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海外情報(野菜情報 2016年4月号)


主要国の野菜の生産動向等

調査情報部


1 中国

日本が輸入するたまねぎの多くを中国産が占めていることから、今号では、たまねぎの生産動向等を紹介する。

たまねぎの生産・価格・輸出動向

(1)生産動向

たまねぎは中国の広い地域で生産されており、作付面積は拡大傾向にある。主な産地としては、雲南省、四川省、河南省、山東省、江蘇省、黒龍江省、吉林省、内モンゴル自治区、甘粛省などがあり、その中でも、雲南省、山東省、甘粛省は大きな割合を占める(図1)。



雲南省を始めに、四川省、河南省、山東省と順次北上する形で1月から10月まで出荷地域がリレーされて、継続的に出荷される(図2)。



ア 雲南省

中国の最も西南に位置する雲南省では、1月~4月上旬に収穫が可能であり、食習慣的に現地の人はたまねぎをほとんど食さないが、他の地域よりいち早く出荷できる利点を生かして、輸出用としてたまねぎの生産が行われている。

主な産地の栽培面積は、げんぼう県2900ヘクタール、けんすい県1700ヘクタール、つうかい県900ヘクタールであり、この3つの地域で雲南省全体の8割以上を占めている(図3)。



生産は、主に、合作社(注)と個人農家によって行われており、合作社の栽培規模は70ヘクタール以上、個人農家も大規模栽培であれば10ヘクタール以上となっている。収穫されたたまねぎの大部分は、山東省の野菜輸出加工企業によって買い取られる。

近年、土地の賃借料が年5~10%高、人件費は年約10%高など栽培コストが上昇している。関係者によると、2015年の元謀県におけるたまねぎの栽培コストは、10アール当たり4500元(8万1000円)以上となっている。

また、現在、収穫期に入っているが、前年の相場が良かったため栽培面積が増加しており、天候にも恵まれていることから、生産量は1割ほど増加すると見込まれている(表1)。



なお、為替レートは、1元=18円(2月末日TTS相場:17.7円)を使用した。

注:協同組合組織。

イ 山東省

山東省は中国最大のたまねぎ生産地域であり、中でも、ぼう市、さいねん市、ちんたお市、りん市において栽培が盛んである(図4)。最近では低温貯蔵施設を利用して、りょうじょう市、ざわ市、済寧市のきんこう県などで栽培規模を拡大させており、これらの地域では前年に比較して15~20%栽培面積が増加しているといわれている(表2)。





山東省では、合作社や農家のほか、輸出加工企業によっても生産されている。輸出加工企業は、100ヘクタール以上の規模で生産しており、自社基地のほか合作社や農家と提携して栽培することも多い。

ウ 甘粛省

甘粛省の主な生産地域としては、しゅせん市、よくかん市および市などが知られている(図5)。



品質が良いことで知られる甘粛省のたまねぎは、約6割がロシア、日本、韓国、東南アジアへ輸出されている。日本向けでは、皮むきされたたまねぎ「むきたま」の割合が年々増えており、今では7割以上を占めている。

しかし、近年、たまねぎの価格は低迷している一方、生産コストが絶えず上昇し収益が低下しているため、ほかの作物に切り替える農家が多くみられることから栽培面積は減少傾向となっている(表3)。



(2)価格動向

主な生産地域の価格動向を見ると、雲南省では、他の地域に先駆けて出荷が始まる1月には高価格で取引が行われる(図6)。

山東省、甘粛省では、それぞれ収穫期には供給増により価格が下落するが、2015年は、生産量が前年を下回ったことから、高水準で推移した(図7、8)。





(3)輸出動向

中国産たまねぎの主な輸出先国は、日本、韓国、ベトナム、マレーシア、ロシアであり、日本は、第1位となっている(図9)。2015年は、干ばつにより自国での生産が落ち込んだ韓国向けが増えたため、総輸出量は前年比2割増の85万5000トンとなった。

日本と韓国向けには、横径8センチメートル以上のものが、ロシア向けには、横径8センチメートル以下のものが輸出されている。また、東南アジア向けには、赤たまねぎが主に輸出されている。

なお、日本向けには、皮をむいたもの「むきたま」が多く輸出され、加工・業務用などに仕向けられている(写真12)。








2 米国

米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州を中心とした生産動向を紹介する。

(1)ブロッコリー

ア 作況および作付面積

2月初旬から中旬にかけて、フレズノ郡でブロッコリーの収穫が行われ、モントレー郡では直まきが行われた。また、インペリアル郡からの出荷も順調である(図1)。



米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によれば、カリフォルニア州における2015年のブロッコリーの収穫面積は前年から4.2%減少した。また、生産量も同7.1%減の83万4606トンとなった。

なお、本稿中のドルはすべて米ドルであり、為替レートは1米ドル115円(2016年2月末日TTS相場:114.62円)を使用した。



イ  生産者価格

2015年12月のブロッコリーの生産者価格は、供給量に比べて引き合いが強かったため、12月は前年同月比2.6倍となる1キログラム当たり1.87ドル(215円)となるなど昨年末から高値で推移していたが、1月下旬から需給が落ち着いたことにより下落に転じている。2月初旬の時点では1カートン(14個)当たり6ドル(1キログラム当たり67円。気配値。以下同じ)強で出荷されているが、品質にばらつきが生じている。



