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海外情報(野菜情報 2020年9月号)


新型コロナウイルス感染症関連の情報

調査情報部


 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。
 (掲載URL: https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは、前号でご紹介したもの以降、7月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

北米

1 (令和2年7月15日付)コロナ禍の影響を受ける外食・食品小売業界(カナダ)

外食動向

カナダ統計局(Statistics Canada)が公表している「Food Services and Drinking Places」によると、2019年の外食売上高は、好景気や人口増加などを背景に、前年比3.5%増の744億カナダドル(兆9551億円:カナダドル=80円)と過去最高を更新した(図1)。

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2019年の外食売上高を業態別に見ると、「レストラン」(注1)、「ファストフード店」(注2)は、年前の2014年と比べて、それぞれ30.8%増、31.2%増と大幅に増加し、全体に占める割合はともに44%(2014年と同水準)となった。また、「ファストフード店」は2015年以降、わずかながら「レストラン」を上回って推移している(図2)。

(注1)主に顧客が着席した状態で食事を注文し、飲食物が座席まで運ばれ、食後に支払いをする事業所。

(注2)主に顧客がカウンターや電話などで食事を注文または商品を選択し、食前に支払いをする事業所。飲食物は、事業所内での飲食または持ち帰りのために引き取られるか、顧客に配達される。

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2020年3月以降、カナダでは他国と同様、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で外出制限、飲食店の営業停止の動きが広がっており、外食売上高は全ての業態で減少している(図3)。本調査によると、事業者の41%が4月の1カ月間完全休業しており、 同年4月の売上高は、外食全体で22億9500万カナダドル(1836億円)と前年同月比61.4%減となった。

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4月の外食売上高を業態別に見ると、「レストラン」は、持ち帰りや配達を中心としたサービスに切り替えた店舗もあったものの、半数近くが完全休業したことから、前年同月比78.1%減となった。「ファストフード店」は、ショッピングモールの営業停止などに伴う完全休業が2割弱に留まったことに加え、営業を継続した店舗での持ち帰りや配達に下支えされたことから、同40.6%減と他業態と比べると売上高の落ち込みが小さかった。「学校給食、事業所給食、仕出し屋など」は、提供先の休校、休業に加え、多くのイベントが取り止めとなり、約半数が完全休業したことから、同74.7%減となった。「酒場(ナイトクラブ、バーなど)」は、持ち帰りや配達を中心としたサービスに切り替えることが難しく、約8割が完全休業したことから、同90.5%減と最も大きな影響を受けた(図)。

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小売動向

カナダ統計局(Statistics Canada)が公表している「Retail trade sales by industry」によると、2019年の小売業全体(非食品を含む)の売上高は、外食と同様、好景気や人口増加などを背景に、前年比1.6%増の6155億カナダドル(49兆2407億円)、うち「食品」(食品・飲料販売店全体)は同2.2%増の1283億カナダドル(10兆2673億円)といずれも過去最高を更新した(図)。

2019年の小売業の売上高を業態別に見ると、「食料品店(スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど)」(以下「食料品店」という)は、年前の2014年と比べて12.7%増加し、全体に占める割合は75%(2014年比1ポイント減)となった。また、「専門食品店(生鮮食品市場など)」(以下「専門食品店」という)は同30.5%増、「アルコール飲料販売店」は同19.3%増となった(図)。

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2020年4月の小売業全体(非食品を含む)の売上高を見ると、非食品部門が不調であったことから、342億7600万カナダドル(2兆7421億円)と前年同月比32.8%減となり、3月(同10.5%減)に続き2カ月連続で前年同月を大きく下回った。本調査によると、4月に一時休業した小売店は全体の約3分の1、平均休業期間は8営業日となっている一方、食品・飲料販売店全体(以下「食品全体」という)で4月に一時休業した小売店は、1割程度に留まっている。

4月の小売業の売上高を業態別に見ると、「食品全体」は、外出制限などによる家庭での食事機会の増加により、前年同月比12.4%増となった。また3月には、「食品全体」に含まれるすべての業態が前年同月を上回ったが、4月には「食料品店」は同17.9%増と大幅に増加した一方、「専門食品店」は同4.8%減、「アルコール飲料販売店」は同4.6%減と前年同月をやや下回り、業態別の差が見られた(図6)。

