調査情報部
日本が輸入するごぼうの大半が中国産であることから、今月号では、主産地の山東省および江蘇省を中心に中国のごぼうの生産動向等を紹介する。
日本のごぼう供給量の7割以上は国産品であるが、約2割は輸入生鮮品、そしてわずかながら輸入冷凍品と輸入塩蔵品等もある(図1)。輸入生鮮品は、近年、年間4万~5万トンで安定的に推移しており、9割以上が中国産で、それ以外にはわずかに台湾産とベトナム産が含まれている(図2)。輸入冷凍品、輸入塩蔵品等については、全量が中国産となっている。
また、中国産生鮮ごぼうの輸入量を月別に見ると、需要期である年末に向けて増加する傾向がある(図3)。
なお、本稿中の為替レートは1元=17円(2017年7月末日TTS相場:16.68円)を使用した。
中国のごぼう主産地は、山東省および江蘇省である(図4)。両省とも春と秋の2種類の作型があるが、江蘇省の方が山東省よりも1カ月程度早く収穫が始まる(図5、6)。また、山東省では施設栽培も行っているが、ここ数年ごぼう相場が下落していることに伴い、施設による作付けは減少傾向にある。
両省の主な栽培品種は、山東省で約50%、江蘇省で約45%の作付面積シェアを占める滝野川系統の柳川理想をはじめ、渡辺早生、地皇などであり、それぞれの品種の特徴は表1の通りである。
山東省のごぼうの主産地は同省南部の済寧市汶上(注)県と臨沂市蘭陵県に集中している(図7)。2016年の山東省における作付面積(3800ヘクタール)のうち、汶上県は約6割、蘭陵県は1割弱を占めているが、汶上県の生産者の多くは元々蘭陵県で生産していた者である。2013年ごろまで蘭陵県の作付面積は約3000ヘクタールあったが、同じ土地で長期にわたり栽培したため、連作障害により品質が低下し、相場が下落した。生産者の中には栽培をやめる者もいたが、一部は汶上県に移って栽培を続けた結果、現在の生産規模となった。
近年の収穫量は、2014~15年は天候に恵まれたため、単収が高く、12万~13万トンであったが、2016年については、6月に汶上県の産地で局地的な豪雨と降雹による被害を受けたため、前年比で1~2割減少した(写真1、表2)。
山東省で生産されたごぼうの約3割が国内向けで、主に北京や南方の大都市圏へ供給される。一方、残る約7割は輸出向けで、日本と韓国へ輸出される。
注:中国では、大きい行政区分から順に、「省級(省、直轄市など)」、「地級(地級市、自治州など)」、「県級(県、県級市、市轄区など)」などとなっている。済寧市と臨沂市は地級であり、汶上県と蘭陵県は県級である。
江蘇省のごぼうの主産地は、同省北西部の徐州市の豊県と沛県に集中している(図8)。
同市の作付面積は2014年以降急減しており、2016年は800ヘクタール(前年比55.6%減)となった。中国牛蒡網などによると、同省のごぼうは以前は主に輸出されていたが、山東省臨沂市蘭陵県の方がごぼうの加工技術が高いことなどから受注が減少し、供給過多となったことなどにより買い付け価格が数年下落し続けた一方、生産コストが増加し、生産者の生産意欲が減退したことが減少の要因としている(表3)。
山東省臨沂市蘭陵県の10アール当たり生産コストの動向を見ると、2016年は4134元(7万278円、2013年比27.3%増)と、大幅に増加している(表4)。項目別に見ると、近年の中国の野菜栽培で常態化している土地代と人件費の増加に加え、種苗費の増加も見られている。これは、種子の供給元である日本からの供給量の減少が影響している。
山東省で生産されたごぼうの約3割は国内向けで、半分はごぼう茶やごぼう酒などに利用され(写真2)、残りの半分は生鮮食品として北京や南方の大都市圏へ供給される。中国では、日本のように野菜として消費する習慣がなかったことから、生鮮食品としての需要は低かったが、近年の健康志向の高まりにより、食物繊維が豊富な野菜として、炒めものやごぼう巻きなどでの消費が高まりつつある(写真3)。
一方、江蘇省で生産されたごぼうの約7割は国内向けで、主に南方の大都市圏へ供給されている。前述の通り、数年前までは主に輸出されていたが、山東省臨沂市蘭陵県の方がごぼうの加工技術が高いことなどから受注が減少し、現在では主に国内向けに販売している(写真4)。
ごぼうの輸出量は、年間7~10万トン程度で安定的に推移している(図9)。主な輸出先は日本と韓国であり、両国で輸出量の約9割を占めている。
仕向け先ごとの直径等級をみると、日本向けは実需者の要望により、加工しやすく比較的食感の軟らかいL~2Lが中心であるのに対し、韓国向けは、食物繊維が豊富なことを訴求できる2L~3Lが多い(表5)。
米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)およびたまねぎについて、それらの主産地であるカリフォルニア州とワシントン州を中心とした生産動向などを紹介する。また、トピックスとしてカリフォルニア州における葉菜類の食品安全規則について報告する。
