調査情報部
4月17日、米国農務省(USDA)は、国家的非常事態である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けている農家や牧場主、消費者を支援するため、190億ドル(2兆710億円:1ドル=109円)のコロナウイルス食料支援プログラム(CFAP)を公表した。
CFAPは、生産者への直接支払いと政府による食品買上げ配給プログラムが2本の柱となっており、コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security (CARES) Act)、ファミリー・ファースト・コロナウイルス対処法(Families First Coronavirus Response Act: FFCRA)およびその他のUSDA既存のプログラムの資金や規則に基づいて実施される。
損失に基づく直接支払い
USDAによれば、このプログラムは、COVID-19によって価格やサプライチェーンが影響を受けた生産者に対し、実際の損失額に基づく直接支援のために160億米ドル(1兆7440億円)を提供し、2020年度に需要の減退や短期的供給過剰が生じる結果として発生する追加的調整や流通コストを補うものである。
ジョン・ホーベン上院議員(ノースダコタ州、共和党)によるプレスリリースによれば、その原資は、CARES Actによる95 億ドル(1兆355億円)、既存の商品信用公社(CCC)基金による65億ドル(7085億円)から拠出される。当支払いは、2020年1月1日から4月15日までに生じた価格低下の85%と、4月15日以降の2四半期に予想される価格低下の30%を生産者に支払うものとなっている。支払限度額は1個人または事業体内で、1品目につき12万5千ドル(1363万円)、全品目合計で25万ドル(2725万円)となっている。支給対象となる品目は、1月から4月の間に5%以上価格が下落したものとされている。
160億ドル(1兆7440億円)の直接支払いの配分は以下の通り。
― 肉用牛部門に51億ドル(5559億円)
― 酪農部門に29億ドル(3161億円)
― 養豚部門に16億ドル(1744億円)
― とうもろこしや小麦等の穀物、大豆等の油糧作物部門(加工品を除く)に39億ドル(4251億円)
― 野菜や果物等の園芸作物部門に21億ドル(2289億円)
― その他の農作物分野に5億ドル(545億円)
また、同議員のプレスリリースによれば、USDAは、直接支払いが迅速に行われるよう5月上旬からの申請開始、5月下旬または6月上旬までに支払い実施を目指しているとのことである。
食品買上げ配給プログラム
当プログラムでは、多くのレストランやホテル、その他のフードサービス等の閉鎖によって労働力に深刻な影響を受けている地域の流通業者と提携し、30億ドル(3270億円)の生鮮青果物、乳製品、食肉を購入するとしている。
生鮮青果物、乳製品、肉製品の三つの分野について、各分野で毎月1億ドル(109億円)の調達規模を見積もっており、その商品は流通業者や卸売業者からフードバンク、地域コミュニティ、宗教団体および非営利団体に供給される。
また、上記の二つのプログラムに加えて、USDAはフードバンクへの食料の配給のために様々な農産物を調達するため、1935年農業法第32条に規定された恒久的歳出予算のうち、8億7330万ドル(952億円)についても活用可能であるとしている。これらの基金の使用方法は、業界の要請、USDAによる農業市場分析およびフードバンクからのニーズによって決定される。
さらに、CARES ActとFFCRAに基づき、フードバンクの運営コストとUSDAによる食料買い上げのために少なくとも8億5千万ドル(927億円)が確保されており、そこから最低でも6億ドル(654億円)がUSDAによる食料買い上げに充てられるとしている。これらの基金の使用方法は、フードバンクからのニーズと商品が入手可能かどうかに基づいて決定される。
今回の発表に合わせて米国農務省のパーデュー長官は、「この国家的危機の状況において、トランプ大統領とUSDAは、米国の農家、牧場主、そしてすべての国民とともにあり、彼らを確実に支える。米国の食料サプライチェーンはこの困難を克服しなければならず、安全、安心、強固な供給網を保ち続ける必要がある。そして、その始まりとなるのは農家や牧場主であることを誰もが知っている。このプログラムは、米国の農家や牧場主のための即時救済を提供するだけでなく、食料を必要としている米国人に豊かな農産物を提供することになる。」と述べている。
(国際調査グループ)