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参考:海外情報「外食支出額、2019年は過去最高も2020年月以降急落(米国)」(2020年日発)(8月号北米1番の情報)https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002719.html

(国際調査グループ 河村 侑紀)

欧州

1 令和2年7月2日付  EU理事会、生産者および中小事業者向け新型コロナウイルス感染症追加支援措置を採択

欧州連合(EU)理事会は月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する例外的な追加支援措置として、EU各加盟国が、生産者に上限7000ユーロ(85万4000円:1ユーロ=122円)、水産品を除く農畜産物の加工、販売、開発を行う中小事業者に上限5万ユーロ(610万円)の支給を認める規則を採択したと発表した。

今回の措置は、既存の農村開発プログラムの財源を活用し、小売りや市場、外食産業の営業停止などの影響によりCOVID-19被害の大きかった生産者や中小事業者の資金の流動性とキャッシュフローの改善を目的としている。

議長国であるクロアチアのMarija Vuckovic農業大臣は、「COVID-19危機は、EUの結束にとっての大きな試練である」とした上で、「本日採択された措置は、多くの生産者や中小事業者が事業を継続するのに役立つだろう」とした。また、採択に係るEU理事会および欧州議会双方の迅速な対応を評価した。

同規則では各加盟国が、客観的かつ公平な受給資格や要件を定めて受益者や支給額を調整することができる。受給資格や要件の例としては、生産者に関しては生産部門、生産物の販売形態、季節労働者数などが、事業者に関しては事業部門、事業形態などが挙げられている。

補助額は、加盟国ごとに欧州農業農村振興基金(EAFRD:European Agricultural Fund for Rural Development)からの農村開発プログラムへの拠出金総額の最大2%が上限となる。また、支給は、2020年12月31日までに承認された申請に基づき、2021年月30日までに実施される。

今回の措置に関しては、欧州委員会が月30日に提案を採択し、欧州議会における6月19日の投票の結果、生産者向け上限額が5000ユーロ(61万円)から7000ユーロ(85万4000円)に修正された。月24日のEU理事会における採択を受け、同規則は、6月26日付EU官報に掲載され、同日に発効した。

【これまでに採択された対策(EU)】

欧州委員会、新型コロナウイルスの追加対策を採択。乳製品、牛肉などの民間在庫補助(PSA)を日から。チーズは最大10万トン市場隔離へ(海外情報(令和日発))(6月号EU8番の情報)

 https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002692.html

欧州委員会、追加支援措置を採択。新型コロナウイルスの影響下にある生産者のキャッシュフローの改善など(海外情報(令和月21日発))(6月号EU6番の情報

 https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002681.html

欧州委員会、新型コロナウイルス感染拡大に対応する農業・食品部門を引き続き支援(海外情報(令和日発))(6月号EU4番の情報

https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002669.html

(国際調査グループ)

2 令和2年7月22日付  欧州委員会、コロナ禍のトマトの短期的需給見通しを公表(EU)

欧州委員会は2020年7月6日、6月中旬までの入手可能な市場情報に基づき、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって急速に変化する状況や影響などを可能な限り反映した農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。

欧州連合(EU)離脱の移行期間にある英国(注2)を含まないEU加盟27カ国が対象で、英国とは、移行期間終了後に農畜産物の関税や非関税障壁が発生しない現在と同じ状況下にあることを前提としている。

今回、このうちの生鮮および加工用トマトの需給見通しの概要について紹介する。

(注1)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(晩冬、初夏、初秋)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。

