[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

海外情報(野菜情報 2017年12月号)


主要国の野菜の生産動向等

調査情報部


1 中国

 日本が輸入するねぎのほとんどが中国産であることから、今月号では、主産地の山東省 を中心に中国のねぎの生産動向等を紹介する。

(1) 日本における中国産ねぎの位置付け

2016年の日本のねぎ供給量の9割弱は国産品であり、1割は輸入生鮮品で、わずかに輸入冷凍品もある(図1)。輸入生鮮品、輸入冷凍品ともにほぼ全量が中国産となっている(表1)。

084a

085a

ここ数年の生鮮ねぎの輸入量は、2015年までは増加傾向で推移していたものの、2016年は前年を2.2%下回る55519トンとなった。わずかにベトナムから輸入する年もあるが、先述の通りほぼ全量を中国から輸入している(図2)。中国産生鮮ねぎの輸入量を月別に見ると、毎月一定以上の数量が輸入されている(図3)輸入単価は、年により異なるが、2016年は、後述する山東省の卸売価格と同様、上半期が高く、下半期が低い傾向にあった。

085b

085c

本稿中の為替レートは1元=17円(2017年10月末日TTS相場17.35円)を使用した。

(2)生産動向

中国のねぎの主産地は、作付面積の約15%を占める山東省で、その中でも、さいなんしょうきゅう(注)ぼうあんきゅう市は、合わせて山東省の作付面積の約63%を占める(図4、写真1)。

086a

086b

山東省のねぎ栽培は、90%が露地栽培で、10%が施設栽培である。露地栽培は主に、9月下旬にしゅ、翌年の6月に定植、9~10月に収穫する一方、施設栽培は、さまざまな生育ステージがある(図5)。品種もさまざまであるが、坊市安丘市では、日本品種である「元蔵」、「長宝」、「天光一本」の作付面積が4分の3以上を占めている(表2)。

 注:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっており、済南市と潍坊市は地級市であり、章丘区、安丘市は県級である。

087a

087b

近年の山東省における生産動向について見ると、作付面積および収穫量ともに、2014/15年度(10月~翌9月)に一時的に落ち込んだものの、その後は増加傾向で推移している。2016/17年度は、2015年後半からの価格上昇により生産者が作付面積を増加させたため、収穫量は前年度を約2割上回る151万トンとなった(表3)。

088a

(3)生産コスト

山東省の10アール当たり生産コストの動向を見ると、2016/17年度は5962元(10万1354円、2013/14年度比42.5%増)と、大幅に増加した(表4)。項目別に見ると、近年の中国の野菜栽培で常態化している土地代と人件費の上昇に加え、肥料農薬費なども増加している。肥料農薬費のうち、特に肥料費が増加しているが、これも肥料製造に係る人件費の上昇によるものである。

088b

(4)価格動向

山東省のねぎの価格については、2014/15年度の作付面積の減少に加え、2015年の年末の寒波により、市場への供給量が減少したことに伴い、2015年12月以降上昇し、2016年3月には1キログラム当たり7.1元(121円)と高騰した。しかし、4月ごろになると主産地の一つである福建省で収穫されたねぎが出回り始めたことに加え、7月前後に販売された小ねぎが一部代替したこと、2015/16年度の露地栽培の収穫が8月前後に始まったことから下落した(図6)。

089a

(5)国内向け出荷動向

山東省で収穫されたねぎの9割以上は、国内に仕向けられており、主な出荷先は、北京や天津などの近郊の大都市である(写真2、3)。

089b

(6)輸出動向

ここ数年の中国の生鮮ねぎの輸出量は、年間5万トン前後で推移しており、2016年は前年を3.3%下回る4万8878トンとなった。このうち6割前後が山東省産である。輸出形態は生鮮、冷凍、乾燥の3種類があるが、大半は生鮮である。

国別では、日本向けが8割以上を占めており、日本向けの主な品種は、先述の「元蔵」、「長宝」、「天光一本」などである。日本以外には、韓国、モンゴル、シンガポールなどの近隣諸国に主に輸出されている。(図7)。

090a

2 米国

 米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州の生産動向などを紹介する。

(1) ブロッコリー、レタス、セルリーの生産動向

ア ブロッコリー

(ア) 作況および作付面積

現地報道によると、9月初旬、モントレー郡サリナスは、40度を超える熱波に見舞われたことから、同月の収穫量が減少した。また、一部の生産者からは、品質にバラツキがみられたほか、全体的に小ぶりで芯に空洞ができ、茶色に変色したとの報告があった。10月初旬も同様の傾向で推移した。

