調査情報部
日本が輸入するえだまめのほとんどは冷凍品であり、中国は、台湾、タイに次ぐ主要輸入先国であることから、今月号では、中国のえだまめの生産動向等を主産地の山東省を中心に紹介する。
日本が輸入するえだまめのほとんどは冷凍品であり、生鮮品はごくわずかである。ここ数年の冷凍品の輸入量は、7万トン前後で安定して推移しており、2016年は前年を2.5%上回る7万4670トンとなった(図1)。国別に見ると、台湾が全体の40.4%と最も多く、次いでタイ、中国となっている。中国産冷凍品の輸入量を月別に見ると、毎月一定以上の数量が輸入されているが、春から夏にかけて高水準で推移し、冬場は比較的少ない傾向にある(図2)。輸入単価は、年により異なるが、2016年を見ると、後述する山東省の卸売価格と同様、供給量の多い9月まで下落し、その後上昇傾向にあった。
本稿中の為替レートは1元=18円(2017年12月末日TTS相場:17.59円)を使用した。
中国のえだまめ主産地の一つである山東省では、全域でえだまめの生産が行われており、その中でも、潍坊市、青島市、煙台市、臨沂市、莱蕪市(注)が中心となっている(図3)。
山東省のえだまめ栽培は、主に露地栽培であり、作型は春作と夏作の二つである。春作は4月に播種し7月に収穫、夏作は5~6月に播種し8~9月に収穫する(図4、写真1)。主な品種は、「緑寶石」、「開心緑」で、ともに早熟性であり、豆が大きく、生産性が高いなどの特徴がある。
注:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっており、潍坊市、青島市、煙台市、臨沂市、莱蕪市は地級市である。
近年の生産動向を見ると、作付面積は1万8000~2万ヘクタール、収穫量は17万~20万トンで推移している。2017年は、前年の豊作に伴う価格下落を受け、作付面積および収穫量ともに減少した(表1)。また、ハーベスタなどの高額な機械は導入されておらず、ほとんどを手作業にて収穫している。
山東省の10アール当たり生産コストの動向を見ると、2017年は2471元(4万4478円、2014年比53.2%増)と、大幅に増加した(表2)。項目別に見ると、近年の中国の野菜栽培で常態化している土地代と人件費に加え、種苗費の増加が目立っている。これは、生産性の高い品種である緑寶石や開心緑への需要が高まり、ここ数年で広く栽培されるようになり、種苗業者が販売価格を引き上げているためと見られている。
山東省でえだまめが売買される5~10月の期間の卸売価格を見ると、供給量の少ない5月は高く、収穫が進むにつれ、下落する傾向にある。2017年は、前年の豊作に伴う価格下落を受け、作付面積および収穫量が減少したため、前年よりも高い価格水準で推移した(図5)。なお、5月に売買されているえだまめは、他省から入荷したえだまめなど、ごく限定的なものである。
えだまめは、中国国内で広く消費されており、ゆでる、炒める、煮込むなど、調理方法もさまざまである。そのため、スーパーなどでも一般的に販売されている(写真2)。
山東省で収穫されたえだまめの約95%は、国内に仕向けられており、特に福建省、広東省など南部の都市へ出荷されることが多い(写真3)。
えだまめ輸出のほとんどは、冷凍品である。ここ数年は、減少傾向で推移しているものの、2016年は前年を4.3%上回る6万558トンとなった(図6)。
国別では、米国向けが最も多く全体の4割前後を占めているが、近年減少傾向で推移している。また、日本向けは米国向けに次いで多く、約3割を占めているが、米国向けと同様、減少傾向で推移している。日本向けの減少は、冷凍ほうれんそうの残留農薬問題をはじめ安全性をめぐる問題が相次いだことが影響していると考えられる。
米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州の生産動向などを紹介する。また、トピックスとして米国における食品表示の現状について概要を報告する。
カリフォルニア州ベンチュラ郡で12月4日に山火事が発生し、学校や道路が封鎖されたほか、数十万人が避難した。現地報道によると、同州南部では12月上旬に4つの火災が発生し、延焼面積は5万エーカー(2万ヘクタール)以上に達しているとされ、同郡オックスナードでは、収穫作業に遅れが生じた。
以下、本稿中の為替レートは、1米ドル=114円(2017年12月末日TTS相場:114.00円)を使用した。
2017年10月の生鮮ブロッコリーの生産者価格は、同月中旬以降供給量が増加したため、前月から下落したものの、上旬は熱波の影響により供給量が減少したことから前年同月比77.1%高の1キログラム当たり1.47米ドル(168円)となった(表1)。11月は、感謝祭向け需要が堅調だったものの、供給量が安定していたため価格は下落した。USDAによると、12月7日時点の販売価格は1カートン(14個入り)当たり7.00~8.55米ドル(1キログラム当たり0.67~0.82米ドル:76~93円)であった。
2017年10月のブロッコリーの対日輸出量は、熱波による供給量の減少により前年同月比72.2%減の1065トンとなった(表2)。また、輸出単価は同8.4%安の1キログラム当たり1.09米ドル(124円)であった。
2017年10月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比60.3%減の75トンであった(表3)。また、卸売価格は、同13.6%安の1キログラム当たり344円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったのは北海道産で、入荷量は同85.2%増の665トン、卸売価格は米国産をかなりの程度上回る同369円であった。
現地報道によると、11月中下旬、ロメインレタスの供給量が増加したため、価格は下落した。結球レタスについては、十分な供給量に加え、品質も良好であった。
2017年10月の結球レタスの生産者価格は、熱波の影響による供給量の減少や品質の低下により、前年同月比約2倍の1キログラム当たり0.93米ドル(106円)となった(表4)。
