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海外情報(野菜情報 2020年3月号)


中国における野菜(にんにく、にんじん)の生産および輸出動向

調査情報部


 中国は、日本における輸入生鮮野菜の65%(2018年数量ベース)を占めるなど、主要な輸入元の一つとなっている。
 今月号では、輸入量の大部分を中国産が占めているにんにく、にんじんについて、現地の野菜生産・輸出企業に対する聞き取りなどを基に、主産地の生産および輸出動向を報告する。

1.にんにく

(1)日本における中国産にんにくの位置付け

2018年の日本のにんにくの作付面積は、2470ヘクタール(前年比1.6%増)、収穫量は2万200トン(同2.4%減)となっている。一方、同年の生鮮にんにくの輸入量は2万1869トン(同4.6%増)となっている(図1)。

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同年の生鮮にんにくの輸入量のうち、9割以上が中国産で、次いでスペイン産となっている。中国産の月別の輸入量は、1200トンから2300トンの幅で変動し、特に8月を中心に夏場に多い傾向にある。輸入単価は、1キログラム当たり170~230円の間で変動しており、夏場は下がるが、200円を境に1~6月は上回り、~12月は下回る傾向がある(図2)。

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(2)生産動向

ア 中国におけるにんにくの産地

中国における対日輸出用にんにくの主な産地は、さんとう省、なん省、こう省、せん省およびうんなん省となっている。山東省における主な産地は、さいねい市、りん市である(注)(図3)。

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今回は、主産地である山東省の生産動向を、現在対日輸出も行っている輸出企業数社からの聞き取り情報を中心に紹介する。

注:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっており、とりあげている市はすべて地級市である。

イ 山東省における生産動向(植え付け、収穫時期)とコスト

山東省で日本向けにんにくを取り扱っている2社への聞き取りの概要は以下のとおりである(表1、図4)。

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社(せいなん市)

2002年に設立された従業員300名の企業である。全輸出量における日本向けの割合は数量ベースで1%である。日本へは、自社農場で生産したものを収穫、もしくは農家から買い付けたものを自社の加工工場で顧客の要望に合わせて加工し輸出している(図5、写真1、写真2)。日本以外に東南アジアやヨーロッパにも輸出している。自社農場の2019年収穫分の作柄は良く、生産量は増加する見込みである。栽培管理は、中国良好農業規範認証(以下、「CGAP」という)の基準に沿って行われている。生産コストについては、人件費の上昇により前年比5%増となっている。

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(イ)B社(済寧市)

2014年に創業した従業員80名の企業である。全輸出量に占める日本向けの割合は数量ベースで15%となっている。社ではにんにくの生産はしておらず、近隣の農家から買い付けを行い、自社工場で加工後に輸出している(写真3、4)。なお、産地での収穫から日本への出荷の流れは、(ア)と同様である。

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(3)輸出動向

中国のにんにく輸出は、生鮮のほか、乾燥や酢調製品などさまざまな形態で行われているが、その大半を生鮮品が占めている。生鮮にんにく輸出量は2016年に収穫量の減少に伴う価格の高騰から一時的に減少したが、その後回復している(図6)。2018年は前年比10.1%増の188万3922トンとなった。

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主な輸出先国は、インドネシア、ベトナム、マレーシアなど東南アジア諸国が中心で、全体の輸出量の6割近くを占めている。日本向けは、全体の輸出量の1%程度とわずかであり、日本にとって中国は最大の輸入先国であるものの、中国側から見ると、日本はそれほど大きな市場とはなっていない。

ア 聞き取り各社の動向

A社は今シーズン東南アジアやヨーロッパからの注文の増加により輸出量は増加するものの、対日輸出量は前年並みとみている。輸出先との契約は、販売価格が相場により毎年異なるので、長期契約ではなく、スポットで注文があるたびに契約を締結している。

B社はブラジルからの注文により近年輸出量は増加傾向で推移しているが、今シーズンは前年並みと見込んでいる。しかし、対日輸出量は日本からの注文減少により、前年から5%減少とみている。輸出先との契約は、A社と同様に長期契約ではなく、スポットで注文があるたびに契約を締結している。

なお、両社ともに対日輸出価格については、中国国内の作付面積が減少し、国内価格が上昇したため、輸出向けに買い付けられる量が少なくなることから、5~10%の上昇を見込んでいる。

