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海外情報(野菜情報 2018年2月号)


台湾のえだまめの生産、流通および輸出の現状

調査情報部 山下 佳佑、伊佐 雅裕
野菜需給部 伴 加奈子


 台湾では、栽培管理や加工工場での衛生管理の徹底、ほぼ全量をハーベスタで収穫することによる高鮮度な状態での加工などにより、高品質なえだまめ生産を可能としており、輸出量の8割以上を日本が占めている。また、日本においても、輸入する冷凍えだまめの約4割は台湾産であり、近年、中国の食品安全性問題などを背景に、ますます重要な輸入先国となっている。

1 はじめに

日本では、毎年万トンを超えるえだまめが収穫されているが、居酒屋や家庭などで高い需要があるため、近年では国内収穫量を上回る量のえだまめを輸入している。

日本が輸入するえだまめの多くは冷凍品であり、生鮮品はごくわずかである。冷凍えだまめの輸入量を見ると、1980年代末は3万トン台で推移し、ほぼ全量を台湾から輸入していたが、1990年代に入り、中国産が急激に増加したことから、2001年には総輸入量万7200トンを記録した。その後、中国産の減少に伴い、2008年までは減少傾向で推移していたものの、台湾産を中心に再び増加に転じ、2016年は前年を2.5%上回る7万4670トンとなった(図1)。同年の輸入量の国別シェアを見ると、台湾産が40.4%と最も高く、次いでタイ産(注)、中国産となっており、特に台湾産は、地理的優位性も相まって、日本のえだまめ市場において非常に重要な位置付けとなっている。

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本稿では、2017年11月に実施した現地調査により得られた情報を中心に、台湾のえだまめの生産動向などについて報告する。

なお、本稿中の為替相場は、台湾ドル=3.78円(2017年12月末日参考相場3.775円)および1米ドル=114円(同日TTS相場:114.00円)を使用した。

(注) タイのえだまめの生産および輸出動向については「タイのえだまめの生産および輸出動向」2017年8月号『野菜情報』を参照。

2 生産動向

(1)生産地域と近年の生産量

台湾は、日本の九州地方よりもやや小さいおよそ3万6000平方キロメートルの面積を有している。島の中央やや南を北緯 23度27分の緯線である北回帰線が通り、この回帰線以北が亜熱帯性気候、以南が熱帯性気候である。えだまめは、その生産において、温暖な気候や土壌条件(pH5.5~7.5程度など)などが求められるため、中部に位置する彰化しょうか県、うんりん県、県、南部に位置するへいとう県やたか市で主に生産されている(図2)。

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台湾における近年のえだまめ作付面積は、2013年をピークにやや減少傾向にあるものの、依然として8000ヘクタールを超えて推移しており、2016年は前年と同水準の8314ヘクタールとなった。同様に、生産量もピーク時からはやや減少傾向にあるものの、6万トンを超えて推移しており、2016年は6万1783トンとなった(図3)。

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中でも、南部の屏東県および高雄市の生産量は多く、2016年の台湾の生産量のうち、屏東県は45%、高雄市は22%を占めている(表1)。これら南部での生産が盛んな理由は、温暖な気候が栽培に適していることに加え、中部よりも1区画当たりの栽培面積が広く、ハーベスタにより収穫しやすいためである。南部では、日本統治時代を中心にサトウキビが大規模に栽培されており、戦後、複数の製糖企業が合併し、台湾糖業公司(以下「台糖」という)(注1)が設立された。しかし、その後サトウキビ生産が減少し、休耕地が増えてきたことから、台糖所有のこれらの広大な土地は、農業や学校、工場などへの利用のために貸し出されている。現在、このうち約2500ヘクタールが、えだまめ生産の専門地域(以下「専門地域」という)として、えだまめ加工・輸出企業に提供されており、大規模な生産が行われている(注2)

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一方、中部での生産は、個人生産者が所有する土地で比較的小規模な経営により行われていることが多い。

