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海外情報(野菜情報 2020年5月号)


オランダのばれいしょの生産および輸出動向

調査情報部


 オランダは世界有数の種いもおよび冷凍ばれいしょ(調製されるなどしたばれいしょを含む)の輸出国である。フライドポテトといったばれいしょ加工品の需要が世界的に拡大する中、オランダ産冷凍ばれいしょの輸出量も増加している。生産量のうち、食用ばれいしょは5割程度、残りは種いもおよびでん粉原料用ばれいしょが半々となっている。
 また、日本にとってオランダは、米国、ベルギーに次ぐ第3位の冷凍ばれいしょ輸入先国となっており(2019年)、同国産冷凍ばれいしょの輸入量が増加している。

1 はじめに

オランダの国土は万2000平方キロメートルと九州とほぼ同じ大きさで、そのうちの4割以上となる万8000平方キロメートルが農用地となっている。オランダはライン川下流に位置し、もともと低湿地帯であったため国土の4分の1は海面より低いが、ポルダーと呼ばれる干拓地を造成することにより国土を広げてきた。

このような取り組みにより、オランダはEU第位(2018年)のばれいしょ生産国となり(表1)、世界有数の種いもおよび冷凍ばれいしょの輸出国にもなっている。また、日本にとっては、米国、ベルギーに次ぐ第位(2019年)の冷凍ばれいしょの輸入先国でもある。

今回は、世界および日本のばれいしょ需給に影響を与えるオランダのばれいしょの生産および消費、輸出動向などについて報告する。なお、本稿中の為替レートについては、1ユーロ=121円(2020年3月末TTS相場121.05円)を使用した。

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2 生産動向

(1)生産概要

ばれいしょは、比較的冷涼な気候を好み、オランダ、ベルギー、ドイツ、フランス、英国などの欧州北海周辺国が位置する「ばれいしょベルト(Potato belt)」と呼ばれる地域で栽培されている。オランダは、北海および大西洋の影響を受ける海洋性気候であり、ばれいしょの栽培に適している。

オランダは、EU第4位のばれいしょ生産国である。同国は国土の狭さを不利としながらも、ばれいしょ栽培の機械化、高収量品種の研究開発などによって、高い生産量となっている。

(2)生産量、作付面積、農家戸数

オランダ中央統計局(CBS)によると、2010年から2017年にかけてばれいしょ生産量は、増減はあるものの、650万~740万トンの間で推移していたが、2018年は干ばつに見舞われたことから、前年比18%減の603万トンとなった(表2、図1)。

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また、収穫面積は約15万~17万ヘクタールで推移している(表2、図2)。2018年の収穫面積は16万4973ヘクタールで、内訳は、食用ばれいしょが万6348ヘクタール(収穫面積全体の46.3%)、種いもが万3548ヘクタール(同26.4%)、でん粉原料用ばれいしょが万5077ヘクタール(同27.3%)となった。

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主なばれいしょ生産州は、北部のドレンテ州およびフローニンゲン州、南部の北ブラバント州およびゼーラント州、中部のフレヴォラント州で、上位5州で全体の7割のばれいしょが生産されている(図3、図4、写真1)。

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オランダの農業大学であるワーヘニンゲン大学によれば、2017年の食用ばれいしょ生産者は6965戸、種いも生産者は2366戸、でん粉原料用ばれいしょ生産者は1513戸となっている(表3)。

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(3)植え付けから貯蔵、流通まで

ア 植え付けおよび栽培方法

オランダでは、収穫時期の早い早生種(皮が薄い新ばれいしょの品種)は2月に植え付けられ、6月頃に収穫される(図5)。中早生種は、3月に植え付けられ7月頃に収穫される。中晩生種は、4月に植え付けられ、9月頃に収穫される。晩生種は、5月に植え付けられ、10月頃に収穫される。なお、同国では主に中晩生種および晩生種栽培されている。

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収穫されたばれいしょは、生産者が所有する倉庫に保管され出荷を待つ。なお、オランダのばれいしょ栽培は植え付けから収穫まで機械化が進んでおり、植え付けにはプランター(写真2)を使用することが一般的である。

