調査情報部
日本が輸入するにんじんの約9割は中国産であることから、今月号では、中国のにんじんの生産動向等を主産地の山東省を中心に紹介する。
2016年の日本のにんじん供給量の8割以上は国産品であり、輸入品は1割強である(図1)。輸入品はほぼ全量が生鮮品であり、その約9割が中国産で、わずかにベトナムや豪州からも輸入している。
ここ数年の生鮮にんじんの輸入量は減少傾向で推移し、2015年には約7万トンまで落ち込んだが、2016年は前年を大幅に上回る9万2000トンとなった(図2)。2017年は前年をやや下回ったものの、依然として8万トンを超える8万7950トンとなった。
中国産にんじんの輸入量を月別に見ると、年間を通じて輸入されているものの、1月および2月は少ない傾向にある(図3)。また、2016年9~11月は、国内の天候不順の影響を受けて輸入量が増加した。輸入価格は、2016年5月に高騰したが、これは中国国内の価格高騰の影響であり、その後、中国国内の供給量の回復に伴い、価格が落ち着いたことから、輸入価格も比較的安定的に推移したとみられる。
本稿中の為替レートは1元=17円(2018年2月末日TTS相場:17.28円)を使用した。
中国のにんじんはさまざまな地域で生産されており、全体で45万ヘクタール程度作付けされている。とりわけ生産が盛んな地域は、山東省、河北省、内モンゴル自治区、福建省、雲南省などであり(図4)、今回紹介する山東省は、全体の1割程度を占めている。
山東省におけるにんじんの主産地は、東営市(注1)、潍坊市、青島市であり、これら三つの市だけで、同省の作付面積全体の85%を占める。
注1:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっており、東営市、潍坊市、青島市は地級市である。
山東省の作付面積の9割は露地栽培で、1割は施設栽培である。露地栽培には、春にんじんと秋にんじんの二つの作型があり、春にんじんは、2月下旬から3月上旬に播種し、6月上中旬に収穫するが、秋にんじんは、7月下旬から8月上旬に播種し、10月中下旬に収穫する(図5)。また、施設栽培は、1月中旬から2月上旬に播種し、5月中下旬に収穫する。主な品種は、「孟徳爾808」、「精鋭988」、「紅秀」、「新黒田五寸」などである。このうち、2013年に山東省に導入された「孟徳爾808」は、色合いが良く、分岐せずに外観が良いことに加え、程よい甘みを持つなどの特徴があることから、仕入れ業者や加工業者からの評価が高く、人気のある品種の一つである。
近年の生産動向を見ると、作付面積は3万2000ヘクタール前後、収穫量は240万トン前後、単収(10アール当たり収量)は7.5トン前後で推移していたが、2017年は、作付面積が前年を大幅に上回る4万ヘクタールと見込まれることに伴い、収穫量も前年を大幅に上回る295万トンと見込まれている。山東省のにんじんの作付面積は、主に相場の影響を受けるため、2017年の増加は、前年の4月から6月のにんじん価格が高かったことなどが要因と考えられる(表1)。
山東省の10アール当たり生産コストの動向を見ると、2017年は6060元(10万3020円、2014年比6.3%増)と、かなり増加した(表2)。項目別に見ると、近年の中国の野菜経営で常態化している土地代と人件費の増加が見られる一方で、種苗費は大幅に減少している。種苗費は、潍坊市で最も多く作付けされる「孟徳爾808」の価格であるが、これまで「孟徳爾808」の種苗は単価が高かったことから、必要量よりも少ない量を播種する農家が多く、収量の低下を招いた。これにより、農家の中には、「孟徳爾808」は単収が低いと誤解した者もいたため、種苗会社は農家の購入を促すため種苗価格を引き下げたことから、2014年と比べ40%近い減少となった。
山東省の卸売価格の傾向は、年によって異なる。基本的には、収穫期以外は、冷蔵貯蔵されたにんじんが供給されるが、特に2016年4月は、貯蔵量がほとんどなくなったため、価格が急騰した。その後、春にんじんが市場に出回るようになり、価格は落ち着いて推移している(図6)。
なお、施設栽培されたにんじんは、数量が限られることなどから、卸売市場を経由せず、量販店などに直接販売されることが多い。
山東省で収穫されたにんじんの約9割は、国内に仕向けられており、主な出荷先は、北京、南京、上海、広州などである。にんじんは中国でよく食されており、炒めものやスープなどの調理法がある。食感が良いだけでなく、高い栄養価を持ち、健康に良いと考えられることから、消費量は近年、増加している。
