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海外情報(野菜情報 2018年5月号)


メキシコにおけるメロンの生産・流通および輸出動向

調査情報部


 メキシコ産メロンは、他国産が市場に出ない時期にも出荷できることから、国際市場で一定のシェアを有している。主要栽培品種は、カンタロープとハニデューである。カンタロープは、主に国内市場および米国市場に仕向けられ、ハニデューは米国や日本に仕向けられる。輸出先の大半を米国向けが占めているが、日本向けは第2位に位置している。

1 はじめに

メキシコにおけるメロン栽培は、1920年代には多くの雇用と収入を生む重要な産業であった。1960年代に入ると、輸出需要も増加した恩恵で、生産が拡大しメキシコの重要な農産品に成長した。最近、米国市場でのグアテマラやホンジュラスなどの中央アメリカ諸国産と競合し始めたものの、他国輸出できない時期でも輸出できることを強みに、国際市場で一定のシェアを確保している。

日本向けは、カットフルーツ用の網目のないハニデューメロンが主体、全輸入量の約7割をメキシコ産が占める。

本稿では、日本の輸入メロンの大宗を占めるメキシコ産メロンの生産、流通、輸出動向を紹介する。

なお、本稿中の為替レートは、メキシコペソ=円および1米ドル=107円(2018年月末日のTTSレート:1メキシコペソ=6.85円、1米ドル=107.24円)を使用した。

2 メキシコでの生産概況

(1) 生産量と主要生産州

メキシコ農牧漁業情報局(SIAP)によると、2016年のメロン生産量は、前年比5.7%増の59万4000トンとなった(図1)。

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生産量の推移を見ると、2014年にかなり減したものの、2015年には平年並みに回復した。2014年の減産の要因は、ミチョアカン州、ソノラ州、ドゥランゴ州などの主要生産州、異常な高温ハリケーンの直撃、記録的な降雨などに見舞われたこととされている(図2)。

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2016年の州別生産量を見ると、ソノラ州、コアウイラ州、ゲレロ州、ミチョアカン州、ドゥランゴ州の上位州で、生産量の割以上を占め(図3)。

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(2) 品種

栽培品種は約13種類ある。中でも、カンタロープ(Cantaloupe)は、全生産量の89%を占め、そのほとんどが国内市場米国市場に仕向けられる。メキシコ人は赤肉種を好む傾向があることから、国内向けはカンタロープが好まれる。ただ、カンタロープは保存期間が短く腐りやすいことから、輸出に時間を要する仕向けには適さない。また、ハニデュー(Honey Dew)は、米国市場や日本市場に仕向けられる。これらの品種の特徴については、のとおりである。

○カンタロープ(Cantaloupe)

生育期間は85~95日で、早熟な赤肉種。大きさは約700~1200グラム表面は薄い網でおおわれているネット系メロン糖度は11~15度。

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○ハニデュー(Honey Dew)

表面は薄い黄緑色のノーネット系メロン果肉は白系、緑系、橙系メキシコ国内では緑系が一般的。生育期間は110日。保存期間が長く、乾燥した暑い地域での栽培にも適応。大きさは1200~3500グラム糖度は約10度。

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2016年の生産量を品種別に見ると、カンタロープの生産量は、前年比1.0%減の49万5000トンとなった。カンタロープ生産の上位3州は、コアウイラ州、ゲレロ州、ミチョアカン州である(図4)。

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また、ハニデューの生産量は前年比59.7%増の9万9000トンとなった。この品種は、国内市場よりも海外市場で需要が高いため、太平洋沿岸に接し、地理的に輸出しやすいソノラ州やコリマ州での生産がそれぞれ52%、25%を占めている。コリマ州では、2012年から生産が開始され、ここ数年、生産量が急速に増えている。一方、2010年までミチョアカン州での生産も盛んであったが、最近、カンタロープへの転換が進み、生産量は著しく減少している。

(3) 栽培方法と収穫時期

ア 栽培方法

メロンの栽培方法は、一般に露地栽培である。試験的にハウス栽培や遮光ネットを使用した栽培を行っている地域もあるが、コストが高くなるため量産段階にない。これまでに、ソノラ州では2013年にハウス栽培で1960トン、コアウイラ州では2014年に遮光ネット栽培で450トンを収穫したが、いずれも継続されていない。

