費を推進し、域外市場への輸出を促進するように設計されるよう要請した。
(国際調査グループ 小林 智也)