調査情報部
わが国のキャベツ供給量のうち、輸入品の占める割合は2%で、そのほとんどを中国産が占めている。今月号では、中国の主産地の一つであり、日本向けの輸出が多い山東省を中心に、キャベツの生産動向等を紹介する。
2016年におけるわが国のキャベツの供給量は、147万トンとほぼ国産品が占めており、輸入品の割合は低い。(図1)。そのほとんどが生鮮品となっている。
2012年以降のキャベツ(生鮮)の輸入量を見ると、2万4000~3万5000トンの間で推移している(図2)。2017年は、秋以降の台風や天候不順の影響を受け国内供給量が減少したことなどから、3万8190トン(前年比60.9%増)と大きく増加した。国別に見ると、中国が94%を占めており、次に韓国となっている。なお、生鮮、冷凍とも、主に加工原料用に仕向けられている。
本稿中の為替レートは1元=17円(2018年5月末日TTS相場:17.29円)を使用した。
中国全土のキャベツの作付面積は約30万ヘクタールとされ、主な産地は山東省、河北省、河南省、湖北省および江蘇省である(図3)。中でも山東省の作付面積は、全国の15%を占めており、日本にも輸出されている。山東省では、青島市と臨沂市(注)の2市で同省の生産量の約4割を占めている。両地域の気温は年間を通して14度前後と冷涼で、また、土壌は有機質を多く含み、水資源も豊富なため、キャベツの生育に適している。
注:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、自治区、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっている。濱州市および荷澤市は地級市である。
山東省は、家族経営による作付けが多く、企業経営の数は少ない。家族経営の1戸当たり作付面積は、2~5ムー(約13~33アール:1ムー≒6.67アール)程度と小規模である。
山東省のキャベツの作型は、主に春播き、秋播き、冬播きの3種類であり、春播きと秋播きは露地、冬播きはハウスで栽培されることが多い(図4)。春播きは、収穫期の6~7月の気温が高く、収穫後の保存がきかないため、年々減少傾向にある。一方で、冬播きは、3~4月の農家販売価格が高い時に出荷できるため増加傾向にある。
主な品種は、「中甘」、「奥其娜」、「春光珠」などが使用されており、中甘は主に国内向け、残りの2品種は輸出向けとして生産されている。(表1)。
直近4年間の山東省の生産動向を見ると、2014年は、生育期間中の好天もあり生産量が増加したため農家販売価格は大幅に下落し、大量のキャベツが売れ残った。2015~16年は、2014年の価格安を受け、農家の作付け意欲が減退したため、作付面積および収穫量ともに2年連続で減少した(表2)。その後、価格が持ち直したことなどから、2017年の収穫量は230万トン(前年比47.4%増)と大幅に増加した。
山東省における2014年と2017年の露地栽培の生産コストを比較すると表3の通りとなる。
2017年のキャベツの10アール当たりの生産コストは、3105元(5万2785円)と、2014年より23.5%上昇している。内訳を見ると、土地代と人件費が大きく増加しているほか、肥料代も増加している。
人件費については、播種・定植および収穫作業の機械化が進んでいないため、近隣住民を一時的に雇用する必要があり、2017年の1人1日当たり雇用労賃は120元(2040円)であり、2014年から20元(340円)上昇した。
中国野菜流通協会によると、山東省産キャベツの約9割は国内向けに出荷され、主な販売地域は省内、上海市、天津市となっている。残りは香港、日本などに輸出されている。キャベツは、中国において食生活の中で日常的に利用される食材の1つであり、風邪予防や疲労回復に効果的なビタミンCや高血圧を予防するカリウムなどが含まれているため、健康野菜のイメージが高いという。
中国の生鮮キャベツの輸出量は、年々増加傾向で推移しており、2015年(1~11月)は、29万8267トンであった(図5)。輸出先国は、マレーシア、ベトナム、香港などアジア向けが多い。同年の日本向け輸出量は1万8470トンと全体の6%を占めている。
青島陽光農荘果蔬有限公司における2014年と2017年のキャベツの加工コストを比較すると表4の通りとなる。同公司は山東省にある青果物輸出業者で、2017年の生鮮キャベツの輸出実績は3500トンであった。2017年の1トン当たり加工コストは、1745元(2万9665円、2014年比13.8%増)と増加している。コスト全体の5割を人件費と管理費が占めており、両コストともに約3割上昇している。人件費は毎年5~10%上昇しており、2017年は684元(1万1628円、同30.0%増)となった。生産コストと同様に人件費の上昇がコスト増の主要因となっている。
キャベツは、中国国内において年間を通して市場に流通しており、比較的安価に購入できることから、需要は安定している。一方で、日本と同様に気象条件の影響を受けて作柄が変動しやすいため、価格が変動しやすい野菜の一つでもある。中国のキャベツ農家の多くは、前年の価格を参考に当該年の作付面積を決定しているため、価格変動によっても収穫量は増減する。