また、メロンの品質および生産量は、散水量に影響を受けることから、干ばつや貯水池の水不足が発生した場合しゅ時期の調整ほか、ビニールフィルムなどで湿度調整われる。

イ 収穫時期

メキシコの北部、中央高原部、南部では気候の違いにより収穫時期が異なる12月やは出荷量が少ないものの、リレー出荷により1年を通じてメロンの出荷が可能である(図5)。上述の通り、メロン栽培には散水量が重要で、降雨量の多い地域よりも少ない地域の方が散水量を調節しやすい。このため、砂漠地帯で乾期が長く、最も寒い1月の平均気温でさえ17度程度あるソノラ州では、ほぼ1年中生産が可能である。同州では、気象条件にもよるが、8月中旬に播種し11月中旬に収穫後、11月に播種し2月中旬に収穫といった栽培サイクルになっている。

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(4) 生産コスト

メロン生産は、伝統的に外貨獲得と雇用に貢献している。2012年、メキシコ連邦政府農牧農村開発漁業食料省(SAGARPA)メロン産業に関する調査結果では、全国平均の生産コストは10アール当たり3519ペソ(万4632円)で、このうち約9%を労働賃金が占めるとされた(表)。

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また、2013年にSAGARPAが発表した資料によると、生産量第1位のコアウイラ州(ドゥランゴ州の一部を含む)の生産コストは、10アール当たり5042ペソ(万5297円)であった。

(5) 企業栽培の事例

メロン栽培は伝統的な産業と言われており、数多くの小規模農家が存在し、メロン以外にも複数の作物を栽培している。今回は、コアウイラ州ラグネラ地方で、大規模生産を行っているマップ・ラグーナ社(Map Laguna S.A. de C.V.)を紹介する。同社は、メロンの他、すいか、ズッキーニ、なす、パプリカなどを栽培している。同社の農地や設備の概要は、以下のとおりである。

・所有農地面積 8000ヘクタール

・水供給源 8カ所の井戸と貯水池

・かんがい設備設置面積 700ヘクタール

(うち、点滴かんがい設備 650ヘクタール)

・パッキング倉庫 7200平方メートル

・冷却システム 5レール

・冷蔵室キャパシティ 700トン

・農業従事者用宿泊施設 250名対応

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同社は、主に米国輸出用のカンタロープを生産しており、受注に応じた栽培計画に基づき生産を行っている。海外の顧客が要望する規格に適合しないメロンは、国内市場に仕向けている

年間の栽培スケジュールは、まず、3月末ごろに播種し、7月に収穫しているが、温暖な年は二期作をしており、7月中ごろに播種し、10月末までに収穫を完了する(図6)。11月から2月までは、低温により栽培が困難なため、休耕している。なお、ビニールハウス栽培は、コスト高となり米国産に比べて割高となるため、取り入れていない。

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かんがい施設は、砂漠地帯であるラグネラ地方では必要不可欠であり、雨季の間に溜めた貯水池や井戸水を利用した点滴かんがいを行っている。

今後の目標は、顧客のさまざまなニーズに応え、販売先の多角化を目指し、契約栽培の拡大を図ることとしていた。

3 流通と消費

(1) 収穫後の流通構造

ア 国内流通

メロンの流通構造は、図7のとおりで、メロン生産者による全国規模の協会や組合といった組織化はされておらず、生産者は依然として比較的弱い立場にある。このため、中間業者との価格交渉で買いたたかれることも多く、生産意欲の抑制要因となっている。

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上述のマップ・ラグーナ社は、収穫後に仕分け・洗浄したメロンを冷水にさらして温度を下げる冷却システムと冷蔵室を保有している。しかし、多くの生産者はこのような施設を保有しておらず、収穫後、中間業者にメロンを販売し、中間業者が仕分け→洗浄→冷蔵→パッキング→出荷を行っている。

イ 輸出用の流通

大口需要者の多くは、米国市場に存在することから、米国系輸出商社を通じた米国への輸出が主流である(図8)。

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メロン生産は、直接買い付けにくる米国系輸出商社およびメキシコの輸出業者の要望に合わせて行われている。また、日本の青果貿易商社は、メキシコの輸出業者ではなく、米国系輸出商社から購入する場合が多い。米国系輸出業者は、メキシコのメロン生産者に対して強い交渉力を有しており、米国への輸出状況に大きく影響する。例えば、米国がグアテマラやホンジュラスからのメロン輸入を増加させ、メキシコからの輸入を減少させると、メキシコから日本市場への供給力が増し、販売価格にも影響する。

(2) 国内卸売価格

メキシコ国内の卸売価格は通常、9月から2月頃までは比較的高値で推移し、3月から8月には低下する傾向にある(図9)。産地リレーができるメキシコであっても、価格の季節変動がみられる。特に、国内市場において最大のシェアを占めるコアウイラ州産の収穫時期は、7月から10月に集中するため、収穫の状況が国内価格に影響を及ぼす。

