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海外情報(野菜情報 2019年3月号)


主要国の野菜の生産動向等


1 中国(しょうが)

 日本が輸入するしょうがの8割弱が中国産であることから、今月号では、中国のしょうがの生産動向等を主産地の山東省を中心に紹介する。

2017年の日本のしょうが供給量の約4割は国産品で、残りの6割を輸入品が占めている(図1)。小売向けの生鮮品が中心の国内産と異なり、輸入品はさまざまな形態があり、それぞれが一定の割合を占めている(表1)。「塩蔵等」には、がりや紅しょうがの原料として貯蔵・加工に適するよう塊茎のみの状態で塩漬けしたもの、「酢調製」には、がり、「その他調製」には、チューブ入りしょうがの原料、「乾燥」には、チップや粉末状のしょうがの原料などが該当する。

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類別の輸入量を見ると、いずれも中国は主要な輸入先となっており、塩蔵等はタイから輸入量が多い(表1)。

なお、本稿中の為替レートは1元=17円(2019年1月末日TTS相場:1元=16.55円)を使用した。

(2)生産動向

ア 主な主産地

中国におけるしょうがの主な産地は、さんとう省、ほく省、なん省、りょうねい省などとなっている。特に全国のおよそ3分の1の作付面積を誇る山東省の生産動向などを今回は紹介する。

山東省における主な産地は、ぼう市、えんたい市、ちんたお市などである(図2)。近年、しょうがの作付面積は拡大しており、ここ3年間は高い成長率を示している(表2)。これは、しょうがは地下の貯蔵庫などで保存が可能で、生産者や流通業者は相場に応じた出荷調整ができ、価格も安定しているためである。このため、他の品目に比べ農家の作付意欲は高い。

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2018年の作付面積は8万2000ヘクタール(前年比19.7%増)、生産量は310万トン(同22.5%減)となった。生産量が減少した要因は、2018年8月の記録的な豪雨により、しょうが農家のじょうが水没し、生育中のしょうがが深刻な被害を受けたためである(写真1)。特に野菜の一大産地である濰坊市の野菜農家の経済的な損失は大きかった。

注:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっており、坊市は地級市、昌邑市は県級市である。

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イ 植え付けおよび収穫時期と品種

山東省の栽培形態別の割合は約90%が露地栽培、約10%がハウス栽培である。ハウス栽培は、露地栽培より収穫を1カ月程度早く出来るため、当該年産の露地しょうがの出荷前に販売でき、単収も露地栽培と比べ10~15%程度高い。

露地栽培は、主に4月上旬に種しょうがを植え付け、主に10月に収穫する(図3)。地域や天候の状況によって、植え付けおよび収穫時期は、前後する場合もある。

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品種は、山東省が開発した「面姜」が同省の作付面積の80%以上を占めている。「面姜」の特徴は塊茎が大きく多収であり、日本向けにもこの品種が使われている。その他、「小黄姜」が栽培されている。通常、農家は前年に収穫したものを種しょうがとして使用する。

現地の専門家によると、しょうがの植え付けや収穫作業は基本的に手作業で行われており、中には植え付け機や掘取機を使用する者もいるが、その割合は小さいという。これは、農作業機械が不足しているほか、掘取りの際にしょうがを傷つけ商品価値を低下させたくないため、農家が機械の使用を望んでいないことなどの理由が挙げられる。

(3)しょうが生産における主な費用

山東省の濰坊市しょうゆうしょうが生産における主な費用は、地代種苗代、肥料代、人件費などである。農業地は、農業地を保有している者から賃借しているが、経済環境の変化に応じて地代が年々上昇している。人件費についても毎年の最低賃金の引き上げにより上昇している。通常、植え付けと収穫の際に一時的に労働者を雇用するため、経営に及ぼす影響は大きい。

(4)国内向け出荷動向

山東省で収穫された9割弱が国内向けに、残りの1割が輸出に向けられている。2018年は、収穫量310万トンのうち、国内向けが270万トン(シェア87.1%)、輸出向けが40万トン(同12.9%)となった(表)。国内向けの約2割は、卸売業者の冷蔵倉庫や地下貯蔵庫などで保存され、翌年販売される。

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国内向けは、省内の主要都市のほか、北京、天津、上海などの大都市にも出荷されている(写真2、3)。

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中国では、しょうがは調味料として利用されており、生鮮品の需要に年を通して大きな変動はないが、漬け物、しょうが茶、缶詰などの加工品の需要は増加している。

(5)輸出

ア 輸出動向

中国のしょうが輸出量は、2014年は大きく減少したものの、ここ3年間は40万トン以上で推移している。2017年は前年比15.5%減の454510トンとなった(図)。

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国別では、米国、パキスタン、オランダなどへの輸出量が多く、日本へは毎年一定数量が輸出されている。ただし、酢調製品のデータを入手できないため、日本向けの加工品を含めた全体の輸出量を把握することはできない。

80カ国以上の国に輸出されている。輸出先国は基本的に変化していないが、欧米、中東、東南アジア諸国への輸出量が微増している。

複数の企業への聞き取りによると、近年、山東省から日本へのしょうが輸出量は小幅ながら低下している。これは、日本側の加工技術を要する製品への要求が厳しいため、受注量が減少したことが主な原因であるとしている。

イ 日本向け企業の事例

日照市通達食品有限公司は、山東省においてしょうがの加工と輸出を行っている企業である(写真4~7)。しょうがの年間加工処理能力は1万トン程度、冷蔵倉庫を10棟保有し、その貯蔵能力は4700トンである。同社で製造される生鮮しょうがのほとんどが日本に輸出されている。原材料は、河北省、遼寧省の契約農家にて有機栽培された「面姜」しょうがを使用している。

