調査情報部
ばれいしょの生産・輸出動向
(1)生産動向
中国は世界最大のばれいしょ生産国であり、作付面積および生産量は拡大しており、2014年の全国の栽培面積は564万5000ヘクタール、生産量は9608万8320トンとなった(図1)。
ばれいしょは、全国各地で広く生産されており、栽培条件から4つの地域に分類されている(図2)。
ア 北方一作区
北方一作区は、黒龍江省、吉林省、遼東半島を除く遼寧省の大部分、河北省北部、山西省北部、寧夏回族自治区、甘粛省、陝西省北部、青海省、新疆ウィグル自治区および内モンゴル自治区の8省3自治区であり、作付面積は全国の5割以上を占めている。この地域は、降霜日が年間100~150日程度、年間平均気温が10度以下と冷涼であるため、作型は春植え秋どり栽培の年1作となっている(図3)。なお、北方一作区はとうもろこし、麦、大豆などの一大産地でもある。
イ 中原二作区
中原二作区は、遼寧省のうち遼東半島、河北省南部、山西省南部、湖北省、湖南省、河南省、山東省、江蘇省、浙江省、安徽省、陝西省および江西省の12省であり、作付面積は全国の1割以下と少ない。この地域は、無霜日が180~300日程度、年間平均気温が10~18度程度と比較的温暖なため、作型は春植え夏どり栽培と夏植え秋どり栽培の年2作となっている(図4)。中原二作区でばれいしょの作付面積が少ないのは、比較的温暖で他の品目の作付けにも適していることから、さまざまな品目が生産されており、ばれいしょ生産を行う生産者が少ないためである。なお、山東省、江蘇省、浙江省などは、対日輸出向け野菜の一大生産地でもあり、日本向けのばれいしょ(冷凍)生産も行われている(写真)。
ウ 南方冬作区
南方冬作区は、広西チワン族自治区、広東省、海南省および福建省の3省1自治区であり、作付面積は全国の5%に過ぎない。この地域は、降霜日がほとんどなく、年間平均気温が18~24度と温暖なため、作型は冬植え夏どり栽培と秋植え冬どり栽培(無被覆)の年2作となっている(図5)。また、コメ生産者が作付けする場合、稲刈り後の水田で作付けするため、秋植え冬春どり栽培となっている(図6)。南方冬作区でばれいしょの作付面積が少ないのは、中原二作区同様、ばれいしょ以外のさまざまな品目の生産が多く行われているためである。なお、福建省は、対日輸出向け野菜の一大生産地でもある。
エ 西南混作区
西南混作区は、貴州省、四川省、湖南省西部、湖北省西部、雲南省およびチベット自治区の5省1自治区であり、作付面積は全国の4割となっている。海抜2000メートル以上の地域では、無霜日が少なく冷涼乾燥なことから、作型は北方一作区と同じ春植え秋どり栽培の年1作なのに対し、海抜1000メートル以下の地域では、無霜日が多く温暖多雨なことから、作型は同じ春植え秋どり栽培と南方冬作区の冬期被覆栽培(地域によっては無被覆栽培)の年2作となっている。
(2)輸出動向
中国から輸出されるばれいしょは、生鮮品と冷凍品があり、2015年の生鮮品輸出量は40万81トン(前年比25.9%減)で、主な輸出先はマレーシア、ベトナム、ロシアなどであった(図7)。日本向けは、136トン(同161.5%増)と輸出量全体の1%に満たない。なお、日本では生鮮流通が国産品で占められていることから、加工原料向けに仕向けられているとみられる。
2015年の冷凍品輸出量は2万8010トン(前年比16.7%増)で、主な輸出先は日本、韓国、香港などであった(図8)。
日本では、冷凍野菜輸入量の3分の1が冷凍ばれいしょ(フライドポテトおよびばれいしょ加熱調理品)となっている。中国は第5位の輸入先国であり、主に業務用に仕向けられている。
(3)内需拡大と増産に向けた動き
中国でばれいしょは、野菜としてさまざまな料理に活用され、消費量は年間1人当たり41キログラム程度で推移しているが、ばれいしょを主食としているロシアやウクライナなどの主要生産国より低い状況にある(図9)。
一方で、中国では、2大穀物であるコメおよび小麦が供給不足となっている。そのため、農業部は、ばれいしょを主食とすることで、その不足分を補うこと目指し、2020年までにばれいしょの作付面積を670万ヘクタール以上に拡大することを計画している。
また、主食および加工に適した品種の作付け割合を3割、ばれいしょの総消費量に占める主食用の割合を3割にする目標も掲げている。
