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海外情報(野菜情報 2020年4月号)


台湾のキャベツ、ほうれんそうの生産・輸出動向について

調査情報部 小林 智也、吉田 由美


 日本では、加工・業務用野菜の需要が拡大しており、原料用の生鮮野菜やそのまま調理に使用できる冷凍野菜の輸入量が増加している。台湾は地理的に近く、備蓄保管の仕組みがあることなどから、カット野菜向け葉茎菜類が不足した際に対応できる数少ない国である。今回の調査では、生鮮キャベツが加工用として輸入された事例に加え、品質面でユーザーから一定の評価を受け、ニーズの高まっている冷凍ほうれんそうの今後の見通しについても報告する。

1 はじめに

日本では、共働き世帯の増加などから総菜などに使用される加工・業務用野菜の需要は拡大している。しかし、加工・業務用野菜の全てを国産で賄うことが困難であることや、作柄による国内卸売価格の変動もあるため、定時、定量、定価格で調達しやすい輸入野菜を扱う動きが増加している。

台湾は、2019年の野菜の輸入先国・地域別シェアで見ると、生鮮で第6位、冷凍で第5位の輸入先であり、日本における輸入野菜の調達先として安定した地位を占めている。

本稿では、台風被害による国産の不作のため一時的に輸入が急増した生鮮キャベツについて、現地の生産および輸出状況、また、需要が増加している冷凍ほうれんそうについては、現地での生産体制をどのように整え、日本国内の要望に応えているのかについて、今後の輸出動向などを含めて2019年11月に実施した現地調査により得られた情報を中心に報告する。

なお、本稿中の為替相場は、1台湾ドル=円(2020年2月末TTS相場:3.038円)を使用した。

2 台湾産野菜の輸入について

(1)日本における台湾からの野菜輸入動向

生鮮野菜の輸入量を見ると、2018年は一時的に増えたがおおむね80万トン程度で傾向で推移している。一方、冷凍野菜は2015年から増加している。(図1、図2)。

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台湾からの輸入について品目別にみると、生鮮野菜では結球レタスが最も多く、次いで、にんじん、ごぼう、キャベツとなっている。冷凍野菜では圧倒的にえだまめが多くいで、ほうれんそうとなっている(図3)。冷凍ほうれんそうは中国産の残留農薬問題を機に台湾産へ大きくシフトした品目であり、日本国内でニーズが高まっている品目でもある

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(2)日本の生鮮キャベツの輸入動向

生鮮キャベツの輸入量は、3~4万トン程度で推移していたが、2018年9万トンと急増した(図4)。2017年秋の長雨や台風被害に加えて生育期間を通じた低温により国産キャベツが小玉傾向となったことから、2018年初期の出荷量が平年を大きく下回り、加工・業務用向けのカット野菜の原料などの供給が不足したため、台湾をはじめとした海外から生鮮キャベツを輸入したことが背景にある。同年の台湾からの輸入量は、前年比で約15倍の6861トンと大幅に増加しているこれを月別にみると、特に卸売価格が急騰した2018年3~4月に多く入荷したことがわかる(図5)。2019年、国産キャベツの供給が潤沢に推移したことから、輸入量は平年並みの698トンに戻った。

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(3)日本の冷凍ほうれんそうの輸入動向

冷凍ほうれんそうの輸入量は、増加傾向で推移しており、2019年については、台湾は中国、イタリアに次ぐ輸入先国となっている(図6)。冷凍ほうれんそうは、家庭でごみが出ないことや調理の手間がかからないなどの利点から、量販店における需要も高まっており、販売金額も増加傾向で推移している(表、写真1、2)。

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3 台湾におけるキャベツおよびほうれんそうの生産状況

(1)生産地域

台湾は、日本の九州地方よりやや小さく、約3万6000平方キロメートルの国土を有し、人口は約2360万人である。国土の中央やや南を北回帰線が通っており、北回帰線以北が亜熱帯気候、以南が熱帯性気候である。国土の中央から東にかけては、南北に山が走っているため、主要農地は北部のたいほく市周辺から南部のたか市周辺にかけての西部沿岸平野部に広がっている。特に、たいちゅう市のやや南に位置するうんりん県は、温暖な気候に加え、面積の9割が平野であることから農業地帯であり、さまざまな品目の野菜が生産されている。

