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海外情報(野菜情報 2020年10月号)


新型コロナウイルス感染症関連の情報

調査情報部


 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。
 (掲載URL: https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは、前号でご紹介したもの以降、8月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

北米

(令和2年8月21日付)
農務省はコロナウイルス食料支援プログラムの対象農作物を追加(米国)

本年5月19日、米国農務省(USDA)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行の影響を受けた米国の農家や牧場主などを救済するためにコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP)の詳細を公表した。その後、USDAは6月22日までパブリックコメントを行い、個人や団体から寄せられた1740件の意見やデータを検討した結果、7月9日および8月11日にCFAPの対象農作物の追加や支払い率の修正について公表した。5月19日に公表されたCFAPの詳細から変更があった事項は以下の通りである。なお、CFAPの直接支払いは、コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic SecurityCARES Act)と商品信用公社(CCC)憲章法に基づく、2つの財源から成り立っている制度である。

また、単位の換算には、1米ドル=108円(2020814TTS相場)、1ポンド=0.453592キログラムを使用した。

家畜

支払対象と畜牛のうち、肥育牛の体重が1400ポンド超から1200ポンド超に拡大されたほか、支払い対象となる家畜に2歳以上の全ての羊が追加された(表1:変更部分は濃黄)。

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果物や野菜など

果物や野菜などについては大幅に対象作物が追加され、さらに一部の対象作物については支払い額も調整が行われた(表2:変更部分は網掛け)。また、表2中の③CCCに基づく単位当たり支払い額については、当初、対象作物の重量当たりに応じて支払いを行っていたが、対象作物の面積当たりに応じた支払い方法に変更された。

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支払い対象の農産物に液卵および冷凍液卵が追加された。支払いは、2020年1月から3月の第1四半期における生産量に対してCARES Actに基づく支払い額とCCCに基づく支払額をそれぞれ乗じた額の合計となる(表3)。なお、殻付き卵および乾燥卵はCOVID-19の影響で全米的に5%以上の価格下落が確認されなかったため、対象にはならなかった。

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その他

上記以外に、観賞用植物や切り花、水産物も支払い対象として追加された。

申請と支払い

今回、多くの農作物が支援対象に追加された一方で、桃やルバーブ(ダイオウ属の野菜の一種)に関しては2020年1月15日から4月15日までの間に販売されたが5%以上の価格下落により損失が生じた農産物には該当しないとして、当該項目の対象から外れている。また、2020年4月15日までに農場から出荷されたものの販路を失い重大な品質劣化が生じた農産物である桃、ルバーブ、アスパラガスおよびきのこに関しては、データを精査した結果、支払額が減少している。

当初は、資金を確保するため、申請が承認された生産者はまず支払い額の80%を受け取り、その後、 農場サービス局(FSA)が残りの20%を生産者へ自動的に支払う仕組みであった。今後は、CFAPを申請する生産者は、申請が承認された段階で、支払い限度額範囲内で全額を一度に受け取ることになる。また、申請の締め切りが9月11日に延長された。

8月11日の公表に合わせて、パーデュー長官は、「トランプ大統領は、米国の農家や牧場主がCOVID-19の大流行を乗り越え、米国と世界へ十分な食料や繊維を供給し続けられるよう支援している。そのために、トランプ大統領はCFAPにおいて160億ドルもの直接支払いを承認し、本日、われわれは支援が必要とされている農作物をさらにCFAPの支援対象として追加することができた。CFAPは、生産者がCOVID-19の影響を乗り越えるためにUSDAが用意した数多くの手段の内の1つに過ぎず、USDAはローンの支払い猶予や、作物保険や申請期限に柔軟性を加えるなど、生産者を支援するために多くの手段を活用している」と述べている。

【参考:新型コロナウイルス関連情報(米国)】

米国農務省は新型コロナウイルス感染症の影響を受けている生産者への支援策の詳細を発表(海外情報(令和2年5月26日発))(7月号北米2番の情報)

 https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002709.html

米国農務省、新型コロナウイルス感染症に対する農業支援策を発表(海外情報(令和2年428日発))(6月号米国1番の情報)

 https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002685.html

(国際調査グループ)

欧州

 (令和2年8月7日付)EU・ベトナム自由貿易協定、8月1日に発効

EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)が、約8年間の交渉の末、2020年8月1日に発効した。欧州委員会のプレスリリースによると、今回の協定はEUが発展途上国と締結した最も包括的な貿易協定であり、関税の削減、SPS措置を含む非関税障壁の解決、地理的表示(GI)の保護、政府調達・サービス市場の開放などが含まれている。

フィル・ホーガン貿易担当委員は、「ベトナムは、二国間の貿易協定の下でEUと貿易を行う77カ国のうちの一員となる。今回の協定は、EUと、活力に満ちた東南アジア地域との経済関係を強化するものであり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機以降の復興に資するだけの経済的な潜在力を有している。また、妥結に至るまでの貿易交渉によって、ベトナムの労働者権利の保護に関して改善が見られたことは、貿易政策が如何に経済を良い方向へ導く力となりうるかを示すものでもある」とコメントしている。

なお、農畜産物に関わる主な合意内容については以下の通りである。

<関税削減>

EVFTAでは、EUからベトナムへの全ての輸出品目の65%の関税が発効と同時に撤廃となり、残りは10年間で徐々に関税が引き下げられ、最終的には全ての輸出品目の関税の99%が撤廃される。

今回の発効により撤廃される主な農畜産物の関税率と撤廃までの期間は表1のとおりである。

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<地理的表示(GI)の保護>

169品目のEU産飲食品の地理的表示が保護されることとなる。この中にはパルミジャーノ・レッジャーノやフェタといったチーズや、ティローラー・シュペック(オーストリアのベーコン)やシュヴァルツヴェルダー・シンケン(ドイツのハム)といった食肉加工品などが含まれており、この協定により将来的には新たなGIがリストに追加されていくこととなる。

<関税割当>

EUは、ベトナムからの輸入によってEUの生産者が影響を受ける品目について関税割当を設定することとなった(表2)。

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欧州委員会によると、ベトナムは、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国ではシンガポールに次ぐ2番目の貿易相手国であり、2019年の貿易額は455億ユーロ(5兆7330億円:1ユーロ=126円)に及ぶ。また、EVFTAは、EUとASEAN加盟国との間で締結した貿易協定としては、シンガポールに次ぐ2番目のものとなり、日本、韓国との既存の協定に加え、EUのアジアとの関わりにおいて重要な節目になるとしている。

(国際調査グループ 小林 智也)




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