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海外情報(野菜情報 2017年6月号)


中国における野菜流通システムの現状とすう勢の分析

中国農業大学経済管理学院 教授 穆月英(Mu Yue-Ying)
                   大学院博士課程 李


【要約】

 中国の野菜流通方式は、主に卸売市場主導型、スーパーマーケットによる農家との契約販売、電子商取引の3つの方式が存在する。今後のすう勢としては、卸売市場主導型が主要な地位を占め続けるとともに、他の方式も併存して発展すると見込まれ、特に電子商取引がますます発達すると予想される。将来的な野菜流通方式を見据えた上で必要な対策は、農家の野菜専業合作社への加入奨励、野菜専業合作社の機能強化、多種類の取引方式の並行的発展、野菜流通情報媒体の構築推進である。

1 はじめに

中国では、消費者の所得と生活水準の向上に伴い、野菜の種類の多様化、消費時期の均一化といったすう勢が顕在化した。野菜は保存しにくい生鮮農産物であり、輸送時に求められる条件がかなり厳しいが、野菜流通の地理的限界は徐々に薄れ、大規模広域流通が段階的に形成されている。経済成長に伴い、道路などのインフラ建設に対する投資が増強されたため、高速道路網が急速に整備されており、2001年には、すでに高速道路開通距離万9400キロメートルと、米国に次ぐ世界第位となった(注。2015年末時点では、道路総距離は、457万7500キロメートル、そのうち、高速道路の開通距離は12万3500キロメートルにまで広がっている。以上のように、高速道路を主体とした全国の道路網が一定規模を備えるに至ったことで、野菜の遠距離輸送が可能となり、野菜の全国規模の広域流通と年間を通じた供給が進んでいる。

野菜生産は季節変動がある一方、需要は通年化している。また、野菜生産には地域格差があり、一部の特定の地域を中心に野菜産地が形成されている一方、需要は全国規模に広がっている。従って、野菜流通は時間的・地理的な広域化が進展している。野菜流通は生産と消費を結ぶ接点であり、需給調整に必要な枠組みとして重要な役割を担っている。しかしながら、同時にマーケット情報伝達に偏在が生じ、野菜生産者の経営コストを増やし、野菜の市場価格にも影響を与えている。伝統的な野菜流通方式とは、卸売市場を主体とするものであるが、野菜流通の市場経済化、専業化が進展する中、スーパーマーケットによる農家からの直接買付制、電子商取引などの新しい野菜流通方式が急速に発展した。各流通方式における価格構成、取引主体および取引関係の特徴はそれぞれ異なる。

本研究では統計分析法を応用しながら、中国の野菜流通の現状を解析した。その結果を基に、価格構成、取引主体や取引関係の特徴などの面から、野菜流通における主要なつの方式である、卸売市場主体の流通方式、スーパーマーケットによる農産物直接取引方式、電子商取引方式について体系的な分析を実施した。また、最後に野菜流通の将来的なすう勢に対する分析と対策の提言を行った。

なお、本稿中の為替レートは、16円(2017年月末日TTS相場16.43円)を使用した。

注1:参考文献(8)による。

2 野菜流通方式の現状

(1)野菜供給の特徴と価格変動状況

ア 野菜生産と供給の持続的増加

野菜流通は、野菜の生産と消費をつなぐ接点である。野菜の生産と消費の仕組みは、現在の野菜流通全体の特徴を決定づけている。近年、野菜産業は安定的に発展しており、野菜総生産量は増加傾向にある。すでに2000年の億4000万トンから2014年の億6000万トンまで増加しており、その増加率は72.7に上っている(図)。野菜の作付面積は引き続き拡大しており、2000年の1523万7000ヘクタールから2014年の2140万5000ヘクタールへと40.5増加している。野菜の作付面積が農作物全体の作付面積に占める割合は、2000年の9.8から2014年の12.9 まで増加している(注

注2:中国国家統計局 http://www.stats.gov.cn

069a

野菜の作付面積と生産量は引き続き増加傾向を示しているが、2003年を除き、生産量の増加率は明らかに作付面積の増加率を上回っている(図)。これは近年、中国が野菜栽培方式の近代化と優良品種の研究開発投資に力を入れ、高品質の農業資源の供給などの戦略的指導方針を強化していることと密接な関係がある。

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イ 1人当たり野菜消費量は緩やかに減少

野菜は市民生活の必需品であり、市民の日常消費の中で重要な位置を占める。2000年、都市部家庭における人当たり年間野菜消費量は114.7キログラムであり、人当たり年間野菜消費支出は176.0元(2816円)、食品消費支出の9.0を占めた(図)。農村部家庭では、消費量は106.7キログラムであり、支出は163.7元(2619円)、食品消費支出の20.2を占めた。2012年の人当たり野菜消費量は、都市部家庭で112.3キログラムであり、農村部家庭で84.7キログラムである(注3)。都市部も農村部も家庭の人当たり野菜消費量は若干減少する傾向にあるが、これは国民の所得水準の向上により、消費構造も高度化しつつあり、穀物や野菜などの需要が減り、乳製品、魚介類、牛肉・羊肉などの需要が増えていることと関係している可能性がある。