キャベツの主要産地も雲林県をはじめとして、周辺地域のしょう県、県、たいなん市にあり、輸出向け生鮮キャベツも雲林県や彰化県の平野部が産地となっている。

また、調査を行った冷凍ほうれんそうの製造会社によると、原料用ほうれんそうの産地もキャベツと同様、主産地は雲林県や嘉義県となっている(図7)。

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(2)作付面積、収穫量の推移

キャベツの作付面積は、2016年以降、8000ヘクタールを超えて安定していたが、2018年は減少した。台中農業改良普及場注)によると国内の需要減っていることが背景にあるという(図8)。一方、収穫量は、技術向上による単収の改善により増えている

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ほうれんそうの作付面積は、2011年をピークに減少傾向で、2000ヘクタールを下回って推移し収穫量おおむね作付面積に連動して推移している(図9)。

(注)日本の農林水産省に当たる行政院農業委員会に所属する農業試験場

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(3)キャベツの作型と品種の動向

キャベツの生産に関しては国内向けと対日輸出向けでは品種や産地が異なっている。

キャベツの基本的な作型は、育苗期間が1カ月、定植後2カ月で収穫というサイクルである。台湾では年間を通じてキャベツが生産されているが、生産量が多いのは、しゅが9~12月、定植が10~翌1月、収穫が12~翌3月の作型である(図10)。なお、8~10月は高冷地と平地の移行時期であり、価格が不安定になりやすい。

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国内向け品種は60年以上、栽培されている初秋が80%以上を占める。耐暑性があり、葉が柔らかく、炒め物に向いている。

先端部分が尖った形状が特徴で、高冷キャベツとして平地栽培のものよりも高値で取引されている(写真3)冷涼な気候を好み、産地はなんとう県やらん県などの高地であるが、昨今の気候変動の影響で栽培適地の高度がどんどん高くなっており、冬場でもチップバーン(葉先が黒くなる生理障害)が発生することが増えている。

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一方、対日輸出向けのキャベツは、加工・業務用向けの品種で台湾国内でも餃子の具材として使用される。形状は扁平で、硬く結球した寒玉系である(写真4)産地は雲林県、彰化県などの平地である。寒玉系は、日本でサラダで好まれる千切りキャベツやカット野菜などの加工・業務用に向いている。品種は大蕊いもるが中心で、国内向け品種と比較して栽培期間は長い。

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キャベツ苗の生産は専門業者が行うのが通例で、苗のまま長期保管できることもキャベツ栽培の長所である。

なお、台湾はキャベツを生食する習慣がなく、寒玉系は好まれないため、大蕊の栽培面積に占める割合は5%以下である。また、通年にわたり輸出されるシンガポール、カナダ、香港向けキャベツ中華圏の消費者向けであり、同様の理由から品種は初秋である

(4)ほうれんそうの作型と品種の動向

温暖な台湾では、ほうれんそうの栽培期間は限定的で収穫は12~3月が中心となる(図11)。冬季は栽培期間が長く、大株に仕立てたい加工用には都合がよい。青果向け品種は「西せいいちごう」が多く、日本のほうれんそうよりも茎が長い(写真5)。一方、冷凍ほうれんそう用の栽培品種である「トライ」は青果向けと比較して葉が大きいのが特徴である。冷凍ほうれんそうの製造では、葉と茎の割合が重要となるため、葉のボリュームが必要となる。

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(5)加工・輸出企業の生産物確保体制

キャベツ、ほうれんそうともに主な加工・輸出企業が生産物を確保するための体制には、(ア)加工・輸出企業が、自身で農場を管理して生産するものと、(イ)加工・輸出企業が、地域の生産者をまとめている大規模な生産者と契約を交わした後、生産されたキャベツ、ほうれんそうを企業の工場に納品するものの2つがある。

コラム1 台湾における農産物の認証マーク制度

台湾では、近年、有機農産物の人気が高まっている。実際、今回の調査で訪問した量販店でも有機農産物の販売コーナーが設けられていた(コラム1-写真1)。

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現在、台湾では、農産物生産および認証管理法に基づき、農産物に対して3つの認証マークがあり、それぞれで認証内容が異なる。

(1)有機農産品マーク

 化学肥料、化学農薬の不使用などの有機基準を満たし、国内の有機認証機関による検査に合格した農産品に使用され、有機食品として販売されるものに添付できる(コラム1-図1)。

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(2)CAS(Certified Agricultural Standards、優良農産品)マーク