モントレー郡が6月に公表した「2016 Crop Report」によると、2016年の同郡のブロッコリー作付面積は、前年比6.7%減の5万7566エーカー(2万3026ヘクタール)となった。
6月末、ブロッコリーの品質は良好で、需要は比較的堅調であったが、価格にバラつきが見られ、モントレー郡サリナスバレーで値上がりした一方、サンタバーバラ郡サンタマリアで値下がりした(図1)。
以下、本稿中の為替レートは、1米ドル=111円(2017年7月末日TTS相場:111.35円)を使用した。
2017年5月の生鮮ブロッコリーの生産者価格は、1~2月の豪雨による出荷量の減少を背景に高騰していた前月から低下し、前年同月比71.7%高の1キログラム当たり1.82米ドル(202円)となった(表1)。
6月22日時点の販売価格は1カートン(14個入り)当たり10.45~12.55米ドル(1キログラム当たり1.00~1.21米ドル:111~134円)であった。その後も低調に推移し、7月6日時点では、同10.55~11.55米ドル(同1.01~1.11米ドル:112~123円)となった。
前述のモントレー郡の報告書によると、2016年の同郡のブロッコリー総生産額は、前年比7.4%減の3億9179万米ドル(434億8869万円)となり、リーフレタス、いちご、結球レタスに次ぐ第4位となった。
2017年5月のブロッコリーの対日輸出量は、前年同月比27.8%減の1528トンであった(表2)。また、輸出単価は前年同月を大幅に上回る、同24.8%高の1キログラム当たり1.46米ドル(162円)であった。
2017年5月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月のおよそ半分となる65トンであった(表3)。また、卸売価格は、同5.3%高の1キログラム当たり340円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったのは香川産で、入荷量は前年同月比29.6%増の876トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同410円であった。
現地報道によると、6月の結球レタスの供給量は安定しており、品質も良かった。ロメインレタスの供給量は低調に推移し、全体的に品質は良かったものの、一部で葉先枯れ(チップ・バーン)などが確認された。グリーンリーフレタスは、品質が良く、供給量も堅調に推移した。
2017年5月の結球レタスの生産者価格は、供給が安定していたため、前年同月比19.4%安の1キログラム当たり0.58米ドル(64円)となった(表4)。
6月22日時点のモントレー郡サリナスバレー産の結球レタスは1カートン(24個入り)当たり8.50~10.55ドル(1キログラム当たり0.37~0.46米ドル:41~51円)と前週からわずかに値を下げた。一方、ロメインレタスは、供給量の減少により同7.45~8.55米ドル(同 0.33~0.38米ドル:37~42円)と前週から値を上げた。グリーンリーフレタスは、需給のバランスが安定して推移したことから、同6.45~8.55米ドル(同0.28~0.38米ドル:31~42円)と横ばいで推移した。
2017年5月の結球レタスの対日輸出量は、前年同月比8.1%減の181トンで、輸出単価は前年同月比13.3%安の1キログラム当たり0.98米ドル(109円)であった(表5)。一方、結球レタス以外のレタスの対日輸出量は、同18.5%増の32トンで、輸出単価は同12.1%安の同0.94米ドル(104円)であった(表6)。
2017年5月、東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は、前年同月並みの0.2トンであった(表7)。また、卸売価格は、同44.0%安の1キログラム当たり290円であった。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かった結球レタス以外のレタスは茨城産で、入荷量は前年同月比36.0%増の109トン、卸売価格は1キログラム当たり232円であった。
現地報道によると、6月中旬以降、サンタバーバラ郡に加え、モントレー郡サリナスバレーからのセルリーの出荷が開始されたことにより、供給量が増加したことから価格が下落した。しかし、6月30日の週には、前週に見舞われた熱波の影響などにより、供給量が減少した。
モントレー郡の報告によると、2016年の同郡のセルリー作付面積は、前年比3.1%増の1万2470エーカー(4988ヘクタール)であった。また、サンタバーバラ郡の報告によると、同年における同郡の収穫面積は、同7.8%増の4009エーカー(1604ヘクタール)であった。