欧州では、イタリアを中心に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が広がっている。欧州連合(EU)の機関である欧州疾病予防管理センター(ECDC)は3月2日、EU市民の新型コロナウイルスのリスクレベルを「普通」から「高い」に引き上げた。同日、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は会見を行い、現状について「ウイルスが広がり続けている」と報告するとともに、27加盟国とEUによる包括的で一致団結した取り組みが求められているとした。その上で、コロナウイルス対策本部を立ち上げ、ECDCなどとの連携を図り、ウイルス撲滅に向けて迅速なアプローチを行っていくとEU市民に説明した。
そのような中、ドイツ政府機関であるドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は2月24日、食品を介して新型コロナウイルスに感染した証拠は現在のところない、と報告した。
また、子供の玩具や衣服などの感染地域からの輸入製品も同様で、それらの乾燥した表面を介しての感染はおこり難いとした。この報告は、同機関に対し寄せられた多くのドイツ国民からの照会に対して応じる形で報告されている。
BfRは、食品や玩具などを介した感染のリスクについて、これまでに感染記録や新型コロナウイルスの環境中での安定性が低いという事実に基づいてこの評価を行ったとしている。
正確な感染経路の把握は不十分であるとするも、最も主要な感染については飛沫感染であるとし、その他接触感染によるものもあるとした。また、環境中の新型コロナウイルスの安定性の低さから、接触感染は汚染後の短期間にのみ起こる可能性も報告している。
「感染しないようにするにはどうしたらよいか」という照会に対しては、食品や玩具や衣類などの製品を介した感染はおこり難いものの、定期的な手洗いなどの日常における衛生対策と、食品を扱う際の衛生面の確保が重要であるとした他、新型コロナウイルスは熱に弱く、食品を加熱することで感染リスクをさらに減らすことができるとした。
(国際調査グループ)
欧州各地にて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るっている。フランスのマクロン大統領は3月16日にテレビ演説を行い、翌17日正午から最低15日間は原則的に市民の外出を禁止するとした。演説の中で、「我々は(新型コロナウイルスとの)戦争状態にある」と現在置かれている状況をフランス国民に強調した。ドイツでも近隣諸国との出入国制限が措置されたほか、ベルギーでも18日正午から外出が禁止されるなど、各国で感染拡大を抑制するための動きが続く。
<食品流通を含む国境管理措置に関するガイドラインを公表>
そのような中、欧州委員会のフォン・デア・ライエン欧州委員長は3月16日、感染拡大を抑制するため、原則として、第三国から欧州連合(EU)への不要不急の渡航を30日間禁止する異例の方針を示し、加盟国首脳は17日、この方針に合意した(参考1)。
また、欧州委員会は16日、欧州における急速な感染拡大を背景として、各国が推し進める国境管理措置に関するガイドライン(参考2)をEU加盟国に通知した。これは、食料や医療機器などの不足を防ぎ、EU単一市場を確保したうえでEU市民の健康を守るためのものである。医療従事者などの渡航の必要のある者には適切な処遇を保障し、家畜を含む食品など生活必需品の物資や、乳幼児・高齢者ケア、公益事業などの生活必需サービスの確保を図る。また、特に食品や医薬品、医療機器など必需品の必要性から、当該貨物輸送については優先レーンを導入することなどを加盟国に求めた。
<食品を介した感染の証拠はないと報告>
欧州食品安全機関(European Food Safety Authority(EFSA))は3月9日、現時点で、食品がウイルスの感染源または感染経路である可能性を示す証拠はないと報告した(参考3、4)。
EFSA担当者は、「同様の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群 (MERS)の発生時に、食品を介した感染は確認されておらず、現時点で、今回の新型コロナウイルスがこの点で異なることを示す証拠はない」とした。また、欧州疾病予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC))によれば、今回のウイルスは人から人への飛沫感染により広がっているとし、世界中の関係者およびEFSA自らも当該ウイルスを監視し続けているものの、食品を介した感染の報告は現時点でないとした。なお、EFSAはイタリア北部のパルマを拠点としており、イタリア政府による移動規制対象地域となっている。
(参考1)COVID-19: Temporary Restriction on Non-Essential Travel to the EU(令和2年3月16日閲覧)
