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海外情報(野菜情報 2020年8月号)


新型コロナウイルス感染症関連の情報

調査情報部


 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。
 (掲載URL: https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2020.html
 ここでは、前号でご紹介したもの以降、6月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

北米

1 令和2年6月9日付  外食支出額、2019年は過去最高も2020年2月以降急落(米国)

米国農務省経済調査局(USDAERS)が6月2日に公表した「Food Expenditure」によると、2019年の食品支出額(名目ベース、アルコール飲料を除く)は、家庭内食品支出額が7994億米ドル(863352億円:1米ドル=108円)、家庭外食品(外食)支出額が9694億米ドル(1046952億円)といずれも前年を上回り、過去最高を更新し続けている(図1)。また、物価変動を考慮した実質ベースでも、緩やかながら同様の傾向で推移している。

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2019年の家庭内食品支出額(実質ベース)を業態別に見ると、最も割合の多い「食料品店」は、5年前の2014年と比べて12.6%増加し、全体に占める割合は58%(2014年と同水準)となった(図2)。次いで割合の多い「会員制大型ディスカウントストア、スーパーセンター」は、2014年比で13.6%増加し、全体に占める割合は22%(2014年と同水準)となった。なお、「通販・宅配」は、全体に占める割合が3%と小さいものの、2014年比で36.0%増と増加率が最も高かった。

非食品のディスカウントストアに食品スーパーやドラッグストア等を組み合わせた大型店舗

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2019年の家庭外食品支出額を業態別に見ると、ファストフード店などの「注文・支払がレジカウンターやドライブスルーで行われる飲食店」は、5年前の2014年と比べて24.7%増加し、全体に占める割合は39%(2014年比4ポイント増)となり、最も割合の多い業態となった(図3)。次いで割合の多い「完全なテーブルサービスを提供するレストラン」は、2014年比で9.2%増加したものの、全体に占める割合は35%(同1ポイント減)となり、2番目に多い業態に順位を落とした。

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直近の月別食品支出額(名目ベース)を見ると、2020年1月まではほとんどの月で「家庭外」が「家庭内」を上回っており、外食比率(食品総支出額のうち家庭外食品支出額が占める割合)は50%台前半で推移してきた(図4)。

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米国では他国と同様、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で各州において外出制限の動きが広がったことなどから、2月および3月の「家庭内」の支出額は対前年同月比でそれぞれ7%増、20%増となったものの、「家庭外」の支出額がそれぞれ37%減、50%減と大幅に落ち込んだことから、全体の支出額もそれぞれ16%減少した。この結果、2月の外食比率は38%(前年同月比14ポイント減)、3月は31%(同21ポイント減)となった。5月以降、外出制限を緩和する動きが出てきており、「家庭外」がどの程度の期間でどこまで回復するのか、今後の動向が注視される。

(国際調査グループ 河村 侑紀)

2 令和2年6月9日付  USDAとFDA、新型コロナウイルス感染症拡大が続く中、食料供給チェーンの保護強化に関する覚書を締結(米国)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が続く米国においては、安全で十分な量の食料供給チェーンを確保する方策が講じられているところであるが、米国農務省(USDA)と米国食品医薬品局(FDA)は5月19日、大統領令13917号(注1)を実行するための次の段階として、果物および野菜の加工施設を含むFDAの監督する食料施設の操業停止を防止することを目的とした覚書(注2)を締結したことを発表した。

本覚書には、FDAが行う事項について6項目、USDAについて同3項目、両機関の合意事項について2項目が明記されており、本覚書の発効に伴い、FDAの管轄下にある食品の製造、加工、包装、保管を行う国内食品関連施設および食品の栽培や収穫を行う施設に関して、USDAが(大統領令13917号によって農務長官が大統領から委任された)国防生産法に基づく権限を行使するための手順が作成されることとなる。

本発表では、米国内で栽培された多くの果物や野菜が冷凍施設や缶詰工場に送られる収穫の最盛期を迎えようとしていることから、同覚書によりこれら施設の操業を担保することは重要な取り組みであるとしている。

また、FDAは今後も州や地方の規制当局と協力していくものの、食品供給の継続性を確保するため、必要に応じて国防生産法に基づくさらなる措置が講じられる可能性があり、必要があれば、州、地方などの規制当局や公衆衛生担当部局、産業・産品部門、保健福祉省疾病対策予防センター(CDC)や労働省労働安全衛生庁(OSHA)などの関係者と協議の上、労働者の安全性を確保しつつ、施設の操業再開や維持に向けた道筋を示すとのことである。