にんじん輸出は生鮮が中心である。近年の生鮮にんじんの輸出量は増加傾向で推移しており、2017年は前年をわずかに上回る71万8647トンとなった。輸出先別にみると、ベトナムが増加傾向にあり、2017年には、それまで最も多かった韓国を上回った(図7)。
2017年の日本向けは第3位で、韓国に次いで多い。日本へは、主に山東省と福建省から輸出されており、山東省産は、国内仕向けが中心とはいえ、輸出向けの主産地でもある。青島市や潍坊市には、輸出向け加工工場が多く所在しており、特に青島市莱西市(注2)は輸出量が多い地域である。福建省の収穫期は1~3月のため、春先に輸出されるのは主に福建省産で、それ以降のものは山東省産が多い。
注2:莱西市は山東省青島市の県級市である。
米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州の生産動向などを紹介する。
現地報道によると、1月下旬から2月中旬にかけて、ブロッコリーの需要と供給はともに堅調に推移し、価格は低調に推移した。
以下、本稿中の為替レートは、1米ドル=108円(2018年2月末日TTS相場:108.37円)を使用した。
2017年12月の生鮮ブロッコリーの生産者価格は、前年同月比15.6%高の1キログラム当たり0.89米ドル(96円)となった(表1)。
2017年12月のブロッコリーの対日輸出量は、前年同月比30.6%減の1177トンとなった(表2)。また、輸出単価は同7.0%安の1キログラム当たり1.20米ドル(130円)であった。
2017年12月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比42.7%減の82トンであった(表3)。また、卸売価格は、同17.2%高の1キログラム当たり368円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったのは埼玉産で、入荷量は同6.9%減の433トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同538円であった。
現地報道によると、1月下旬以降、ロメインレタスは安値傾向で推移するも、供給量は堅調に推移しており、品質も平均的なレベルを維持している。
結球レタスは、需要は例年並みも、2月以降の気温の上昇を受けて供給量は増加傾向で推移しており、価格は安値で推移している。
2月に入り、グリーンリーフレタスの品質は良好も、供給が需要を上回っていることから価格は低調に推移している。
2017年12月の結球レタスの生産者価格は、前年同月と同じ1キログラム当たり0.67米ドル(72円)となった(表4)。
2017年12月の結球レタスの対日輸出量は、638トンと、前年同月を173.8%上回った(表5)。輸出単価は同7.6%安の1キログラム当たり1.10米ドル(119円)であった。また、結球レタス以外のレタスの対日輸出量は、同465.4%増の441トン、輸出単価は同42.3%安の同1.91米ドル(206円)となった(表6)。
2017年12月の東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は、前年同月比20.0%減の0.4トンであった(表7)。また、卸売価格は、前年同月比0.4%安の1キログラム当たり516円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かった結球レタス以外のレタスは香川産で、入荷量は同51.0%増の74トン、卸売価格は米国産を大幅に下回る同249円であった。
現地報道によると、1月下旬以降、セルリー市場は堅調な供給のもと、安定的に推移しており、品質も良好である。
2017年12月のセルリーの生産者価格は、前年同月比36.8%高の1キログラム当たり0.52米ドル(56円)となった(表8)。
2017年12月のセルリーの対日輸出量は、前年同月比14.2%高の492トンで、輸出単価は同16.4%安の1キログラム当たり0.61米ドル(66円)であった(表9)。
2017年12月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は、前年同月比8.1%減の34トンで、卸売価格は同6.6%高の1キログラム当たり226円であった(表10)。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったセルリーは静岡産で、入荷量は同10.0%減の423トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同298円であった。