調査情報部
日本が輸入するにんにくの9割以上が中国産であることから、今月号では、主産地の山東省を中心に中国のにんにくの生産動向等を紹介する。
日本では、近年約2万トンのにんにくが収穫されている一方で、生鮮、冷凍、塩蔵、乾燥などさまざまな形態のにんにくが輸入されており、特に生鮮にんにくの輸入量は国内収穫量と同程度である(図1)。2016年の生鮮にんにくの輸入量は2万597トン(前年比0.5%増)で、そのうち9割以上は中国産、次いでスペイン産、米国産となっている。
また、中国産生鮮にんにくは、年間を通じて輸入されているが、特に7~8月の夏場に多い傾向にある(図2)。
本稿中の為替レートは、1元=17円(2017年8月末日TTS相場:17.04円)を使用した。
中国のにんにく主産地は、山東省、河南省、江蘇省などであり、中でも山東省は、全国の作付面積の約5割を占める最大の産地である(図3)。
山東省におけるにんにくの主産地は、同省の作付面積の26%を占める済寧市金郷県(注1)および同13%を占める臨沂市蘭陵県となっている。
注1:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっている。済寧市と臨沂市は地級市であり、金郷県と蘭陵県は県級である。
山東省では秋植えのみを行っており、通常は9月ごろに植え付け、翌年6月ごろに収穫されるが、収穫が集中する6月を避けて5月に収穫する農家もいる(図4)。金郷県で栽培される主な品種は、「金蒜3号」「金蒜4号」など中国の品種であり、単収が高く、形状が整っている特徴がある。蘭陵県で栽培される主な品種も「蒲棵」「高脚子」など中国の品種であるが、にんにく自体の単収はそれほど高くない代わりににんにくの芽の単収が高い特徴がある(注2)。両県ともに、通常マルチ栽培で生産される。
注2:山東省の生産者の約9割は「にんにくの芽」と「球根(にんにく)」の両方を収穫している。現地生産者によると、球根(にんにく)の収穫前15日ごろに「にんにくの芽」を収穫するという。
近年の生産動向を見ると、ここ数年、生産コストの増加などにより収益性が悪化したことにより2014/15年度および2015/16年度の作付面積が減少傾向にあり、2015年の秋と2016年の春の気温が平年に比べ低かったことにより、2015/16年度の収穫量が大幅に減少した。しかし、2016/17年度は、これらによりにんにくが供給不足となったことや販売業者による買い占めが生じ、市場価格が上昇したことを受け、作付面積が拡大した上、気候も良かったことから、生産量は前年度を大幅に上回っている(表1)。
10アール当たり生産コストの動向を見ると、2016年は6018元(10万2306円、2013年比31.5%増)と、大幅に増加している(表2)。項目別に見ると、近年の中国の野菜栽培で常態化している土地代と人件費の増加に加え、種苗費なども軒並み増加している。種苗費は市場価格と連動しており、前述の供給不足などにより価格が上昇した。
ここ数年の山東省のにんにくの卸売価格を見ると、収穫が始まる5月前後に下落し、その後徐々に上昇する傾向にある(図5)。2016年は、前述のとおり供給不足や販売業者の買い占めなどにより価格が高騰していたが、2017年は収穫の始まりに伴い供給量が増加したことなどにより、2015年並みの水準にまで下落した。
山東省で収穫されたにんにくの5~6割は、国内に仕向けられている。同省内のほか、北京や天津などの近隣大都市にも多く出荷されている(写真1~3)。
中国のにんにく輸出は、生鮮のほか、乾燥や酢調製などさまざまな形態で行われているが、その大半を生鮮が占めている。ここ数年の生鮮の輸出量は140万~160万トン台で推移している。主な輸出先はインドネシアやベトナムなど東南アジアであり、日本向けは1~2%程度である。このため、日本にとって中国は最大の輸入先国であるものの、中国から見れば、日本はそれほど大きな市場ではないといえる。
ある輸出企業によると、日本向け輸出はこれまで主に生鮮が主であったが、最近では乾燥や冷凍など生鮮以外の割合が増加してきているという。その一因として、近年の生産コストの増加に伴い輸出利益が低下しているため、より付加価値の高い冷凍や酢調製などでの輸出に力をいれていることを挙げている。
なお、日本へ輸出されるにんにくの多くはスーパーマーケットや外食産業向けであるという。
米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州とワシントン州を中心とした生産動向などを紹介する。また、トピックスとして米国で流行の新しい野菜商品について報告する。
現地報道によると、7月末から8月初めにかけては涼しい天候の下でブロッコリーの供給量は減少したものの、品質は良好であった。以下、本稿中の為替レートは、1米ドル=111円(2017年8月末日TTS相場:111.42円)を使用した。
2017年6月の生鮮ブロッコリーの生産者価格は、1~2月の豪雨による出荷量の減少を原因とした高騰が一段落し、前年同月比2.1%高の1キログラム当たり1.11米ドル(123円)となった(表1)。なお、8月10日時点では1カートン(14個入り)当たり8.45~9.65米ドル(1キログラム当たり0.81~0.93米ドル:90~103円)であった。