USDAによると、インペリアル郡産の結球レタスの価格は、堅調な需要により11月中旬以降上昇し、12月7日時点で1カートン(24個入り)当たり6.50~7.65ドル(1キログラム当たり0.29~0.34米ドル:33~39円)であった。なお、その他のレタスに関しては、供給量の増加により下落し、ロメインレタスが1カートン(24個入り)当たり7.00 ~8.95ドル(1キログラム当たり0.31~0.39米ドル:35~44円)、グリーンリーフレタスは、同約7.00~8.55米ドル(同0.31~0.38米ドル:35~43円)で取引されていた。
2017年10月の結球レタスの対日輸出量は、前年同月比64.4%減の163トンで、輸出単価は同15.9%安の1キログラム当たり0.90米ドル(103円)であった(表5)。また、結球レタス以外のレタスの対日輸出量は、同99.8%減の2トン、輸出単価は同68.1%高の同3.48米ドル(397円)となった(表6)。
2017年10月の東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は、前年同月並みの1.6トンであった(表7)。また、卸売価格は、前年同月比53.6%安の1キログラム当たり111円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かった結球レタス以外のレタスは長野産で、入荷量は同56.0%増の119トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同163円であった。
11月中旬以降、供給量の安定と需要の落ち着きにより、価格は下落した。クリスマスシーズンに向け、需要が高まった。
2017年10月のセルリーの生産者価格は、供給量の減少に伴い上昇し、1キログラム当たり0.42米ドル(48円)となり、前年同月を2.4%上回った(表8)。
USDAによると、12月7日時点のベンチュラ郡オックスナード産セルリーの販売価格は、1カートン(24茎)当たり10.25~11.55米ドル(1キログラム当たり0.38~0.42米ドル:43~48円)であった。
2017年10月のセルリーの対日輸出量は、前年同月比25.0%減の465トンで、輸出単価は同7.5%安の1キログラム当たり0.62米ドル(71円)であった(表9)。
2017年10月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は前年同月比25.0%減の24トンで、卸売価格は同1.9%安の1キログラム当たり210円であった(表10)。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったセルリーは長野産で、入荷量は同16.4%増の697トン、卸売価格は米国産をかなり下回る同195円であった。
米国連邦政府の食品表示政策は、米国議会が栄養表示及び教育法(Nutrition Labeling and Education Act)とオーガニック食品生産法(Organic Foods Production Act)を制定した1990年以降、大きく変化してきた。
近年、消費者による食品の品質への関心が高まる中、作物の栽培方法や家畜の飼育方法などが食品を購入する際の判断基準の一つとなってきている。食品製造企業は、これに対応すべく、「オーガニック」などの生産方法や健康への影響に関するさまざまな情報を食品に表示するようになっている。これらの表示は、政府または第三者機関による認証を受ける任意のものである。
USDAは、全米オーガニックプログラム(NOP)によって、オーガニック農法や取扱基準について定めており、これを満たした農畜産物にのみUSDAオーガニック認証マークを付することが認められている(図2)。
NOPにおけるオーガニック認証を申請できるのは、オーガニック農畜産物の生産者やそれを扱う業者である。オーガニック農畜産物の売上高が年間5000米ドル以下の場合は、NOPの基準を満たしていれば認証を得なくてもオーガニックと表記することができるが、USDAオーガニック認証マークは使用できない。
オーガニック食品への需要は、増加傾向で推移しており、この背景には、化学薬品など人体への悪影響を心配するものと環境へ配慮するものの両方が存在している。また、米国内でのオーガニック食品の生産も、需要の増加率ほど大きくはないものの、増加傾向で推移しており、にんじんおよびレタスの総栽培面積に占めるオーガニックの割合は、いずれも10%以上となっている。
オーガニック食品の小売販売額は、1990年代以降毎年15%以上増加し、経済が低迷した2008年以降においても年率10%以上で増加している(図3)。2016年は、400億米ドル(4兆5600億円)に達するとみられており、このうち果物および野菜は、およそ40%を占める最大の品目となっている。
USDAのオーガニック認証が開始される以前は、州政府や第三者機関による基準が混在しており、取引の障害となっていたが、連邦レベルでの基準が示されたことで消費者の混乱が解消され、オーガニック食品の需要が増加したとされる。
しかし、USDAは最近の課題として、「ナチュラル」という表示がオーガニックと混同されやすいことを挙げている。これは、ナチュラルの表示基準が明確化されておらず、第三者機関による認証も行われていないことによる。また、USDAは、「地場産」という表示も、消費者によりオーガニックと混同されることがあるとしている。
USDAは、2017年11月に公表した「Beyond Nutrition and Organic Labels -30 years of Experience With Intervening in Food Labels」の中で上述のオーガニックの他にも食品表示全般の課題として、「情報の欠如」、「消費者が確認できない食品表示」、「誤解を招きやすい表現や事実と異なる表示」、「情報量の過不足、高度すぎる情報」などを挙げている。
「情報の欠如」は、企業側が製品の良い情報を表示することには積極的であるのに対し、悪い情報の表示には消極的なために生じるとしている。しかし、消費者は、他の製品との比較により、特定の製品が表示していない情報を推測できることから、表示情報の欠如という問題は、類似の製品に共通する悪い情報があり、比較する対象が無い場合に特に発生しやすい。
「消費者が確認できない食品表示」は、食品に表示されている情報について消費者が確認できない状況を指している。USDAは、販売者の方が製品の特性についての知識が豊富であり、消費者が表示の真偽を確認できないという不均衡な状況は、消費者が製品表示を懐疑的に捉える原因になるとしている。