[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

海外情報(野菜情報 2016年2月号)


主要国の野菜の生産動向等

調査情報部


1 中国

 日本が輸入するれんこん(生鮮、冷凍、塩蔵など)のほとんどすべてを中国産が占めていることから、今号では、れんこんの生産動向等を紹介する。

れんこんの生産・価格・輸出動向

(1)生産動向

 中国のれんこん生産に関しては、公式な統計がないため正確な数値は不明だが、関係者によると、2015年の栽培面積は約40万ヘクタール、収穫量は約1200万トン、単収は地域や品種によっても異なるが10アール当たり平均3トン(注1)と推計されている。近年は、蓮田面積の縮小や収穫に係る人件費高騰の影響を受けて、栽培面積、収穫量ともに減少傾向で推移していると言われている(図1)。

注1:湖北省など南方地域では、10アール当たり1.5~2.0トン、山東省など北方地域では同3.0~5.0トンと推計されている。

 れんこんは、河北省、山東省、河南省、江蘇省、湖北こほく省、浙江せっこう省、広東省などの広い範囲で栽培されているが(図2)、中でも、湖北省での栽培面積が最も大きく、土壌の栄養分が高い江漢こうかん平野地区(孝感市、武漢市、仙桃市、荆州じんしゅう市に集中している(図3)。

 なお、本稿中の為替レートは、1元=19円(12月末日TTS相場:18.66円)を使用した)。

 れんこん栽培は、連作障害を回避するため、一般的に3~5年栽培した後、水稲やクワイなど他の作物を3、4年栽培する輪作が行われているが、1年目は、基礎肥料、蓮田整備の他、種れんこん購入費も必要となるため、生産コストが高く、純利益は1ヘクタール当たり7500元(14万2500円)程度となる(表1)。2年目以降は、肥料も少量となる他、自家生産によって種れんこんが賄えるため、生産コストを低く抑えることができ、収益性が向上する。

 収穫作業は、収穫機を使用する農家もあるが、一般的には手作業で行われている。手作業の場合は、収穫物を傷めることが少ないというメリットはあるものの、1人当たり1日200キログラム程度しか収穫できず、1ヘクタールの収穫に、15人の作業員で一週間程度かかるため、人件費が高額となる。一方、機械収穫の場合の収穫費用は、手作業の2分の1程度と推測されている(写真1、2)。

 また、れんこん栽培農家の中には、ロブスター、草魚そうぎょ(注2)、ドジョウ、タウナギ(注3)などの養殖業を営むなど、経営の安定を図るために複合経営を行うケースも多い。

注2:中国原産の食用淡水魚。

注3:熱帯~亜熱帯地域に生息する淡水魚。中国を含む東南アジアで食用・薬用として利用される。

 湖北省などで一般的に栽培されている中早生品種は、4月上旬に定植し、7月中旬から翌年3月まで収穫される(図4)。
れんこん生産は、主に露地栽培で行われており、コストが高い施設栽培はあまり普及していないが、露地に比べ約1カ月、収穫時期が早くなる。

(2)価格動向

 通常、れんこんの卸売価格は、収穫前で供給が不足する6月をピークに高騰するが、早生品種の収穫が始まるに従い、徐々に安定する(図5)。10月から翌年4月は供給量が安定するため、価格も安定的に推移する。

(3)輸出動向

 中国から輸出されるれんこんは、生鮮、冷凍の他、塩蔵などがあり、そのうち冷凍品が最も多いと言われているが、詳細は不明である。生鮮の場合は、丸ごとパック詰めされたものもあるが、冷凍の場合は、ブロック状やスライス状にカットされたものが多い(写真3~6)。

 主な輸出先国は、マレーシア、日本、米国であり、この3カ国で全体の約8割を占めている。

 なお、れんこんの加工輸出企業は江蘇省と湖北省に集中しているが、主に江蘇省に日本向け、湖北省に東南アジアや米国など向けの企業が存在する。


2 米国

 米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州を中心とした生産動向とともに、干ばつの影響と今後の見通しを紹介する。

(1)ブロッコリー、レタス、およびセルリーの生産状況

ア ブロッコリー

(ア)作況および作付面積

 カリフォルニア州では、12月初旬に降雨と寒波が到来した後、12月2週目には日別の気温が大きく変動し、夜間の気温が0度前後まで冷え込むなどの天候不順となった。

 春季から秋季の産地であるモントレー郡では12月にブロッコリーの収穫が最終段階を迎えていたが、天候不順によりほ場に残っていたブロッコリーが影響を受け、品質にばらつきが見られる。

 一方、サンタマリア(サンタバーバラ郡)、サンホアキンバレーおよびインペリアル郡(図)から出荷されているブロッコリーの品質は12月中旬時点でおおむね良好である。ただし、出荷量は天候不順の影響から減少している。

