海外情報(野菜情報 2017年2月号)


米国のばれいしょの生産および輸出動向(後編)

調査情報部


【要約】

 前月号(2017年1月号)では世界第5位の生産量を誇る米国のばれいしょ生産について、近年の生産量は年間約2000万トンの水準で推移しており、消費においては6割超を加工向けが占めることなどを報告した。引き続き今号では、同国のばれいしょの輸出動向について報告する。
 冷凍では世界第4位、生鮮では世界第8位のシェアを誇る米国のばれいしょ輸出は2010年以降増加傾向にあったものの、米国西海岸港湾の労使交渉難航などにより2014年以降減少傾向で推移した。しかし、業界団体によるマーケティング支援の奏功などにより今後は増加が見込まれているとともに、対日輸出についてはさらなる輸出拡大を目指している。

5 輸出動向

(1)概況

米国はベルギーオランダ、カナダに次いで世界第4位の冷凍ばれいしょ輸出国であり、生鮮ばれいしょの輸出においても第8位と高いシェアを誇る(表10)。米国産ばれいしょの大輸出先国はカナダ、メキシコおよび日本であるが、近年、海外市場の多角化が進んでおり、東南アジア諸国(特にフィリピン、マレーシア)、中国および韓国への輸出量が伸びている。

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なお、貿易統計の整理上、本稿では、ばれいしょの主な輸出形態を生鮮、冷凍、乾燥、加工と分けるが、それぞれの定義は表11の通りである。

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(2)近年の動向

2010年から2013年にかけて、米国産ばれいしょの輸出量はおおむね増加傾向にあった(表12)。しかし、2014年および15年は、他の主要通貨に対し米ドル高で推移する為替相場やヨーロッパ産の供給過剰、西海岸の港湾における労使交渉難航など、さまざまな要因により、輸出量は2013年を下回って推移した。類別輸出割合をみると、割は冷凍、割弱は生鮮(種いもを含む)であり、乾燥および加工はそれぞれ割弱となっている。ちなみに、冷凍の内訳はフライドポテトが約割と大半を占めており、残り約割はマッシュポテトなどである。また、種いもの輸出量は生鮮の5%未満とごくわずかである。

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(3)主要輸出形態別輸出動向

ア 冷凍

日本は最大の冷凍ばれいしょ輸出先国であり、総輸出量の割弱を占めている。番目に多い輸出先はメキシコであり、2015年は輸出量、輸出額ともに日本の約半分であった。2009年月に、メキシコは、米国政府によるトラック乗り入れ規制に対抗して、米国産冷凍ばれいしょに20の報復関税を課したため、同国向けは約万トンに減少したが、その後、同関税は段階的に引き下げられ、2011年10月には撤廃されたため、輸出量は順調に回復している。その他、近年、中国および韓国への輸出は緩やかに伸びている一方、カナダへの輸出は横ばいで推移している(図)。

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イ 生鮮(種いもを含む)

生産される生鮮ばれいしょの約7割は隣国であるカナダおよびメキシコに輸出されている。カナダ向けの輸出量は近年減少傾向にあり、その背景には同国におけるポテトチップス加工用ばれいしょの増産がある。これとは対照的に、輸出先第位の韓国や第位の日本ではポテトチップス加工用の需要増加から、米国産生鮮ばれいしょの輸入が増えている。なお、メキシコ向けはやや拡大しているものの、防疫を理由とする市場アクセスの制限などにより伸び悩んでいる(図)。

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ウ 乾燥

乾燥ばれいしょにおいては、冷凍ばれいしょ同様、日本が最大の輸出先国であり、輸出量では全体の割を占める。次いで米国産乾燥ばれいしょを原料に加工したチップスを米国へ輸出しているメキシコが約割を占め、カナダ、中国およびチリと続く。2015年、冷凍や生鮮ばれいしょの輸出量が減少傾向にあったのとは対照的に、乾燥ばれいしょの輸出量は大きく伸びている。このうち日本向けは前年を約60上回った(図)。また、フィリピンでは乾燥ばれいしょを原料とするスナック菓子の製造が2015年に始まり、米国産乾燥ばれいしょの需要が大幅に増加した。

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エ 加工

米国が輸出する加工ばれいしょの約割はカナダおよびメキシコ向けである。そのほか、アジアおよび中東へ少量を輸出している。他の類別に比べ輸出量の変動は少なく、横ばいで推移している。2015年、加工ばれいしょの総輸出量は約万トンと、種いもに次いで最も少なかった(図)。