2017年上半期のキャベツ価格(山東省)の低迷により2018年の作付面積は縮小し、供給量も減少したため、同年上半期の価格は比較的高値で推移している(図6)。現在の状況から判断すると、大雪や台風などの災害による影響がなければ、秋播き、冬播きの作付けは拡大すると見られ、供給量の増加から国内販売価格は低下すると予想される。
米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州の生産動向などを現地報道などを基に報告する。また、トピックスとして、2017年のセルリーの生産および輸出状況について紹介する。
全米のブロッコリーは、5月10日時点で供給量は潤沢で、品質も良好であり、需要も安定していた。
カリフォルニア州モントレー郡でのブロッコリー栽培は、5月7日時点で順調であり、播種、定植、収穫などのさまざまな作業段階の生産者が見受けられた。
なお、本稿中のドルはすべて米ドルであり、為替レートは1米ドル110円(2018年5月末日TTS相場:109.70円)を使用した。
2018年3月の全米の生鮮ブロッコリーの生産者価格は、前年同月比34.0%安の1キログラム当たり1.03ドル(113円)であったが、前月からは63.5%上昇した。これは、2月から3月にかけての強い寒気や3月上旬の降雨による日照不足の影響により、供給量が減少したためと考えられる(表1)。
2018年3月の日本向け輸出量は、前年同月比48.8%増の832トンとなったものの、2016年11月以来の2000トン超えとなった前月からは64.5%減少した(表2)。この要因として、供給量の減少が考えられる。また、輸出額は同35.8%増の108万2000ドル(1億1902万円)となった。
2018年3月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比73.2%増の71トンであった(表3)。また、平均卸売価格は、同5.6%安の1キログラム当たり238円であり、同月に同市場で最も入荷量の多かった香川県産(同365円)と比較すると34.8%安かった。
モントレー郡でのレタス栽培は、5月7日時点で順調であった。サリナスでは、4月中旬に、寒気の影響により一部のリーフレタスなどの品質に影響がでたものの、4月下旬には回復した。
米疾病予防管理センター(CDC)によると、アリゾナ州ユマ地域産のロメインレタス(カット)から腸管出血性大腸菌(O-157)が検出された問題により、4月中旬のロメインレタスの出荷は、アリゾナ州産からカリフォルニア州産に切り替えられたが、5月初旬には、ロメインレタス全体の需要がイメージダウンにより減少し、価格も下落した。一方、ロメインレタスの代替として、結球レタスやリーフレタスの需要は増加した。
2018年3月の全米の結球レタスの生産者価格は、2月後半以降の日照不足や低温により供給不足となったことから、前月比では71.7%上昇し、1キログラム当たり1.03ドル(113円)となった(表4)。ただし、前年同月比では5.5%安となっている。
5月10日時点での状況については、カリフォルニア州産結球レタスの価格は、4月中旬の寒気による供給量の減少により、上昇した。また、同州産グリーンリーフレタスは、品質良好で、生産量が増加しているものの、需要に生産が追い付かず、価格が上昇した。
2018年3月の日本向け輸出量は、米国産結球レタスが94トン、結球レタス以外のレタスが26トンと、いずれも前月から大幅な減少となった(表5、6)。要因としては、2~3月にかけての寒気と降雨量の増加によって、供給量が大きく減少したことが影響したものと考えられる。
結球レタスの単価は、供給量の減少により、前年同月比91.0%高の1キログラム当たり2.56ドル(282円)となった。また、結球レタス以外のレタスの単価は、同1.92ドル(211円)と、前年同月比65.5%高となったものの、前月比では17.6%低下した。
東京都中央卸売市場では、2018年3月の米国産のレタスの入荷は、結球レタスおよび結球レタス以外のレタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)ともになかった。同月に同市場で最も入荷量の多かった結球レタスは、茨城県産で、前年同月比7.7%増の2915トン、卸売価格は同13.7%安の1キログラム当たり151円であった。また、結球以外のレタスでは、香川県産の入荷量が最も多く、同1.8%増の107トン、卸売価格は同2.0%高の同104円であった。
全米のセルリーは、5月10日時点で、品質は良好であったものの、供給量は例年より少なかった。最近米国で需要が高まっているオーガニックセルリーの価格は4月下旬から好調である。
2018年3月の全米の生鮮セルリーの生産者価格は、前年同月比3.7%高の1キログラム当たり0.56ドル(62円)であった(表7)。上昇要因としては、3月上旬の降雨による日照不足や低温の影響によって、供給が例年より減少したためと考えられる。
2018年3月の日本向け輸出量は、前年同月比11.7%減の704トンであった。また、輸出額は同1.4%増の44万5000ドル(4895万円)であった(表8)。
2018年3月の東京都卸売市場の米国産セルリーの入荷量は、前年同月比21.2%減の26トンであった(表9)。また、平均卸売価格は、同0.5%高の1キログラム当たり205円であった。これは、同月に同市場で最も入荷量の多かった静岡県産(同282円)と比較すると、27.3%安かった。