農業部は、主食向け消費を伸ばすためには、マントウ(注)、麺、ビーフンなど、一般的な主食用加工品にばれいしょを利用することが必要とされており、主食向けのばれいしょ加工食品を開発し、国民に対して消費促進を図るとともに、政府補助金を受けた加工企業などが、主食用加工品の開発を行っている。
現地の専門家などによると、主食用需要の増加により取引価格が高位平準化され、生産者および加工企業による国内向け生産が強化されると見込んでいるとしている。
注:中国で伝統的に食されている蒸しパン。
(1)ブロッコリー、レタスおよびセルリーの生産動向
ア ブロッコリー
(ア)作況および作付面積
ブロッコリーの収穫は、3月中旬から4月中旬にかけて、モントレー郡、フレズノ郡、サンタバーバラ郡などで行われた(図1)。カリフォルニア州の野菜大手によれば、サリナスバレーのブロッコリーの出荷量は予定通りであり、今後も堅調な推移が見込まれている。
なお、本稿中の為替レートは、1米ドル
=111円(2016年4月末日TTS相場:110.75円)を使用した。
(イ)生産者価格
2016年2月のブロッコリーの生産者価格は、需給が緩和したことから前年同月比10.6%安の1キログラム当たり0.59米ドル(65円)となった(表1)。その後、3月中旬から4月中旬にかけて、サリナスバレー、サンホアキンバレー、サンタバーバラ郡サンタマリアなどからの出荷量の増加に伴い、価格は軟調に推移している。
(ウ)対日輸出動向
2016年2月のブロッコリーの対日輸出量は、1561トンと前年同月比45.6%の増加となった。この大幅増加は、前年同月の米国西海岸港湾での労使交渉難航に伴う輸出減の反動に加え、暖冬による国産出荷量の減少と米国産の安定した供給量および価格によるとみられている。
輸出単価は1キログラム当たり1.23米ドル(137円)となった(表2)。
(エ)東京都中央卸市場の入荷量および価格
2016年2月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前年同月比19.5%減の33トンとなった。平均価格は1キログラム当たり335円と、前月とほぼ同水準となった(表3)。なお、同月に同市場で最も入荷量が多かったブロッコリーは愛知産(738トン)で、価格は米国産をかなりの程度上回る1キログラム当たり377円であった。
イ レタス
(ア)作況および作付面積
フレズノ郡の春結球レタスの生育は良好とされ、3月中旬から4月中旬にかけて、間引き、除草、収穫が行われた。また、主産地の一つであるモントレー郡でも、4月上旬に結球レタス、中旬にその他のレタスの収穫が盛んに行われた。
(イ)生産者価格
2016年2月の結球レタスの生産者価格は、1キログラム当たり0.46米ドル(51円)と、前年同月を35.3%上回ったものの、前月からは大幅に下落した(表4)。これは、供給増および寒波による需要の減少によるとみられている。3月に入っても需給が緩和しているため、価格は比較的安値が継続し、4月2週目の時点では、1カートン当たり約8米ドル(1キログラム当たり39円)で取引されていた。
(ウ)対日輸出動向
2016年2月の結球レタスの対日輸出量は、前年同月の12.6倍となる176トンとなり、輸出単価は同70.5%安の1キログラム当たり1.18米ドル(131円)となった(表5)。これは、前年同月が米国西海岸港湾での労使交渉難航により減少した反動によるところが大きい。また、その他レタスについても輸出量は64.4トン(前年同月比12.4倍)と前年同月を大幅に上回り、輸出単価は1キログラム当たり2.1米ドル(233円)と前年同月を大幅に下回った(表6)。
(エ)東京都中央卸市場の入荷量および価格
2016年2月の東京都中央卸売市場の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど。結球レタスを除く)の入荷量は、前年同月を大幅に上回る6トン(前年同月比4倍)となり、平均価格は過去1年間で最も高い1キログラム当たり535円(同77.7%高)であった(表7)。一方、前月入荷がなかった結球レタスは、180キログラムが入荷され、価格は1キログラム当たり80円となった。
ウ セルリー
(ア)作況および作付面積
現地報告によると、4月上旬は、ベンチュラ郡オックスナードから主に出荷されており、3月中旬から4月中旬にかけて出荷されたセルリーの品質はおむね良好とされている。
(イ)生産者価格