(参考2)COVID-19 Guidelines for border management measures to protect health and ensure the availability of goods and essential services(令和2年3月16日閲覧)
(参考3)Coronavirus: no evidence that food is a source or transmission route(令和2年3月16日閲覧)
https://www.efsa.europa.eu/en/news/coronavirus-no-evidence-food-source-or-transmission-route
(参考4)ドイツ政府機関、食品を介した新型コロナウイルス感染の証拠はないと報告(EU1番の情報)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002666.html
(国際調査グループ)
欧州における生鮮野菜・果物のサプライチェーン全体を代表する団体である欧州生鮮野菜生産協会(FRESHFEL EUROPE)は3月17日、欧州全域で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう中、欧州の生鮮野菜・果物部門は、欧州および世界中の消費者に対し、安全かつ高品質な生鮮野菜・果物を安定供給するための取り組みについて強化しているとプレスリリースを行った。
感染拡大に伴い、家庭消費が増加している中、消費者が新鮮な野菜と果物を安定的に入手でき、健康的でバランスのとれた食事を継続できるようにすることは、同部門の最優先事項であるとしている。
FRESHFEL EUROPEはプレスリリースの中で、欧州各地で国境管理が実施され、青果物のサプライチェーンの一部が遅延していることに言及し、このような中、高品質の青果物の供給維持のため、業界全体であらゆる対策が講じられているとしている。
まず、多くの加盟国で飲食店が閉鎖され、消費者は家庭消費のために小売店で青果物を入手することが多くなっている中、鮮度を保つのが難しい青果物をタイムリーに供給できるよう、青果物輸送の優先ルートを確保するよう政府機関らと協議をしている。これには、トラックや運転手の確保、物流スピードを確保するための協定などが含まれている。また、今後の収穫期に向け、十分な従業員が青果物の収穫や梱包作業などができるよう協議も行なっている。
FRESHFEL EUROPEによれば、欧州のすべての生鮮食品メーカーは、サプライチェーンの労働者を最大限に守るために対策を講じているという。可能なスタッフは在宅勤務とし、スタッフ間の物理的な距離を取り、包装・加工場や卸売市場では最大限の衛生予防措置を取り、トラック運転手については特に輸送を続けるうえで極めて重要なため、他の人と接触しないようにするなどの措置が推し進められている。
欧州食品安全機関(EFSA)により食品を介した感染の証拠はないと報告があったが、FRESHFEL EUROPEはそれとともに、WHOが公表した予防的勧告に従い、食品の取り扱いや調理に際し、衛生的に行動するよう消費者に注意喚起している。具体的には、手を洗うこと、生肉と調理済食品を同じまな板と包丁で処理しないことなどが含まれている。
FRESHFEL EUROPEはプレスリリースの最後で、業界全体のこのような努力が、新型コロナウイルスの感染拡大の状況下でも、消費者が青果物を十分に摂取し、健康的でバランスのとれた食事を続ける一助となっているとした。
(国際調査グループ)
欧州委員会は3月25日、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、食料の安定供給の重要性を改めて示すとともに、極めて厳しい状況に直面している農業および食品部門に対し、すでに措置している支援策の他にも必要があれば追加措置を実行する準備もあるとしてプレスリリースを行った。
欧州委員会は同プレスリリースの中で、生産者らが多くの困難に直面する中、欧州大陸全体における食料安全保障と安定した食料供給体制の確保が、引き続き優先事項のひとつであるという認識を示した。
また、欧州委員会のヤヌシュ・ボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員は、「われわれが前例のない危機に直面している中、生産者らが絶え間なく努力を続けてくれていることに対し、これまで以上に感謝している」とした。そして、欧州連合(EU)各加盟国の農業担当閣僚らと開催した同日のテレビ会議を踏まえ、引き続き各加盟国間の連携を強化し、急激に変化する各国の状況や要望事項などの把握に努め、欧州委員会として必要があれば追加措置を実行する準備があるとした。