イ 今後の見込み

中国国内のにんにくの生育は平年並みとなっている。3月までは2019年産の冷蔵もの、4月以降は2020年産が出荷されるが、新型コロナウィルスの影響で山東省では経済活動の自粛が続いており、今後の価格動向や輸出状況については見通せず、国内の需給への影響も注視する必要がある。

2.にんじん

(1)日本における中国産にんじんの位置付け

2018年の日本のにんじんの作付面積は、1万7200ヘクタール(前年比3.9%減)、収穫量は57万4700トン(同3.7%減)となっている。一方、同年の生鮮にんじんの輸入量は11万579トン(同25.7%増)となっている(図7)。

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同年の輸入量のうち9割弱を中国産が占めており、中国産の輸入量と輸入単価を月別にみると、毎月、5千トン以上が輸入されており、なかでも9月以降に数量は多くなった。輸入単価は、年明けは高くなっていたものの、年末にかけて下落し、12月には1キログラム当たり40円を下回った(図8)。

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(2)生産動向

ア 中国におけるにんじんの産地

中国における対日輸出用にんじんの主な産地は、ふっけん省、山東省のほかほく省、内モンゴル自治区および雲南省となっている。福建省における主な産地は、もい市、せんしゅう市、しょうしゅう市である今回は、現在、収穫時期にあたる福建省の生産動向を対日輸出も行っている輸出企業数社からの聞き取り情報を中心に紹介する。(図9)。

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イ 福建省における生産動向(播種、収穫時期)とコスト

福建省で日本向けにんじんを取り扱っている2社への聞き取りの概要は以下の通りである(表2、図10)。

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社(厦門市)

2007年に創業した従業員90名の企業である。全輸出量に占める日本向けの割合は数量ベースで10%である。日本へは、収穫後、自社の加工工場で顧客の要望に合わせて加工し輸出している(図11、写真5、6)。日本以外では韓国、タイ、マレーシアへの輸出割合が高い。2020年収穫分の作柄は順調であり、生産量は平年並みの見込みである。主な栽培品種は、形が良く、色が鮮やかなのが特徴の「三紅」である。栽培管理は、CGAPの基準に沿って行っている。生産コストについては、人件費の上昇により前年比3~5%増となっている。

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社(厦門市)

2003年に創業した従業員100名の企業である。全輸出量に占める日本向けの割合は数量ベースで20%である。産地での収穫から日本への輸出の流れは、(ア)と同様である。日本以外の輸出先としては、韓国向けの割合は30%となっている。2020年収穫分の作柄は良いものの、栽培面積が減少したことから生産量は減少の見込みである。主な栽培品種は、C社と同様に「三紅」でる。生産コストについては、前年並みとなっている。

(3)輸出動向

中国の生鮮にんじん輸出量は、増加傾向で推移しており、2018年は前年比2.3%増の73万4863トンである(図12)。

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主な輸出先は日本、ベトナム、韓国、タイ、マレーシアとなっている。日本向けは、全体の輸出量の2割弱を占め第1位となる一方で、ベトナムも日本と変わらない割合を占めている。2018年の日本向け輸出量は、日本国内の卸売価格の高騰もあり、前年比32.8%増の11万4080トンと増加していたことから中国の最大の輸出先国となっている。

ア 聞き取り各社の動向

C社は韓国の注文減少に伴い輸出量は減少を見込んでいるものの、対日輸出量は前年並みの見込みである。輸出先との契約は、販売価格が変動するため、長期契約ではなく注文があるたびに契約を締結している。

D社は生産量の減少と日本からの注文の減少に伴い、輸出量および対日輸出量も減少すると見込んでいる。輸出先との契約は、長期契約ではなく注文があるたびに契約を締結している。

なお、調査時点では両社ともに対日輸出価格については、中国国内の生産量が増加し、国内価格が低下しているため、前年から下落すると見込んでいる。

イ 今後の見込み

中国国内のにんじんの輸出主要産地である福建省では港湾や税関が稼働しているものの、新型コロナウィルスの感染拡大が広がれば、他の地域と同様に工場労働者やトラック運転手の確保が難しくなり、経済活動への影響が出る可能性も否定できない。

なお、台風の影響で冬にんじんの主産地である千葉産などの出荷量は減収したが、3月には回復する見込みであり、さらに出荷が本格化する徳島県の春にんじんは生育が良好なことから、順調な供給が見込まれる。




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