注3:中国国家統計局 http://www.stats.gov.cn

070b

都市部家庭の人当たり野菜消費量は減少傾向にあるが、野菜の品質に対する要求はますます高まっている。消費者は野菜の消費量のみならず、品質や安全性をより重視しており、近年、市場では安全性や環境に配慮した環境保全型認定野菜、安全性認定野菜、有機認定野菜の供給が増加している。

ウ 野菜の価格変動

野菜価格は市場における需給関係の反応の現れであり、野菜の需要と供給を結ぶ重要な接点でもある。野菜価格の変動は直接、野菜生産者、野菜流通業者、野菜加工業者、野菜卸売市場、野菜小売業者、消費者など、異なる主体それぞれの利益に影響を及ぼし、重要な連鎖効果を及ぼしている。近年、野菜市場価格では、大幅な変動が頻繁に起きている。2000年から2014年にかけて、野菜生産者価格指数の対前年の変動幅は最大で15を超えた(図)。2000年から2012年では、野菜消費価格指数の対前年の変動幅は最大で20を超えた(注。また、2007年から2011年の年間では、36の大都市および中規模都市での農業副産物取引市場の平均野菜小売価格は、年間では10を超える変動幅となり、最大で80以上に達した。2007年月から2011年12月までの60カ月のうち、平均野菜小売価格の月別変動幅は120を超えた(注

注4:『中国物価年鑑』各年度版

注5:『中国物価年鑑』各年度版。2011年までの36の大都市、中規模都市の農業副産物取引市場における野菜の平均小売販売価格データのみ収録。

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(2)野菜流通ルートの特徴

1978年、「改革開放」が実施され、野菜流通制度改革も始まった。改革の継続的進展、「買い物かご」プロジェクト(注6)の実施、野菜流通条件の改善に伴い、野菜流通システムは、計画経済から自由市場経済のシステムに全面的な転換が図られ、野菜市場も年々、安定的に構築されていった。その結果、徐々に複数の主体、複数の経路、多元化された野菜流通ルートが形成されていった。野菜が生産者から消費者にわたる流通方式を図にまとめた。

なお、本図は全体的な流通方式を大まかにまとめたものであり、各流通方式の詳細は後述する。

注6:80年代後半に始まった国家プログラム。一年を通じて野菜を始めとした新鮮な生鮮食料品を広く国民が入手できるように、供給体制の整備を図ることを目標とした。

072a

ア 多数の野菜流通主体

野菜流通ルートには多くの事業者が関わる。農家、特にある程度大規模な農家は、野菜流通における主要な生産者である。一方、小規模で分散した農家は、現在、中国において最も一般的な生産者であり、戸数は非常に多いが、立場が弱く、リスク対処能力も低いことなどが特徴である。近年、土地使用権貸出・譲渡制度の推進に伴い、一定規模の大規模農家が日々増えており、多くの地方では大規模経営の試行がなされているが、明確な規範や基準が不足し、十分な社会資本もないため、全国規模での展開はまだ行われていない。野菜流通者には、中間の買付業者、卸売業者、小売業者、合作社、農業生産企業などがあるが、流通者それぞれの明確な分業はない。中間買付業者は卸売業者の需要に応じて、野菜生産者から野菜を買い取る。卸売業者は野菜を小売業者に販売し、小売業者は最終消費者に販売する。仲介組織は野菜生産者から一括して野菜を買い付け、農業生産企業に販売するか、自ら小売市場にて販売を行う。農業生産企業は、野菜生産者または仲介組織から野菜を購入し、加工、分類、包装を行った後、小売市場を通じて最終消費者に販売を行う。

イ 野菜卸売市場の役割

中国では野菜の「小規模生産者」と「大規模マーケット」とのミスマッチが相当大きい。野菜の主産地はかなり集中しており、農家単体の生産規模は一般的に比較的小規模であることから、野菜の販売量に限界があるのに対し、野菜の需要は全国規模であり、広く一般に普及している。そのため、集散機能を有する市場が野菜流通に関わることになり、卸売市場が中国の野菜流通において中核的役割を果たしている。

2014年現在、農産物総合市場が689カ所あるほか、農産物専業市場が1019カ所あり、そのうち、野菜専業市場は312カ所とおよそ割を占め、農産物専業市場全体の中ではシェアが最大となった(表1)。全国に億元(16億円)以上の取引がある卸売市場は5023カ所、そのうち、野菜卸売市場は304カ所であり、そのシェアは6%程度である。中国では小売販売される野菜の5070が卸売市場を経由して流通していることから(注、野菜の大部分が卸売市場を経て末端の小売業者に流通しており、卸売市場は野菜流通の主要経路であることがわかる。