2016年2月のセルリーの価格は、供給量の増加に伴い前月から下落したものの、前年同月比2.1倍の1キログラム当たり0.66米ドル(73円)となった(表8)。現地報告によると、セルリーの価格は、供給量が安定しつつあることから、3月から4月中旬にかけて下落傾向で推移しており、4月2週目は、ベンチュラ郡オックスナード産が1カートン(24茎)当たり約8米ドル(1キログラム当たり33円)、サンタバーバラ郡サンタマリア産が同約12米ドル(同49円)で取引されていた。
(ウ)対日輸出動向
2016年2月の米国産セルリーの対日輸出量は、前年同月比4.3倍増の451トンであった。また、輸出単価は前年同月比30.1%安の1キログラム当たり0.86米ドル(95円)と下落した(表9)。
(エ)東京都中央卸市場の入荷量および価格
2016年2月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は、前年同月比25.0%増の15トンとなった。一方、平均価格は、同44.4%高の1キログラム当たり309円となった(表10)。なお、同市場で最も入荷量が多かったセルリーは静岡産(333トン)であり、価格は米国産を17.2%下回る1キログラム当たり256円であった。
(2)トピックス
~米国の生鮮青果の購入と小売動向~
(ア)消費者の購入動向
ドラッグストア、ディスカウントショップ、Eコマース(電子商取引)など新たな販売形態の新興などにより、カット野菜(注)の需要が近年増加している。また、カリフォルニア大学のRoberta Cook教授は、収入と学歴が高い消費者ほど生鮮青果、特にオーガニック商品の消費が多く、健康志向だけでなく新鮮さや食味も重要視する姿勢が強いと指摘しており、鮮度保持および味の改良が購入に直接結びつくことを示唆している。
米国の専門誌「The Packer」が2016年3月に公表した「2016 Fresh Trends」でも、同様の傾向が示されている。同報告書では、約1000人に対し、50を超える生鮮青果の過去1年間の購入動向を聴取し、分析を行っている。
これによると、従来のスーパーマーケットで生鮮青果を買っている者は40%となり、減少傾向で推移している。この要因として、スーパーマーケット以外の選択肢の増加などが挙げられ、特に、ウォルマートなどの大型スーパーチェーン店を第一の購入先と回答した者は約25%を占めた。そのほか、コストコなどの会員制倉庫型スーパー、ファーマーズマーケットと回答した者がそれぞれ約9%となった。
さらに、過去1年間にパックドサラダやトレイなどのパック詰めされた青果(パック詰め青果)を購入した者は84%で、このうち47%が前年よりもパック詰め青果の購入が増加したと回答しており、需要の高まりを示す結果となった。
品目別に見ると、レタスを除き、世帯年収の多い者や年齢の高い者ほど野菜を購入する傾向が強い(表11、12)。
また、いずれの品目においてもオーガニック商品のみを購入している者が10%ほど存在している(表13)。
注:生鮮野菜をカットした製品。
(イ)小売店の販売動向
小売業者の販売実績から見ても、消費者の生鮮野菜の購入増加傾向およびカット野菜などの付加価値商品の販売増加傾向が確認できる。米国生鮮青果物協会(United Fresh Produce Association)が公表している、2015年の生鮮青果(カット含む)の小売動向によれば、1店舗当たりの生鮮青果の週間販売量は前年比2.4%、販売額は同3.4%増加した。なお、生鮮青果のうち、野菜は販売量で42%(約6.5トン)、販売額で43%(2万1707米ドル(240万9477円))を占めた。特に、パックドサラダやトレイなどのパック詰め青果の販売額は前年比9.2%増、カット野菜にドレッシングなどを付けた付加価値商品は同8.7%増と大きく伸びている。これらの商品は、消費者に受け入れられており、生鮮野菜の消費量をけん引している。
品目別に見ると、レタスの週間平均売上高は前年比3.2%増の1312米ドル(14万5632円)であった(表14)。一方、たまねぎの週間平均売上高は1530米ドル(16万9830円)と前年比1.9%の減少となり、品目によっては売上高が減少しているものもある。また、オーガニックレタスの平均単価は、オーガニック以外のものより72%高く、前年比で売上高も増加したことから、The Packerの調査結果と同様、オーガニック食品に対する消費者の購入意欲が高まっているとみられている。