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オランダは、ばれいしょの品種開発が盛んで、640以上の品種が登録されている(表4)。近年は生食・加工など多様な用途に使用できる品種よりも、特定の用途に特化した付加価値の高い品種の開発や栽培に力が注がれている。

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オランダばれいしょ協会(Nederlandse
Aardappel Organisatie ; NAO)(注1)によると、ファストフード向けの品種としては、品質が均等で加工しやすいイノベータ(Innovator)種が多く栽培されており、レストランなどの外食産業向けの品種としては、ビンチェ(Bintje)種が栽培されているとのことである。

注1:加工輸出業者や種いも関連企業で構成される団体

イ かんがいの利用

オランダはもともと低湿地帯であった国土を干拓によって広げてきたため、水不足の問題よりも多雨による洪水や浸水の対策が優先されてきた。ばれいしょ栽培においてもかんがいは進んでおらず、一部の生産者が少雨の夏に一時的な散水を行う程度となっている。

ワーヘニンゲン大学の報告書「Damage to Dutch agricultural and horticultural crops as a result of the drought in 2018」によれば、2018年に食用ばれいしょ栽培でかんがいが施されたのは作付面積の3分の1であり、3分の2でかんがいが施されていない主な理由は、利用できる水の量が少なかったことや、水の塩分濃度が高かったことなどから、かんがいで利用するのに適した水が十分に得られなかったことが挙げられる。

また、種いも栽培では20%程度となっており、青枯病(brown rot)の感染を防ぐために、地域によってかんがいの利用が禁止されていることが理由に挙げられている。なお、でん粉原料用ばれいしょ栽培では15%程度となっている。

しかしながら、2018年の干ばつでは、前年と比べて2割近く減産しており、近年の気候変動の影響からも、かんがいシステムの設置の重要性が注目されている。保水力に欠ける砂質土壌のばれいしょ栽培においても点滴かんがいの導入が検討されており、ワーヘニンゲン大学などで研究が始まっているが、現時点では試験的な導入にとどまっている。

ウ 収穫および貯蔵方法

収穫はハーベスター(写真3)を使用することが一般的である。収穫後は、日光による変色を防ぐため、倉庫に保管される。収穫作業時に生じた傷の治癒を促進し、表皮の堅固化をはかるキュアリングのため、収穫後の始めの週は倉庫内の温度は高め(15℃)に設定されており、その後、倉庫内の温度は4~7℃まで下げられる。夜間の冷たい外気を利用し倉庫内の換気を行う生産者がいる一方、倉庫に冷房装置を取り付けている生産者もおり、栽培している品種や栽培地域によって状況が異なる。

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近年、オランダでは技術の改善と生産者の知識向上により、ばれいしょの長期的な保存が可能となっている。品種によっては適切な設備条件が整備されていれば収穫から翌年の7月まで保存が可能であるという。

エ 流通

収穫・貯蔵されたばれいしょはパッカー(袋詰めなどを行う流通業者)や加工業者によって買い取られ、必要時に出荷される(図6)。自動選別機によって異物の除去、サイズ分け、洗浄が行われ、比較的大きなサイズのばれいしょは小売店の生食用、小さいサイズは生食用ベビーポテトまたは加工用に仕向けられる。傷んでいるなどして販売できないものは機械によって選別されるが、最終的な確認は目視で行われる。包装形態はばれいしょの用途によってさまざまであるが、機械によって行われる。

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生食用ばれいしょの場合、目視により最終的な確認をし、小売店などのエンドユーザーに合わせて網タイプの袋やプラスチック袋に梱包され、運搬用のプラスチックの容器にまとめられ出荷される。

また、でん粉原料用ばれいしょはグルテンフリーパスタの原材料や接着剤、生分解性プラスチックなどの原料としても使用されている。

(4)生産者販売価格

2015年後半から2017年前半までの間、多雨および洪水に見舞われたことなどにより、生産者販売価格は高い水準で推移した(図7)。また、2017年後半は豊作による供給過多のため同価格は下落したものの、干ばつに見舞われた2018年後半には再び上昇し、同年の平均価格は、100キログラム当たり16.60ユーロ(2009円)となった。