 なお、本稿中の為替レートは、1米ドル=122円(2015年12月末日TTS相場:121.61円)を使用した。

(イ)生産者価格

 2015年10月のブロッコリーの生産者価格は前年同月比68.4%高の1キログラム当たり1.28米ドル(156円)となった(表1)。また、12月の天候不順による供給減と季節的な需要増によりブロッコリーの価格が高騰し、11月末から12月中旬にかけて1カートン(14個、約10.4キログラム)当たり20~25米ドル(気配値(以下同じ)。1キログラム当たり232~293円と高値で推移した。これは前年同期の価格(同7~9米ドル。同85~110円)の約3倍に相当する。出荷量は例年、小売店がクリスマスの時期にブロッコリーの入荷・販売を増加させるため増加するが、2015年は減少している。

 カリフォルニア州の野菜大手(タニムラ&アントレ、コーストラインファミリーファームズなど)によれば、この時期(11月~12月)に主要な野菜・果物すべてが供給不足になるのは今年が初めてのことである。

(ウ)対日輸出動向

 2015年10月には1119トンのブロッコリーが日本向けに輸出された。これは前月の輸出量の56%、前年同月の2465トンの45%に相当する。輸出単価(輸出額/輸出量)は1キログラム当たり約1.33米ドル(同162円)であった(表2)。

(エ)東京都中央卸売市場の価格および入荷量

 2015年10月、東京都中央卸売市場では126トンの米国産ブロッコリーが入荷された。平均価格は1キログラム当たり416円と、前月の価格をやや下回った(表3)。10月に同市場で最も入荷が多かったブロッコリーは前月に引き続き北海道産(721トン)で、平均価格は米国産を上回る461円であった。

イ レタス

(ア) 作況および作付面積

 11月末までにモントレー郡でのレタスの収穫は終了し、12月初旬からはインペリアル郡での収穫が本格化する見込みであった。しかし、寒波と短い日照時間により、インペリアル郡のレタスの生育は遅れており、生産者によっては、3割減の供給量を予測する声もある。

 12月10日の時点で出荷されているレタスは小玉で軽い上、凍霜害により傷んだ外葉は取り除かれるため、さらに小玉なものも出てきている。

 カリフォルニア州の野菜生産大手コーストラインファミリーファームズによれば、生産されるレタスのうち、多くは契約栽培によるため、単収が減るとレタスの契約栽培向けの出荷が優先されて、スポット市場向けの出荷量が減少する。

(イ) 生産者価格

 10月の結球レタスの価格は、同月初旬にレタスの供給量が需要を上回ったことなどから、前月から値を下げ、前年同月並みの1キログラム当たり76セント(93円)となった(表4)。

 産地の切り替わり時期に発生した供給不足のため、レタスの価格は11月末に高騰し、ロメインレタスは1カートン(約22.7キログラム)当たり26~31米ドル(1キログラム当たり同134円~171円)で取引された。

(ウ) 対日輸出動向

 2015年10月には299トンの結球レタスが日本向けに輸出された。これは前年同月の輸出量の2倍以上である。結球レタスの輸出単価は同年に入ってから最安値の1キログラム当たり1米ドル(122円)であった(表5)。

 また、その他レタスの輸出量は55トンと同年最大を記録した半面、輸出単価は1キログラム当たり1.29米ドル(157円)と、同年の最安値となった(表6)。

(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格

 2015年10月の東京都中央卸売市場の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど。結球レタスを除く)の入荷量は0.6トン、卸売価格は1キログラム当たり410円と、7~8月の水準に戻った(表7)。

ウ セルリー

(ア) 作況および作付面積

 11月末、モントレー郡でセルリーの収穫が行われていたが、12月に入り収穫期は終わりを迎えた。ベンチュラ郡オックスナードでは当初、平年より早い収穫が見込まれていたが、寒波により気温が下がったため、セルリーの収穫は8~10日遅れる予定である。オックスナードではフザリウム菌による病害も報告されており、セルリーの収穫量の減少が予想されている。

(イ) 生産者価格

 2015年10月のセルリーの価格は、前年同月比67.6%高の1キログラム当たり62セント(76円)となり、需給のひっ迫により前月から大幅に値を上げた(表8)。また、11月末、オックスナード産セルリーは1カートン(24茎、約27.2キログラム)当たり約27米ドル(1キログラム当たり122円)であったが、12月初旬には同約31米ドル(同134円)、12月中旬には同約39~42米ドル(同171~183円)と、クリスマスに向けた需要期に、収穫遅れおよび病害の発生で供給量が減少したことで12月に入り1週間で同8~10米ドル(同37~49円)上昇した 。