 台湾独自の認証マークであり、主要原料が台湾産であることに加え、衛生・安全条件、品質・規格および包装表示に適合するものに添付できる(コラム1-図2)。

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(3)TAP(Traceable Agriculture Products)マーク

 台湾適正農業規範(Taiwan Good Agricultural Practice:TGAP)とトレーサビリティシステムを組み合わせて、食品安全を確保するために生産、販売履歴が追跡できるものに添付できる(コラム1-図3)。

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さらに、消費者は、インターネットやQRコードを読み込むことにより農産物毎の各認証マークの公開情報などにアクセスすることが出来る。

なお、今回の調査では、TAPマークを上回る基準を設定した独自の農産物の品質基準を掲げて販売している外資系量販店もみられた(コラム1-写真2)。

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4 台湾の野菜流通および対策

(1)台湾の野菜の流通経路

生産者が野菜を出荷する方法には、自ら卸売市場または小売業者などの需要者に出荷する方法または農会系統や合作社などを通す方法がある(図12)

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農会系統とは日本の農業協同組合に当たる組織であり、信用事業、共済事業、経済事業なども行っている。農会系統の主な出荷先は各地域にある卸売市場となっている。

合作社は生産者が集団で生産・販売するために各地で設立される経営体であり、日本における農事組合法人に近いものである。合作社では、卸売市場を経由せずに直接需要者に出荷することが多い。

台湾の野菜・果物の卸売市場(以下「卸売市場」という)は全国に46カ所あり、地方自治体などが開設し、運営を農会系統や合作社などの農協系組織または民間企業が行っている。卸売市場は全土に分布しているが、中部の彰化県、南投県、雲林県など、農業地帯に多くある一方で、多くの人口を有する台北市内の卸売市場はわずかつであるこのうち、台北第一市場は台湾最大の取扱量を誇り、消費地に最も近い流通拠点として大きな役割を果たしている。

なお、卸売市場における取引方法は、競りが約3割、相対取引が約7割となっている。日々の卸売市場価格はインターネットで公表されており、生産者と合作社との契約価格の目安となっている。

(2)台湾の野菜価格高騰対策

台湾では、台風シーズンに当たる5~10月にかけてキャベツ、ばれいしょ、たまねぎ、にんじん、はくさいの価格が高騰する傾向にあり、需給調整のため備蓄業務が行われている(図13)。この業務は、①政府から、合作社や加工業者に一定程度の在庫量を持つよう指示、価格高騰時に政府から合作社や加工業者に在庫として備蓄していた野菜を卸売市場に出荷するよう指示、合作社や加工業者が卸売市場に出荷-という流れで行われ、卸売市場における取引量の安定を図っている。

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なお、政府は在庫の保管経費の補助(倉庫保管料、電気代など1カ月当たり1.5台湾ドル(4.5円)/1キログラム)を実施している。

台湾での備蓄業務で保管されている品目は、はくさい、にんじん、にんにく、しいたけ、キャベツなどである。キャベツは、貯蔵に向く加工・業務用向けの寒玉系なので、2018年のように日本から急な注文があった場合にも、輸出の対応が可能である。

(3)野菜生産に関する政策

野菜の生産者に対する支援策としては、(ア)稲作から園芸品目への転作支援、(イ)小規模農家の集団化への支援、(ウ)ローンなどの資金援助-などがあり、このうち、小規模農家の集団化への支援では、集団化することにより、農薬防除の基準や規格の統一化などが期待されている。台湾行政院農業委員会によると輸出に特化した政策はないが、今後、輸出品目として力を入れていくキャベツ、ブロッコリー、さやいんげんなどでは、集団化に係るコストについて支援をしていく模様である。

コラム2 新たな輸出品目としてのさやいんげんの開発

現在、台湾の野菜における輸出品目はキャベツ、にんじん、えだまめが主力となっているが、今後はキャベツ、ブロッコリー、さやいんげんに力を入れていきたいとの声が聞かれた。特にさやいんげんは、日本において冷凍野菜の需要があることから、積極的に市場開拓に取り組んでいる。

今回、調査した台中区農業改良普及場は、台中市を含む中部地区を管轄する改良普及場であり、管理部門を除く業務を行う課として作物改良課、作物環境課、農業普及課の3課で構成されている。作物改良課には、野菜の育種を行っている研究室があり、今般、加工用向け矮性いんげんの新品種「台中6号」を開発した(コラム2-写真)。