なお、加工業者向けのばれいしょは契約栽培であるため、生産者販売価格には反映されない。

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コラム ばれいしょの販売方法

通常、オランダでの種いもの品種開発や育種、採種栽培は、専門業者や研究開発企業、大学が行っている。その種いもを買い取り増殖栽培を行うのが種いも栽培業者(seed potato grower)である。ばれいしょ生産者は種いもを、種いも栽培業者から直接買い取ることもできるが、大半はパッカーや加工業者、生産者組合、輸出業者などが種いも栽培業者から種いもを買い取り、生産者に提供している。

生産者の主なばれいしょの販売方法は、以下の3つである。

(ア) 直接マーケットや小売店に市場価格で販売する

(イ) 生産者組合を通して販売する

(ウ) 加工業者やパッカーとの契約に基づきばれいしょを栽培し契約先に販売する

(ア)は、ばれいしょの市場価格が上昇している場合は高く売ることができるという利点があり、(イ)および(ウ)は種いもの調達および収穫後の販売先が保証されているためリスクが少ないという利点がある。

業界情報によると、オランダでは、フライドポテトやポテトチップスなどの加工食品用ばれいしょを栽培する農家の約8割は加工業者との契約により栽培を行っているという。近年の契約価格は直径40ミリメートル以上のばれいしょ1キログラム当たり9セント(10.89円)程度となっている。通常、契約栽培でない加工用ばれいしょおよび基準サイズ未満のばれいしょは安価で取引され、2017年はばれいしょの豊作による供給過多のため市場価格は同3セント(3.63円)となった。しかしながら、干ばつの影響により市場価格が上がった2018年8月頃は同30セント(36.3円)で取引され、契約栽培の価格である同9セント(10.89円)を大幅に上回った。

契約栽培は種いもの調達および収穫後の販売が保証されているものの、契約交渉は年の始めに行われるため、生産量の減少および生産コストの上昇といった際に農家の負担が大きくなるという反面を持つ。


(5)ばれいしょ生産をめぐる情勢

ア 種いもの供給体制および品種改良

オランダは種いもの研究開発および輸出が盛んであり、種いも全体のうち7~8割は輸出されている。病害虫や土壌への感染を防ぐため種いもは厳しい管理下および規制のもとで生産されている。オランダの種いも栽培は、主にしょく(cray soil;粘土を多く含む土壌)が広がりアブラムシの影響が少ない沿岸部で行われている。

種いもの認証の際、専門業者および研究開発企業はEUの植物検疫規制およびオランダ国内の規制を守らなくてはならない。オランダでは、オランダ農業・自然・食品品質省(Ministry of Agriculture, Nature and Food Quality)管轄であるオランダ植物防疫所(Plant Protection Service)が植物の検疫の総責任を担い、実際の種子および種いもの検疫検査は、委託を受けたNAK(公的機関による種子および種いもの検疫サービス)が行っている。NAKは種いも検疫検査において主に以下の3つの検査を行っており、これら3段階の検査に合格した場合に種いもとして認証される。なお、EU域外に輸出する場合は、NAKによる追加の輸出検疫検査が行われる。

ア) じょう検査(field inspection)

栽培期間回実施され、種いもの成長具合やかいけいから発生する病気などの検査が行われる。

イ) 収穫後のウイルスおよび細菌検査

EUの規制に基づき青枯病および輪腐病(ring rot)に感染していないかを確認するためのサンプルテストが行われる。

ウ) 出荷前のロット検査(lot inspection)

種いもの重量および大きさ、塊茎病、土壌伝染病の検査が行われる。また、輸出先国の規制に従い病害虫であるシストセンチュウ(potato cyst nematode)の検査も行われる。

ばれいしょの品種開発は種いも専門業者、研究開発企業、大学によって実施されている。国土の狭いオランダでは高収量品種および病害虫に抵抗性のある品種の開発が盛んである。オランダばれいしょ協会によれば、フライドポテトやポテトチップスなどの加工用ばれいしょの品種開発も進んでいるという。オランダの加工用ばれいしょはファストフード業界向けの品種が多く、フライドポテトなどの原料に使われるため、揚げた時の色や形、味などに均一性が求められるので、より加工に適した品種の開発が行われている。