以下、本稿中の為替レートは、1米ドル=114円(2017年10月末日TTS相場: 114.16円)を使用した。

091a

(イ)生産者価格

2017年8月の生鮮ブロッコリーの生産者価格は、7月中旬以降の低温による生育遅れにより、供給量が減少した一方、需要は堅調であったことから前年同月比2.2倍の1キログラム当たり1.37米ドル(156円)となった(表1)。

092a

9月14日時点の販売価格は、同月初旬の熱波により前週から5割程度値上がりし、1カートン(14個入り)当たり16.55~18.56米ドル(1キログラム当たり1.59~1.78米ドル:181~203円)となった。9月28日時点では同25.45~27.55米ドル(同2.45~2.65米ドル:279~302円)とさらに上昇した 。

(ウ) 対日輸出動向

2017年8月のブロッコリーの対日輸出量は、供給量の減少により前年同月比27.8%減の1995トンであった(表)。また、輸出単価は同4.1%高の1キログラム当たり1.26米ドル(144円)であった。

092b

(エ) 東京都中央卸売市場の入荷量および価格

2017年月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比17.8%減の97トンであった(表3)。また、卸売価格は、同9.7%高の1キログラム当たり340円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったのは北海道産で、入荷量は同14.6%増の1174トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同430円であった。

092c

イ レタス

(ア)作況および作付面積

現地報道によると、9月は、初旬の熱波により、中下旬の結球レタスおよびロメインレタスの収量および品質の低下がみられた。供給量が減少する一方、需要が堅調だったことにより、結球レタスの価格は上昇した。10月初旬においても、結球レタスの供給量に対して需要が堅調なため、価格は高値であった。

(イ)生産者価格

2017年8月の結球レタスの生産者価格は、供給増により安値となった前年同月よりも17.4%高となったものの、供給量が多かったことから1キログラム当たり0.54米ドル(62円)と安定して推移した(表4)。

093a

9月14日時点のサリナス産の販売価格は、結球レタスが1カートン(24個入り)当たり7.05~8.56米ドル(1キログラム当たり0.31~0.38米ドル:35~43円)、ロメインレタスが同9.56~11.55米ドル(同0.42~0.51米ドル:48~58円)、グリーンリーフレタスが同8.45~9.65米ドル(同0.370.43米ドル:42~49円)であった。

翌週以降、同価格は、供給量の減少により上昇し、9月28日時点では、結球レタスが同21.50~22.55米ドル(同0.95~0.99米ドル:108~113円)、ロメインレタスが同12.55~14.56米ドル(同0.55~0.64米ドル:63~73円)、グリーンリーフレタスが同14.00~16.95米ドル(同0.62~0.75米ドル:71~86円)となった。

(ウ)対日輸出動向

2017年月の結球レタスの対日輸出量は、前年同月比2.3倍の743トンで、輸出単価は同7.7%安の1キログラム当たり0.96米ドル(109円)であった(表5)。また、結球レタス以外のレタスの対日輸出量は、同7.3倍の29トン、輸出単価は同8.0%安の同2.98米ドル(340円)となった(表6)。

093b

093c

(エ) 東京都中央卸売市場の入荷量および価格

2017年8月の東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は、前年同月比2.01倍の1.0トンであった(表7)。また、卸売価格は、同73.5%安の1キログラム当たり137円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かった結球レタス以外のレタスは長野産で、入荷量は同7.5%減の204トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同257円であった。

094a

ウ セルリー

(ア)作況および作付面積

現地報道によると、9月は、供給量が十分であったことに加え、品質は良好であった一方、需要が低調であったため、低価格で推移した。特に、サリナス産およびサンタバーバラ郡サンタマリア産は下落傾向で推移した。10月初旬、品質は良好で、価格は横ばいで推移していた。

(イ)生産者価格

2017年月のセルリーの生産者価格は、1キログラム当たり0.39米ドル(44円)と前年同月を8.3%上回ったものの、需給の緩和により前月から大幅に下落した(表8)。

094b

月中旬以降、サリナス産セルリーの販売価格は1カートン(24茎)当たり平均8米ドル程度で安定的に推移しており、10月6日時点では、同7.45~8.56米ドル(1キログラム当たり0.27~0.31米ドル:31~35円)であった。

(ウ)対日輸出動向

2017年8月のセルリーの対日輸出量は、前年同月比0.8%増の607トンで、輸出単価は同23.5%安の1キログラム当たり0.65米ドル(74円)であった(表9)。

094c

(エ) 東京都中央卸売市場の入荷量および価格

2017年月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は24トン(前年同月比11.1%減)で、卸売価格は1キログラム当たり231円(同14.9%高)であった(表10)。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったセルリーは長野産で、入荷量は前年同月比13.2%減の701トン、卸売価格は米国産をわずかに上回る同252円であった。

095a


元のページへ戻る


このページのトップへ