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海外情報(野菜情報 2017年2月号)


主要国の野菜の生産動向等

調査情報部


1 中国

 日本が輸入するにんじんは、約9割が中国産であることから、今月号では、山東省を中心に中国のにんじんの生産動向等を紹介する。

(1)日本における中国産にんじんの位置付け

日本のにんじん供給量のうち、輸入品は約割を占めている(図)。輸入品はほぼ全量が生鮮品であり、その約割が中国産である。月別に見ると、年間を通じて輸入されているものの、春から夏にかけてが多く、冬場は比較的少ない。しかしながら、2016年9~11月は、国内の天候不順の影響を受けて、輸入量が増加している(図2、3)。中国以外では、わずかではあるが、近隣のアジア大洋州諸国から輸入されている。

なお、本稿中の為替レートは17円(2016年12月末日TTS相場17.06円)を使用した。

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(2)生産動向

中国のにんじんの主産地であるさんとう省におけるにんじんの生産は、とうえい市、ぼう市、ちんたお市などを中心に行われている(図4)。山東省のにんじん栽培は、春にんじんと秋にんじんの二つの作型がある。春にんじんは、月から月にかけてしゅし、月に収穫する。一方、秋にんじんは月から月にかけて播種し、10月に収穫する(図)。なお、春にんじんは育苗時に温室を利用するため、秋にんじんより生産コストが高くなる傾向がある。

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近年の生産動向を見ると、作付面積は万ヘクタール台前半、収穫量は230250万トン、単収(10アール当たり収量)は7.37.6トンで推移している。2015年は、2014年前半の価格上昇を受けて、作付面積、収穫量ともに前年を上回った。一方、その影響から2015年前半に価格が下落したため、2016年は、作付面積、収穫量ともに前年を下回った(表)。

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(3)生産コスト

10アール当たり生産コストの動向を見ると、2016年は5922元(10万674円、2013年比6.8増)と、かなりの程度増加している(表)。項目別に見ると、近年の中国の野菜生産全般に見られる傾向であるが、土地代と人件費が大幅に上昇している。一方、種苗費は、これまでの品質の高い一部の種子への需要の高まりが一服し、種苗会社が農家の生産を促すため種子価格を引き下げたことから、減少している。

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(4)価格動向

山東省のにんじんの価格推移を見ると、傾向が異なる年もあるが、一般的には、上半期に上昇し、下半期は下落することが多い(図)。これは、収穫・流通が下半期中心であることに加え、上半期に流通するにんじんは、育苗時に温室を利用した春にんじんや、前年秋に収穫され倉庫で貯蔵された秋にんじんであり、光熱費や保管費用が加味されて価格が設定されることも関係している。

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2015年の価格は、収穫量の増加に伴い、上半期は下落した。その結果、2015年下半期以降、収穫量が減少し、2016年月まで、変動しつつも上昇傾向となった。その後は、収穫量の増加により、再び下落に転じている。

(5)国内向け出荷動向

山東省で収穫されたにんじんの約割は、国内向けに出荷されており、北京、上海、広州などの大都市向けが中心である。

(6)輸出動向

中国のにんじん輸出は生鮮(冷蔵品が中心であり、近年は60万トン程度が輸出されている。国内仕向けが中心とはいえ、山東省は輸出向けの主要産地でもあり、特に青島市内に位置するさい西せい(注)の一部地域では、大半が輸出向けとなっている。

輸出先別に見ると、韓国が最も多く、日本は第の輸出先である。その他にも、地理的に近い東南アジア諸国などが主な輸出先となっている(図)。

(注):中国では、大きい行政区分から順に、「省」、「地級市」、「市轄区・県級市」などとなっており、青島市は地級市であり、莱西市は県級市である。

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2 米国

 米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州を中心とした生産動向を紹介する。また、トピックスとして、2015年のセルリーの生産および輸出状況について報告する。

(1)ブロッコリー、レタスおよびセルリーの生産動向

ア ブロッコリー

(ア)作況および作付面積

11月中旬には、モントレー郡のブロッコリーの収穫期は終わりを迎えつつあり、12月初旬以降、リバーサイド郡の収穫、出荷が始まり、月まで続く見通しである(図)。同産地では、温暖な日が続いており、ブロッコリーの収穫期が平年よりも早くなっている。また、12月中旬に出荷されていたブロッコリーの品質は、おおむね良好であった。

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なお、本稿中の為替レートは、米ドル117円(2016年12月末日TTS相場117.49円)を使用した。

(イ)生産者販売価格

2016年10月のブロッコリーの生産者販売価格は、キログラム当たり0.83米ドル(97円、前年同月比35.2安)と、天候不順による収穫の遅れや品質のバラツキにより、前月からわずかに上昇した(表)。