EU委員会は農産物市場および食品貿易の動向(需給)を監視し、同委員会の市場観測サイト(注1)を定期的に更新している。
欧州委員会はまた、新型コロナウイルスの発生以降、農業および食品部門に対して次の支援策をすでに措置しているとした。
・共通農業政策(CAP:Common Agricultural Policy)の補助金申請期限延長
2020年5月15日であったCAPの補助金申請期限は、1カ月延長され、6月15日に変更された。当該延長は先行してイタリアで措置され、その後、全加盟国に対しても適用された。
・加盟国による補助の増額
新たに採択された加盟国による暫定的な補助の枠組みにより、生産者1戸当たり最大10万ユーロ(1200万円:1ユーロ=120円)、食品企業は最大80万ユーロ(9600万円)の補助を受けることができる。同補助は、欧州委員会の事前承認なしに加盟国が実施できる、いわゆる「デミニミス」助成(注2)に追加して支出することが可能である。前年に同助成の上限額は2万5000ユーロ(300万円)に引き上げられており、これにより生産者1戸当たりの最大補助額は12万5000ユーロ(1500万円)となる。
・優先レーンによる途切れない食品流通
農産品を含む食品の優先的な流通のため、各加盟国との連携により「グリーンレーン(優先レーン)」を創設し、EU単一市場の機能を担保する。同レーンは、指定の主要国境検問所に設けられ、検査は15分以内に実施される。
欧州委員会はその他、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために各加盟国で国境管理が行われている中、農業部門における必要な季節労働者などの移動が円滑に進むよう症状を示していない労働者に対する強制的な検疫を免除したり、医師による健康証明書を求めないよう手引きを定めるなど、対応を進めている。
注1:欧州委員会は生乳、食肉、砂糖、作物、果樹・野菜、ワインに関する市場観測サイト(EU market observatories)を開設している。生乳、果樹・野菜のサイトについては、「生乳クオータ制度廃止後の需給調整を目的に市場観測サイトを設置」(海外情報(平成26年4月23日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_001020.html
「欧州委員会、需給動向の情報提供を行う果樹・野菜市場観測サイトを開設(EU)」(海外情報(令和元年10月24日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002533.html
をそれぞれ参照されたい。
注2:EU加盟国が農業部門に対して補助をしようとするときは、事前に欧州委員会に通知して認可を受ける必要がある。一方、補助金の総額が充分小さく、域内市場での競争や貿易歪曲的でないとされる場合は、「デミニミス」助成として、この通知や認可の必要がない。各国の補助金総額の上限は、各国の農業生産額の1.0%とされていたが、2019年2月に1.25%(特定の条件では1.5%)に引き上げられた。
(国際調査グループ)
欧州委員会は3月31日、欧州連合(EU)(注)における児童生徒の健康的な食生活を支援するため、2020/2021年度(8月~翌7月)の学校給食用果実・野菜・牛乳供給事業に前年度と同額になる2億5000万ユーロ(297億5000万円:1ユーロ=119円)を措置し、各加盟国への配賦額を決定したと発表した。
本事業は、果実、野菜、牛乳・乳製品の供給だけでなく、児童生徒に対する農業への理解醸成、健康的な食生活の促進などの教育プログラムも対象となり、予算額は、果実および野菜に総額1億4500万ユーロ(172億5500万円)、牛乳・乳製品に総額1億500万ユーロ(124億9500万円)となった。各加盟国は、国独自の予算を追加することも可能である。供給される農産品は、環境に配慮して生産されたもの、季節性のあるもの、地元産であることが基本とされている。
欧州委員会のヤヌシュ・ボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員は同発表の中で、「児童生徒らは同事業により栄養や農業について学ぶことができ、健康的な食習慣も身につけることができる」とした。また、「今年度(2019/2020年度)については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により休校が余儀なくされたことを考慮すべく、対策を講じてある」とした。
欧州委員会は、EU全域での休校の影響に配慮し、学校へ供給されなかった果実、野菜、牛乳・乳製品についても、支払いを行う事は可能とした。供給されなかった青果物・乳製品は、病院、慈善団体、フードバンクなどに寄付することが認められている。