台湾では、ほぼ全量をハーベスタで収穫するため、広大な圃場の方が、収穫がしやすく、単収も良いとされる(写真1)。

注1:台湾経済部所管の企業である。

注2:台糖とえだまめ加工・輸出企業は、5年間の土地利用に関する契約を行っている。

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(2)生産形態

主なえだまめの生産形態には、①加工・輸出企業が、自身で農場を管理して、生産するものと、②加工・輸出企業が、台湾に十数名いる専業豆農などと呼ばれる大規模な生産者と契約を交わした後、専業豆農と契約した複数の生産者が生産したえだまめを企業の工場に納品するという2つがある。

②の場合、専業豆農は、しゅ、農薬散布、ハーベスタによる収穫などの主要な作業を、個別のえだまめ農家は、かんがい、除草、施肥などを担当する。専業豆農は、栽培管理に関する高い知識と経験を持つため、こうした作業分担により、高い品質を保つことができている(契約内容によっては、播種、農薬散布などの重要な作業は、加工・輸出企業が自ら行う場合もある)。

また、加工・輸出企業は、日本などの輸出先からの事前オーダーに基づき、その数量に見合った作付けを行うため、①と②でオーダーの量を満たせない場合などは、中部の生産者と契約し、数量を確保している。

(3)栽培工程

台湾では、日本のようなハウス栽培(促成・半促成栽培)などは一般的ではなく、露地栽培が主流である(写真2)。作型は、春作と秋作の2つに分けられ、播種から収穫までは約70日と、日本の極早生種の70~75日とあまり変わらない。屏東県で生産する芳隆農産有限会社の農場を例にすると、春作は1月上旬~2月下旬に播種し、4月上旬~5月上旬に収穫する。その後、5月上旬~8月中旬に土壌調整の目的で緑肥(でんせい(注)やトウモロコシ)を栽培する。秋作は9月上旬~10月中旬に播種し、11月中旬~12月下旬に収穫する。秋作から翌年の春作までの間は、緑肥を栽培する期間がとれないため、施肥により土壌管理を行う(図4)。

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台糖との契約上、専門地域では他作物の生産ができないため、輪作は行えない。連作障害を防ぐため、緑肥の栽培や施肥により土壌を管理している。

また、前述の通り、加工・輸出企業は、輸出先からの事前オーダーに基づき作付けを行う。輸出先との契約は、自社農場での作付けまたは専業豆農との契約の少なくとも1カ月前が一般的である。輸出先の業者としても、各播種前に数量決定を行うことで、台風や豪雨などの気象災害により前作の収量が減少しても後作で補完できるというメリットがある。

(注)マメ科のセスバニアの一種である。

(4)品種

台湾では、えだまめの品種改良は、日本の農林水産省に相当する行政院農業委員会の高雄区農業改良場でのみ行われている。この改良場は、7.9ヘクタールの圃場を有している。1960年ごろからえだまめの品種改良を行ってきており、1982年に独自品種である「高雄選1号」が誕生して以来、現在までに「高雄12号」までの12品種が開発されている。主流となっている品種は、白毛豆である「高雄9号」で、台湾全体の栽培面積の約8割を占めている(写真3)。この品種は、耐暑性品種であり、単収が高く、地面から比較的高い位置にさやを付けるためハーベスタで収穫しやすいという特徴がある。

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開発された品種の種子は毎年必要に応じて、加工・輸出企業へ供給されている。加工・輸出企業では、受け取った種子を増殖して栽培するが、自家採種を長年繰り返すと種子が変質してしまうため、2~3年単位で更新している。

また、台湾で栽培される品種には、日本品種である茶豆の「香姫(俗称)」や黒豆系統の「黒五(俗称)」などもある(写真4、5)。茶豆や黒豆は白毛豆より味が濃いが、収穫適期が短いなど栽培管理が難しいこともあり、白毛豆に比べて生産量は少ない。

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この改良場によると、品種に求められる特徴は、①さやが長くて外観がきれい②豆に張りがある③甘い④高い位置にさやを付け機械収穫がしやすいことである。今後はこれらの特徴に加え、いもの香りや豆の香りなど、より消費者に好まれる風味も追求したいという。