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11月から12月初旬にかけて、ブロッコリーの出荷量および品質は安定していたため、価格は比較的安い水準で推移した。しかし、12月の週目から品薄感が強まっており、インペリアル郡産やリバーサイド郡産は、カートン(14個入り)当たり8.5米ドル(キログラム当たり0.82米ドル96円)、サンタバーバラ郡サンタマリア産は同米ドル(同0.87米ドル102円)で取引されていた。

(ウ)対日輸出動向

2016年10月のブロッコリーの対日輸出量は、前年同月比3.5倍の3829トンと、今年に入ってからの最高値を更新した(表)。この要因として、台風や降雨により日本国内産の収穫量が大幅に減少したことが考えられる。また、輸出単価は同11.2安のキログラム当たり約1.19米ドル(139円)と、前月からわずかに上昇した。

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(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格

2016年10月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比50.0増の189トンと、2014年10月以降で最多となった。卸売価格はキログラム当たり398円となり、前月からやや上昇した(表)。なお、10月に同市場で最も入荷量が多かったブロッコリーは北海道産であったが、その量は約359トンと、台風による影響により前年同月比50.2減となった。卸売価格は、米国産を大幅に上回る同570円であった。

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イ レタス

(ア)作況および作付面積

11月中旬、モントレー郡ではレタスの収穫期は、終わりを迎えつつあった。同時期に出荷されたレタスは、高温や降雨に伴う虫害やチップバーン(葉の先端の褐色化)が多く見られた。12月中旬には、リバーサイド郡でロメインレタスやリーフレタスの収穫が開始され、12月週目にはインペリアル郡で結球レタスの収穫が始まった。また、12月は、アリゾナ州ユマのリーフレタス、ロメインレタスの収穫、出荷期であるものの、今年は凍霜害により収穫が遅れている。なお、12月中旬時点では、リーフレタスの品質は全般的に良好で、結球レタスの品質はやや不良とされている。

(イ)生産者販売価格

2016年10月の結球レタスの生産者販売価格は、生産量の増加に伴う需給の緩みから、前年同月比40.8安のキログラム当たり0.45米ドル(53円)と、前月に続き低調に推移した(表)。

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現地報道によると、12月の価格はリバーサイド郡産およびインペリアルバレー産の収穫、出荷が始まったことに加え、需要が落ち着いていることから、前月に引き続き、安定した水準で推移している。12月週目の時点では、結球レタスはカートン当たり約7~7.5米ドル(キログラム当たり約0.310.33米ドル約3639円)、ロメインレタスは約8~10米ドル(同0.350.44米ドル約4151円)、グリーンリーフレタスも約8~10米ドル(同0.350.44米ドル約4151円)で取引されていた。

(ウ)対日輸出動向

2016年10月の結球レタスの対日輸出量は、前月を上回る458トン(前年同月比53.2増)で、輸出単価は前年同月比4.9高のキログラム当たり1.07米ドル(125円)であった(表)。一方、結球レタス以外の対日輸出量は、同約22倍の1197トンで、輸出単価は同60.5高のキログラム当たり2.07米ドル(242円)であった(表)。輸入量増加の要因として、台風による国産品の不足と価格高騰があるとみられる。

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(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格

2016年10月の東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は、前年同月比2.7倍の1.6トンで、キログラム当たり239円(前年同月比41.7安)であった(表7)。また、米国産結球レタスは19トン入荷された。一方、最も入荷量が多かった結球レタスは茨城県産であり、その量は3111トンで、卸売価格は、米国産を大幅に上回る同336円であった。

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ウ セルリー

(ア)作況および作付面積

モントレー郡サリナスバレーの収穫は、12月初旬に終了し、12月2週目の時点では、ベンチュラ郡オックスナードおよびサンタバーバラ郡サンタマリアから出荷されており、品質はおおむね良好であった。

(イ)生産者販売価格

2016年10月のセルリーの生産者販売価格は、キログラム当たり0.41米ドル(48円)と前月から上昇した(表)。感謝祭(11月24日)を前に、セルリーの価格は一時高騰したものの、その後は落ち着きを取り戻し、12月週目の時点では、サンタマリア産はカートン(24茎)当たり約8.5米ドル(同0.31米ドル36円)、オックスナード産は約11米ドル(同0.40米ドル47円)で取引されていた 。

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(ウ)対日輸出動向

2016年10月のセルリーの対日輸出量は、前年同月比46.6増の620トンで、輸出単価は前年同月並みのキログラム当たり0.67米ドル(78円)と、前月から横ばいで推移した(表)。

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(エ東京都中央卸売市場の入荷量および価格

2016年10月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は、前年同月並みの32トンで、卸売価格は同13.2高のキログラム当たり214円であった(表10)。なお、同月に最も入荷量が多かったセルリーは長野産(599トン)であり、価格は米国産を大幅に上回る同416円であった。