(注2)英国は現在、EU離脱(BREXIT)したものの、EU法の適用下の「移行期間」にある。同期間は2020年12月31日に終了予定。

<生鮮および加工用トマト>

2020年の生鮮トマト生産量は、最大の生産国であるスペインで生産者がより収益性の高い温室栽培の他品目に転換し、生産量が減少するため、前年比1.7%減を見込んでいる(表)。スペインとは対照的に、ポーランドの生産量は温室栽培への投資が増加した結果、生鮮トマト生産量は増加する見込みである。他のEU加盟国については、小玉で高付加価値のトマト生産に重点を置いているため収量は減少するものの、冬期の生産期間が延長することにより、全体的に横ばいで推移すると見込んでいる。

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2020年の加工用トマト生産量は、長期的な周期的変動により、同1.3%増加すると見込んでいる。

2020年の生鮮トマトの輸出は、COVID-19対策による物流の問題や輸送コストの増加などのため、1~4月は前年同期比約20%減であったものの、5月以降は力強く推移しており、年間では前年比6.9%減と見込んでいる。

2020年の生鮮トマトの輸入は、増加が続き、同3.0%増と見込んでいる。モロッコが圧倒的な割合(2019年EU輸入量の71%)を占めている一方で、トルコからの輸入(同17%)は、1~4月で前年同期比37%増となった。同期間のモロッコからの輸入量は、COVID-19に関連して物流が困難だったことが大きく影響し、同3%のみの増加であった。

COVID-19対策で外食需要が止まったが、特に大玉トマトの需要が影響を受け、価格が下落した。同時に、小玉トマトの家計消費が増加し、結果的に2020年の生鮮トマトの消費量は前年比0.9%減とわずかな減少を見込んでいる。

欧州委員会は、EU全域において、都市封鎖(ロックダウン)などの厳しい措置が徐々に解除され、夏季休暇期間が始まるとともに、特に外食需要の回復が期待されるものの、予測される景気後退の大きさなどが個人消費にどの程度のマイナスの影響を及ぼすのか、はっきりと見通すことはできないとしている。また、BREXITや英国と他国との貿易交渉の行方は依然として見通すことができず、2020年の生鮮および加工用トマト需給には不確実性が含まれるとしている。

なお、EUは、日本において生鮮トマトの輸入量の約7%を占める一方で、トマト加工品の輸入量の約60%を占める最大の輸入先地域である(図1、図2)。

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(国際調査グループ 小林 智也)

アジア

1 令和2年7月3日付  国内最大規模の卸売市場、新型コロナウイルスにより営業を停止(中国)

現地報道によると、中国北京市にある新発地卸売市場では、市場職員が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症したことが確認されたことを受け、6月13日から営業を停止している。

新発地卸売市場は、総面積121.3ヘクタール、職員数1759人、市場内店舗数5558軒、顧客企業8000社の全国最大取引規模の農畜産物専門卸売市場で、取扱量は北京市の野菜供給量の70%、果物供給量の80%、豚肉供給量の10%、牛・羊肉供給量の3%を占める。同市場の営業停止により、北京市内の生鮮農産物の供給への影響が懸念されている。

これに対し北京市商務局は6月12日にプレスリリースを行い、「北京市の生鮮農産物を取り扱う大部分のスーパーマーケットは自らの供給ルートを持っており、いくつかの大型スーパーマーケットは直営生産および販売を行っているため、新発地卸売市場の営業停止が生活必需品の供給に与える影響は大きくない」旨を表明した。

6月13日の報道によると、カルフール(外資系大型スーパーマーケット)は、「自前の農産物生産基地を持っているが、一部の生鮮野菜・果物、食肉類は新発地卸売市場で購入していた」旨を表明した。一方、京客隆(国内資本大型スーパーマーケット)は、「生鮮農産物は自家生産・販売を行っているので、新発地卸売市場で生鮮農産物を購入する必要はない」旨を公表した。報道時点では、北京の多くの大型スーパーマーケットのうち野菜(一部の葉野菜を除く)の品不足が生じているところは少数で、ばれいしょ、かんしょおよびにんじんなどは豊富にある、とのことであった。

北京市内の市場価格を見ても、13日の新発地卸売市場の営業停止直後において、同市内にある大洋路副産品市場ではセルリーやレタスの価格が高騰したものの、その後は下落基調にある(図1~3)。

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(国際調査グループ 寺西 梨衣)




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