(5)農業政策

行政院農業委員会では、えだまめやレタスなどの輸出競争力のある野菜は、生産者自身の生産意欲が刺激されるため、あまり支援策を設けていないとしているものの、品種改良や低利融資などの生産者への支援策がいくつかあり、その一部を紹介する。

一つ目は、前述したえだまめの品種改良である。台湾では、えだまめの品種改良は国の機関のみが行っており、生産性の向上につながる品種やより消費者の嗜好に合う品種の開発を行っている。

二つ目は、休耕地の利活用を目的とした土地活性化政策と呼ばれる生産者への補助金の交付である。えだまめを生産した場合、生産者(注3)は1ヘクタール当たり3万5000台湾ドル(13万2300円)を、受け取り金額の上限なく受け取ることができる。補助金の交付対象品目はえだまめ以外もあるが、受け取り金額に上限がある場合や補助金の単価がえだまめより低い場合がある。これは、主に国内向けに供給される作物は、生産量が増加すると供給過多となり、需給バランスが不安定になることが懸念されるが、輸出作物であるえだまめは、仮に生産量が増えたとしても国内需給に与える影響は少ないと考えられるためである。

しかし、業界関係者によると、台湾では、少子高齢化により労働人口が減少しており、他の空いた農地でえだまめを栽培できるほど労働力に余裕がある生産者は少ないため、この政策によりえだまめ作付面積が急激に増加するとは考えにくい。

三つ目は、加工工場などが新たに機械を導入する際の低利融資である。この融資を受けるには、事業計画の提出などの条件もあるが、現在、通常の利率が2%のところ、政府が0.8%の利子補給を行うため1.2%で融資を受けることができる。

その他、残留農薬検査に係る費用の一部補助や栽培の技術指導なども行っている。

注3:当該政策では、企業がえだまめを生産する場合や台糖の土地で生産する場合は補助金対象外で、対象者は中部の生産者などに限られる。

3 国内消費と輸出動向

(1)国内消費

台湾では、えだまめは日本ほど一般的な食材ではなく、日本のようにおつまみとして消費する食文化もなかったことから、生産量に占める国内消費量の割合は小さく、多くが輸出されており、輸入量もごくわずかとなっている。正確な輸出仕向け割合は明らかではないが、2016年の冷凍えだまめ輸出量(3万4603トン)を製品歩留りを60%と仮定して割り戻すと(注4)、輸出製品を製造するために必要な原料は、5万7672トンと同年の生産量6万1783トンの実に9割以上となる(図5)。

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注4:関係者からの聞き取りによると製品歩留りは50~60%。

国内で流通するえだまめには冷凍品と生鮮品があり、輸出製品と同じ工場で生産された冷凍食品が、加工業者から卸売業者や量販店、外食産業に販売されることが多い(図6)。

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しかしながら、近年は、下のようなさや付き冷凍えだまめのパックが量販店で見られることも多くなり、日本と同じようなおつまみとしての食べ方も広がりを見せている(写真6、7)。

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台湾では、温暖な気候から収穫後の鮮度の低下が早いため、生鮮品はあまり出回っていないようであるが、今回訪問した台北市の青果卸売市場(注5)では、年間で330~350トンの生鮮えだまめの取り扱いがあるとのことであった。なお、台湾における一般的な青果の市場経由率は約5割で、当該市場における競り取引の割合は8割である(写真8)。

注5:台湾最大の数量を取り扱う消費地市場で、野菜と果物を合せて、1日当たり2300トンの取引数量がある。

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生鮮品についても、むきまめをミックスベジタブルや総菜の原料としたり、さやのままにんにくやごま油で味付けして販売されることが多く(写真9)、日本のように生鮮のまま量販店に並ぶことは少ない。

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このように、さや付きえだまめを食べる文化は台湾でもじわじわと浸透してきているが、行政院農業委員会では、さらなる国内での消費拡大を図るため、企業と合同でPRイベントなどを行い、えだまめの栄養価の高さ、食味の良さ、食べ方などを消費者に訴える活動を推進している(図7)。