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「台中6号」は9月~翌2月までの栽培期間で、収穫までの期間は播種後55~65日、1ヘクタール当たりの収量は8~10トンである。また、機械収穫が可能であり、現在輸出の主力品目であるえだまめの収穫機を代用出来るのが大きな利点である。

現在、日本に向けて輸出試験も開始しており、今後、台湾産冷凍さやいんげんが日本で見られる日も近いかもしれない。

5 台湾の生鮮キャベツおよび冷凍ほうれんそうの輸出状況

(1)輸出量の推移

ア 生鮮キャベツ

台湾では、以前から生鮮キャベツを輸出していたが、多くが日本向けであり、日本の需要により輸出量左右されてきた(図14)。日本以外の輸出先としては、カナダ、シンガポールなど中華圏の人口が多い地域となり、葉の柔らかい品種である初秋が好まれている。台中農業改良普及場によると、今後の動向としては、カナダ向けは増加すると見ているものの、シンガポール向けは中国競合になると見ている。なお、2018年に急増したのは、先述したとおり、日本で2017年の秋の天候不順と台風の影響により、1~3月にかけて日本向けが増加したためである(図6)。

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イ 冷凍ほうれんそう

台湾冷凍ほうれんそう大部分が日本向けで、2011年以降は減少傾向で推移している(図15)。冷凍ほうれんそうの生産には、原料の洗浄・加工などの工程で多くの手間が掛か、人手が必要であるため、2002年の残留農薬問題以前は人件費の安い中国が日本向けのシェアを握っていた。

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台湾は中国に代わる冷凍ほうれんそうの産地として輸出量を伸ばしその品質の高さから日本国内でも安定した市場を築いてきたが製造できる企業限られていることから、今後の大幅な増加は見込めないのが現状である

(2)輸出企業の概要

今回、日本へ生鮮キャベツ、冷凍ほうれんそうを輸出する主要企業を訪問する機会を得たので、その概要及び今後の動向について紹介する。

ア.北斗合作農場

北斗合作農場は、台湾中部の彰化県に本社を置く生鮮野菜のカット加工・輸出企業である。

創業は1997年で、国内向けと輸出向けの加工用野菜を取り扱っている。じょうで収穫作業などに従事する従業員が約40名、工場で洗浄、選別、包装などに従事する従業員が約40名おり、主な取り扱い品目は、にんじん、キャベツ、たまねぎである(写真)。栽培面積は、約250ヘクタールであり、うち約160ヘクタールは同社が自ら栽培管理をしているが、残りの約90ヘクタールは契約農家が栽培管理をしている。

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契約農家との仕入れ価格は、市場価格を元に決定しているが、市場価格が高騰した時には、契約金額に上乗せして支払うなど、契約農家が意欲を持って仕事に取り組むことにより、品質が落ちないようにしている。

なお、国内向けのキャベツは、台湾最大手の餃子チェーンに卸している。

日本への生鮮野菜の輸出は10年前から冷凍餃子の具材として、ちんげんさい、キャベツ、はくさいで行っていたが、現在は、キャベツとにんじんを輸出している。

対日輸出向けキャベツは、国内の加工用向けと同じ寒玉系品種となっている。(写真

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代表者の話によると、キャベツの対日輸出は、政府の支援もあり行ったものの、価格の安い中国産には対抗するのがなかなか難しい。また、2018年に日本向けに輸出したものの、2019年は、日本国内の卸売価格が低迷していることから日本から注文が全くないため、継続的に輸出を行えないのであれば、非常に残念なことであるとの声も聞かれた。

日本向け輸出の輸送日数は、会社からコンテナに荷物を積んでから、高雄港から船舶で日本へ到着するまで5日程度であるが、出荷前にキャベツの葉をいた状態にすると高雄港での検疫の検査期間が短くなり、最短で日本へ3日程度で輸送できる。現在の輸出先はシンガポールと日本、そして香港となっており、香港向けは洗浄が必要ないという点でメリットを感じている。

.宏偉冷凍食品株式会社

宏偉冷凍食品株式会社は、台湾南部の屏東県に本社を置く冷凍ほうれんそうの加工・輸出企業である(写真)。2002年に冷凍野菜関連製品工場として創業し、現在は対日輸出向け冷凍野菜の製造が主要な事業であり、主な製造品目は、冷凍ほうれんそうのほか、冷凍えだまめ、冷凍マンゴーである。2018年の冷凍ほうれんそうの製造量は約1500トン程度で、うち1216トンを日本に輸出している(台湾の日本向け冷凍ほうれんそうの輸出量全体の約9割を占める)ほか、国内向けにも販売をしている。

