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日本が輸入するながいもの多くは中国産であることから、今月号では、中国のながいもの生産動向等を主産地の山東省および河南省を中心に紹介する。
最近における日本のながいも輸入量の推移を見ると、生鮮品に関しては、2014年に大幅に減少した後、回復傾向にあったものの、2018年は再び減少し、前年比29.1%減の550トンとなった。一方、冷凍品に関しては、生鮮品に比べ輸入量は比較的安定して推移しており、2018年はほぼ前年並みの696トンとなった(図1)。
輸入先を国別に見ると、生鮮品、冷凍品ともに中国産とベトナム産で占められており、特に、冷凍品については、そのほとんどが中国産となっている。
また、中国産ながいもの輸入状況を月別に見ると、年によって傾向は異なるが、2018年は、生鮮品および冷凍品ともに上半期の方が下半期よりも輸入量が多かった(図2)。輸入価格は、生鮮品については、月により産地や品種、ブランドなどが異なることから、1キログラム当たり500~1500円と変動が激しい一方、冷凍品は1年を通して同350円前後で安定的に推移した。
なお、本稿中の為替レートは、1元=17円(2019年2月末日TTS相場:16.91円)を使用した。
ながいもは、中国の伝統的な農作物に位置付けられており、チベット地域を除く中国各地で生産されている。特に、生産が盛んな地域としては、山東省、河南省、広西チワン族自治区、江蘇省、河北省、山西省などが挙げられる(図3)。中国全土でのながいも作付面積は、約28万ヘクタールとされており、その中でも、作付面積が最大である山東省と第2位の河南省について、最近の生産動向などを紹介する。
(ア)主産地
山東省は、中国のながいも生産の最大産地となっており、2018/19年度の作付面積は5万2800ヘクタールで、中国全体の約2割を占めている。山東省の中で、特に生産が盛んな地域は、菏澤市、済寧市、潍坊市、青島市(注1)などが挙げられる(図4)。菏澤市は、同省のながいも生産の中心地帯で、生産される品種は、「鉄棍山薬(注2)」と日本原産の「白玉山薬」となっている。また、済寧市では、現地特有品種である「細長毛山薬」が生産されている。
注1:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっており、菏澤市、済寧市、潍坊市、青島市は地級市である。
注2:中国では、ながいもを「山薬」という。
(イ)作型および生育ステージ
山東省のながいも生産の作型は、ほとんどが露地栽培で、生育ステージは、4月上中旬に種いもを植え付け、9月下旬~翌4月下旬に収穫される(図5)。主な品種は、作付面積の約5割を占める「鉄棍山薬」と同3割を占める「白玉山薬」が主体である。
「鉄棍山薬」の特徴は、食感が良く、また、販売価格は高いものの、単収は低い。一方、「白玉山薬」は日本原産で、耐寒性があり、単収が高い点が特徴として挙げられる。
(ウ)生産動向
近年の山東省のながいも生産動向を見ると、2014~16年度は、相場が高水準で推移したため、農家の生産意欲が高まり、作付面積が拡大した(表1)。
この間、農家の収益性が高かったことから、出稼ぎ労働者が故郷に戻って、新たにながいもを生産するケースや、新たに農地を借り入れ、積極的に規模拡大を図るケースも見られ、増産を後押しした。単収は10アール当たり2.6~2.7トンとほぼ安定したことから、収穫量は増大した。
この結果、2017年始めには、ながいも市場は供給過剰に陥り、価格の急落を招いた。ながいもの生産コストは比較的高いため、価格低落により、農家の損失は甚大なものとなり、農家の生産意欲は大幅に低下した。このため、2017年度の作付面積は前年度比20%減となり、収穫量も2割以上の減産となった。
供給量の減少により、2018年度の価格は回復し、同年度の作付面積は10%程度回復することが見込まれている。しかし、夏の大雨による洪水被害により、単収の低下が見込まれ、生産量は前年度並みと予測されている。
(エ)生産コスト
山東省の10アール当たり生産コストの動向を見ると、2018年度は1万4820元(25万1940円、2015年度比10.1%増)と、わずかに増加した(表2)。項目別に見ると、近年の中国の野菜経営で常態化している土地代と人件費の増加が見られる。種苗費は、主に前年のながいも価格の影響を受けて変動するが、2018年度は2015年度に比べ、ながいも価格が安かったため、大幅な減少となった。
(オ)卸売価格の動向
山東省の卸売価格を見ると、近年、消費者の健康志向の高まりを反映し、漢方薬としても利用されるながいも需要が増加したことから、2016年までは比較的高い水準で推移した(図6)。これに伴い、生産者の作付け意欲が高まり、生産量が増加した結果、2017年は、供給過多となり価格は低下した。2018年は、1キログラム当たり4元台で推移しており、比較的安定している。
(カ)国内向け出荷動向
山東省で収穫されたながいもの大部分は国内消費に向けられ、一部が輸出に向けられている。国内の主な出荷先は、上海、武漢、広州などである。
山東省で生産されるながいもは、これまで調理用食材として出荷されるものが主体であったが、近年は、薬用などの加工用途も徐々に増加している。また、山東省は主要な生産地域であるだけでなく、加工工場や輸出企業の多くが所在しており、流通の拠点ともなっている(写真1~3)。また、中国のながいも輸出量の約8割は、山東省から輸出されている。
