調査情報部
(1)日本における中国産冷凍さといもの位置付け
近年のさといもの輸入量を見ると、冷凍品が9割近くを占め、また、生鮮品・冷凍品ともにほぼ全量が中国産である。2013年以降、やや減少傾向にあるものの、おおむね安定的な数量で推移している(図1)。
また、冷凍品について月別に見ると、年間を通じて輸入されているものの、日本で需要が高まる冬場の輸入量が比較的多い(図2)。
なお、本稿中の為替レートは1元=17円(2016年11月末日TTS相場:16.58円)を使用した。
(2)生産動向
中国のさといもの主産地である山東省におけるさといもの生産は、青島市、煙台市など東部を中心に行われている(図3)。山東省のさといも栽培は、4月に植え付け、9月に収穫する(写真、図4)。
近年の生産動向を見ると、2014年は、一部で高温干ばつ気候が見られたものの、最終的な収穫量は前年を上回り、2015年も、良好な気象条件から前年を上回った。一方、2016年は、前年の収穫量増加に伴う価格下落の影響に加え、多雨や干ばつなどの不安定な気象条件の影響も受け、作付面積、収穫量ともに前年を下回る見込みである(表1)。
(3)生産コスト
10アール当たりの生産コストの動向を見ると、2016年は5000元(8万5000円、2013年比35.0%増)と、大幅に増加している(表2)。項目別に見ると、近年の中国の野菜生産全般に見られる傾向であるが、土地代と人件費が大幅に上昇している。
(4)価格動向
山東省のさといもの価格推移を見ると、年ごとに異なる傾向となっている(図5)。2014年は、前年の収穫量の減少に伴い上昇し、それを受けて2015年は、作付面積、収穫量ともに増加した結果、価格は下落した。2016年は、価格下落に伴う作付面積、収穫量の減少から、再び上昇傾向となっているものの、依然として在庫が多く供給量が潤沢と見込まれることから、2014年の高水準までは到達していないものと思われる。
(5)国内向け出荷動向
山東省で収穫されたさといもの多くは、国内向けに出荷されている。山東省内に加え、近郊の大都市である北京、天津、上海にも供給されている。
なお、山東省以外の主な国内向け産地は、江蘇省、浙江省、江西省、雲南省などとなっているが、山東省に比べ、収穫量は少ない。
(6)輸出動向
中国のさといも輸出は冷凍品が多い。近年、中国全体で年間5~7万トンの冷凍さといもが輸出されているが、そのうち、5万トン前後が山東省の加工施設で製造されたとみられており、輸出向けの主要産地となっている。
輸出先別に見ると、日本が最大の輸出先であり、その他は中東、東南アジア、米国が主な輸出先である(図6)。なお、日本は安全性に関連する要望や検査が厳しいため、一部の輸出企業は、日本から、アラブ首長国連邦やベトナムに輸出先をシフトしているとみられている。
(1)ブロッコリー、レタスおよびセルリーの生産動向
ア ブロッコリー
(ア)作況および作付面積
11月初旬、モントレー郡サリナスバレーおよびサンタバーバラ郡サンタマリアからブロッコリーが出荷されていた(図1)。以後は、インペリアル郡、リバーサイド郡からの出荷が本格化する見込みである。なお、現地報道によると、11月中旬時点では、カリフォルニア州から出荷されているブロッコリーの品質はおおむね良好と報告されている 。
なお、本稿中の為替レートは、1米ドル=113円(2016年11月末日TTS相場:113.42円)を使用した。
(イ)生産者価格
2016年9月のブロッコリーの生産者価格は、1キログラム当たり0.81米ドル(92円、前年同月比35.7%安)と前月から大幅に上昇した(表1)。この要因としては、同月にメキシコ産ブロッコリーの出荷が減少したことや、米国の学校の新学期開始による加工ブロッコリーの需要が増加したことなどが挙げられる。
11月初旬から中旬にかけて、ブロッコリーの出荷量および品質は安定していたため、価格は比較的安い水準で推移した。11月の3週目の時点では、サリナスバレー産は1カートン(14個入り)当たり9米ドル(1キログラム当たり0.87米ドル:98円)、サンタマリア産は同7米ドル(同0.67米ドル:76円)で取引されていた 。
(ウ)対日輸出動向
2016年9月のブロッコリーの対日輸出量は、前年同月比85.1%増の3628トンと、今年に入ってからの最高値を更新した。一方、輸出単価は同18.4%安の1キログラム当たり約1.11米ドル(125円)と、今年に入ってからの最低値を更新した(表2)。
(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格