(ウ)対日輸出動向

 2015年10月には423トンのセルリーが日本向けに輸出された。これは前年同月の輸出量の約6割に相当する。輸出単価は1キログラム当たり0.67米ドル(82円)であった(表9)。

(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および価格

 2015年10月、東京都中央卸売市場では前月同様、32トンの米国産セルリーが入荷された(表10)。10月に同市場で最も入荷量が多かったセルリーは長野産(725トン)であり、平均価格は米国産を上回る1キログラム当たり253円であった。

(2) トピックス

~干ばつ対策の現状と課題~

 2012年半ばから始まった西海岸の干ばつは、2015年で4年目に入っている。米国農務省(USDA)の予測によれば、エルニーニョ現象による降雨量の増加を見込んでも、干ばつは2016年も継続するとみられている。

 カリフォルニア大学の試算では、2015年の干ばつによる経済損失額は27億米ドル(3294億円)に上り、水不足の継続が生産者にとって大きな負担となっている。干ばつによる被害を軽減する目的でUSDAは緊急支援策を実施しており、また、効率的な水資源の使用のための技術革新が注目を集めている。

USDAによる支援策

 野菜生産者は、干ばつなどの自然災害などに対するリスク管理プログラムとして、米国農務省農業サービス局(USDA/FSA)が、商品金融公社(CCC)を通じて運営する「非保険対象作物災害支援プログラム(NAP)」(注)を利用することが可能となっている。ブロッコリー、レタスおよびセルリーはいずれもNAPの対象となっている。

注:異常気象や災害により発生した損害について、予想生産量の50%を超える損害を、市場平均価格の55%の水準で補償するプログラム。申請に当たっては、事前に1作物当たり250米ドル(3万500円)または1生産者当たり750米ドル(9万1500円)のいずれか少ない額を納付しなければならない。なお、納付額を加算すれば予想生産量の35%を超える損害について、市場平均価格の100%の水準まで補償の対象が拡大する。

 緊急支援策としてオバマ政権は、これまで西部7州に対して合計で3億米ドル(366億円)相当を措置した。被害の大きいカリフォルニア州に対しては、干ばつにより職を失った収穫労働者に対する臨時雇用策などが盛り込まれている。さらに、水資源の有効な使用のための支援策もある。

 カリフォルニア州政府もまた、「州水使用効率化および強化プログラム(SWEEP)」を2014年から実施し、節水効果のあるかんがい施設の整備に対する支援として、2年間で合計2358万米ドル(28億7700万円)を支出した。2015年には、ドリップかんがい、マイクロスプリンクラー、省エネタイプのポンプ、土壌湿度測定センサー、計画かんがいシステムなどが対象となった。

技術革新の現状

 USDAの調査によれば、米国におけるかんがい設備の改善に対する投資の90%は民間主導である。2014年に西海岸で行われた投資のうち、45%は計画かんがいシステムや既存施設の機能向上、修繕に充てられ、未かんがい地域への新規整備は24%にとどまっていた。

 また、厳しい干ばつの継続に対応するための技術開発が推進されている。特にビッグデータを活用した精密農業に関する注目が高く、その市場規模もまた拡大傾向にある。米国金融大手のバンク・オブ・アメリカ(Bank of America Corporation)の報告書によれば、精密農業の市場規模は10~25億米ドル(1220~3050億円)に達しており、5年後には35億米ドル(4270億円)にまで拡大すると予想されている。全米のほ場を細かいプロットに分け、ピンポイントで気象予測を行い、詳細なほ場管理を行うことを可能とするシステムが開発されている。

 そのほかに、土壌湿度測定センサーとかんがいシステムおよび気象データを組み合わせて、水資源の保全と効率的な使用を実現するシステムや、植物に均等に行き渡らせ、損失分を少なくするミストで、肥料や栄養素を散布する機械なども開発されている。

精密農業導入のための課題

 バンク・オブ・アメリカの報告書によれば、このような新しい精密農業関連技術への投資額は、当初3年間は1エーカー当たり20~40米ドル(1ヘクタール当たり6027~1万2054円)であるが、4年目以降は同5~10米ドル(同1513~3013円)へと下がる。ただし、同報告書は、利益が見込めるのは5000エーカー(2000ヘクタール)以上の大規模生産者であると指摘しており、中小規模の生産者にとって、このような投資は過大であると言える。

 前述のような大がかりな投資ではなく、土壌湿度測定センサーをオンラインで管理し、数値に合わせてスプリンクラーを使用するだけでも水の使用量は30%減少すると言われており、インターネットを駆使した小規模な技術の導入は若い生産者を中心に行われているもようである。



元のページへ戻る


このページのトップへ