調査情報部
日本が輸入するさといものほとんどが中国産であることから、今月号では、中国のさといもの生産動向等を主産地の山東省を中心に紹介する。
2016年の日本のさといも供給量の8割は国産品であり、2割弱は輸入冷凍品で、わずかに輸入生鮮品もある(図1)。さといもの輸入量は、2012年以降減少傾向で推移していたが、2016年は5年ぶりに前年を上回る3万8267トンとなった(図2)。輸入冷凍品、輸入生鮮品ともにほぼ全量が中国産である(表1)。
中国産冷凍さといもの輸入量を月別に見ると、おせち料理などで需要の多い年末に増加する傾向がある(図3)。
本稿中の為替レートは1元=17円(2017年11月末日TTS相場:17.24円)を使用した。
対日輸出用さといもの主要産地は山東省で、青島市や煙台市などの東部を中心に生産が行われている(図4)。
山東省のさといも栽培は、すべて露地栽培であり、主に4月中旬に植え付け、9月下旬に収穫する(図5)。
注:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっており、青島市と煙台市は地級市である。
近年の山東省におけるさといもの生産動向について見ると、2015年は、前年の価格高騰などから、作付面積および収穫量ともに前年をかなり上回った一方、2016年は、7月末から8月初頭にかけて一部地域で豪雨が発生したことなどから、単収が低下し、収穫量も前年をかなり下回った。2017年は、全体的に天候に恵まれたことなどから、収穫量は前年を8.3%上回る39万トンと見込まれている(表2)。
2017年における山東省の10アール当たり生産コストは5558元(9万4486円、2014年比25.2%増)と、2014年に比べ大幅に増加する見込みである(表3)。項目別に見ると、近年の中国の野菜栽培で常態化している土地代と人件費の増加が見られる一方で、種苗費は大幅に減少する見込みである。種苗費は、主に前年のさといも価格の影響を受け、2017年は2014年に比べ前年のさといも価格が安かったため、大幅な減少となっている。
山東省のさといも価格は、年ごとに異なる傾向となっている(図6)。2014年は、前年の収穫量の減少に伴い8月にかけて上昇し、2015年は、それを受けて作付面積、収穫量ともに増加した結果、下落した。2017年は比較的安定しており、収穫が始まる8月以降下落傾向で推移している。
山東省で収穫されたさといもの8割以上は、国内に仕向けられている。山東省内に加え、北京や天津などの近郊の大都市や上海などにも供給されている(写真)。
ここ数年の中国のさといもの輸出量は、一時的に2014年に大幅に減少したものの、基本的には年間6万~7万トン台で推移しており、2016年は前年を18.9%上回る7万5863トンとなった。
国別では、日本向けが最も多い。ただし、2014年4月以降、人体に影響のある農薬成分の検出を契機に、中国産さといもに対する検査が強化されたことから、日本向け輸出量が減少し、通常の検査体制となった2015年6月以降も回復しきれていない。一部の輸出業者は、ベトナムやアラブ首長国連邦に輸出先をシフトしているとみられる(図7)。
米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州の生産動向などを紹介する。また、トピックスとしてカリフォルニア州におけるブロッコリー生産の概要と2017年の状況を報告する。
カリフォルニア州では9月上旬の40度を超える熱波により収穫量が減少していたが、10月下旬の現地報道によると、品質には懸念が残るものの、供給量は回復傾向で推移している。11月には、大手生産出荷業者が感謝祭に向けて出荷体制を強化しているとの報道もみられた。
以下、本稿中の為替レートは、1米ドル=113円(2017年11月末日TTS相場:113.05円)を使用した。
2017年9月の生鮮ブロッコリーの生産者価格は、同月上旬の熱波を受けて供給量が減少する中、需要は堅調であったことから前年同月比約2.23倍の1キログラム当たり1.81米ドル(205円)となった(表1)。10月は供給量が安定していたため価格は下落し、同1.5米ドル(170円)前後で推移した。USDAによると、11月9日時点の販売価格は1カートン(14個入り)当たり13.50~15.56米ドル(1キログラム当たり1.30~1.50米ドル:147~170円)であった 。
2017年9月のブロッコリーの対日輸出量は、供給量の減少により前年同月比66.3%減の1221トンであった(表2)。また、輸出単価は同17.1%高の1キログラム当たり1.30米ドル(147円)であった。
2017年9月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比36.3%減の102トンであった(表3)。また、卸売価格は、同4.0%安の1キログラム当たり364円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったのは北海道産で、入荷量は同69.3%増の1187トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同445円であった。