さらに本発表では、USDA、FDAのどちらに規制されているかに関わらず、全ての食料・農業部門は極めて重要なインフラであり、労働者の健康と安全に関するCDCとOSHAのガイドラインに準拠して操業を継続することは公衆衛生のために不可欠であるとし、困難な状況下にも関わらず各家庭への食料供給のため毎日業務に携わっている労働者に対し、感謝の意を表している。

注1:COVID-19に関する国家非常事態宣言が適用されている間において、国防生産法(Defense Production Act)に基づき、米国民にたんぱく質を供給し続けるために、牛肉、豚肉、鶏肉の食肉および家きん肉処理場が操業を続けることを命じる大統領令。本大統領令では、農務長官が、食肉および家きん肉処理場以外に、特定の食料供給チェーンの供給源を認定できるとされており、今回の覚書により、USDAの管轄外であるFDAの管轄下の食品施設を認定する際の合意事項が定められた。詳細は海外情報「トランプ大統領、食肉・食鳥処理場の操業継続を命じる大統領令を発出(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002691.html)を参照されたい。

注2:覚書(PDF):Memorandum of Understanding (MOU)(https://www.usda.gov/sites/default/files/documents/mou-between-fda-usda-dpa.pdf

国際調査グループ 藤原琢也)

欧州

1 令和2年6月11日付  EU農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTA交渉が難航していることにリスクが高まっていると懸念を表明。「合意なし」の場合、移行期間の延長、代替案の措置を要求

欧州連合(EU)最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA(注1)、欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe(注2)、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA(注3)の三者は連名で6月4日、英国とEUの第4回交渉終了を前に、これまでの3回の交渉で進展がなかったこと、また、移行期間終了の20201231日までに合意が得られないリスクが高まっているとして懸念を表明した。

三者はプレスリリースの中で、EUの対英国農産物・食品貿易額は、2019年に580億ユーロ(7兆2500億円:1ユーロ=125円)に達しており、関税及び割当数量のない自由貿易協定(FTA)の締結に失敗すれば、EUと英国双方の農産物・食品部門に深刻な影響を及ぼすことになるとした。また、関税導入に加えて関連規制の相違が伴えば、サプライチェーンに著しい混乱を招くとした。

三者は、双方の混乱を限定的にすることに焦点を当てるとし、具体的には、将来のEUと英国の貿易協定において、次のことを確保することが不可欠であるとした。

関税、手数料や課徴金、割当数量を導入しないこと。

EUと英国間の公平な競争条件の確保。EUおよび英国の事業者間の公正な競争を確保するために不可欠なものである

衛生植物検疫(SPS)措置および規格基準に関する高度な協力に加え、その適用の相違を最小限に抑えること。さらに、欧州食品安全機関(EFSA)および英国食品基準庁(FSA)の緊密な関係維持が最も重要である。

税関審査と事業上手続きの負担を軽減するための税関協力

EUおよび英国の事業者のみを優遇しうる効果的な原産地規則

EU単一市場の一貫性を保持するため、アイルランド・北アイルランドに関する協定が確実に実施されること。

将来にわたるEUおよび英国の地理的表示(GI)の相互保護

また、現在は2020年末までの移行期間にあるが、特に貿易協定の締結および批准までの時間が限られていることを懸念し、英国政府が移行期間延長に反対していることに遺憾を示すとともに、移行期間は、事業者らの混乱を回避するため十分な長さを確保すべきであるとした。

そして、移行期間内に FTA 締結ができない場合に備えて、2021年頭から実施することが可能な、代替案の検討を強く要求するとした。関税と割当数量のない自由貿易を維持する必要があるとし、それが、すでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重大な影響に対応している事業者らの混乱を最小限に抑えながら、交渉担当者たちにさらなる時間を与えることになるであろうとした。

三者はプレスリリースの最後で、合意が得られず、移行期間の延長もされない場合、EUの農産物・食品部門にとって、EUから英国への輸出量の大幅な減少、収入の大幅な減少、そして、結果的には雇用の喪失という深刻な問題が起こるであろうとした。また、その影響は、中小企業、生産者、農業協同組合へ特に大きなものになるとし、移行期間の延長有無の判断も含むこれまでの交渉の進捗評価のために、6月中に予定されている首脳級会合の中で今回の懸念が考慮され、交渉プロセスが迅速かつ建設的な方法で進むことを期待しているとした。また、野心的で高いレベルの合意に向け、英国とEUの双方に対し、公平な競争条件を確保し、双方にとって最善の結果をもたらす質の高い成果を達成するための十分な時間を確保することを強く勧奨するとした。