2017年5月のセルリーの生産者価格は、メモリアル・デー(5月28日)を控えた需要期にもかかわらず、収穫の遅れにより供給量が少なかったことから、前年同月比約3倍の1キログラム当たり1.76米ドル(195円)となった(表8)。
6月22日時点のベンチュラ郡オックスナード産セルリーの販売価格は、前週から横ばいで推移し、1カートン(24茎)当たり15.85~16.95米ドル(1キログラム当たり0.58~0.62米ドル:64~69円)となった。翌週の6月29日時点では、出回り量が減少したことから、同20.50~22.55米ドル(同0.75~0.83米ドル:83~92円)と値上がりした。
2017年5月のセルリーの対日輸出量は、前年同月比20.9%減の480トンで、輸出単価は、同11.4%高の1キログラム当たり0.98米ドル(109円)となった(表9)。
2017年5月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は24トン(前年同月比4.0%減)で、卸売価格は1キログラム当たり242円(同9.0%高)であった(表10)。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったセルリーは静岡産で、入荷量は295トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同326円であった。
USDAが2017年2月に公表した「Vegetable Summary」によると、2016年のたまねぎの作付面積は、前年比3.9%減の13万8300エーカー(5万5000ヘクタール)であった。州別に見ると、カリフォルニア州が4万5900エーカー(1万8000ヘクタール)、ワシントン州が2万5000エーカー(1万ヘクタール)となった。
現地報道によると、5月時点のワシントン州ワラワラ郡のたまねぎの作柄は、多雨と積算温度の不足により良好ではなかった(図2)。6月中旬の収穫開始に向けて、気温の上昇により作柄の改善が見られ、6月30日の週、たまねぎの供給量は十分で、品質も良かった。ただし、カリフォルニア州産のたまねぎへの需要の方がわずかに高い傾向にある。
2017年5月の生鮮たまねぎの生産者価格は、前年同月比45.6%安の1キログラム当たり0.31米ドル(34円)と前年を下回った(表11)。
ワラワラ郡では6月中旬、今年初めてのたまねぎの出荷が開始された。現地報道によると、需給のバランスが取れていたことから、7月初旬まで価格の変動はなかった。7月7日時点では、1カートン(約18キログラム)当たりコロッサルが約18米ドル(1キログラム当たり1米ドル:111円)、ジャンボが18米ドル(同1米ドル:111円)、ミディアムが14米ドル(同0.78米ドル:87円)であった(注)。翌週に入っても価格は、ほぼ同水準で推移し、コロッサルが17米ドル(同0.94米ドル:104円)、ジャンボが16米ドル(同0.89米ドル:99円)、ミディアムが14米ドル(同0.78米ドル:87円)であった。
注: 全米たまねぎ協会によると、たまねぎの大きさの規格は、コロッサル(直径9.5センチメートル以上)、ジャンボ(同7.6センチメートル以上)、ミディアム(同5.1~8.3センチ以上)が最も一般的とされている。
2017年5月の生鮮たまねぎの対日輸出量は、前年同月比60.5%減の15トンで、輸出単価は前年同月比79.5%高の1キログラム当たり2.19米ドル(243円)であった(表12)。
また、同月の乾燥たまねぎの対日輸出量は、前年同月比33.5%減の248トンで、輸出単価は同5.6%高の同2.62米ドル(291円)となった(表13)。
2017年5月の東京都中央卸売市場の米国産たまねぎの入荷量は、前年同月比33.3%減の0.2トンであった。また、卸売価格は同2.6%高の1キログラム当たり1102円と、前年に引き続き高級レストランなどからの需要により単価の高いたまねぎが輸入されていることなどにより、前年同月をわずかに上回った(表14)。なお、同月に最も入荷量が多かったのは北海道産(2471トン)であり、価格は米国産を大幅に下回る同116円であった。
連邦政府は2011年1月、食料供給の過程における安全保障を目的に食品医薬品局(FDA)の権限を多岐にわたり強化するため、食品安全強化法(FSMA)を制定した。この法律は70年ぶりの食品安全規制の抜本的改革であるとされ、米国で消費されるほぼすべての農林水産物・食品に適用される。特に野菜の生産・加工流通業者は、2015年末に発表された農産物の生産規則(PR:Produce Rule)を原則2018年までに遵守しなくてはならない。
そんな中、USDAは、FSMAを遵守するためのコスト算定の参考とするために、野菜の生産・加工流通業者7者を対象にアンケート調査を行い、その結果を2017年6月に公表したことから、その概要を紹介する。