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量販店「チェドゥラウイ」からの聞き取りによると、一般的には玉売りをしているが、来客数が増加する週末には半分にカットしたものを販売することもある。ハニデューも販売されているが、カンタロープよりも高価格である(2017年1月25日の販売価格は、ハニデューが1キログラム当たり22ペソ(154円)、カンタロープが同17ペソ(119円))。

4 輸出

(1) 輸出動向

2016年のメロンの輸出量は、前年比6.3%増の15万7000トンとなった。このうち、米国向けが86.3%を占めた(図10)。SIAPによると、米国向けの高い輸出割合の要因について、輸送距離が比較的短いこと、購買力が強いこと、米国市場での評価が高いことなどを挙げている。また、日本向けは全体の12.6%を占め第位、香港向けが第3位となっている。段ボール箱に生鮮で丸ごと入れて出荷するのが一般的で、冷凍や乾燥されたものは限定的である。

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品種別に見ると、カンタロープは、ほぼすべてが米国向けである。ハニデューも、米国向けが大半を占めるものの、日本向けは第位となっている。ハニデューは、日持ちしないカンタロープに対して、保存期間が長く、遠距離の輸送に向いていることから、輸出割合が圧倒的に高い。

国際貿易センターの統計によると、世界のメロン輸出額は、15億3976万ドル(1647億円)(2015年)で、このうちメキシコは1億200万ドル(109億円)と6.6%を占めた。しかし、フランス(5.0%)、コスタリカ(4.5%)、ホンジュラス(3.2%)などと僅差であり、同国が世界市場の競争にさらされている現状がうかがえる。

(2) 日本向け輸出

日本向け輸出は、ハニデューが中心である。2017年の日本のメキシコ産メロン輸入量は、中南米諸国からの輸入量の増加などにより、前年比4.4%減の2万7000トンであった(図11)。

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2016年5月以降、検疫条件の見直しにより、ホンジュラスからの輸入が始まり、2017年の輸入量は、1100トンと2016年(20トン)から大幅に増加しており、日本市場においてホンジュラス産の存在感が高まっていることがうかがえる。

国産メロンが味および品質ともに勝っていることから、国産が市場に出回る時期には輸入品への需要は薄く、輸入品は国産の流通量が減少する冬期に販売される傾向にある。メキシコ産は安定した入荷が見込めるため、大手量販店などにとって輸入品を中心とした販売企画を組みやすいという利点がある。しかし、米国系輸出商社からの聞き取りによると、メキシコでは糖度計を使用しないことも多く、特に11月から1月は、固く糖度が低いものに対して消費者からの苦情があることも多いため、日本市場への売り先が見つからないこともあるという。

(3) 輸出までの流れ

主な流れとして、日本の青果貿易商社は、米国系輸出商社などを通じて、まず生産者の生産現場を視察する。企業によっては、植え付け品種・種子の選定まで指示した上で、年間の収穫計画、品質管理、衛生管理などについて詳細に取り決めるところもある。生産者は、計画に基づき作付けや収穫を行い、収穫後直ちに洗浄梱包して冷蔵コンテナに積み込み、出荷する(図12)。

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日本向け輸出は、米国系輸出商社が介在するケースが多くを占め、日米の市況や為替の動向によって、メキシコから買い付けたメロンの仕向け先を調整している。

(4) 日本での流通形態

日本に輸入されたメロンの多くは、ブロック状にカットされ、カットフルーツとして量販店やコンビニエンスストアなどで販売されている。ただし、国産メロンの出回らない1月や2月ごろは、カットせずに玉売りされる場合もある。

カット加工を請け負っている企業からの聞き取りによると、メキシコ産メロンはサイズがそろっていないことがあり、機械カットができないため、手作業でカットする場合もあるという。また、カットフルーツの賞味期限は短いことから、ほぼ毎日量販店などへ製品を卸しているとのことであった

5 おわりに

2016年のメキシコのメロン生産量および輸出量は、いずれも増加した。中でも、ソノラ州において、輸出に仕向けられることが多いハニデューの生産を大幅に拡大している。SAGARPAおよび農畜産業の生産者により組織された全国農牧協議会(CNA)からの聞き取りによると、メキシコにとって輸出量第1位は米国であるものの、米国に限らず日本を含む各国との貿易を切望しており、日本やドイツなどで開催されている食品展示会へも積極的に参加している。毎年幕張メッセで開催されている国際食品・飲料展FOODEXにも、メキシコブースを構え、70近くの農作物・食品関係団体が出展しており、官民が協力して日本市場への輸出に力を入れていることが伺える。

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