注7:参考文献(5)による。

073a

ウ 野菜の小売市場

農産物取引市場は、野菜小売のつの形態であり、農村部では朝市などのいちが中心であり、都市では農産物市場が主体である。農業部の統計によると、現在、全国では各種の農産物取引市場が2万7000カ所ある。そのうち、野菜を取り扱う市場は6.6を占めている。消費者の所得水準と健康意識の向上により、人々は品質と安全性をより重視し、スーパーマーケットは野菜の小売形態の一部としてますます普及しており、強大な潜在的競争力がある。スーパーマーケットは、農産物取引市場と比べ、農産物の品質や安全性が保たれ、購買施設として優れた環境を備えている。まず、スーパーマーケットには、高度に整備された適切な貯蔵設備があり、衛生システムが比較的整っている。また、販売する野菜の供給元も比較的安定し、品質、安全性、信頼性が高い。さらに、消費者は野菜などの食品のついでに他の日常雑貨も購入できるため、時間の節約になり、便利である。

エ 野菜流通情報媒体の構築

野菜などの農産物市場では、需給アンバランスの現れとして、「売買ともに難しい」という状況供給は多いが、それに見合う需要がない、需要は多いがそれに見合う供給がない、といった状況が頻繁に生じる。このような状況において、野菜などの農産物生産者、野菜流通業者、野菜加工業者、野菜卸売市場、野菜小売業者、消費者に需給と販路、車両輸送などの市場情報を提供するため、政府は、農産物情報ネット、各省・市の農業部門の公式ホームページ、「ネット(農業分類情報ネット)」など、農産物の公共情報媒体の構築を急いでいる。これらの情報媒体は、市場価格動向、農業技術、最新ニュース、関連政策などの提供を主なサービスとしている。このため、野菜生産者などに迅速に市場情報を提供し、野菜市場の情報の偏在をある程度緩和することができた。しかしながら、目下、これらの媒体は市場情報の収集と発信が主体であり、実用的な性能は十分とは言えず、影響力も限定的である。サービスの効果も全く明確でなく、供給との連携や野菜販路の問題などの確実な解決には継続的な改善が待たれる状態である。

(3)野菜流通が直面する問題

ア 従来の流通方式では中間段階が多く、流通コストが高い

野菜流通の方式は日々多様化しているが、依然として、従来の卸売市場を主体とする流通方式が主流である。このような流通方式において、野菜が生産者から消費者の元にわたるには多くの中間段階がある。一般的には、野菜生産者、中間買付業者、産地卸売業者、消費地卸売業者、小売業者、消費者などの段階がいくつも存在する。流通プロセスにおける段階が増えれば、その分、流通コストが増える。また、流通距離も大きく、流通時間もかなりかかる。流通段階における野菜の腐敗や変質も起こり得るが、それは野菜生産者や販売者の損失となる。このような問題は野菜の流通コストの増大につながり、末端の野菜小売価格に転嫁される。

イ 野菜流通情報化の程度が低く、価格変動が大きい

現在、野菜生産者の主体は家族経営農家であるが、家族経営農家への野菜生産販売情報の発信元は基本的には地元市場しかない。このような伝統的な方式では、関連する専門的インターネット、WeChat(中国発のSNSサービスアプリ)などの近代的な通信方法による情報の取得が難しい。その主な理由は二つである。一つは、近代的な通信媒体に関する農家の認識度合いがあまり高くなく、その使用が難しいか、使い方を学ぼうとしないこと。もう一つは、既存の農産物情報媒体が提供するコンテンツの多くは最新ニュース、関連政策などに集中し、野菜の供給、価格に関する情報が不足しているが、大部分の野菜市場には近代的な情報設備が十分配備されておらず、情報化の程度がかなり低いことにある。農家は野菜流通の起点であるが、その規模は小さく、分散している。個別の農家単位では中間買付業者との間に安定的な供給・販売関係を築くことは難しく、正確な市場の供給と価格の情報を得ることも困難である。従って、正確な情報は、市場経済において市場に参入するための必要な要件であり、野菜の供給チェーンにおいて、生産から加工、輸送、販売に至る各段階において迅速かつ正確な情報が必要である。それがなければ目まぐるしく変化する市場の変化に対応することはできず、不正確な市場情報が野菜市場の安定を損ない、野菜市場価格の大幅な変動を起こしやすくなる。例えば、2000年11月から2009年月の100カ月のうち、62カ月で野菜価格の変動幅が10を超えた(注。2010年には、ばれいしょの小売価格は急騰し、鶏卵500グラムの価格(3.7元(59円))に近づいた。2011年には、はくさいなどの一般的な野菜に深刻な販売不振が生じたが、小売価格はそれでもかなり高かった。「しょうが価格の急騰」、「にんにく価格の急騰」など大幅な価格変動が、野菜市場で頻繁に発生している。

注8:参考文献(4)による。

ウ 各流通段階の野菜ロス

野菜は生鮮品であり、腐敗・変質しやすいものである。輸送、貯蔵に対する条件も厳しく、野菜の生鮮度を保つためには、コールドチェーンによる輸送や冷蔵保管といった物流方式が望ましい。現在、中国には冷蔵食品のコールドチェーン輸送はあるが、野菜輸送において必要な冷蔵、保温設備や倉庫などのインフラが未だ十分ではなく、大部分の野菜が冷蔵設備のないコンテナ車で輸送されている。そのため、野菜の損失が生じ、野菜経営におけるリスクを増大させている。統計では、現在、中国の道路物流輸送システムにおいては、80が平型荷台トラック、20が密閉式箱型荷台トラックであり、全体の台数のうち、低温冷蔵、保温貯蔵ができる自動車の台数は10である。輸送中の野菜の損失率は、約2530であり(注、先進国の水準より高い。