イ 精密農業(注2)の導入

オランダでは、政府、現地企業、ワーヘニンゲン大学により精密農業の導入が進められている。ばれいしょ生産における精密農業の普及率は施設園芸よりも低いが、ワーヘニンゲン大学では精密農業のプロジェクトとしてドローンを駆使した空中撮影写真による土壌窒素よく度の分析プロジェクトを進めている。マルチスペクトルカメラ(注とセンサーを取り付けたドローンでじょうを撮影し、圃場で反射した赤外線をセンサーで読み取り色付けすることでどの区画の土壌に窒素が多く(または少なく)含まれているのか判別できるという。この画像を生かし、生産者は適切な範囲に適切な量を施肥することができ、コスト削減を図るとともに環境への負担を減らすことができる。

注2:農林水産省は、精密農業を「センシング技術や過去のデータに基づくきめ細やかな栽培」としている。なお、センシング技術とは、センサーなどを利用してさまざまな情報を計測・数値化する技術の総称である。

注3:複数の波長帯の電磁波を記録した画像を撮影できるカメラ

ウ 主な病害虫対策

オランダのばれいしょ生産において問題となる病害虫は主にセンチュウとジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)である。オランダばれいしょ協会によれば、病害虫に抵抗性のある品種の開発が進んだことで農薬使用量も減っているという。

シストセンチュウ(ジャガイモシストセンチュウ: Globodera rostochiensis、ジャガイモシロシストセンチュウ: Globodera pallida)などのセンチュウ対策としてオンラインで利用できるサービス「NemaDecide」とよばれる意思決定支援システムがある。ばれいしょ生産者は品種や作付面積などの情報を入力し、土壌のセンチュウ感染予測や感染による収量への影響予測などを知ることができる。また、土壌サンプルを研究所に送ることにより、解析結果をもとに地理情報システムを利用した衛星画像に合わせた感染土壌の確認や専門家による対処方法のアドバイスなどを受けることができる 。

また、オランダではジャガイモ疫病菌への対策として、総合的病害虫管理(IPM : Integrated Pest Management)(注の利用が促されている。近年、ワーヘニンゲン大学ではジャガイモ疫病菌に抵抗性を持つ品種を栽培することによってIPMによる病害虫発生予防や管理をより高めることができるという研究結果を発表している。

注4:総合的病害虫管理とは、病害虫の発生状況に応じて、天敵(生物的防除)や粘着板(物理的防除)などの防除方法を適切に組み合わせ、環境への負荷を低減しつつ、病害虫の発生を抑制する防除技術である。

3 消費動向

(1)消費量など

業界情報によるとオランダのばれいしょ消費量は1960年代頃までは人当たり年間130キログラム程度であったが、パスタや米などの消費量が増えるとともに減少傾向にあり、現在、生食用ばれいしょの人当たりの年間消費量は53キログラム程度、ポテトチップスなどの加工ばれいしょ製品は同28キログラム程度であるという。特に、生食用ばれいしょの消費は減少傾向にあり、調理に手間や時間のかからない加工ばれいしょ製品の消費が増加しているとのことである。

このような中、企業などは有機栽培のばれいしょや関連商品の開発に注力しており、小売店と協力し生食用有機ばれいしょ売り場の拡大のほか、ばれいしょのレシピをパッケージに表示し、健康志向の高い消費者や若い世代にもばれいしょを購入してもらおうと努力している。

オランダでは生食用ばれいしょは網タイプの袋(net bag)に入ったものから、紙袋、プラスチック袋に梱包されているものなど小売店や消費者のニーズに合わせたさまざまな包装がされている。

種いもや加工食品用のばれいしょにおいてはジュートバッグ(jute bag)とよばれる通気性が良く、傷などから保護することのできる袋や段ボール箱、1トン程度が入る大型袋での梱包もある 。

冷凍ばれいしょ商品はフライドポテト、皮ごと乱切りにしたウェッジポテト、スライスポテトや星や顔の形をしたポテト、味付け済みポテトなどさまざまな商品が販売されている。

(2)小売価格

2010年から2018年にかけて冷凍フライドポテトの小売価格は、1キログラム当たり1.1ユーロ(133円)~1.4ユーロ(169円)で推移している。また、生食用ばれいしょも同0.8ユーロ(97円)~1.3ユーロ(157円)で推移している(図8)。