10月下旬の現地報道によると、ロメインレタスの主産地はアリゾナ州に移り始めており、この移行が完了するまで、供給量は不安定に推移する。
結球レタスについては10月中旬、主産地がモントレー郡サリナスからフレズノ郡ヒューロンへと移ったが、同時期に熱波に襲われたことにより、品質の低下が見られた。
2017年9月の結球レタスの生産者価格は、同月上旬の熱波の影響により供給量が減少したことから、前年同月比52.2%高の1キログラム当たり0.70米ドル(79円)となった(表4)。10月中に堅調だった需要は同月下旬以降、軟調に推移したことから価格は下落し、USDAによると、11月3日時点のサリナスバレー産の結球レタスは、1カートン(24個入り)当たり8.45~10.56ドル(1キログラム当たり0.38 ~0.47米ドル:約43~53円)であった。なお、同日時点のその他のレタスに関しては、同地産のロメインレタスが1カートン(24個入り)当たり9.55 ~10.56ドル(1キログラム当たり0.42~0.46米ドル:約47~52円)、グリーンリーフレタスは、同約12.00~16.00米ドル(同0.53~0.71米ドル:約60~80円)で取引されていた。
2017年9月の結球レタスの対日輸出量は、前年同月比約2.2倍の837トンで、輸出単価は同8.0%安の1キログラム当たり1.03米ドル(116円)であった(表5)。また、結球レタス以外のレタスの対日輸出量は、同76.1%減の12トン、輸出単価は同56.3%高の同3.11米ドル(351円)となった(表6)。
2017年9月の東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は、前年同月比約13.8倍の5.5トンであった(表7)。また、卸売価格は、同32.1%安の1キログラム当たり351円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かった結球レタス以外のレタスは長野産で、入荷量は同4.3%減の201トン、卸売価格は米国産を大幅に下回る同242円であった。
大手生産出荷業者によると、主要生産地は10月下旬にベンチュラ郡オックスナードへと移行した。11月以降、需要は堅調だが供給量が減っていることから、価格は上昇傾向で推移している。
2017年9月のセルリーの生産者価格は、1キログラム当たり0.38米ドル(43円)と、前年同月を8.6%上回った。10月以降は供給減に伴う値上がりが続いており、USDAによると、11月10日時点のサリナス産セルリーの販売価格は、1カートン(24茎)当たり16.15~17.65米ドル(1キログラム当たり0.56~0.64米ドル:63~72円)であった。
2017年9月のセルリーの対日輸出量は、前年同月比37.8%減の371トンで、輸出単価は同4.5%安の1キログラム当たり0.64米ドル(72円)であった(表9)。
2017年9月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は前年同月並みの26トンで、卸売価格は前年同月比7.7%高の1キログラム当たり225円であった(表10)。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったセルリーは長野産で、入荷量は前年同月比11.5%減の653トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同280円であった。
カリフォルニア大学デービス校によると、カリフォルニア州におけるブロッコリー収穫面積は、2000年代に入ってからは約12万エーカー(約4万8562ヘクタール)と、1940年代から10倍以上に増加している。同州産ブロッコリーの全国の収穫量に占める割合は1950年の約50%から1970年代には約90%に増加し、今日でもその水準を維持している。
主要な生産地は、モントレー郡、サンタバーバラ郡とサンルイスオビスポ郡である。これらの3つの沿岸郡の生産量は、カリフォルニアの約70%、全国のほぼ3分の2を占めている。そのほかの産地としては、フレズノ郡やインペリアル郡が挙げられる。
生産時期や生産方法は地域によって異なっている(表11)。インペリアル郡や中部沿岸地域では直播が行われる一方、南部沿岸地域では75%が定植されている。また、州中部では7割が直播で、3割が定植である。定植の場合は、10アール当たり約1万200苗が植えられ、直播の場合は同110~170グラムの種が播種される。
1月から2月には未曽有の多雨・降雪に見舞われ、播種・定植が遅れたことから生育も遅れていた。3月にも多雨は続き、平年は59日間ある定植日数のうち34日は作業が中止となった。春先の主産地はベンチュラ郡やサンタバーバラ郡であったが、出回りが少ない状態は4月下旬近くまで続いた。
5月初旬には暖かい天候が生育を促進したが、5月中旬から6月初めにかけては気温の低下による収穫の鈍化があった。6月下旬にはモントレー郡サリナスバレーでの熱波の影響により、供給量の低下が若干見られたが、品質に影響は及ばなかった。
7月から8月にかけての生産量や質は平年並みだったが、モントレー郡では9月上旬には再度熱波に見舞われ、大幅な質と供給量の低下が見られた。