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最近の課題は人件費が上昇していることであり、2015年は1人日当たり100元(1700円)であったが、2018年には同200元(3400円)まで上昇しているとのことである。

2 米国

 米国における政府系機関閉鎖の影響を受け、米国農務省による統計の公表が部分的に延期されたことから、本号ではカリフォルニア州の生鮮青果物輸送について報告する。

カリフォルニア州の生鮮青果物輸送について

(1)はじめに

今日、カリフォルニア州産の生鮮青果物は日本をはじめとする世界各地に輸出されているところだが、無論、米国においても同州は生鮮青果物の最大の供給元である。しかし、国土が広大な米国において、鮮度が求められる生鮮青果物の輸送は時として困難を伴うケースさえあるといわれる。従って、同州の生鮮青果産業には、効率的かつ競争力のある輸送システムを維持するという課題が常にあると言っても過言では無いだろう。以下、本稿ではカリフォルニア州の国内市場における生鮮青果物の輸送状況について、競合産地との比較などを交えて報告する。

(2)生鮮青果物の輸送手段

米国の生鮮青果物の陸上輸送手段において中心的な役割を果たしているのはトラックである。米国農務省農業マーケティングサービス(USDA/AMS)の輸送に関するレポートによると、米国内での輸送手段の割合はトラックが95%と圧倒的に多くなっている(図1参照)。また鉄道が3%で、ピギーバック(注1)は2%となっている。

注1:鉄道による貨物輸送の形態の一つで、貨物を積んだトラックやコンテナを載せたトレーラーを、そのまま専用の貨車に載せて目的地まで輸送する手段。

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この傾向はカリフォルニア州でも同様で、同州の輸送手段シェアをみると、トラックは92%と圧倒的で、鉄道とピギーバックは4%ずつとなっている(図2)。

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(3) 生鮮青果物の手段別の輸送先および数量

カリフォルニア州の生鮮青果物のうち、セルリーと結球レタスの輸送先とその数量をみると、いずれもトラックによって各地にくまなく運ばれている一方、鉄道輸送では、バルチモア、ボストン、シカゴ、ニューヨーク、フィラデルフィアといった鉄道のハブである地域など、限られた地域への輸送となっている(表1、図3)。

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(4) カリフォルニア州の優位性(セルリーを例に)

米国においてセルリーの生産は、カリフォルニア州とミシガン州といった主産地の他、アリゾナ州やフロリダ州でも行われており、国内セルリー需要は基本的に産地リレーによって賄われている。ただし、ユーザーは調達にあたり、輸送コストに生産コストを加算した納入コストで比較し売買契約を結ぶと考えられる。

この点に関して、米国西海岸に位置するカリフォルニア州は、距離に比例する輸送コストの面では特段の優位性があるとはいえない。しかし、同州は生産規模や周年生産可能という点から、生産コスト面で価格優位性を持つことができ、結果的に納入コストにおいて他の産地に対して大きな優位性があると考えられる。

セルリー需給において、カリフォルニア州は他の3州(ミシガン州、アリゾナ州、フロリダ州)の合計生産量の9倍の生産量を誇る。このため、他3州が、輸送コストにおいてカリフォルニア州よりも優位性を持っていた場合であっても、需要を満たすのに十分な供給ができていないのが現状である。したがって、この不足を補うには、カリフォルニア州産の供給が不可欠となっている。

また、カリフォルニア州以外の3州は周年での供給ができない。セルリーが1年中スーパーやレストランで食べることができる現代では、周年供給できる生産力は他の生産州よりも大きなアドバンテージがあるといえる。特に、大都市圏の大部分は米国の東側に位置しており、カリフォルニア州が他の州よりも輸送コスト面にデメリットを抱えているとされながらも、生産規模や周年供給能力から、同州を中心とした供給ラインを確保することが必要となっている。

(5) 今後の課題

今般、輸送業界は複数の課題を抱えており、それは生鮮青果物輸送の場合でも例外ではない。以下に示すのは代表的な課題である。

ア 環境規制への対応

カリフォルニア州では多くの農産物がトラックを使い、各地に運ばれているが、その過程で排出される二酸化炭素は環境を悪化させる可能性がある。したがって、ウォルマートのような主要で大口の需要者は、供給者にカーボンフットプリント(二酸化炭素の排出量)の測定やカーボン・ディスクロージャー・プロジェクトのような測定機関への報告を奨励する方向にあり、これらへの対応はさらなるコスト増につながる場合がある。

イ 渋滞状況

既存の高速道路インフラの能力の限界、特にトラックによる移動は将来的に課題となるとみられている。カリフォルニア州の主要路線は渋滞が多く発生しており、混雑によって3~4時間程度の遅延が頻発しているとされる。したがってトラック運送会社にかかるコスト増大および運転手の労働環境の悪化といった問題が今後影響を及ぼす可能性が考えられる。このため、一部の民間企業は高速道路の混雑が輸送効率に与える影響を調査し、以下に挙げる一連の推奨事項を提案している。

①車線の追加や、大型トラックでの輸送を許可することにより、物理的な高速道路容量を増加させる。

②トラック専用車線を建設する。

③交通需要を分散させる。

(6)おわりに

カリフォルニア州の生鮮青果物輸送は、納入コスト面に加え、生産能力が大きく周年生産が可能という点に競争優位性があるといえる。一方、同州の生鮮青果物輸送はトラック輸送への依存が高いことから、環境問題や渋滞などの課題を抱えており、将来的に対応していく必要があるとされている。




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