2016年9月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比12.7%増の160トンであった。卸売価格は1キログラム当たり379円となり、今年に入ってからの最高値を更新した(表3)。なお、9月に同市場で最も入荷量が多かったブロッコリーは北海道産であり、その量は約701トン、卸売価格は米国産を大幅に上回る同501円であった。
イ レタス
(ア)作況および作付面積
10月末から11月初旬にかけて、モントレー郡のレタスの収穫期は終わりを迎えつつある中で、同郡のサリナスバレーから出荷されたレタス(グリーンリーフレタスを除く)の品質にはバラツキが発生していた。なお、同郡では12月7日から21日の間、モザイク病の発生を防ぐため圃場でのレタス栽培が禁止された。
また、11月の3週目にはフレズノ郡でも収穫が行われており、今後はサン・ホアキンバレー中部やアリゾナ州ユマからの出荷も本格化する見通しである 。
(イ)生産者価格
2016年9月の結球レタスの生産者価格は、生産量の増加に伴う需給の緩みから、前年同月比57.4%安の1キログラム当たり0.46米ドル(52円)と、8月に続き低調に推移した(表4)。
現地報道によると、11月の価格は前月に引き続き、安定した水準で推移している。11月3週目の時点では結球レタスは1カートン当たり約7~8米ドル(1キログラム当たり約0.31~0.35米ドル:約35~40円)、ロメインレタスは約8~10米ドル(同0.35~0.44米ドル:約40~50円)、グリーンリーフレタスも約8~10米ドル(同0.35~0.44米ドル:約40~50円)で取引されていた。
(ウ)対日輸出動向
2016年9月の結球レタスの対日輸出量は、前月を上回る389トン(前年同月比55.0%増)で、輸出単価は前年同月比3.4%安の1キログラム当たり1.12米ドル(127円)であった(表5)。一方、結球レタス以外の対日輸出量は、同8.7%増の50トンで、輸出単価は同16.0%安の1キログラム当たり1.99米ドル(225円)であった(表6)。
(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格
2016年9月の東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は前年同月並みの0.4トンで、卸売価格は7、8月同様、1キログラム当たり518円(前年同月比21.3%高)であった(表7)。なお、同月は、米国産結球レタスは入荷されなかった。一方、最も入荷が多かった結球レタスは長野産であり、その量は約6500トンで、卸売価格は同192円であった。
ウ セルリー
(ア)作況および作付面積
11月初旬、モントレー郡サリナスバレーからセルリーが潤沢に出荷され、品質はおおむね良好と報告されていた。また、サンタバーバラ郡サンタマリアやベンチュラ郡オックスナードでもセルリーの収穫が行われていた。11月初旬の時点では出荷量は安定していたが、需要が伸びる感謝祭(11月24日)の時期は供給不足となる可能性が生じていた。
(イ)生産者価格
2016年9月のセルリーの生産者価格は、各産地の出荷が潤沢だったことから、過去一年で最も安い1キログラム当たり0.35米ドル(40円)を記録した(表8)。
その後、感謝祭の前はセルリーの需要は増加しており、価格は上昇傾向にあった。11月3週目の時点では、サリナスバレー産は1カートン(24茎)当たり約16.5~18.5米ドル(1キログラム当たり約0.61~0.68米ドル:約69~77円)、サンタマリア産は約13米ドル(同0.48米ドル:約54円)、オックスナード産は約18.5~20.5米ドル(同0.68~0.75米ドル:約77~85円)で取引されていた 。
(ウ)対日輸出動向
2016年9月のセルリーの対日輸出量は、前年同月比8.7%減の597トンで、輸出単価は前年同月並みの1キログラム当たり0.67米ドル(76円)と、7月以降低下傾向で推移していた(表9)。
(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格
2016年9月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は、前年同月比18.8%減の26トンで、卸売価格は同11.8%高の1キログラム当たり209円であった(表10)。なお、同月に最も入荷量が多かったセルリーは長野産(738トン)であり、価格は米国産をかなり上回る同232円であった。
(2)トピックス
~2015年のブロッコリーの生産および輸出状況~
ア 米国のブロッコリー生産概要