EU離脱協定では本年6月末までの間、双方の合意により1回に限り年から年、移行期間を延長することができる。欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は6月5日、ビデオ会議で行われた今回の交渉を終え、移行期間延長に反対する英国の立場に言及した上で、批准手続きにかかる時間を考慮すれば、本年10月末までに最終合意に達しなければならないとし、移行期間の1年ないし2年の延長の「扉は開かれている」とするEU側の立場を繰り返した。また、交渉における英国の立場が、「公平な競争条件の確保」、「マネーロンダリングおよびテロ活動への資金供与への対策」、「漁業」などの点において、201910月に両者が合意した政治宣言の内容に合致していない点を強く指摘し、これらが主要な論点であると述べている。

注1:欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)とは、EU加盟国の2300万人以上の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および22000農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織されたEU最大の農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。

注2:欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)とは、EU加盟国の29万4000社の事業者と470万人の労働者で構成されるEU最大の食品製造業団体。取引量はEU全農産物の70%を占める。

注3:欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とは、EU加盟国の3万5000社の農産物貿易事業者で構成されるEU団体。穀物、飼料、砂糖、ワイン、食肉、乳製品、青果物、卵、香辛料、切り花などの農産物を対象としている。

(国際調査グループ)

アジア

1 令和2年6月10日付  中国農業展望報告(2020-2029)を発表(中国)

国農業農村部は、2020年4月20日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(20202029)」を発表した。同大会は2014年から毎年開催されており、今回は、2019年の総括と2029年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。

本稿では、2019年における野菜の需給動向ならびに2020年および2029年までの需給見通しについて紹介する。

ア.2019年の動向

2019年の生産量は、前年比2.2%増の7億1889万トンであった。作付面積は2080万ヘクタール(同1.8%増)で、同国の野菜生産は、効率化の進展のもと集約化の傾向にある。

消費量は、同1.8%増の5億3245万トンで、今後も増加傾向で推移すると予測している。輸出入を見ると、輸出量は1163万4000トン(同3.4%増)、輸入量は50万2000トン(同2.2%増)となっており、輸出入量ともに増加した。

全品目の年間平均卸売価格は、冬期の高騰を反映し、過去5カ年平均より9.9%高い1キログラム当たり4.23元(64.7円/kg:元=15.3円。同7.9%高)となった。

イ.2020年の動向予測

2020年の生産量は、前年比1.1%増の7億2661万トンと増加を予測している。春節後は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生により生産地から消費地への輸送制限の影響もあったものの、報告時点(令和2年4月20日)において、状況は回復してきている。

消費量は、同0.4%増の5億3465万トンと予測している。COVID-19の影響による学校給食や社員食堂などの一時的な需要減少のため、消費量の増加は鈍化したものの、感染拡大の収束につれ、徐々に回復すると見込んでいる。

輸出入を見ると、輸出量は引き続き増加傾向で推移すると見込まれ、同3.2%増の1200万トン、輸入量は取扱規模が小さく国内需給への影響は限定的とするも、同10%増の55万トンと予測されている。

価格面においては、2020年第1四半期は、COVID-19の影響により一時的に高騰していたものの、感染拡大が収束するにつれて回復基調となり、夏季から秋季にかけて、通常の水準に落ち着くと見込んでいる。

ウ.2029年までの動向予測

今後約10年間の野菜生産は、人件費などのコスト増の影響を受け、成長速度が緩やかになってはいくものの、栽培技術の発展とともに持続的な成長が維持されるとしている。

2029年の生産量は、7億9648万トンに達し、現状の1.1倍程度までの拡大を予測している。

消費量は、一般消費者の収入面の改善および生活レベルの向上、野菜の加工技術の発展などにより、増加傾向を維持し、2029年には億1598万トンと1.15倍程度にまで拡大すると予測(年間平均成長率:1.6%)している。

輸出入では、貿易黒字の継続を予測し、輸出入量ともに増加していくと見込んでいる。輸入による国内生産への影響は限定的とするも、昨今のCOVID-19発生による世界的な経済混乱もある中で、国内の野菜加工業者の成長・拡大が進み、輸出量は増加していくとしている。2029年には輸出量1544万トン、輸入量60万トンと、それぞれ1.3倍、1.2倍にまで拡大すると予測している。

価格面においては生産コストの増加により緩やかに上昇傾向で推移すると予測されるものの、サプライチェーンの強化により、年内の季節間における価格変動幅は小さくなるとする見解を示している。

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(国際調査グループ 海老沼 一出)




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