調査情報部
ごぼうの生産・価格・輸出動向
(1)生産動向
中国のごぼうの主産地は、山東省および江蘇省である(図1)。両省とも作型は春と秋に分かれており、栽培品種は、柳川理想などの日本のものが多い(図2、3)。また、両省とも、春ごぼうは3~4月には種、6月中旬または7月に収穫を開始し、秋ごぼうは、8月上旬には種、11月下旬または12月に収穫開始となり、収穫後は、出荷まで低温倉庫で貯蔵される。
なお、本稿中の為替レートは1元=16円(2016年6月末日TTS相場:15.76円)を使用した。
ア 山東省
山東省のごぼうの主産地および加工地は、南部の臨沂市蘭陵県(旧蒼山県)に集中している(図4)。2015年の山東省における作付面積(4000ヘクタール)のうち、蘭陵県は8割を占める3200ヘクタールであった。統計上は作付面積に増減の見られない同省のごぼう栽培であるが、現地の関係者などによると、蘭陵県では、一部の生産者による他作物への転作や農外就労に伴う離農などにより、作付面積が減少傾向にあるとしている(表1)。
蘭陵県以外では、済寧市周辺に分布しているが、蘭陵県の生産者によって栽培されていることが多く、収穫後は蘭陵県で加工される。
1戸当たりの作付面積は、10ムー(67アール:1ムー=6.7アール)から100ムー(6.7ヘクタール)となっている。このうち、まとまった面積で栽培を行っているのは、2~3戸の生産者で構成された生産者グループや協同組合組織である合作社である。これらの大規模生産者は、農薬散布および収穫については機械化を進めているほか、最盛期には農村の雇用労働力を活用している。
山東省農業庁によると、日本向けの作付面積が多く、このうち1割弱では、冬期の日本向け出荷のために施設栽培を行っている。施設栽培の場合、厳冬期の凍霜害を防止するためにビニールハウスまたは日光温室での栽培となり、図2の通り、1月からの収穫となる。
2016年産の春ごぼうについては、6月中旬に、済寧市の産地で局地的な豪雨によるほ場冠水と降雹で生育初期のものを中心に被害があった。このため、同市は、収穫量が1~2割減少する見込みとしている(写真)。また、ここ数年、連作ほ場では、いや地化(注)も起きており、収量の低下が問題になっている。
(注)連作障害。ごぼうは連作に弱く、減収率は2~3年連作の場合で15~30%、6~7年連作の場合で50%以上になる。
イ 江蘇省
江蘇省のごぼうの主産地は、徐州市の豊県と沛県に集中している(図5)。2015年の同市の作付面積は前年比6.3%減の2500ヘクタールであった(表2)。山東省と異なり、個人生産者が圧倒的に多く、1戸当たりの作付面積は2~3ムー(13~20アール)となっている。同市農業委員会によると、ごぼう生産者は、零細経営で大規模集約化がされていないことから、山東省のような機械化が進んでおらず、生産コストの抑制が図れないため、収益性が低下している。
(2)栽培コスト
2015年の10アール当たりの栽培コストについて、山東省蘭陵県のケースを見ると、土地賃借料、種苗費、農機具費および人件費の上昇により、2012年比35.7%増の4290元(6万8640円)となった(表3)。
中でも、人件費は、山東省の最低賃金が上昇したことにより、2012年の2倍の1500元(2万4000円)となった。現地の関係者などによると、大規模生産者や企業などは、他産業並みの賃金により労働者の確保を目指しているものの、工場労働などに若年の求職者が集まるため、ごぼうに限らず、野菜栽培における労働力の確保が課題となっている。
(3)加工コスト
2015年の1トン当たりの1次加工コストについて、山東省蘭陵県のケースを見ると、人件費および管理費が上昇した(表4)。人件費は、栽培コスト同様、山東省の最低賃金の上昇によるものであり、管理費は、人件費に付随して上昇した。
現地の関係者によると、1次加工企業の中には、加工コストの上昇に伴う収益の低下を受けて、ごぼう茶や漬け物などの付加価値製品の加工に移行する動きも見られるとしている。
(4)国内向け出荷・輸出動向
2015年の収穫量は、前年比3%減の19万4000トンで、国内向けと輸出向けはほぼ半々であった(図6)。
ア 国内向け
中国においてごぼうは、従来よりごぼう茶としての需要はあったものの、日本のような野菜として消費する習慣がなかったことから、国内需要は低かった。しかし、近年の健康志向の高まりにより、食物繊維が豊富な野菜として、炒めものや漬け物としての消費が増加したことから、国内需要が高まりつつある。このため、市場の動向によっては、輸出向け生産者が国内市場に出荷する場合がある。
イ 輸出向け
ごぼうの主な輸出先は日本と韓国であり、両国で輸出量の9割以上を占めている(表5)。