ウ 対日輸出動向

2015年12月には過去2年で最も少ない167トンのブロッコリーが日本向けに輸出された。減少した要因として挙げられるのは、同時期の米国産の作柄不良に伴う供給不足である。輸出単価は2015年で最も高い水準となる1キログラム当たり約1.44ドル(166円)であった。

カリフォルニア州食料農業局(CDFA)によって1月末に公表されたカリフォルニア農業統計報告書(California Agricultural Statistics Review 20142015)によれば、2015年、カリフォルニア州のブロッコリー生産量の12%が輸出向けであった。日本は同州にとってカナダに次ぐブロッコリー輸出先国である。





エ 東京都中央卸売市場の入荷量および
価格

2015年12月、東京都中央卸売市場では2015年で最も少ない18トンの米国産ブロッコリーが入荷された。平均価格も2015年で最も安いキログラム当たり173円であった。12月に同市場で最も入荷量が多かったブロッコリーは愛知県産(1000トン強)で、平均価格は米国産を12下回るキログラム当たり152円であった。



(2)レタス

ア 作況および作付面積

月末から月中旬にかけて、フレズノ郡ではレタスの収穫が行われた。また、月中旬の時点ではモントレー郡においてレタスのは種が行われた。モントレー郡サンタマリアなどでは、例年月に作付けが完了し月には収穫が始まるが、2016年は月下旬の降水量が多く、同地域のは種作業に影響が生じることが懸念されている。

米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によれば、カリフォルニア州における2015年の収穫面積は結球レタスが前年比4.9減、リーフレタスも16.3減と減少した。ロメインレタスは前年と同水準を維持した。また同年の生産量は結球レタスが約149万トン(前年比2.4減)、リーフレタスが約45万トン(同9.3減)、ロメインレタスが約85万トン(同5.4増)であった。



イ 生産者価格

2015年12月の結球レタスの生産者価格は、寒波による出荷量の減少から、前年同月比3.3倍となるキログラム当たり1.14ドル(131円)であった。その後、月中旬、東海岸が積雪と寒波に覆われた影響でレタスの需要が減少し、価格は一下落したものの、月の週目には天候が平年並みに回復したことで需要が持ち直し回復したことにより、価格は落ち着きを取り戻している。月初旬の時点では結球レタスはカートン当たり約ドル(キログラム当たり40円)、ロメインレタスは約10ドル(同51円)、グリーンリーフレタスはドル(同40円)強で取引された。



ウ 対日輸出動向

2015年12月には49トンの結球レタスが日本向けに輸出された。これは前年同月比7割程度に相当する。結球レタスの輸出単価は下落し、キログラム当たり1.04ドル(120円)となった。また、その他レタスの輸出量は22トン、輸出単価は同1.95ドル(224円)であった。

2014年にカリフォルニア州で生産されたレタスの9%が輸出され、そのほとんどがカナダ向けであった。







エ 東京都中央卸売市場の入荷量および
価格

2015年12月、東京都中央卸売市場では50キログラムの米国産結球レタスが入荷され、卸売価格は1キログラム当たり43円であった。結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は11月同様、0.4トンであった。結球レタス以外のレタス卸売価格はキログラム当たり413円と、前月の価格からやや低下したものの、前年同月の約割高であった。



(3)セルリー

ア 作況および作付面積

カリフォルニア州産のセルリーの供給は、病害や悪天候の影響などにより2015年末から不安定であったが、平年並みに回復しつつある。ただし、昨年末から月にかけて収穫を前倒しして需要に対応した生産者がいるため、月に入るまで平年並みの出荷量は見込めない状態である。なお、月に出荷されているセルリーの品質はおおむね良好である。

米国農務省全国統計局(USDA/NASS)によれば、カリフォルニア州における2015年のセルリーの収穫面積は前年から4.8増加し、過去5年で最大となる万1534ヘクタールを記録した。しかし、単収の低下により生産量は77万5639トンと前年を1.8下回った。



イ 生産者価格

2015年12月のセルリーの価格は、寒波による出荷量の減少から、キログラム当たり1.32ドル(152円)であった。月末に入り、ブロッコリーやレタスを含む野菜の価格は全体的に下落傾向にあったものの、セルリーにおいては需要が供給を上回る状況が続き、価格は高騰を続けていた。月に入り供給量が増加するに伴い価格はやや下落したものの、依然として高止まりしている。月の週目の時点では、ベンチュラ郡産セルリーはカートン(24茎)当たり約18ドル(キログラム当たり76円)、リバーサイド郡産は約19ドル(同81円)、インペリアル郡産は約17ドル(同72円)で取引された。



ウ 対日輸出動向

2015年12月には過去年で最も少ない230トンのセルリーが日本向けに輸出された。これは前年同月比36.1減に相当する。輸出単価はキログラム当たり0.72ドル(83円)であった。

2014年にカリフォルニア州で生産されたセルリーの14が輸出向けであった。日本は同州にとってカナダに次ぐセルリー輸出先国であった。





エ 東京都中央卸売市場における入荷量および価格

2015年12月、東京都中央卸売市場では前年同月比34減の25トンの米国産セルリーが入荷され、卸売価格はキログラム当たり178円(前年同月比7.2高)であった。同市場で最も入荷量が多かったセルリーは静岡県産(約480トン)であり、平均価格は米国産を上回る同229円であった。





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