欧州委員会はまた同日、2018/2019年度の同事業の報告書も併せて発表した。それによると、同年度の同事業には、約15万5000校が参加し、2000万人以上の児童生徒が対象となっている。なお、EU予算の1億9200万ユーロ(228億4800万円)により、合計で7万1000キログラムの新鮮な果実と野菜、16万7000キロリットルの牛乳がEUの児童生徒らに供給された。
多くの加盟国で供給されたものとして、生鮮野菜ではにんじん(25カ国)、トマト(22カ国)、きゅうり(19カ国)、乳製品は飲用乳(乳糖を除去したものを含む。28カ国)、プレーンヨーグルト(19カ国)、チーズ類(15カ国)であった。数量ベースでは、飲用乳が16万7858キロリットル、プレーンヨーグルトが9457トン、チーズ類が2116トン供給された。
注:2020/2021年度予算には英国が含まれる。英国は、2020年2月1日にEUを離脱したものの移行期間中にあり、EU法が2020年12月31日まで適用される。
(国際調査グループ)
欧州委員会は4月16 日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により困難な状況にある欧州連合(EU)の農業および食品部門を支援するため、二つの追加支援措置を採択したと発表した。生産者のキャッシュフローの改善と、関係当局および生産者の行政手続負担の軽減が期待されている。
<前払金の増額>
欧州委員会は、生産者へ支払う補助金の前払分を増額するとした。具体的には、EU の共通農業政策(CAP)のうち農業者の収入保障として実施している直接支払いの前払金を現行の50%から70%に、条件不利地域対策などを講じている農村振興政策の前払金を同じく75%から85%に増額する。生産者は10 月中旬から前払金を受け始めることとなる。
また、さらなる条件緩和として、加盟国は現地確認完了前であっても生産者へ前払いすることが可能となる。
<現地確認の軽減>
欧州委員会は、補助金に係る現地確認の数を減らすこととした。本来であれば、加盟国は生産者らの補助金受給要件が満たされているかを確認する必要がある。しかしながら、現在の状況では、生産者と現地確認の検査官の間の物理的な接触を最小限に抑えることが重要となっていることから、現地確認に係る抽出率をCAP予算のうち5%から3%へと減らす。
なお、確認時期についても柔軟な対応を許可した他、これまでの農場訪問の代わりに、衛星画像を活用した農場の活用状況の確認や、位置情報が埋め込まれた写真による調査箇所の証明といった新技術の活用も推奨している。
【欧州委員会のプレスリリース】(令和2年4月17日閲覧)
(国際調査グループ)
<追加対策案>
欧州委員会は4月22日、前例のない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、大きな打撃を受けている欧州連合(EU)の農産物および食品部門を支援するため、追加対策となる例外的措置案を発表した。4月末までの採択を目指す。
欧州委員会のヤヌシュ・ボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員はプレスリリースの中で、農産物および食品分野におけるCOVID-19の脅威はますます強まっているとし、すでに措置したCOVID-19対策に加えて、「迅速な行動を取る」とした。また、提案する例外的措置について、「市場の安定に向けたシグナルを送ることを意図したものであり、将来の価格と生産の安定、ひいては安定した食料供給と食料安全保障を提供するために最も適切なもの」とし、「市場の不安を解消し、速やかに具体的な結果が出てくるものと確信している」とした。
今回発表された例外的措置案は以下のとおり。
○民間在庫補助(Private Storage Aid:PSA)
乳製品(脱脂粉乳、バター、チーズ)および食肉(牛肉、羊肉、山羊肉)を対象とする民間在庫補助の発動。これにより、最低2~3カ月、最長5~6カ月の期間、該当製品を市場から一時的に隔離することができる。この措置により市場供給量が減少し、長期的に市場を再均衡させる。
○柔軟な市場支援事業等の運用
ワイン、青果物、オリーブオイル、養蜂を対象とした市場支援事業、および牛乳・乳製品、青果物を対象とした学校給食事業を柔軟に運用する。これにより、加盟国ごとにあらゆる部門の危機管理措置に向け、資金調達の優先順位の変更が可能となる。
○EU競争法の適用除外