注9:参考文献(6)による。

3 主要な野菜流通方式

従来型の野菜流通方式とは、卸売市場を主とするものである。野菜の市場経済化、専業化の程度の高まりにより、スーパーマーケットによる農家からの直接買付、電子商取引などの新型の野菜流通方式が急速に発展している。本研究は、価格構成、取引主体の特徴、取引関係の特徴などの角度から、野菜流通における種類の方式、すなわち卸売市場主導型の流通方式、スーパーマーケットによる農家からの直接買付方式、電子商取引方式について分析を行う。

(1)卸売市場主導型流通方式

卸売市場主導型流通方式とは、野菜の流通において卸売市場が主導的役割を果たし、卸売市場を通じて野菜を集散・販売するものである。この方式は野菜流通の主要な方式であり、野菜流通量の70を占める(注10。目標とするマーケットと輸送距離を考慮して、多種類の流通経路が形成されている。それらの具体的なフローは図に示す通りである。

注10:参考文献(1)による。

075a

ア 各段階における野菜価格の構成

経済学の理論では、価格は通常、コスト、利潤税金から構成される。野菜流通経路の各段階における価格もそれらから構成される。しかしながら、各段階における構成要素はそれぞれ若干異なる。従来の卸売市場主導型流通方式では、通常、生産者、卸売市場、小売市場、消費者などの複数の段階があり、各段階における野菜価格の構成は以下の通りである。

(ア)野菜買付価格の構成

『全国農産物コスト収益データ』の農産物コストの統計方法によると、生産者買付価格は主に生産コスト、土地代、生産者純利益の要素から構成される。そのうち、生産コストは生産者買付価格を構成する主体であり、物財費・役務費、人件費からなる。土地代には、土地の賃料と自作地地代(自作地の賃料相当額)が含まれる。生産者純利益とは、生産者買付価格から各種コストを差し引いた後の剰余である。表2に野菜の生産者買付価格の構成の概略を示す。

076a

にハウス栽培野菜の生産者買付価格の構成に関する具体的な状況を示した。

076b

の生産コストの構成要素のうち、物財費・役務費は、直接費用と間接費用に分けられる。そのうち、直接費用とは、野菜生産過程において直接かかった各種費用であり、間接費用とは、生産プロセスと直接関わるものであるが、野菜栽培用ハウスの建設費など、各年度に分割して生産コストの各種費用に計上できるものである(注11)。人件費とは、家族労働費と雇用労働費の種類である。そのうち、家族労働費とは、生産段階において用いた家族の労働力を一定比率にて換算したものであり、雇用労働費とは、生産段階において雇った作業員にかかった現金支出である。表にハウス栽培野菜の物財費・役務費および人件費を示す。

注11:参考文献(3)による。

077a

(イ)野菜卸売価格の構成

野菜卸売価格は主に卸売業者の調達コスト、流通費用、純利益から構成される(表5)。調達コストとは、卸売業者が野菜を買付する際に発生する費用であり、主に野菜の仕入れコストと代理費用である。そのうち、仕入れコストとは、卸売業者が野菜を買い付けた際に支払う現金支出であり、買付価格に購入数量を乗じた金額となる。代理費用は、卸売業者が中間買付業者を雇って野菜を買い入れた際に、中間買付業者に支払う手数料である。流通費用とは、卸売業者が野菜を買い付けた後、卸売市場に運搬し、販売するまでに発生する各種費用である。輸送費、倉庫保管費、包装加工費などが含まれる。純利益とは卸売総額から各種コストを差し引いた後の剰余であり、卸売業者の収益状況を示すものである。

077b

2015年月に、北京新発地卸売市場のきゅうりの卸売価格を調査した。きゅうりの平均卸売価格は500グラム当たり1.9元(30円)であった(表)。そのうち、調達コストが占める割合は63.16、流通費用の割合は27.19であった。卸売業者の純利益の割合は9.65となり、調達コストは、卸売価格構成の中でも最大の比率を占めていたことがわかった。

077c

(ウ)野菜小売価格の構成

野菜卸売価格と同じように、野菜小売価格も、調達コスト、流通費用、純利益からなり、その違いは主体が野菜卸売業者から野菜小売業者に代わっただけである(表7)。

078a

調達コストとは、小売業者が野菜を調達する際に発生する費用であり、主に野菜の仕入れコストと注文費用である。そのうち、仕入れコストとは、小売業者が野菜を仕入れる際に支払った現金支出のことであり、卸売価格に調達数量を乗じた金額となる。注文費用とは、小売業者が野菜仕入れ代金以外に支払ったその他の費用であり、例えば、電話代、情報代金などである。流通費用とは、小売業者が野菜を調達した後、野菜を小売市場に運んで販売するためにかかった各種費用であり、輸送費、倉庫保管費、包装加工費などを含む。純利益とは、野菜の小売金額合計から各種コストを差し引いた後の剰余であり、小売業者の収益である。