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(2)輸出

前述のとおり、台湾国内で生産されるえだまめの9割以上が輸出に仕向けられていると推定されており、2016年の輸出量(製品ベース)は3万4603トンである。輸出額は7278万7000米ドル(82億9771万8000円)と、台湾の青果物の中で第1位、農産品の中でも第13位と、重要な位置を占めている(表2)。

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この背景として、えだまめ産業は、歴史的に輸出品目として発展してきたという経緯がある。えだまめ生産が盛んになる以前は、むきまめとして総菜原料に少量利用されるなど、国内で需要の高い作物ではなく、1971年時点の栽培面積は約100ヘクタール、輸出量も150トン程度であった。1970年代以降、日本の冷凍食品メーカーからの要請により、高雄市、屏東県など台湾南部で日本輸出向け冷凍えだまめ用として栽培が始まり、その後も日本向けとして生産が拡大していった結果、1979年時点で栽培面積約7500ヘクタール、輸出量約万3000トンと大きく発展を遂げ、1987年には輸出量は約4万2000トンと輸出量はピークを迎えた(図8)。

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その後、日本市場において中国をはじめとする生産コストの比較的低い国からの輸入量が拡大したことに伴い、徐々に輸出量は減少していったが、中国産食品の安全性をめぐる問題が相次いで発覚したことなどから、2008年以降再びシェアを拡大し、現在日本市場における台湾産冷凍えだまめのシェアは40.4%と第1位を占めている(図1)。

なお、生鮮えだまめの輸出は、ほぼ全量が日本向けで、日本産生鮮えだまめの出回りが少ない3~5月に行われている。かつては輸出量の10%以上を生鮮えだまめが占めていた時期もあったが、生鮮えだまめは手作業での収穫を要するなどコストと手間がかかることもあり、現在は輸出量の2%以下で推移するなどわずかな取り扱いとなっている(図9)。

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4 日本市場における他国産との競合の 状況

図10に示す通り、冷凍えだまめの輸出先は、日本が約9割を占めており、日本における販売動向が台湾のえだまめ産業に与える影響は非常に大きい。

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前述の通り、日本の冷凍えだまめの主な輸入先国は、台湾、タイ、中国となっており、それぞれの市場シェアは2016年現在、40.4%、28.7%、26.2%である(図1)。台湾のシェアは、1990年代初頭は9割以上を占めていたが、その後、台湾の冷凍野菜企業が人件費の安い中国へ進出し、生産を拡大したことなどから、中国にシェアを奪われ、2001年には3割(中国は6割)と、大幅に中国産を下回った。このため、台湾では、大規模農場におけるハーベスタでの収穫による経営の効率化、品質管理体制の強化などを官民が連携して進めた結果、品質に対する日本からの高い信頼を得て、冷凍ほうれんそうの残留農薬問題をはじめ安全性をめぐる問題が相次いだ中国の輸出減を補う形で再び輸出量を拡大している。

冷凍えだまめの輸入単価を見ると、中国産は台湾産の8割前後で推移している(図11)。しかし、輸入量は依然としてピーク時の半数にも満たず2万トンを下回って推移していることから、価格優位性はあるものの、安全性をめぐる問題が相次いだことが消費者心理に影響し、日本市場での需要の拡大が難しい状況が続いていると思われる

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タイ産も、1990年以降生産量および日本向け輸出量を徐々に拡大し、近年の日本向け輸出量は、中国産を上回っている。関税面では、日タイ経済連携協定を結んでいるため無税となっているが、2006年ごろまでは台湾産の9割前後で推移していた輸入単価が、近年は、経済成長に伴う人件費の上昇などにより、台湾産とほぼ変わらない水準となっている(図11)。価格優位性がなくなりつつある今、不良品の発生率や食味などの品質への評価を高めていけるかが今後の課題となっている。このほか、タイと同様に日本との経済連携協定により無税となっているインドネシアからも、年間約3000トン(全体の約5%)があり、今後の動向が注目される(表3)。

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日本では、近年、核家族化の進展や共働き世帯の増加に伴い、食の簡便化が進んでおり、小売店では、購入してすぐに食べられる少量パックなどの需要が増加している。このような市場動向の変化にどのように対応していくかが、今後の各国の輸出動向に影響を与える可能性がある。