他の野菜においても、山東省が生産・加工・流通の拠点を形成しており、このことが河南省よりも山東省のながいも生産の有利な点となっている。
(ア)主産地
河南省は、山東省に次ぐ、中国で2番目のながいも産地となっており、2018年度の作付面積は、3万ヘクタールで中国全体の1割強を占めている。省内の主産地は、商丘市、焦作市、南陽市(注3)などである。中でも、商丘市が同省最大の産地となっている(図7)。生産される品種は、「鉄棍山薬」で、国内向けがほとんどで、北京、天津、広東、浙江、福建などへ供給されている。
供給量の約95%は調理用食材に仕向けられるほか、残りの5%程度は漢方薬や健康食品などに仕向けられている。
なお、河南省のながいも農家は、他の省と比べ零細農家が多く、価格が低迷した場合でも、自家保留し冷蔵保存する習慣がなく、安価でも売り切る傾向が強いと言われている。
注3:商丘市、焦作市、南陽市は地級市である。
(イ)作型および生育ステージ
河南省のながいも生産の作型は、山東省同様、ほとんどが露地栽培である。また、生育ステージは、4月上旬~5月下旬に植え付け、10月上旬~翌2月下旬に収穫される(図8)。主な品種は「鉄棍山薬」である。
なお、河南省の主力品種の「鉄棍山薬」は連作障害を引き起こしやすい品種とされており、小麦やにんにくなどとの輪作によって生産されるが、農家によっては、ながいもの作付けは5~10年に1度というケースもある。
(ウ)生産動向
河南省のながいも生産は、コスト上昇と相場変動による不安定さから、農家は、ながいもからにんにくや小麦など、相対的に収益性の高い作物への転換が進んでいる。そのため、ながいもの作付面積は、2005年度の約6万ヘクタールをピークに、減少傾向で推移している(表3)。しかし、2014年度頃に消費者の間で「鉄棍山薬」の人気が高まり、相場が高騰したことから、河南省のみならず江蘇省や河北省などでも「鉄棍山薬」の作付けが急拡大した。この結果、供給量が急増し、2016年度以降、価格低落を招いた。
2018年度の作付面積は、前年度を3.2%下回る3万ヘクタールと、ピーク時の半減となり、収穫量も前年度を4.0%下回る48万トンと見込まれている。
なお、2018年度の河南省のながいも卸売価格は、3年連続の生産減と需要増から再び、高騰している。
(エ)国内向け出荷動向
河南省で収穫されたながいもは、ほぼ全量が国内に仕向けられており、北京や天津のほか、浙江省、福建省、広東省などの南部の都市へ出荷されることが多い。また、河南省では、山東省と比べ流通拠点の整備が遅れていたが、最近では生産者が自らウェブサイトを開設し、インターネットにより直接実需者と取引するケースも増え、その市場規模は年々増加しつつある。
ながいもは、中国では山薬と呼ばれ、滋養強壮の漢方薬としても利用されており、消費者の間で広く健康に良い食品と認識されている。
主に、ながいもは、家庭料理の材料として、スープや炒め物などで食されている。
最近は、中国の消費者においても健康に対する関心の高まりを反映し、漢方薬以外の健康食品などで、ながいもを原料とした製品が開発されている。中でも、小包装のながいも乾燥エキスの製品は、消費者の支持を一定程度得ているようである。このように薬用など健康食品として使用されるながいもの割合は、それほど大きくはないが、そのシェアは年々上昇している。
ながいもは生鮮品または冷凍品などとして輸出される。近年は、2016年に1万トンを超えたものの、基本的には8000トン前後で推移している(図9)。輸出されるながいもの約8割は、主産地であり、加工・輸出企業が集中した山東省とされている。
輸出先国別では、2016年までは香港向けが最も多かったが、2017年以降は大幅に減少している。
2018年の輸出実績を見ると、日本向けは米国、マレーシア向けに次ぐ第3位で、全体の13%のシェアを占めている。日本向けの輸出は、主に山東省で生産・加工されたものが主体で、品種は日本原産の「白玉山薬」がメインとなっている。業界関係者によると、日本向けについては、価格は魅力的であるものの、規格や安全性などの基準が厳しく、加工時のロスが相対的に多いため、一部の加工・輸出企業は、日本への輸出に対し、消極的であるとされている。
米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州の生産動向などを、現地報道などを基に報告する。また、トピックスとして、ウォルマートが進めているブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステムの概要について報告する。
1月中旬、モントレー郡サリナスバレーなどで低温多雨の影響により供給量の減少が予想されたことから、市況は上昇した。2月上旬、気温の上昇により、カリフォルニア州産ブロッコリーの供給量は増加し、品質は良好であった。メキシコ産やアリゾナ州ユマ産の一部では、引き続き低温と多雨の影響を受けた。
なお、本稿中のドルはすべて米ドルであり、為替レートは1ドル=112円(2019年2月末日TTS相場:111.87円)を使用した。
2018年11月の全米のブロッコリーの生産者価格は、前年同月比28.9%高の1キログラム当たり1.56ドル(175円)であった(表1)。需要が堅調であったことから前月から価格が上昇した。