2015年月、本研究の一部として、北京清河小営農産物取引市場のきゅうりの販売価格を調査した。同市場内の販売業者は、野菜の大部分を清河小営二級卸売市場から調達している。これらの市場は非常に近いため、輸送費はほとんど必要なく、市場内の販売業者にかかる流通費用は比較的少ない。きゅうりの平均小売価格は、500グラム当たり2.5元(40円)であり、そのうち、調達コストが占める割合は72、流通費用は9.2、小売業者の純利益は18.8である(表)。調達コストは、きゆうりの小売価格のうち、最も大きな割合を占めていた。

078b

イ 特徴

(ア)全体

卸売市場主導型流通方式では、野菜は比較的広範囲に流通する。この方式で取引される野菜は、種類や品質の面では、大量取引される一般的な野菜が主体であり、種類も豊富、多様である。野菜の品質は、中から下の等級が主である。流通経路と段階では、流通経路は、多層化、多元化しているのが特徴であり、流通段階も比較的多く、通常段階から段階が必要である。流通時間とコストでは、流通段階が比較的多いため、流通に必要な時間も比較的長い。なおかつ、野菜の流通過程において、各段階に参画する主体のコストが価格に上乗せされるため、必要な流通コストがかなり高い。

(イ)取引主体

野菜生産者は、野菜流通の起点である。現在の中国の野菜生産者は、小規模分散的な農家が主流である。農家の生産規模が小さいため、市場競争力も弱い。一般的には価格決定権がなく、野菜産業チェーンの中では弱い立場である。また、少数ではあるが自社の生産基地を有し、かなり大規模な野菜生産を行っている野菜生産企業もある。これらの企業は、主として有機野菜やエコ野菜などの高品質な産品を生産・販売しているため、市場競争においても一定の優位性がある。

中間買付業者は、個人でも法人でもよく、現地の野菜生産状況をかなり熟知しており、卸売業者の代理として野菜の買付や輸送業者の手配などを行い、卸売業者から代理手数料を得る。

野菜卸売業者は、野菜生産者と消費者を結ぶ役割を果たしており、主として野菜の調達、加工、包装、輸送、販売に携わり、調達と販売の価格差から利益を得る。活動範囲はさまざまであり、産地の卸売業者と消費地の卸売業者に分けられる。産地の卸売業者は、主に野菜産地の卸売市場において野菜の調達・販売を行い、消費地の卸売業者は主として野菜消費地の卸売市場において野菜の調達・販売を行う。

農産物取引市場は、伝統的な野菜の小売形態の主体である。野菜の貯蔵設備は老朽化が進んでおり、衛生状態も特に優れているわけではない。農産物取引市場の野菜小売業者はほぼ個人業者であり、販売している野菜は一般的な野菜を中心に種類も揃っている。野菜の小売業者と消費者の間では現金取引が行われている。小売業者それぞれの野菜販売数量にはかなり大きな差があり、同一日であっても時間帯ごとに野菜の価格がかなり異なる可能性がある。

スーパーマーケットは近年、急速に成長を遂げている小売形態の一つである。高度に整備された貯蔵設備と良好な衛生条件が整っており、販売されている野菜の品質も良く、安全で信頼性が高い上、種類も比較的充実している。陳列もかなりきちんと整えられており、消費者が自由に選べるようになっている。スーパーマーケットが負担しているコストは、農産物取引市場よりも多額なため、スーパーマーケットの野菜は通常、農産物取引市場よりも高い。

コンビニエンスストア(CVS)は、通常、住宅地の周辺にあり、店舗の面積は相対的に小さい。主な目的は住宅地に住む人々が野菜を買いやすくすることである。農産物取引市場と比べ、CVSの野菜の小売価格は相対的に高いが、衛生条件は良く、スーパーマーケットと比べて、CVSで売られている野菜の種類は少ない。

(ウ)取引関係

卸売市場主導型流通方式において、野菜生産者と中間買付業者、生産者と卸売業者、買付業者と卸売業者、卸売業者と小売業者との間の取引関係はかなり緩やかであり、通常、契約や提携といった制約はない。双方の取引は対面取引が主体であり、単純な市場での売買関係である。自身の利益を考えた取引を行い、自身の利益を最大化することが目標である。中間買付業者と生産者との間の提携関係がある場合もあるが、両者は一般的に市場の動向、価格、野菜の品質を基に取引相手を選んでいるため、提携関係は強固ではない。中間買付業者と卸売業者との間には通常、簡単な代理関係があり、中間買付業者は卸売業者による野菜の買付を助けており、卸売業者は中間買付業者に代理費用を支払っている。双方の提携関係は緩やかであり、強制的な拘束関係では全くない。

(2)スーパーマーケットと農家の契約販売

スーパーマーケットによる農家からの直接買付方式は、スーパーマーケットが市場情報、管理などの面で持つ優位性を利用して、農産物の生産と加工、流通の全てのプロセスに関与することであり、生産技術、物流配送、市場情報コンサルティング、製品販売など、一連のサービスを提供し、野菜流通において小規模生産と大規模マーケットを効果的につないでいる(注12)。スーパーマーケットと農家の契約販売では、野菜専業合作社、農業生産企業が中核的な位置づけであり、注文書により農家から野菜を調達し、チェーン店方式によりスーパーマーケットで野菜を販売する。その具体的な流れは図に示す通りである。