最大の輸出先国である日本は、加工・業務用を中心に安定した需要がある。もともと中国におけるごぼう栽培は、日本の実需者による栽培・加工指導により産地が形成されてきたことから、規格についても日本の需要に合わせたものとなっている(表6)。なお、食物繊維の有用性により需要が高まっている韓国向けについても、日本向けの規格が使用されている。
仕向け先ごとの直径等級を見ると、日本向けは、実需者の要望により、加工しやすく比較的食感が軟らかいL~2Lが中心であるのに対し、韓国向けは、食物繊維が豊富なことを訴求できる2L~3Lが多い。
(1)ブロッコリー、レタスおよびセルリーの生産動向
ア ブロッコリー
(ア)作況および作付面積
2016年5月末から6月初旬にかけて、スタニスラウス郡およびモントレー郡でブロッコリーの収穫が行われていた(図1)。サリナスバレーでは、例年より涼しい春となったため、やや品薄傾向にあった。不安定な天候が続いていることから、今後の作況を懸念する生産者も少なくない。
なお、本稿中の為替レートは、1米ドル=104円(2016年6月末日TTS相場:103.91円)を使用した。
(イ)生産者価格
2016年4月のブロッコリーの生産者価格は、出荷量が不安定であったことから、上昇傾向で推移したものの、1キログラム当たり0.87米ドル(90円)と前年同月を22.3%下回った(表1)。また、メモリアルデー(5月30日)に向けた需要の高まりにより5月末の時点では1カートン(14個)当たり15~16米ドル(1キログラム当たり150~160円)となった。
(ウ)対日輸出動向
2016年4月のブロッコリーの対日輸出量は、前年同月比17.5%減の3024トンとなった。輸出単価は1キログラム当たり1.20米ドル(125円)と、前年同月比でやや上昇した(表2)。
(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格
2016年4月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比2.4%減の162トンであった。平均価格は1キログラム当たり353円(前年同月比19.4%安)と、前月と比べかなり大きく上昇し、2016年で最高値となった(表3)。4月に同市場で最も入荷量が多かったブロッコリーは埼玉県産(710トン)であり、価格は米国産を大幅に上回る1キログラム当たり475円であった。
イ レタス
(ア)作況および作付面積
6月中旬、モントレー郡ではレタスの収穫が行われていた。サリナスバレーの生産者によれば、例年に比べ強風による被害が多く、また、結球レタスの単収は、かびや葉の褐色化により、芳しくない状況にある。5月末の時点では、不安定な天候の影響で、地域やほ場による出荷量のバラツキが大きいと報告されている。
(イ)生産者価格
2016年4月の結球レタスの生産者価格は、供給量の増加により1キログラム当たり0.46米ドル(48円)と、前年同月を10%下回ったものの、供給過剰がやや緩和されたことにより前月より上昇した(表4)。5月末から6月初旬にかけては、高い水準で推移していたが、その後、カナダ産の入荷が始まり、供給量増加により下落した。6月2週目には、結球レタスは1カートン当たり11米ドル(1キログラム当たり50円)、ロメインレタスは15米ドル(同69円)、グリーンリーフレタスは10米ドル(同46円)で取引された。
(ウ)対日輸出動向
2016年4月の結球レタスの対日輸出量は、前年同月比14.3%増の120トンであり、輸出単価は1キログラム当たり1.43米ドル(149円)であった(表5)。一方、その他レタスは、輸出量は前年同月比66.7%減の6トンであり、輸出単価は1キログラム当たり1.83米ドル(190円)であった(表6)。
(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格
2016年4月の東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は、前年同月比54.9%減の0.46トン、卸売価格は同60.9%高の1キログラム当たり518円であった(表7)。一方、2016年2月および3月にわずかながら入荷のあった結球レタスは、同年4月には入荷がなかった。
ウ セルリー
(ア)作況および作付面積
6月初旬、セルリーは、ベンチュラ郡オックスナードおよびサンタバーバラ郡サンタマリアから出荷された。サリナスバレーからの出荷は、例年よりやや遅れ、6月の2週目から徐々に開始された。現在出荷されているセルリーの品質は、おおむね良好と報告されている。
(イ)生産者価格