生乳、花き、ばれいしょを対象に、共通市場組織(Common Markets Organisation:CMO)規則第222条に基づく競争法の一部適用除外を認め、事業者が自ら共同で、市場安定対策をとることができるようになる。具体例として、生乳部門が共同で生乳生産を計画することができ、花きおよびばれいしょ部門は共同で市場から製品を撤去することができる。民間事業者による共同保管も認められる。これによる合意や決定は、最長でも6カ月間のみ有効。消費者価格の動向は、悪影響を避けるために注意深く監視される。
欧州委員会は、4月末までの採択を目指して加盟国に諮ることとしており、内容変更には引き続き留意が必要である。関係者によれば、PSAについては(生乳換算ベースではなく)製品ベースで乳製品33万トン、食肉6万1千トンが対象となる見込みであるが、保管期間などこれらの詳細は最終的な採択時に明らかになる。一方で採択を見据え業界団体は、適用対象などのガイドライン公表を開始している。
今回発表された追加対策は、国家補助の増額、前払金の増額、補助金申請期限の延長などの、欧州委員会がCOVID-19対策として早期に採決した包括的な対策に続くものとなっている。
【これまでに公表された対策】
欧州委員会、新型コロナウイルス感染拡大に対応する農業・食品部門を引き続き支援(EU4番の情報)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002669.html
欧州委員会、追加支援措置を採択。新型コロナウイルスの影響下にある生産者のキャッシュフローの改善など(EU6番の情報)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002681.html
<共同声明>
EU加盟の全27カ国の農業大臣は欧州委員会による追加対策案発表の5日前の4月17日、COVID-19による危機に対応すべく、EU共通農業政策(CAP)に基づくEUレベルでの必要な措置がなされるよう、欧州委員会に対し共同声明を提出していた。
共同声明では、公衆衛生上の緊急事態において人々の命と健康が優先すること、危機的状況下における欧州の食料安全保障と食料供給維持のため、生産者と各種農業・食品部門およびこれらに関するCAPの基本的な枠組みが果たす役割が極めて重要であること、将来にはより強力なCAPが必要となることを強調した。
その上で、すべてのEU加盟国に対し連帯と協力を呼びかけ、COVID-19が農業・食品市場に与えたこれまでにない影響に留意しつつ、欧州の生産者、食品産業、農村経済にとって中長期的な影響は深刻かつ長期にわたる可能性を慎重に見据えているとした。
また、すでに欧州委員会が措置した暫定的な国家補助の緩和の枠組みや、国境管理および労働者の自由な移動のためのガイドライン、経済対策であるコロナウイルス対策投資イニシアチブの2つのパッケージ、CAPに関するいくつかの柔軟な対応などこれまでの対策を評価する一方、CAPの下で緊急かつ適切で責任ある措置を追加的に実施する必要性を熟慮しており、加盟国の農業大臣として、欧州委員会に以下の点を促進するよう要請するとした。
・PSAを含むCAPの市場関連制度であるCMO規則に基づく措置の実施。市場の大きな混乱と価格への影響がある部門を守るため、CMO規制第219条・第221条(例外的措置)に基づく生産者に対する支援
・必要に応じてCMO規則に基づく追加措置を講じることができるよう、継続的なあらゆる部門の検査、監視
・CAPの2つの柱(価格・所得政策および農村振興政策)の下、加盟国のさらなる柔軟な対応の即時拡大。具体的には、補助金の早期支払い、すでに措置された前払金(率)の増額、その他農村振興における特定措置の実施や管理システムの有効性を下げない範囲での現地確認や行政手続きの緩和
・強力かつ協調的な欧州の対応の継続。具体的には、COVID-19対応において、欧州の生産者および各種農業・食品部門が極めて重要な役割を果たしていることと同時に、この困難な局面及び将来において、食料安全保障、環境保護、活気ある農村地域の支援のためCAPの強化が必要であることを示していくこと
・欧州の生産者がCOVID-19の危機に加えて、気候変動や生物多様性の損失を含むその他の現在および将来の課題に備えること。
(国際調査グループ)
欧州委員会は5月4日、前例のない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、大きな打撃を受けている欧州連合(EU)の農産物および食品部門を支援するため、4月22日に発表していた例外的市場措置である追加対策を採択したと発表した。
欧州委員会のヤヌシュ・ボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員はプレスリリースの中で、COVID-19の影響により深刻な状況下にある生産者らに対し、「支援に必要な措置をただちに利用できるよう迅速に行動した」とした。また、農業および食品市場が深刻な打撃を受けたことに言及した上で、今回採択されたこれらの措置が「市場に正しいシグナルを送り、ただちに一定の安定をもたらすことを確信している」とした。さらに、欧州委員会は、引き続き関係者や欧州議会、各加盟国と密に連携をとり、状況を注視していくとした。