注12:参考文献(7)による。

080a

ア 各段階の野菜価格の構成

スーパーマーケットによる生産者からの直接買付方式においては、野菜専業合作社または農業生産企業は、共同経営方式のスーパーマーケットにおいて野菜を販売するため、野菜価格には、主に野菜合作社または農業生産企業が、生産者から調達する野菜の買付価格と、スーパーマーケットにおいて販売するコストが含まれる(表9)。この場合、生産者からの買付価格の構成は、先述の卸売市場主導型流通方式における買付価格の構成と同じである。スーパーマーケットの小売価格の構成は、卸売市場主導型流通方式における野菜小売価格の構成と類似しているが、若干異なるところがある。それは、野菜合作社または農業生産企業と、生産者との間に契約関係が存在しており、契約の締結と履行に費用が伴うことである。そのため、スーパーマーケットの小売価格の構成には取引費用が追加されるのである。

080b

イ 特徴

(ア)全体

スーパーマーケットと生産者の契約販売は、生産者と野菜小売業者との間に比較的安定的な調達販売関係が構築され、野菜の流通効率が向上するとともに、野菜の流通経路の追跡に有利である。野菜の種類と品質から考えると、スーパーマーケットによる生産者からの直接買付方式において取引される野菜は、一般的な野菜や高級品が主体であり、種類も豊富である。流通ルートと段階から見ると、スーパーマーケットによる生産者からの直接買付方式におけるルートは単一であり、生産者とスーパーマーケットの間には通常、野菜専業合作社または農業生産企業が介在するのみであり、流通段階が少なく、通常2~3段階で済む。流通時間とコストから見ても、流通段階が少ないことから、必要となる流通時間は比較的短く、流通コストも比較的少なく、効率性は比較的高い。

(イ)取引主体

スーパーマーケットによる生産者からの直接買付方式に関与するのは、通常、家族経営の農家である。こうした農家の生産規模は小さく、分散し、市場競争力も弱い。野菜市場において価格決定権はなく、野菜産業チェーンにおいて弱い立場にある。

野菜専業合作社は、通常、政府の主導により組織されるか、自発的に組織された専業団体である。注文書を通じて生産者から野菜を調達するため、小規模で分散した農家の野菜が「売りにくい」という問題をある程度解決し、農家に安定的な販路を確保している。現在、全国規模で販売機能を十分に発揮できる野菜専業合作社の数は少なく、今後、大きく発展することが期待される。

野菜生産企業は、一般的に自社の生産基地を有する、比較的大規模な野菜生産者である。これらの野菜生産企業は主に有機野菜、エコ野菜などの高品質な野菜を生産・販売している。これら野菜生産企業は、注文書方式により小規模農家から野菜を調達することもあり、この場合、通常、高い品質と高い等級が求められる。野菜生産企業は、野菜を加工、包装した後で販売する。野菜生産企業は、規模が大きく市場情報も十分に理解しているため、市場競争において優位である。

スーパーマーケットは、近年急速な発展を遂げている小売形態である。良好で高度に整備された貯蔵設備があり、衛生条件も良い。販売されている野菜の品質は高く、安全で信頼性も高い上、等級も高い。種類も相当揃っている。商品の陳列もかなりきちんとしており、消費者が自由に選んで買うことができるため、便利で良好な購買施設である。

(ウ)取引関係

スーパーマーケットによる生産者からの直接買付方式において、生産者と野菜合作社、生産者と農業生産企業との間には、通常、安定的な契約関係が存在し、双方の利益を保証している。合作社または農業生産企業は、契約により生産者から野菜を調達する。生産者と合作社の関係は比較的密接であり、生産者は合作社と一般に提携契約を締結する。合作社と野菜生産企業との間では通常、注文契約を交わし、合作社は、契約上の要求に基づき農業生産企業に相応の数量、種類、品質の野菜を提供する。合作社とスーパーマーケット、野菜生産企業とスーパーマーケットの間には通常、共同経営方式が採られる。すなわち、野菜合作社、野菜生産企業は、スーパーマーケットで売場を借り、調達した野菜をその売り場に運んで販売し、スーパーマーケット側に相応の売り場代、サービス料、管理費などを支払うのである。

(3)電子商取引方式

近年、野菜の電子商取引が、中国では急速に成長している。これは野菜生産者と消費者との取引を第三者または自所有の電子商取引媒体を通じて行うものである(注13)。消費者は、電子商取引媒体を通じて必要な野菜の注文を行い、野菜生産者は、消費者の需要に応えて相応の野菜を提供し、第三者または自ら構築した物流により、双方が取り決めた時間に配送する。その具体的な流れは図に示す通りである。

注13:第三者の電子商取引媒体の一例としては、ネット通販企業のホームページが挙げられ、自社所有の電子商取引媒体の一例としては、合作社や農業生産企業自らによるものが挙げられる。