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オ 種いも

加工ばれいしょ同様、種いもは約割がカナダおよびメキシコに輸出されいる(図10)。近年、ウルグアイ、ドミニカ共和国などの中南米やマレーシアへの輸出が増加傾向にあるが、種いもの輸出には輸出先国の植物検疫許可が必要であるため、輸出先国によっては許可が下りるまで数年かかることもある。1996年、米国ポテト協会(Potatoes USA(注)が種いも輸出促進事業を発足した当時、同事業によって生鮮ばれいしょや冷凍ばれいしょの輸出にマイナスの影響ことが懸念された。このため、同協会は米国産生鮮・冷凍ばれいしょの輸入量が比較的少ない国での市場開拓に力を注いでいる。また、米国の種いも生産者は毎年数万トンの種いもを輸入するエジプトへの輸出可能性に着目している。

注4:2500者にも及ぶ全米の商業用ばれいしょ生産者を代表するマーケティング団体。ばれいしょやばれいしょ製品の販売は行っていないが、生鮮ばれいしょ、ポテトチップス加工用ばれいしょ、種いも、冷凍ばれいしょおよび乾燥ばれいしょの5部門についてプロモーションを行っている。13カ国に代表事務所を設けており、米国ばれいしょの輸出促進活動を主導している。

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(4)政府、関係団体による政策的支援や輸出戦略

1948年に設立されて以来、全米万5000人のばれいしょ生産者の利益を代表している全米ばれいしょ評議会(National Potato Council:NPC)は、さまざまな方法でばれいしょの輸出促進および米政府の貿易交渉を支援している。例えば、農産物の輸出促進を支援する農務省の市場アクセスプログラム(Market Access Program:MAP)に予算が配分されるようロビー活動を行っている。このMAP資金は日本、中国、韓国、東南アジア諸国、中南米市場での冷凍、乾燥、生鮮ばれいしょのプロモーション、および中南米諸国、アフリカ諸国での種いものプロモーション活動に使用されており、2014年から2015年にかけて、米国産ばれいしょの輸出量が大幅に減少した際には、それまでの約365万米ドル(約4億2705万円:1米ドル=117円)から約割増の500万米ドル(5億8500万円)が配分された。なお、2016年には約472万ドル(約5億5224万円となっている。この他、NPCは環太平洋経済パートナーシップ協定(TPP)を支持している。

一方、米国ポテト協会は、2014年から2015年にかけて西海岸港湾の労使交渉難航によりばれいしょの対日輸出が滞った際、ヨーロッパ産やカナダ産にシェアの一部を奪われたことを受けて、シェアの回復および消費拡大を目標に、さまざまな工夫を試みている。例えば東京では、電子看板を用いた広告の展開、アメリカンフライドポテトのウェブサイトの立ち上げ、2015年月からの「毎月10日はアメリカンフライドポテトの日」キャンペーンなどを実施している。

(5)今後の見通し

2014年から2015年には、西海岸港湾の労使交渉難航により、ばれいしょの輸出量は減少したものの、その後は回復傾向で推移しており、2015年月から2016年月にかけて、特に冷凍ばれいしょおよび乾燥ばれいしょの輸出量が伸びたと報告されている。米国ポテト協会は、この回復傾向は海外市場における米国産ばれいしょの強い需要を反映しているとし、米国産ばれいしょの高い品質および同協会のマーケティング支援をその要因として挙げている。米ドル高により米国産ばれいしょの輸入価格は上昇傾向にあるが、米国ポテト協会は今後も輸出量の増加を見込んでおり、特に東南アジア諸国への輸出を促進する方針である。

6 対日輸出動向

(1)近年の動向

米国産ばれいしょの対日輸出量を類別にみると、冷凍が最も多く、乾燥、生鮮、加工と続く(図11)。冷凍は、2010年から2014年にかけて25万〜32万トンで推移していたが、2015年は、前年の大手ハンバーガーチェーンのチキンナゲット騒動による消費者離れや、西海岸港湾の労使交渉難航により、過去5年で最も少ない23万トン弱まで減少した。一方、同年、乾燥は大幅に増加し、約4万トンとなった。

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生鮮は、2006年に一部の州からの輸出が解禁されて以降順調に伸び、2013年からは毎年約1.7万トンが輸出されている。全量がポテトチップスの加工に仕向けられており、北海道産の端境期である月から月に限り輸出が許可されている。輸出が始まった当初は、14州(アイダホ州、アリゾナ州、ウィスコンシン州、オレゴン州、カリフォルニア州、コロラド州、テキサス州、ニューメキシコ州、ノースダコタ州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州、メイン州、ワシントン州)が対日輸出許可を得ていたが、その後アイダホ州でジャガイモシロシストセンチュウが発見され、生鮮の対日輸出は一時停止された。2009年に再開されたものの、アイダホ州産は依然として禁止されており、現在はカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州からの輸出が主である。