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2017年には業界における格付けの統一および価格情報の発信を目的とした団体であるPotatoNLが設立された。同団体には、つの関連協会(LNCN-Emmeloord、NAO-Rotterdamおよび ZLTO-Goes)とオランダばれいしょ加工産業協会などが参加している。PotatoNLでは週回、全国レベルの価格情報が発信されており、オランダ全体のばれいしょのサプライチェーン強化に貢献している。現在では、同団体には加工協会の他に、生産者および流通業者も代表者を派遣している。

(3)加工用ばれいしょの生産拡大

オランダばれいしょ協会によれば、2016年には約360万トンの食用ばれいしょがフライドポテトなどの食品加工用として使用された 。2017年には390万トンが食品加工用向けとなっており、国内の食用ばれいしょでは供給が追い付かず、ベルギーなどの隣国から輸入し需要を賄っている状況である。加工品の内訳は発表されていないが、7~8割の加工用ばれいしょはフライドポテト製造の原料になっていると考えられる。

なお、世界的な冷凍ばれいしょ製品の需要の高まりを受けて大手食品加工品製造企業は生産能力を拡大する動きがある。

4 輸出動向

(1)輸出概況

オランダは、種いもの世界最大の輸出国であり、冷凍ばれいしょの世界有数の輸出国である(表5)。

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ヨーロッパばれいしょ貿易協会によれば オランダは冷凍フライドポテトにおいて世界の輸出量の大きなシェアを占めているという。オランダは、ファストフード業界向けのクイック・サービス・レストラン(QSR)用フライドポテトの製造およびQSR向け加工食品用ばれいしょの生産に長けているという。

オランダのばれいしょ輸出は増加しており、特に種いもおよび冷凍ばれいしょの輸出が伸びている(表6)。種いも輸出量の増加の背景には、発展途上国でのばれいしょ生産および消費が増えていること、冷凍ばれいしょ輸出量の増加の背景には、食の近代化によるフライドポテトやポテトチップスなどの消費が伸びていることが挙げられる。

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(2)輸出形態別輸出動向

ア 生鮮ばれいしょ

オランダの生鮮ばれいしょ(種いもを除く)の輸出は、年によって増減はあるものの、80万~120万トン程度で推移している(図9)。2018年の輸出量は86万トンとなり、主な輸出先はEU域内ではベルギー、ドイツ、フランスで、3カ国向けの合計輸出量は輸出量全体の59%を占めている。その他の輸出先は、アフリカのモーリタニアなどとなっている。

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隣国のベルギーおよびドイツ向けの輸出が多いが、生鮮ばれいしょはフライドポテトやポテトチップスなどの加工食品の原料用であり、国境近くに位置する加工工場に搬入されていると考えられる。

イ 冷凍ばれいしょ

オランダの冷凍ばれいしょ輸出量は増加傾向で推移している(図10)。2010年の輸出量は142万トンであったが2018年は204万トンまで増加している。

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主な輸出先はEU域内では英国(EU離脱前)、ドイツ、フランス、ベルギーで、2018年の4カ国向けの合計輸出量は輸出量全体の45%を占めている。その他の輸出先は、中東のサウジアラビアなどとなっている。アジア、米国、ロシアなどへの輸出も伸びており、食の近代化および発展途上国の経済成長に伴うファストフードの広がりによりフライドポテトなどの消費量の増加が冷凍ばれいしょの増加につながっているとみられる。

ウ 加工ばれいしょ(冷凍以外)

オランダの加工ばれいしょ(冷凍以外)の輸出量は比較的安定しており、2010~2018年は30万~35万トンで推移している(図11)。2018年の輸出量は31万トンとなった。輸出先は多くがEU域内であり、ドイツ、フランス、ベルギー英国スウェーデンカ国向けの輸出量は輸出量全体の85%を占めている。

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エ 種いも

オランダは、世界第位の種いも輸出国である。2018年の輸出量は93万トン(図12)で、第位のフランス(20万トン)の約倍となっている。

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高収量品種や病害虫に抵抗性のある品種の開発に成功している同国の種いもは、EU域内のみならず中東、南米、北アフリカ、東南アジアにも輸出されている。主な輸出先はベルギー、ドイツ、アルジェリアとなっている。