082a

ア 野菜価格の構成

野菜の電子商取引方式の具体的な流れとその流通経路は、主に以下の複数の形式がある。

経路1:農家第三者電子商取引媒体消費者

経路2:農家合作社農業生産企業第三者電子商取引媒体自社媒体消費者

経路野菜生産企業第三者電子商取引媒体自社媒体消費者

電子商取引方式においては、それぞれの経路で、流通の過程や段階は異なり、野菜価格の構成も若干異なる。

(ア)経路1

経路では、野菜は、農家から直接、第三者の電子商取引媒体を通じて販売され、第三者の物流を使って配送される。ここでの野菜価格は農家の販売価格であり、その価格構成には、主に農家の生産コスト、土地代、取引媒体手数料、物流手数料、農家の純利益が含まれる(表10)。そのうち、生産コストには物財費・役務費、人件費が含まれ、土地代には借地賃料と自地代が含まれる。

083a

(イ)経路2

経路では、野菜専業合作社または農業生産企業は、農家から野菜を調達し、第三者または自社所有の電子取引媒体にて販売し、第三者または自社所有の物流によって配送する。ここでの野菜価格には、野菜専業合作社または農業生産企業の野菜小売価格が含まれる。野菜専業合作社または農業生産企業の野菜小売価格の構成には、調達コスト、流通費用、取引費用、取引媒体費用、物流費用、純利益が含まれる(11)。そのうち、調達コストには仕入れコストと発注費用が含まれ、流通費用には、輸送費、倉庫貯蔵費、包装加工費、損耗費などが含まれる。取引費用は、野菜専業合作社または農業生産企業と農家の間で協議交渉を行う費用、契約締結費用などが含まれる。取引媒体費用は、第三者の電子商取引媒体の手数料または自社所有取引媒体の運営費であり、物流費用は、第三者の物流手数料または自社所有の物流運営費である。

083b

(ウ)経路3

経路では、野菜生産企業は自社の生産基地を持っており、野菜は直接、第三者または自社所有の電子商取引媒体を通じて販売され、第三者または自社所有の物流により配送を行う。ここでの野菜価格は、野菜生産企業の販売価格であり、経路における農家販売価格の構成と似ている。主な内訳は、野菜生産企業の生産コスト、土地代、取引媒体費用、物流費用、企業の純利益である(表12)。そのうち、生産コストは物財費・役務費、人件費であり、土地代は土地の賃貸費用である。取引媒体費用と物流費用の詳細は、経路と同様である。

083c

イ 特徴

(ア)全体

野菜の電子商取引方式は、ネットワーク情報技術とネット通販の発展によって生まれた新しい野菜流通の方式である。野菜生産者、販売者と消費者を効率的に結び、地域を超えた野菜販売を促進することができる。電子商取引により取引される野菜の種類と品質では、輸送しやすい一般的な野菜、高級野菜、特殊野菜が主体である。野菜の品質・等級もかなり高い。流通経路と段階から見て、電子商取引方式の流通経路は比較的単一であるか、農家または農業生産企業が直接、電子商取引媒体を通じて取引を行っている。経由する流通段階は少なく、一般的には1~3段階である。流通時間とコストは、経由する流通段階が少ないため、必要な流通時間も流通コストも少なく、流通効率は高い。

(イ)取引主体

野菜の電子商取引方式に関わる農家、野菜専業合作社、野菜生産企業の主体としての特徴と、卸売市場主導型方式、スーパーマーケットによる生産者からの直接買付方式における主体の特徴は、ほぼ同じである。第三者または自社所有の電子商取引媒体は、野菜の展示、機能説明、商品取引を行う媒体であり、売買する双方が合意した後、電子商取引を行う。第三者または自社所有の物流により野菜の配送を行い、取り決められた時刻と場所に、消費者に届ける。

(ウ)取引関係

電子商取引方式において、農家と合作社、農家と農業生産企業との間の関係は、スーパーマーケットによる生産者からの直接買付方式におけるそれらの関係と類似しており、安定した効果的な契約関係である。農家、合作社、農業生産企業は、第三者の電子商取引媒体を通じて野菜の販売を行う際、第三者の電子商取引媒体の規定を遵守する同意事項に同意する必要がある。第三者の電子商取引媒体は、契約に定められた監督と管理の責任を持つ。農家、合作社、農業生産企業は、それぞれ複数の第三者の電子商取引媒体と提携することができる。複数の第三者の電子商取引媒体を通じて野菜を販売するため、農家、合作社、農業生産企業と第三者の電子商取引媒体との間には比較的緩やかな契約関係がある。第三者の物流業者は商品の配送サービスを提供する。農家、合作社、農業生産企業は、複数の第三者の物流業者に配送を依頼することができ、相応の配送料を支払うため、相互間の提携には強制的な拘束はなく、提携関係は緩やかである。

4 おわりに

(1)変化のすう勢

以上が野菜流通の現状と主要な流通方式に関する分析である。以下に野菜流通の将来的すう勢に関するまとめを行う。

第一に、卸売市場主導型流通方式が、依然として主要な地位を占めるであろう。中国における「小規模生産、大規模マーケット」という野菜の需給構造を短期間のうちに変えることは困難であり、野菜産地と販売の集約化が進行しているため、地域を超えた野菜の流通が増加している。そのため、野菜流通チェーンにおいて、商品を集散させる流通主体が参画しており、産地と消費地の卸売市場には、商品を集散させ販売する機能がある。そのため、将来の一定期間において、卸売市場主導型の野菜流通方式は、主要な地位にあり続けるであろう。