2017年6月のブロッコリーの対日輸出量は、前年同月比26.7%減の1960トンであった(表2)。また、輸出単価は同7.1%高の1キログラム当たり1.36米ドル(151円)であった。
2017年6月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比23.1%減の90トンであった(表3)。また、卸売価格は、同1.7%安の1キログラム当たり337円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったのは長野産で、入荷量は同5.0%増の567トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同537円であった。
現地報道によると、8月中旬、結球レタスの品質は並で、一部いびつな形のものみられた。結球レタス以外のレタスは出回りと需要がともに堅調だが、ロメインレタスでは葉先枯れ(チップ・バーン)や中身枯れ(インターナル・バーン)、うどんこ病が発生しているものが一部見られた。
2017年6月の結球レタスの生産者価格は、供給量の多さを反映して前年同月比12.4%安の1キログラム当たり0.5米ドル(55.5円)となった(表4)。なお、8月10日時点のモントレー郡サリナス産の価格は、結球レタスが1カートン(24個入り)当たり6.45~8.56ドル(1キログラム当たり0.29~0.38米ドル:32~42円)、ロメインレタスが同7.45~7.55ドル(同0.33米ドル:36円)、グリーンリーフレタスが同約6.45~7.56米ドル(同0.29~0.33米ドル:32~37円)であった。
2017年6月の結球レタスの対日輸出量は、前年同月比33.2%減の137トンで、輸出単価は同10.2%高の1キログラム当たり1.16米ドル(129円)であった(表5)。一方、結球レタス以外のレタスの対日輸出量は、同92.9%減の1トンで、輸出単価は前年同月の約4倍となる1キログラム当たり4.00米ドル(444円)であった(表6)。
2017年6月の東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は、前年同月比20.0%減の0.4トンであった(表7)。また、卸売価格は、同30.1%高の1キログラム当たり518円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かった結球レタス以外のレタスは長野産で、入荷量は前年同月比13.5%増の184トン、卸売価格は米国産を大幅に下回る同191円であった。
現地報道によると、7月下旬時点でベンチュラ郡オックスナード産の収穫は終盤を迎え、モントレー郡サリナス産へと切り替わった。また、8月中旬には、十分な供給量と低い需要量を背景に価格は値下がりしており、品質は良好であった。
2017年6月のセルリーの生産者価格は、1キログラム当たり0.93米ドル(103円)と、出荷量の増加に伴い前月から値下がりしたものの、依然として収穫の遅れによる供給ギャップの影響が続いていることから前年同月の2倍強であった(表8)。なお、8月10日時点のセルリー販売価格は、1カートン(24茎)当たり7.45~9.56米ドル(1キログラム当たり0.31~0.35米ドル:34~38円)であった。
2017年6月のセルリーの対日輸出量は、前年同月比5.4%減の526トンで、輸出単価は同2.3%高の1キログラム当たり0.98米ドル(109円)であった(表9)。
2017年6月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は9トン(前年同月比64.0%減)で、卸売価格は1キログラム当たり398円(同91.3%高)であった(表10)。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったセルリーは長野産で、入荷量は637トン、卸売価格は米国産を大幅に下回る同312円であった。
USDAによると、米国で最も消費量が多い野菜はばれいしょで、1人当たり供給量は年間23キログラムと、第2位のトマト(13キログラム)を大幅に上回る。しかし、ばれいしょの消費量は減少傾向で推移しており、その傾向は2000年代以降に加速している。こうした背景にはピーマン、レタス、ブロッコリー、カリフラワーなどの葉茎菜類の消費増に加え、健康志向の高まりに伴う食生活の変化もあると考えられる。
ばれいしょなどに多く含まれる炭水化物の摂取量を制限する食事法は、近年日本でも話題だが、こうした流れに乗って今日の米国ではカリフラワーを米粒のように細かく刻んだ食材が人気を博している。これは「カリフラワー・フェイクアウト」、または「ライスド・カリフラワー」とも呼ばれ、カロリーも低く、ビタミンやミネラルも豊富であることから、昨今、量販店などで見かける機会が増えている。流行のきっかけは「パレオダイエット」という米や小麦などの穀物やグルテンを摂取しない低糖質食事法であり、他にもズッキーニを細長く切り、麺のように食べる商品なども販売されている。これらの商品を購入するのは、健康志向が強い、あるいは糖尿病やメタボリックシンドロームの心配があったり、調理時間を減らしたい共働きの家庭であると考えられる。