加工は、他の類別を大幅に下回る数千トンで推移しているが、生鮮の増加に伴い減少傾向にある。

(2)対日輸出の流れ

加工工場で処理された冷凍ばれいしょは冷凍コンテナに入れられ、大半はシアトル港またはポートランド港から輸出されている。通常出航より週間で日本に到着するが、2014年から2015年にかけて続いた西海岸港湾における労使交渉難航の際には倍以上の時間を要した。なお、米国産冷凍ばれいしょの日本における通関地は、東京が最も多く、神戸、名古屋、大阪と続いている。

生鮮の輸出は、前述の通りジャガイモシロシストセンチュウなどが発生していない地域で生産されたものに限られている。収穫されたばれいしょは、まず温度が摂氏14.5度で、2〜4週間かけて表皮を堅固化させた後、温度8.911.1度、湿度9095に保ち、トン当たり毎分0.50.6立方メートルの空気が入るように換気がコントロールできる保管庫にて保管する。輸出する際には密閉型コンテナを使用し、日本に到着後、荷揚げ前にはコンテナ内の温度を12.815.5度まで上げ、ばれいしょに傷がつくのを最小限にとどめる。その後、植物防疫検査および残留農薬検査など、安全性の確認の検査が行われた後、速やかに植物防疫所が指定した受け入れ事業者の加工処理施設へ輸送される。なお、加工処理施設は港頭地域内に所在し、加熱加工処理などを的確に行える能力を有することが条件とされている。また、米国産生鮮ばれいしょは主に広島港と鹿児島港で荷揚げされている。

(3)日本国内での消費動向

前述の通り、米国産冷凍ばれいしょおよび乾燥ばれいしょの消費量は安定して推移しており、冷凍ばれいしょは主に外食産業向けのフライドポテトや量販店の総菜に使用されている。乾燥ばれいしょは全て業務用であり、成型(缶入り)チップス、インスタントスープ、冷凍コロッケ、ポテトサラダなどの総菜、ビュッフェ用のマッシュポテトに加え、養魚用の飼料などにも使用されている。

また、日本が輸入する米国産生鮮ばれいしょは全てポテトチップス加工用である。ポテトチップスの消費量は、人口が減少傾向にある中でも横ばいで推移しており、その背景には大手メーカーの販売促進努力(新フレーバーの開発や袋サイズなどの変更など、需要に合わせた企業努力)があるとみられる。

なお、近年、ファミリーレストランや製パン業での需要のほか、フライドポテト専門店が開業するなど、米国産ばれいしょの使用が伸びており、米国発祥のエッグスラット(注およびトリュフがけのフライドポテトなどの料理も注目を集めている。常に新しいメニューを開発している外食産業にとって、多様な用途に対応できる米国産ばれいしょには今後も可能性があると、長期的安定した需要が見込まれるとみられている。

注5:マッシュポテトに生卵をのせ、湯せんしたもの。

(4)今後の見通し

米国ポテト協会は、大海外市場の一つである日本への輸出拡大を常に図っている。近年は東南アジア諸国の市場開拓に向けた取り組みも積極的に行われており、輸出量も徐々に伸びているが、日本への供給量に影響を与えることはないとみられている。

また、NPCは、米国産ばれいしょに対する関税率の削減および撤廃のほか、科学的な原理に基づき植物検疫上の問題を速やかに解決するなどの条項が盛り込まれているTPPを支持している。現在、日本市場へは豪州、チリ、メキシコ、ベトナム産が特恵アクセスを有しており、今後、EUEPAが締結されれば、EUも現在の米国産に対する関税率より低い特恵関税が適用されると考えられる。このため、NPCは日本市場へのアクセス改善のため、TPP発効に期待を込めている。

この他に対日輸出に影響を与える要素としては、日本国内の天候や、新商品の開発などに伴う、需要の変化が挙げられる。2017年は、前年に台風の被害により主産地である北海道の生産量が減少した一方、大手ポテトチップスメーカーが新たに米国産乾燥ばれいしょを原料に使用する成型ポテトチップスの発売を開始したことなどから、対日輸出量は増加すると見込まれている。

7 おわりに

米国産ばれいしょは生産、輸出ともに長期的にみれば安定しており、冷凍および乾燥においては今後も日本の主要輸入先国であることが見込まれる。また、米国のばれいしょ産業は日本への輸出拡大を目指している。さらに、特に生鮮ばれいしょについては、日本に限らず、アジア諸国への輸出促進を図っているが、これに関しては米国内におけるジャガイモシストセンチュウなどへの病虫害対策が、カギとなりそうである。

米国産ばれいしょの輸出量は2014年から2015年の大幅な減少から順調な回復をみせているが、2019年には西海岸港湾の労使交渉も控えており、今後もその動向が注目される。


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