米国のブロッコリー生産の約95%はカリフォルニア州に集中しており、同州とアリゾナ州(約5%)で全米総生産量をほぼ占めている(図2)。カリフォルニア州の年間生産量は過去10年間にわたり78~90万トン強で推移しており、2013年以降はやや減少傾向で推移している。しかし、単収は比較的安定しており、2012年以降は10アール当たり約1.8トンと、過去10年間で最も高い水準で推移している。このことから、近年の生産量の減少は主に作付・収穫面積の減少に起因しているとみられ、いずれも2013年には5万ヘクタール以上であったものの、2014年には約4.9万ヘクタール、2015年には約4.7万ヘクタールとなっている。
また、カリフォルニア州では2010年代初頭の記録的な干ばつ以来ブロッコリーの栽培面積を減らし、より少ない水で栽培できる作物に切り替える農家が増えている。また、同州は2015年、異常気象に見舞われ、夏は猛暑や急な気温の低下、冬は霜や大雨など、ブロッコリーの単収と品質は大きな打撃を受けた。こうした生産量の減少に伴い、カリフォルニア州産ブロッコリーの生産者価格は上昇し、2012年の1キログラム当たり0.73米ドル(82米ドル)から2015年には同1.04米ドル(118円)となった(図3)。また、生産額も2012年の訳6.5億米ドル(735億円)から2015年には約8.7億米ドル(983億円)と3割程度増加した(図4)。
生産量は、全米第2位のアリゾナ州でも減少傾向で推移している。2006年には約8.1万トン生産されていたが、2014年には3.6万トンと過去10年間で最も低い値を記録した。しかし、カリフォルニア州とは対照的に、2015年には生産量は増加に転じ、4.6万トンとなった。これは、カリフォルニア州の減産を部分的に補うためと考えられる。ちなみに、2015年は、生産額は5251万7000米ドル(59億3442万円)と、カリフォルニア州を大幅に下回るものの、生産者価格では同州を上回る1キログラム当たり1.15米ドル(130円)であった。
なお、単収については、一般的にカリフォルニア州がアリゾナ州を上回って推移しており、2015年はカリフォルニア州が10アール当たり179トン、アリゾナ州が同135トンであった(図5)
イ 2015年のカリフォルニアのブロッコリー生産状況
前述の通り、2015年、カリフォルニア州のブロッコリーの収穫は天候に大きく左右された。1月から4月にかけてカリフォルニア州は季節外れの暖かさに見舞われたため、作物の成長が早まり、モントレー郡サリナスバレーおよびセントラルバレーのブロッコリーの収穫は平年より早く、3月に開始された。3月から5月にかけてモントレー郡サリナスバレー、サンタバーバラ郡サンタマリア、スタニスラウス郡などで収穫されたブロッコリーの品質および生産量は良好であった。7月の時点では生産量は平年並みであったが、スタニスラウス郡では、茎の空洞、つぼみの変色など高温による品質の問題が生じた。
8月から9月にかけては平年より気温が高く、モントレー郡でもブロッコリーの品質低下(生育不良、花茎の中が空洞化など)が発生したほか、40度以上の猛暑日には午後の作業は取り止めとなったため、収量も減少した。9月下旬から10月にかけては天候が回復し、出荷量は増えたが、11月下旬から12月にかけてカリフォルニア州では寒暖の差が大きかったため、ブロッコリーの生育および収穫に影響があった。12月中旬から2016年1月にかけては豪雨や霜による被害が相次いだほか、収穫作業が制限されたため、収量が平年以下となった。
なお、カリフォルニア州で生産されているブロッコリーの品種は地域により異なるが、中央沿岸部ではコンコード、グリーンベルト、ヘリテージ、インペリアル、マラソン、パトリオットなどが主に栽培されており、南に位置するインペリアル郡ではキャッスルドーム、デスティニー、エメラルドクラウン、グリーンマジック、リバティーなどが栽培されている。
ウ 最近の米国産ブロッコリーの対日輸出状況
2015年の対日輸出状況を見てみると、米国西海岸で起きた港湾作業の遅れの問題は2~3月に影響を与えたものの、輸出が集中する春から夏の時期には問題が解消され、対日輸出が回復した。長期的なトレンドで見てみると、国産ブロッコリーの生産が多くなる11~3月の間は米国産ブロッコリーの輸出が少なく、春から夏にかけて増えるという特徴がある。2016年は同様のトレンドを示したものの、9月に輸入が大きく増えている。8月末に北海道などで発生した台風や天候不良により国産ブロッコリーの生産が影響を受けており、9月の米国からの輸入急増は国内生産の減少分を補うためのものであるとみられる(図6)。