2016年4月のセルリーの価格は、前年同月比7.3%高の1キログラム当たり0.44米ドル(46円)となったものの、需給緩和により下落した3月とほぼ同水準となった(表8)。5月中旬から6月中旬にかけて、セルリーの価格は下落傾向にあり、6月の2週目の時点では、オックスナード産は1カートン(24茎)当たり約7米ドル(1キログラム当たり27円)、サリナスバレー産は約8米ドル(同31円)で取引されていた。
(ウ)対日輸出動向
2016年4月のセルリーの対日輸出量は、前年同月比14.5%増の672トンであった。また、輸出単価は前年同月比18.2%高の1キログラム当たり0.78米ドル(81円)となり、前月に続き今年の最安値を更新した(表9)。
(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格
2016年4月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は、前年同月比25.7%減の26トンとなった。一方、価格は1キログラム当たり215円と、前年同月を17.5%上回ったものの、大幅に下落した前月からさらに値を下げた(表10)。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったセルリーは静岡産(516トン)であり、価格は米国産を47.9%上回る1キログラム当たり318円であった。
(2)トピックス
~残留農薬および農薬使用の状況~
ア 残留農薬
米国では、農薬の登録や使用方法は連邦殺虫剤・殺鼠剤法(FIFRA)、食品中の残留農薬基準は連邦食品医薬品化商品法(FFDCA)により規制されている。他方、米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)は、USDAが1991年から実施している農薬データベースプログラム(PDP)のもとで、主要10州の農務事務所と連携し、生産または輸入された農作物(加工品を含む)の年間約1万件のサンプルから残留農薬値のデータベース化を行い、毎年公表している。サンプルの中には、通常の作物や加工品の他に、オーガニックまたは無農薬といった表示のある食品も対象となっている。
残留農薬の値は、現在までのデータベースでの99%のサンプルで環境保護庁(EPA)が定める許容量以下となっており、人間にリスクを与えない水準とされている。なお、この結果は、対象品目に対して法的拘束力を持っておらず、経過を観測するためのデータベースとして活用されており、これらのデータを基にEPAは、米国民の食事のリスク評価を行っている。他方、米国食品医薬品局(FDA)が独自に実施するモニタリング調査では、許容量を超えた、または使用が禁止されている農薬が検出された食品は、流通停止となる。
2016年1月に公表された2014年のデータベースでは、りんご、サーモン、コメなど26品目、計1万619件のサンプルが採取された。品目は、EPAおよびFDAと協議の上、5年ごとに見直され、国民が最もよく消費する食品、特に乳幼児や子供が消費する食品に重点が置かれている。食品は、生鮮のみならず、液状、冷蔵、冷凍なども対象となり、国産の割合は75.5%であった。全米8カ所の試験所で検査された結果、サンプルの99%がEPAの定める許容量を下回った。また、残留農薬が許容量を超えたのは、全体の0.36%であり、その半分は輸入品であった。
また、ブロッコリーおよびセルリーの場合、それぞれサンプルの88%、96%は国産であり、残りはメキシコおよびカナダからの輸入品であった。ブロッコリーの2サンプルでは、EPAが定めた許容量を超える残留農薬が検出された一方で、セルリーについては、すべてのサンプルで残留農薬が検出されなかったもしくは許容量以下であった。
イ 農薬使用状況
米国農務省全米農業統計局(USDA/NASS)は、農薬使用プログラムの下で、1990年から農場における農薬などの使用状況に関する調査を行っている。対象品目は青果、花き、綿花、トウモロコシ、大豆、ばれいしょなどである。同調査に用いるデータは、各作物の主要生産州において、調査に協力する生産者から収集されるが、州によっては農薬使用の詳細な報告が義務付けられている。カリフォルニア州では、生産者は郡農業コミッショナー(CAC)に毎月、作物ごと、農薬ごと、面積ごとの使用量および散布回数などの報告を義務付けており、収集した情報をNASSに提供している。
調査結果は公表され、EPA、各州政府、農薬会社などがそれぞれの活動のために利用されている。農薬使用プログラムでは、農薬の使用状況だけでなく、肥料の使用状況および害虫対策状況といった情報もデータベース化されている。
過去10年間の各作物の農薬使用量を見ると、使用量が最も多いのがレタスであり、たまねぎが続く。USDAによると、農薬の使用量は、作物の価格変動、栽培面積、天候、規制、遺伝子組み換え種子の導入などにより変動するとしている。