5 冷凍えだまめ輸出企業の概要

今回、日本へ冷凍えだまめを輸出する主要企業を訪問する機会を得たので、その概要および今後の動向について紹介する。

(1)永昇冷凍食品工業株式会社

永昇冷凍食品工業株式会社は、台湾南部の屏東県に本社を置く冷凍えだまめの主要加工・輸出企業である(写真10)。えだまめのほか、冷凍ミックスベジタブルや水産加工品なども取り扱っている。2016年の冷凍えだまめの総生産量は8000トンで、うち6000トンを日本に輸出している(台湾の日本向け冷凍えだまめ輸出量全体の約2割を占める)ほか、1500トンを欧米や東南アジアなど向けに輸出し、500トンを国内向けに販売している。

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1974年の創業時は現在の高雄市に工場があり、冷凍のパイナップルやイカ、えだまめ以外の冷凍野菜などを製造していたが、1978年ごろから冷凍えだまめの製造を開始し、現在に至るまで同社の主要事業となっている。1988年、冷凍えだまめ事業のみを台湾に残して他の冷凍食品製造事業を中国に移転し、第一工場を広東省に建設した。その後、第二工場を浙江省、第三工場を湖北省に建設している。第一工場では冷凍えだまめの製造も行っていたが、中国の経済成長に伴い人件費が上昇したことに加え、残留農薬問題などで中国産冷凍えだまめの販売が低迷したこともあり、第一工場は撤退し、現在は第二、第三工場のみが稼働している(第二、第三工場では日本向けにインスタントラーメンのフリーズドライ具材の製造などを行っている)。

一方、えだまめは、南部の大規模農場を中心に生産し、1990年ごろからハーベスタを導入し、現在は100%機械収穫となっている。また、収穫から冷凍加工までを6時間以内に行うことで高い鮮度を保つことができることから、品質面においても他国との差別化に成功した。

工場では年間1万5000~1万6000トンの原料を自社農場および契約農場から受け入れ、約8000トンの製品を生産しており、製品歩留りは50~60%程度とのことである。工場の製造能力は、原料を冷凍加工し半製品を生産する製造ラインが1日当たり180トン、半製品を個別包装する製造ラインが同23トンとなっている。収穫期に製造した半製品は1万1000トン貯蔵することができ、発注に応じて周年個別包装が行われている。虫害や一粒さやなどの不良品率の発生を1割以下に抑える必要があるため、工場では食品衛生に関する各種認証を受け、徹底した衛生管理に努めている。具体的には、選別ラインにおいて、振動によるふるいやカラーソーターなど機械による選別に加え、目視による選別を複数回行っており、交替制で約200人の従業員が従事している(原料~冷凍加工のラインは約20人)。今後については、政府が進める労働時間規制の強化が生産コストに与える影響が懸念されることから、ロボット選別などの導入による省力化・低コスト化の仕組みを検討していきたいとしている

同社では、今後日本市場においてコンビニエンスストアなどで販売される少量パック製品(1袋当たり130~150グラム)の需要増加などを見込んでおり、3年後をめどに新工場を建設する計画を立てている。これにより、現在の8000トンから1万2000トンへと生産能力の拡大を目指している

(2)大明食品工業株式会社

大明食品工業株式会社は、高雄市に本社を置く冷凍えだまめの主要加工・輸出企業であり、同社の蔡会長は現在、台湾の冷凍農産品製造者団体である台湾区冷凍蔬果工業同業公会の理事長を務めている(写真11)。冷凍えだまめ、とうもろこしを主に取り扱っており、年間約6000トンの冷凍えだまめを輸出している。日本向け冷凍えだまめ輸出量は全体の95%(5700トン、台湾の日本向け冷凍えだまめ輸出量全体の約2割を占める)で、残りの5%は欧米や中東など向けに輸出するほか、国内向けにもわずかながら販売している。