今回採択された追加対策は以下のとおり。
○民間在庫補助(Private Storage Aid:PSA)(注)
乳製品(脱脂粉乳、バター、チーズ)および食肉(牛肉、羊肉、山羊肉)を対象とする民間在庫補助(PSA)の発動。これにより、最短2~3カ月、最長5~6カ月の期間、該当製品を市場から一時的に隔離することが可能になる。市場供給量を減らし、長期的に市場を再均衡させることが目的で、申請は 5 月 7 日から開始され、終了は乳製品については6月30日まで、食肉については現時点では公表されていない。
隔離のために保管する民間事業者に対し、保管経費の補助が行われ、対象品目ごとの主な要件などは以下のとおり。なお、牛肉については、外食産業の閉鎖により特に需要が低下した、ステーキカット用に仕向けられるヒレやサーロインを含む月齢8カ月以上の生鮮または冷蔵の後四分体に対象が絞られた。また、チーズのみ上限数量を10万トンと示された。なお、各品目に割り当てられたPSAを含めて本対策に係る予算額については、市場を歪める可能性があるとして公表していない。
注:民間在庫補助(PSA)とは、大幅な価格の下落など欧州委員会が必要と認めた場合、一定量を一定期間、市場から隔離するため、在庫として保管する業者に対し、保管経費の補助を行う制度である。
○柔軟な市場支援事業等の運用
ワイン、青果物、オリーブオイル、養蜂を対象とした市場支援事業、および牛乳・乳製品、青果物を対象とした学校給食事業を柔軟に運用する。具体的には、青果物では、実施中の事業変更や一時中止に対する行政上の措置が緩和される。また、学校給食事業では学校が閉鎖されていた期間を補うため、実施期間の9月30日までの延長や、執行額にかかわらず翌年度への繰越が可能になる。
○EU競争法の適用除外
生乳、花き、加工用ばれいしょについて、共通市場組織(Common Markets Organisation:CMO)規則第222条に基づくEU競争法の適用除外が認められ、事業者自ら共同で、市場対策をとることができるようになった。これにより、市場安定のために生産者や関連団体自ら共同で、商品の市場からの隔離、無料配布、共同販売促進、計画生産を行うことが認められる。具体的な例として、生乳部門は共同で生乳生産を計画することができ、花きおよびばれいしょ部門は共同で市場から製品を撤去することができる。民間事業者による共同保管も認められる。
例外適用期間は6カ月間であり、花き、加工用ばれいしょは5月5日から、生乳は4月1日から遡及して適用される。農協などの生産者団体は、生乳生産量の計画等の対策とその結果を加盟国当局に報告し、加盟国は欧州委員会に通知しなければならない。また消費者価格をはじめとして、EU単一市場の機能が損なわれることがないよう注意深く監視される。
なお一部で求められていた生乳減産に対する奨励金支払いは、今回の発表には盛り込まれていない。
【参考(リンク先)】
欧州生乳生産者団体、減産プログラムの実施を要請。新型コロナウイルスの影響により需要減少(海外情報(令和2年4月28日発))
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002686.html
今回採択された追加対策は、国家補助の増額、前払金の増額、補助金申請期限の延長などの、欧州委員会がCOVID-19対策として早期に採択した包括的な対策に続くものとなっている。
また、欧州委員会は今回の追加対策に加えて、EU各加盟国が、EUの共通農業政策(CAP)の第2の柱である農村振興政策の財源である農村振興基金の未使用分により、生産者および中小規模の農業・食品事業者に対し、最大でそれぞれ5000ユーロ(59万5000円:1ユーロ=119円)、5万ユーロ(595万円)の補償を年内に支払うことを可能とする新たな措置を欧州議会、EU理事会に提案するとしている。
【これまでに採択された対策(リンク先)】
欧州委員会、新型コロナウイルス感染拡大に対応する農業・食品部門を引き続き支援(EU4番の情報)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002669.html
欧州委員会、追加支援措置を採択。新型コロナウイルスの影響下にある生産者のキャッシュフローの改善など(EU6番の情報)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002681.html
(国際調査グループ)