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(2)トピックス~2015年のセルリーの生産および輸出状況~

ア 米国の生産概要

米国のセルリーは、カリフォルニア州で割以上が生産され、ミシガン州と合せると総生産量のほとんどを占めている(図)。

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カリフォルニア州のセルリーの作付面積は、2011年から2015年にかけて、増加傾向で推移したものの、2015年の同州の生産量は、2011年比7.5減の77万6000トンとなった(図)。また、同州の単収は、2010年に10アール当たり8.1トンであったものの、2013年には寒波や凍霜害により、同7.1トンに減少した。2014年には、同7.3トンに増加したものの、2015年には再び減少に転じ、ミシガン州(同6.6トン)とほぼ同水準の同6.8トンとなった(図)。

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カリフォルニア州産セルリーの生産者販売価格は、2007年から2012年にかけて、生産量が安定して推移したため、ほぼ横ばいで推移した。しかし、2013年は、作柄不良により高騰し、前年比42.5高のキログラム当たり0.57米ドル(67円)となった。2014年には、生産量の増加や寒波による消費減少などにより、下落したものの、2015年には供給不足により再び高騰した(図)。

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の生産地であるミシガン州は、年間を通して収穫できるカリフォルニア州とは対照的に、通常、月末から10月末までのカ月間のみ収穫および出荷が行われる。単収は10アール当たりトン前後と比較的低く、年間生産量はカリフォルニア州の割にも満たない。しかし、近年、カリフォルニア州では干ばつなどの影響で作物全般の生産コストが上昇していることから、セルリーやトマト、きゅうりの生産に適している腐葉土壌があるミシガン州での栽培を検討する農家も現れている。

イ 2015年のカリフォルニア州の生産状況

2015年月から月の供給量は安定していたものの、月に気温が上昇したことから一部で収穫に遅れが生じた。その後、4月のベンチュラ郡オックスナード産およびサンタバーバラ郡サンタマリア産の品質はおおむね良好であったが、月のオックスナード産の多くは、芯の大きさが出荷基準を超過していたため、供給量が減少した。

オックスナードでは、モザイク病の流行を防ぐ目的で、毎年月中旬からの約20日間、セルリー栽培のモラトリアム(一時禁止)が義務付けられているため、収穫の大半は月末までに終了する。これと入れ替わるように月下旬または月初旬からモントレー郡サリナスバレーでの収穫が始まる。

月にモントレー郡から出荷されたセルリーの品質は、おおむね良好であったが、月から月にかけて虫害や病気の発生などにより品薄感が続いた。その後、10月から11月にかけて、サリナスバレー産の品質は、悪天候などからバラツキが生じた。

また、ベンチュラ郡オックスナードの収穫期は、寒波により8~10日遅れ、12月末から開始された。加えて、同地域では、フザリウム菌(注による病害が報告され、生産量は割減となった。

なお、米国で生産されているセルリーの主な品種は、フザリウム菌に抵抗性を有するコマンド(Command)、ミッション(Mission)、チャレンジャー(Challenger)などである。この他、コンキスタドール(Conquistador)、ソノラ(Sonora)、マタドール(Matador)などがあるが、これらはフザリウム菌への抵抗性が低いことから、同菌による被害が少ない土壌での栽培が推奨されている。

(注1) 萎黄病(葉が黄化、萎凋して枯死する病害)を引き起こす糸状菌(カビ)。

ウ 近年の対日輸出状況

2015年のセルリーの対日輸出状況を見ると、米国西海岸で発生した港湾作業の遅れにより、特に月および月の輸出量に影響を与えたものの、月には平年を上回る926トンが日本向けに輸出された。その後も、月には1024トン(前年同月比45.8増)、月には828トン(同26.8増)となった。日本では、セルリーは加工業務用として常に一定の需要があることから、米国産は年間を通じて輸入されているが、東京都中央卸売市場では、夏から秋にかけて取扱いが目立つ。2016年は、比較的安定して推移しているが、厚生労働省によると、月と月に基準値を超える農薬(ビフェントリン(注)が検出されたことから、輸入時には全ロットに対する同農薬に対する検査が義務付けられており、その後基準値を超えたものは報告されていない。なお、同省は、月に検出されたビフェントリン濃度のセルリーを体重60キログラムの人が毎日10キログラム摂取したとしても、許容一日摂取量を超えることはなく、健康に及ぼす影響はないとしている。

(注2) ピレスロイド系農薬・殺虫剤。許容一日摂取量(人が一生涯毎日摂取し続けても、健康への影響がないとされる1日当たりの摂取量)は、体重1キログラム当たり0.01ミリグラム。

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