第二は、多種類の野菜流通方式の併存的発展である。スーパーマーケットは、便利で整備された購買施設である。スーパーマーケットで販売している野菜は、安全性においても信頼性が高い。野菜の市場経済化、生産の専業化が進むにつれ、野菜の品質や安全性に対する人々の関心も高まり、スーパーマーケットでの購入が好まれるようになっているため、スーパーマーケットによる生産者からの直接買付方式も発展し続けるであろう。インターネットの普及、ネット通販の発展と物流施設の整備が継続して行われ、電子商取引などの新しい形の野菜流通が急速に発達している。

第三に、新型の取引方式が野菜流通に続々と参入するであろう。スーパーマーケットによる農家からの直接買付や電子商取引などの近代的野菜流通方式が発展し、野菜の電子決済方式が急速に広まる。ネットオークション方式も、野菜の取引情報をより透明化し、流通効率を向上させるのに有利に働き、野菜価格の形成を促す。野菜の近代的取引が発展すれば、野菜の生産者、販売者は、情報流通の迅速さと効率性をさらに追求することになり、ネットオークション方式が野菜流通にますます導入されるであろう。

(2)対策の分析

野菜流通の現状と将来的すう勢に基づき、野菜流通の発展に焦点を当て、以下の対策の提言を行う。

第一に、農家の野菜専業合作社への加入を奨励することである。野菜合作社は、政府が主導し、農家が自発的に参加する経済協力組織であり、農家の利益維持を目的としている。個別の農家は、生産規模も小さく、市場競争力も弱く、経営リスクが高い。野菜合作社への加入は、発言権の向上、野菜販路の安定化、経営リスクの縮小化につながる。野菜合作社への農家の加入を奨励するには、まず、合作社の職能と優位性に関する農家向けの宣伝広報を強化し、農家に合作社の役割をよく理解してもらう必要がある。次に、合作社の管理者の経営管理レベルを引き上げ、農家による生産と販売、市場開拓などに対する合作社管理者の能力を十分に発揮させることである。最後に、合作社は、作付、育種技術などの農家向け研修を頻繁に実施すべきである。

第二に、野菜専業合作社は、野菜流通における地位と役割を強化することである。野菜合作社は、通常、発注書により農家から野菜を調達し、農家が生産した野菜をまとめて集中的に販売するため、農家の組織率向上に重要な役割を果たす。このため、野菜合作社の野菜流通における立場と役割を強化するべきである。一方で、相応の制度または支援政策を打ち出し、野菜合作社の野菜流通への参画を促すべきである。さらに、合作社の多種類の方式による野菜流通への参入を奨励すべきである。現在、野菜合作社は、主に農業生産企業との提携により野菜流通に参画しているが、合作社とスーパーマーケットによる農家からの直接買付方式の推進や電子商取引の発展、野菜オークションへの参画、その他の方式による野菜合作社の野菜流通への参画を奨励すべきである。

第三に、多種類の取引方式の推進と並行的発展を加速化することである。現在、野菜取引方式は、伝統的な現金取引、現物取引が主体であり、取引費用がかかり、効率も低い。電子決済にすれば取引時間も短縮でき、インターネットの利便性を利用することにより、買い手・売り手双方が迅速に情報を伝達できるため、取引効率が向上する。ネットオークションは、市場情報の偏在を改善し、情報収集や交渉のコストを節約できるため、取引がより公正になる。このため、電子決済やネットオークションなどの近代的取引方式の振興を加速すべきである。

第四に、野菜流通情報媒体の構築を推進することである。現在、野菜情報媒体が提供しているコンテンツは、主に農業技術、最新ニュース、関連政策などに集中しているが、 野菜生産者、販売者は、野菜の需給状況や価格情報、販路により関心が高いため、情報管理システムなどの先進的手段を利用し、野菜の流通各段階の需給、価格情報を収集し、野菜流通に関与し、主体と情報共有を図り、野菜流通における情報の偏在を改善し、野菜流通効率を向上させることについて検討すべきである。


参考文献

(1)龍文軍、王慧敏「中国の生鮮野菜流通方式:観察と検討」『経済研究参考』、2014(62):20-28

(2)穆月英『北京市における野菜産業経済の研究』中国農業出版社、北京、2013.11

(3)祁春節『中国における柑橘産業の経済分析と政策研究』華中農業大学博士論文、2001

(4)銭克明「農産物価格の調整システムの更なる強化と整備」『中国経貿易導刊』2010(6):9-10

(5)瀋辰、穆月英「中国における野菜市場流通の特徴及び成因分析」『中国野菜』2013(15):5-9

(6)田野「サプライチェーン管理に基づく野菜の流通経路管理の研究」『長春理工大学』2014

(7)熊会兵、肖文韜「“スーパーによる農家からの直接買付”の実施条件と方式分析」 『農業経済問題』2011(2):69-72

(8)周応恒、蘆凌霄、耿献輝「中国における野菜産地の変動と広域流通の展開」『中国流通経済』2007(5):10-13


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