生鮮農産物による食中毒のまん延に対する認識が高まっていることを受けて、米国保健福祉省(HHS)や食品医薬品局(FDA)などは1998年10月、生産者および流通業者向けに野菜および果実の微生物食品安全性の危険性を最小限に抑えるガイドラインを発表した。このガイドラインは、生鮮野菜を生産する上でリスク要因となり得る①水質、②堆肥の取扱い、③労働者の衛生環境、④圃場、施設、輸送車の衛生環境、⑤トレーサビリティについて言及している。しかし、同ガイドラインには、具体的かつ明確な指標や基準が設定されていなかった。
FDAによるガイドライン発表後も、葉菜類による食中毒は頻繁に発生していたため、カリフォルニア州の葉菜類の生産・流通業界は2006年4月、“Commodity Specific Food Safety Guidelines for the Lettuce and Leafy Greens Supply Chain”という葉菜類のサプライチェーンにおける食品安全のガイドラインを発表した。しかし、同年秋にほうれんそうを原因としたO-157集団食中毒が発生し、200人以上が感染し、うち3人が死亡した。これを受けて、業界は2007年、カリフォルニア州食料農業局(CDFA)と協力して、新たな食品安全プログラムであるカリフォルニア州葉菜マーケティング協定(LGMA)(California Leafy Greens Marketing Agreement)を創設し、Metrics(Commodity Specific Food Safety Guidelines for Production and Harvest of Lettuce and Leafy Greens)という新たなガイドラインを発表した。ガイドラインでは、初めて明確な安全管理基準や検査項目が設けられ、カリフォルニア州による体制が確立した。
LGMAは、CDFAの管理下に置かれ、理事会は、同州の農務長官によって任命される農家および流通業者、加工業者、消費者などの代表によって構成されている。なお、同州の生産・加工流通業者の99%が、LGMAに加盟している。
カリフォルニア州では、生産・加工流通業者は、LGMAが指定した食品安全慣行を100%遵守しなければならず、これに準拠していることが確認されると、CDFAの認証マークを付けることが許される。
対象となる葉菜類は、結球レタス、グリーンリーフレタス、ロメインレタス、ルッコラ、ベビーリーフレタス、キャベツ、フダンソウ、ケール、エンダイブ、ほうれんそうなどである。
生産・加工流通業者は年4~5回、USDAに認められたCDFAの担当官による査察を受けなくてはならない。査察には抜き打ち検査と定期検査があり、項目は以下の通りである。
・従業員に対する十分な訓練の実施
・病気の従業員による汚染の防止
・衛生管理の徹底 (手洗いの方法・タイミングなど)
・訪問者による汚染の防止
・農業用水の処理、検査の実施
・生物由来の土壌改良材の処理
・生産、収穫、梱包、保管の際の汚染の防止
・野菜、果実と接触する可能性がある施設、道具による汚染の防止
・モニタリングの実施と記録の保管
USDAによると、調査対象7者の多くが、LGMAが設定した基準を満たすために食品安全計画を策定した上で、LGMAおよびFSMAを遵守している。また、食品安全対策経費の内訳は、食品安全担当者の雇用が38%、収穫責任者の雇用が32%、第三者による監査が17%、動物の対策が11%、水質検査が2%であった。なお、これらの経費は、売り上げの約1%と見積もられており、販売価格への影響は限定的と考えられる。それぞれの項目の概要は、以下の通りである。
・食品安全担当者の雇用:LGMAとFSMAのPRでは、1社当たり1人以上の食品安全担当者の配置を義務付けている。
・収穫責任者の雇用:LGMAは収穫責任者の役割を明確にしていないが、生産プロセスで作物の汚染が懸念される時期に食品安全計画を実施する責任を負う者と位置付けられている。
・第三者による監査:LGMAは、LGMAが指定する第三者機関の監査のみを要求しているが、今回の調査対象では、当該機関以外による監査も実施されていた。LGMAの第三者機関による監査では11%、その他の機関による第三者監査では6%と、監査によるコストは合計で17%であった。一方、FSMAのPRは第三者による監査を推奨しているが、必須ではない。
・動物対策:LGMAとFSMAのPRともに、動物侵入の痕跡を追跡するための野外検査の重要性を強調している。動物の侵入に対して収穫を禁止するほ場について、LGMAは特定しているが、FSMAのPRは特定していない。
・水質検査:LGMAは、圃場で使用されるすべての水の水質検査を毎月実施するとしている。LGMAの基準では圃場で使用されるすべての水を対象に、大腸菌の発生リスクを検査するが、FSMAのPRでは、かんがい用水の水源のみを検査の対象としている。