米国のセルリーは、主にカリフォルニア州とミシガン州で生産されている(図2)。
USDAによると、米国のセルリー生産量は、2012年の約84万トン以降、減少傾向にあり、2017年の生産量は、過去10年間で最も少ない約70万9000トンであった。このうち、カリフォルニア州産が約66万6000トンと93.9%を占めた(図3)。2017年は、作付面積の減少に加え、年初に大きな嵐が2つ直撃し降雨量が多かったため、生育が遅れ品質に影響が出たことも影響している。
また、2017年の米国のセルリーの総生産額は、供給不足による生産者価格の上昇により、前年と横ばいの約3.1億ドル(341億円)となり、カリフォルニア州はその96.8%にあたる約3億ドル(330億円)を産出した。
カリフォルニア州におけるセルリーの作付面積は、2007年から2016年までは1万から1万1000ヘクタールの間で推移していたが、2017年には前年比17.7%減の9591ヘクタールと1万ヘクタールを割り込んだ(図4)。作付面積が大幅に減少した要因としては、メキシコ産の増加や需要の伸び悩みなどにより、生産者価格が下落していることが考えられる。なお、2014年に生産者価格が同様に下落した際、翌2015年の作付面積が減少した。
2017年のカリフォルニア州の単収は、前年比7.7%増の10アール当たり7.0トンとなった。2007年から2012年までは同8.0トン程度で推移したが、2013年に寒波や凍霜害によって減少し、それ以降は同7.0トン程度で推移している。また、カリフォルニア州の単収は、2007年時点ではミシガン州の約1.5倍だったが、2016年にはミシガン州の同6.7トンをわずかに下回った(図5)。カリフォルニア州の単収の下落傾向については、天候不順などのほか、長引く干ばつ被害が影響していると考えられる。
カリフォルニア州の生産者価格は、2007年から2012年までは1キログラム当たり0.40~0.46ドル(44~51円)で比較的安定して推移したが、2013年は作柄不良により高騰した。2014年には生産量の増加や需要の減少などにより、同0.37ドル(41円)まで下落したものの、2015年は供給不足により同0.55ドル(61円)まで再び上昇した。2016年は、作付面積の増加に伴って生産量も増加し、
同0.40ドル(44円)に低下したが、
2017年は、作付面積の減少と天候不順によって供給が減少したことから、上昇した(図6)。このように、最近では年による振れが大きくなっている。
一方、2017年のミシガン州産がわずかに下落したことについては、作付面積の拡大に伴い、生産量が前年比で4.9%増加したことにより、下落したと考えられる。
カリフォルニア州内では主に2つの地域でセルリーが生産されている。1つは、ベンチュラ郡やサンタバーバラ郡、サンルイスオビスポ郡がある南部の海岸沿いの地域である。もう1つは、モントレー郡、サンベニト郡、サンタクルズ郡などの中央地域である。また、小規模ではあるが、リバーサイド郡やインペリアル郡の南部砂漠地域でも生産されている。
南部の海岸沿いの地域では、定植は、8月上旬から翌4月まで順次行われ、収穫は11月から翌7月中旬にかけて順次行われる。ただし、南部の海岸沿いの地域の中でもサンタバーバラ郡サンタマリア地域では、定植は1月から8月まで行われ、収穫は4月から12月まで行われている。2017年は、天候不順により3週間程度定植の遅れた生産者もいたとのことであった。
一方、中央地域では、定植は3月から9月まで行われ、収穫は6月下旬から12月まで行われている。2017年、モントレー郡サリナス地域では、定植が1週間程度ずれ込んだとのことである。2017年7月以降にサリナス地域以外のモントレー郡から出荷されたセルリーの品質は、同年5月以降に大雨などがなかったことから色づきも良く良好となり、単収も回復した。一方、サリナス地域では、収穫期後半の12月などには、降雨によって品質が低下する傾向にあるとのことである。
なお、カリフォルニアで生産されているセルリーの主な品種はコマンド(Command)、ミッション(Mission)、チャレンジャー(Challenger)などであり、セルリー生産においてしばしば発生するフザリウム菌に対する耐性がある。その他の品種では、コンキスタドール(Conquistador)、ソノラ(Sonora)、マタドール(Matador)といった品種もあるが、この3種類はフザリウム菌に対する耐性が低いため、同菌による被害が少ない土壌での使用が推奨されている。
米国産セルリーは、加工・業務用として日本からの需要があることから、年間を通じて輸出されているが、2017年の日本向け輸出量は6547トンと過去5年間で最も少なかった。また、輸出額も446万5000ドル(4億9115万円)と過去5年間で最も低かった(図7)。
日本向け輸出量の2017年の月別推移を見ると、1月の輸出量は前年比109.7%増の696トンとなり、同年3月は同1.1%増の797トンと2017年では最多となった。その後、秋以降は370~540トンで推移し、2016年を下回ったものの、比較的安定して推移した。また、同年の日本向け輸出額を月別に見ると、23万6000~51万7000ドル(2596万~5687万円)と2016年を下回って推移した(図8)。