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同社では、冷凍ほうれんそうと冷凍えだまめを工場の同じラインで製造しており、同時には加工が出来ない。そのため、原料供給の時期が重ならないように契約農家に生産させている(図16)。

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同社での冷凍ほうれんそうの原料供給の流れは図17のとおりである。

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同社では、農場主と専業契約で原料供給を依頼するため、最初に取引先(日本の輸入商社)との契約を行い、販売計画数量を決定する。輸入商社との契約は、年1回で、原料用ほうれんそうの播種時期の1カ月前に当たる9月末までに行うのが通常である。この時期に契約を行うのは、ほうれんそうの産地である嘉義県、雲林県で、ばれいしょと圃場が競合するので、栽培面積を確保するためである。

契約に応じて、原料の栽培計画を農場主に指示し、各圃場で栽培している。

現在、播種、施肥、農薬散布は機械で行っているが、収穫については、枯葉などを取り除く必要があるため、手作業で行う必要がある(写真10、11)。

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なお、栽培期間中に使用できる農薬や肥料は同社でリストを作成し、生産者に供給し、顧客とも共有している。また、2週間に1回使用量と保管状況を確認しており、問題が発生した場合に対応できるようにしている。

収穫は、朝に行い、圃場から製造工場へは農場主が手配したトラックで原料を搬入する。製造工場に搬入後は、前処理を行い、カット、ブランチング(加熱処理)、急速冷凍、製品包装を行った後、異物混入がないか確認し、冷凍庫にてマイナス18以下で保管される(写真12、13)。

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冷凍ほうれんそうは、製造の前処理に人手が必要で、同社では製造時には300名の人手が必要となる。多くの人手が必要となるため、他社での製造は難しいとのことである。

カットの規格は、5センチのみで、市販用は200グラム、250グラム、300グラム、業務用は500キログラム、1キログラムと重量を変えている。凍結方法は主にIQF(個別急速冷凍)で行われており、製品の中身は葉が6割、茎が4割となるように調整しているため、原料からの製品の歩留まり率は35~40%である。

日本への輸出は、毎月の輸入商社からの出荷指示により行われている。現在、3社の海運会社と契約しており、出航日は水、木、金である。日本への輸送日数は、最短で3日、遅くとも6日となっている。

同社では、原料から製品まで追跡履歴が可能なトレーサビリティシステムを導入し、日本側から問い合わせがあった際には、圃場まで特定できるようにしている。

今後の動向は、現在、同社の製造能力は、最大で年間1800トンであるため、これ以上の製造には機械設備の増設が必要とのことである。また、収穫および加工の前処理についても、機械化が出来ずに人手が必要なため、今後の対日輸出も現状では大幅な増加は見込めない状況である。

6 おわりに

台湾冷凍えだまめは、日本市場において中国と人件費で、タイとは関税率の違い(日タイ経済連携協定により冷凍野菜は無税)により冷凍野菜から来る価格面などで不利な状況にありながらも、TGAPの導入など生産管理で高い信頼性を獲得し、重要な地位を築いてきた。現在、たまねぎ、キャベツ、レタス、いんげん、ブロッコリー、にんじんについて輸出を視野に入れて研究を行っている。

また、台湾にはばれいしょ、たまねぎ、にんじん、はくさい、キャベツといった国民生活に欠くことのできない野菜について不足に備えた備蓄義務があり、特にキャベツについては水餃子などの加工用として40年以上に渡り、この仕組みが活用されている。この仕組みがあることで、日本において加工・業務用向けキャベツが不足した際に調達先として活用された実績もある。しかし、輸出量は日本の需要に左右される部分が大きく、輸出業者も安定的な取引が出来ないことを不満に思うなど、今後の輸に対しては持続的な取引を求める声も聞かれた

一方、冷凍ほうれんそうは、日本の需要は増加しているものの、新鮮な野菜が通年、入手できる台湾では加工野菜に対する消費者ニーズがそれ程、高くない。そのため、台湾における消費増を望めず、輸出企業の生産能力も限界に近づいているため、現時点での輸出量の大幅な増加は見込めない。しかし、圃場の収穫作業などの機械化が進むことで、製造コストが低下すれば、新たな設備投資の可能性もあることから今後の動向に注視していく必要がある。




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