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1972年の創業当時は、冷凍水産品、缶詰加工、冷凍野菜製造などを行っていたが、1981年に高雄市に冷凍えだまめ製造工場を建設し、その後同社の主要事業となっている。およそ20年ほど前に中国の福建省、浙江省にも工場を建設し、一時期は同社のえだまめ生産量の約6割を中国産が占めていたが、中国における人件費の上昇や為替の影響などでここ10年ほどは収益性が低下しており、台湾の生産コストが機械収穫の導入により低下したことから、現在は中国での事業規模を縮小して台湾の生産を増加させている。訪問時には現在の工場の隣接地に新工場を建設中であり、稼働すれば年間1万2000トンまで生産量増加が見込める

今回訪問した同社の自社農場では、120ヘクタールを約5名で管理しており、かん水、施肥、除草などの日常的な圃場管理を行っている(写真12)。農薬散布に関しては、資格を有した専門の職員が行うことで、日本の農薬管理基準を順守した品質管理を徹底しており、契約農場においても同様である(写真13)。このほか、収穫作業についても同社のオペレーターが行うこととなっており、品質の安定化を図っている。同社では、過去の中国の食品安全をめぐる問題を受け、製品の安全性の確保を経営理念に掲げている。新工場の稼働により、品質面でのさらなる向上が期待できる。

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(3)芳隆農産有限会社

芳隆農産有限会社は、屏東県に本社を置くえだまめ栽培・輸出企業であり、加工工場を保有する台洋冷凍食品工業株式会社との協力体制の下、冷凍えだまめの生産・輸出を行っている。現在、栽培品目はえだまめのみで、年間約4000トン(台湾の日本向け冷凍えだまめ輸出量全体の14%を占める)の冷凍えだまめを輸出し、全量が日本向けである。また、生産量の約1割を国内にも仕向けている。

1970年よりえだまめの栽培を行っており、当初は生鮮えだまめの輸出を行っていたが、1998年より冷凍えだまめのOEM(注6)生産を開始し、現在、原料栽培のみを行う企業としては業界最大手となっている。台湾では、処理施設を持つ加工業者が、専業豆農との契約栽培により原料を調達し、自社で加工し販売(輸出)を行う形式が一般的であるが、同社では原料えだまめを自社栽培し、加工業者にてOEM加工を行ったのち、自ら輸送・販売(輸出)を行っている。現在では、先の2社のように自社農場にてえだまめ栽培を行う企業も出てきているが、同社では業界に先駆けて、南部の大規模農場の経営に取り組み、現在では約500ヘクタールで年間6000トン余りのえだまめを生産している(写真14)

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蔡原料部主任によると、えだまめの生産に影響を与える要因として、大雨による倒伏や極端な寒暖差による生育不良、秋作では台風の影響などがあるという(写真15)。2016年の秋作は台風と長雨の影響で播種時期が遅れ、収量の低下につながったものの、2017年は11月現在で順調な生育を見せているとのことであった。

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収穫後は、協力会社にて冷凍半製品まで加工し、その後通年、日本からのオーダーを受けて最終製品に包装・出荷している。

今後は、生産規模は現状を維持しつつも、地代や資材費、人件費の上昇などによる生産コストの上昇に対してどのように対応していくかが課題であるとしている。

注6:original equipment manufacturerの略で、製造の発注元のブランドで販売される製品を製造すること。

6 おわりに

一年を通してえだまめ需要のある日本において、海外産えだまめは必要不可欠である。そのような中で、台湾では、栽培管理や加工工場での衛生管理の徹底、ほぼ全量をハーベスタで収穫することによって高鮮度な状態でえだまめを加工することなどにより、日本が求める高品質なえだまめ生産を可能にしており、引き続き日本にとって重要なえだまめ輸入先国となるだろう。

しかし、台湾では労働力人口の減少や人件費上昇による生産コストの上昇などの課題を抱えている中で、日本の顧客からの要望、要求がますます複雑、細分化しており、今後はその要求に対応できなくなる可能性もある。そのため、健康ブームで西海岸を中心にえだまめの人気がある米国や、比較的要求が少なく、輸出しやすい東南アジアや中国などの市場向けに輸出がシフトする可能性もあり、今後の動向については引き続き注視する必要がある。


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