(3)輸出に要するコスト

ばれいしょの輸出は主に大手生産企業や加工業者によって行われるため、輸出に要するコストに関する情報は公表されていない。しかし、2018年の生鮮ばれいしょの輸出単価と生産者価格を比較するとそれぞれ輸出単価が100キログラム当たり24.30ユーロ (2940円)に対し、生産者価格は同16.60ユーロ (2009円)である。この差額には輸送コストや梱包などの費用が含まれると考えられる。なお、陸続きであるEU域内ではトラックによる輸送が一般的である。海運はロッテルダム港が使用される(図3)。

5 対日輸出動向

(1)対日輸出向け形態

日本はオランダから、フライドポテトなどの冷凍ばれいしょ、マッシュポテトなどの加工ばれいしょ(冷凍以外)、乾燥ばれいしょ、ばれいしょでん粉を輸入している(表7)。日本が輸入するオランダ産ばれいしょのほとんどは冷凍ばれいしょでその内の大半はファストフード店や外食産業向けの冷凍フライドポテトだと考えられる。

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なお、日本は植物防疫法でジャガイモシストセンチュウなどの病害虫が発生している国からの生鮮ばれいしょの輸入を禁じていることから、オランダからの生鮮ばれいしょおよび種いもの輸入はない。

日本は冷凍ばれいしょ(主にフライドポテト)の大半を米国から輸入しており、2019年の米国からの輸入量は輸入量全体の7割以上を占めている。日本のフライドポテトは主にファストフード業界向けであるが、QSR用フライドポテトの製造を強みとしているオランダからの輸入量は増加している。オランダは、ベルギーに次ぐ第3位の輸入先国で、2010年の輸入量はわずか116トン(輸入額1096万円)だったものの、2018年には3万4271トン(同38億円)となった(図13)。なお、オランダからの冷凍ばれいしょの輸入は、加工したもの(調製しまたは保存に適する処理をしたもの。HSコードは200410。)のみとなっている。

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オランダ産の輸入が増加した要因の一つに、2014年末に米国西海岸の港湾で発生した港湾職員のストライキが挙げられる。日本はばれいしょの輸入を主に米国に依存していたが、ストライキが発生した際に日本国内でばれいしょが不足したことを受け、他国からの輸入を検討せざるを得なくなったとみられる。この経験を機に、日本では輸入先を複数確保しようとする動きが見られるようになった。

2019年の加工ばれいしょ(冷凍以外)の輸入の半分強は中国からとなっている。オランダは中国、米国に次ぐ第3位の輸入先国である(図14)

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(2)今後の対日輸出の見通し

2013年以降、オランダからの冷凍ばれいしょの輸入量は急増しており、2018年は米国に次ぐ第2位、2019年は米国、ベルギーに続く第3位の輸入先国となっている。オランダ産冷凍ばれいしょの強みは輸入価格が米国産やベルギー産よりも安いこと(図15)や味や食感が日本産のばれいしょと似ていることが考えられる。また、日EU経済連携協定(日EU・EPA)によりばれいしょ製品の関税が下げられたことも追い風となり、今後も対日輸出量が増加することも予想される(表8)。

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6 おわりに

長期的にみると、オランダ産ばれいしょの生産は安定しており、世界的なばれいしょ需要の高まりに後押しされ今後の輸出量も安定的に推移すると見込まれる。冷凍ばれいしょの日本への輸出は急増しており、その特徴や価格面での強みを生かして今後も増加することが見込まれる。

また、オランダ政府は種いも専門業者や加工ばれいしょ業者といったばれいしょ関連企業と共に、ケニアやバングラデシュ、インドネシアなどの発展途上国でばれいしょの官民連携プロジェクトを実施している。プロジェクトでは、発展途上国でのばれいしょ病害虫の対策指導や品種開発、冷凍加工ばれいしょ製品の消費拡大に向けた市場調査などが実施されている。こうしたことから、今後もオランダのばれいしょ生産や輸出動向が注目される。




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