2018年11月の米国産ブロッコリーの日本向け輸出量は904トンとなり、前年同月比39.2%減となった(表2)。また、輸出額は前年同月比28.1%減の128万3000ドル(1億4370万円)となった。輸出単価は前年同月比18.3%高の1キログラム当たり1.42ドル(159円)であった。天候に恵まれ、日本産ブロッコリーの生育が良好であったことから、輸入量は減少したものとみられている。
2018年11月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比9.1%減の50トンであった(表3)。また、平均卸売価格は、同14.2%安の1キログラム当たり338円であり、同月に同市場で最も入荷量の多かった埼玉県産(同315円)と比較すると7.3%高かった。
1月中旬、低温で降雨が多かったため、モントレー郡サリナスバレーなどで結球レタスやその他のレタスの供給は減少した。低温の影響により品質は悪化した。1月末から2月上旬にかけて気温の上昇に伴い一部で品質の回復が見られたが、その後低温や降雨に見舞われたことから2月中旬まで葉の黄変など品質に影響が出ていた。
2018年11月の全米の結球レタスの生産者価格は、供給が少ない中、ロメインレタスなどからの需要の移行により、前年同月の約3倍を上回る1キログラム当たり1.69ドル(189円)となった(表4)。
2018年11月の米国の日本向けレタス輸出量は結球、結球以外ともに前年同月を大幅に下回った。結球レタスは前年同月比53.0%減の211トン、結球レタス以外のレタスは同96.6%減の19トンであった(表5、表6)。また、輸出額は、結球レタス、結球レタス以外のレタスともに大幅に減少し、それぞれ同19.4%減の42万8000米ドル(4793万6000円)、同96.7%減の3万3000米ドル(369万6000円)となった。
また、輸出単価は、結球レタスが前年同月比72.0%高の1キログラム当たり2.03ドル(227円)であった一方、結球レタス以外のレタスは同3.4%安の同1.70ドル(190円)であった。
2018年11月、東京都中央卸売市場の米国産結球レタスの入荷量は、前年同月比6.5倍の13トンとなった(表7)。また、平均卸売価格は、前年同月の約4倍となる1キログラム当たり322円となった。これは、同月に同市場で最も入荷量が多かった茨城県産(133円)と比較すると、約2.5倍高かった。
同月、同市場における結球レタス以外のレタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷はなかった。
1月中旬以降、低温および多雨の影響により、カリフォルニア産など主要産地の供給量が減少し、品質は悪化した。2月上旬、気温の上昇に伴いサイズは大きくなってきたものの、供給量は引き続き少なかった。供給量の減少により価格は高値で推移した。
2018年11月の全米の生鮮セルリーの生産者価格は、供給量がわずかに減少傾向となった中、需要が増加したことなどから、前年同月を3.1%上回る1キログラム当たり0.67ドル(75 円)となった(表8)。
2018年11月の米国産セルリーの日本向け輸出量は、前年同月比4.6%増の565トンであった(表9)。また、輸出額は、同27.8%増の43万2000米ドル(4838万4000円)となった。輸出単価は、同20.6%高の1キログラム当たり0.76ドル(85円)となった。
2018年11月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は、前年同月並みの25トンであった(表10)。また、平均卸売価格は、同9.5%安の1キログラム当たり199円であった。これは、同月に同市場で最も入荷量の多かった静岡県産(同228円)と比較すると、12.7%安かった。
世界最大の小売業者であるウォルマートは、ブロックチェーン技術を活用したレタスなど葉物野菜の食品トレーサビリティシステムを、2019年9月までに導入することを目指していることを発表した。ブロックチェーンは、「分散型台帳」とも言われ、安全性の高さや運用コストの安価さなどが特徴であり、仮想通貨などに用いられる技術である。
同社によると、生産者に対して、2019年9月までのシステム導入を求めている。このトレーサビリティシステムの導入により、食品を農場から店舗までリアルタイムで追跡可能になることを目指しており、産地が明記されていない袋サラダなどについても、生産された農場を迅速かつ正確に特定できるようになる。同社は、2017年にスライスマンゴーにおいて、その生産農場を追跡する実験を行ったところ、従来の方式ではメキシコに存在する農場を特定するのに7日を要したが、ブロックチェーン技術を利用することにより数秒で追跡することができたとして、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステムの優位性を指摘している。
なお、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステムである「フード・トラスト(Food Trust)」は、ウォルマートのほか、ネスレ、ドール、クローガーなど大手企業10社とIBMが共同開発し、2018年10月8日に正式に立ち上げられた。