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海外情報(野菜情報 2015年8月号)


主要国の野菜の生産動向等

調査情報部


1 中国

 中国のえだまめの生産は、世界最大と言われ、収益性も高いことから、生産量は増加傾向で推移している。また、冷凍えだまめの輸出量は、世界第1位で、米国と日本向けの輸出量が多いことから、今号では、えだまめの生産動向等を紹介する。

えだまめの生産・価格・輸出動向

(1)生産動向

 中国におけるえだまめの生産に関しては、公式な統計がないため正確な数字は不明だが、関係者によると、栽培面積は10万~15万ヘクタール、生産量は120万~140万トンと、世界最大のえだまめ生産国と言われており、収益性が高いことから、農家の生産意欲も高く、生産量は増加傾向で推移している。

 中国では、えだまめは「毛豆もうとう」と呼ばれ、80年代後半から90年代初めに、台湾から生産、加工技術が導入されたことで、品質が飛躍的に向上した。中国国内では、主に外食における彩りとしてさまざまな料理に用いられているが、そのおいしさに加え、栄養価が高いことから人気があり、消費量が増加している。

 えだまめの主産地は、山東省、江蘇こうそ省、安徽あんき省、浙江せっこう省、福建省などであり、これら地域で全国生産の半分以上を占めている(図1)。

 なお、大豆に関しては、黒龍江省が大産地であるが、北京や上海などの消費地から遠く、また、えだまめなどを扱う冷凍加工企業も近くにないことから、えだまめはほとんど生産されていない。逆に、上記のえだまめの主産地では、えだまめの収益性が大豆の約2倍と非常に高いことから、大豆はほとんど生産されていない。

 主産地の作型を見ると、えだまめはその収穫時期によって、春、夏、秋の3種類に分類される(注1)

 春えだまめは、3月から4月上旬には種され、6月中旬から7月中旬に収穫、夏えだまめは、4月下旬から5月中旬には種され、7月から8月上旬に収穫、秋えだまめは、7月中下旬には種され、10月に収穫される(図2)。

 また、えだまめは、施設と露地で栽培されているが、施設栽培の場合は、露地栽培に比べ、10日から20日ほど前進栽培されている。

注1:作型は、地域ではなく、気候条件や他に栽培している作物などによって分かれる。


 えだまめの主要な品種は、台75-1、台292、 引豆いんどう4号、遼鮮りょうせん3号、瀋鮮しんせん3号などである。台湾や日本から導入されたものが多く、国産品種は少ない。

(2)価格動向

 えだまめは、農家ごとの小規模栽培が多く、合作社(注2)による栽培や集約栽培は少ないため、需給動向によって、価格、生産量とも大きく影響を受ける。

 全般的に生鮮食品の価格は、新年や春節(旧正月)需要により、1月から2月に高騰するが、えだまめについても12月から上昇し始め、2、3月にピークを迎える。6月から11月は出荷最盛期であることから、下落して推移する(図3)。

注2:中国における協同組合組織。

(3)輸出動向

 中国は、世界の冷凍えだまめの総輸出量の3~4割を占める世界第1位のえだまめ輸出国であり、米国と日本向けで、中国の総輸出量の約7割を占めている(図4)。

 しかし、2012年に日本で中国産冷凍えだまめから、基準値を超えた残留農薬(ジフェノコナゾール(注3))が検出されたため、その後、輸出届出ごとに全ロットの検査が義務付けられるなど、食品安全上の問題が影響し、輸出量は減少傾向で推移している。

注3:カビ(糸状菌)の細胞膜のエルゴステロール(細胞膜を形成する物質)生合成阻害をするトリアゾール系の予防殺菌剤(治療剤)で、日本では「スコア顆粒水和剤」として販売されている。

 輸出品としてのえだまめには、さや付き、むきえだまめ、塩味付きのものなどがあり、さや付きは全体の6~7割、むきえだまめは3~4割を占めている(写真1、2)。

 輸出向けの冷凍えだまめ加工企業は、山東省、浙江省、福建省に集中している。加工企業は、主に同じ省内にある自社の生産基地のほか、契約栽培農家からえだまめを仕入れており、それ以外の農家からの買い付けは、品質が一定しないことから行っていない。また、農家との契約栽培では、種子や肥料、施肥時期なども指定して栽培を委託し、たとえ天候不順で不作となっても、ある程度の支払いを保証するような契約が取られていることが多い。

 なお、えだまめの生産は季節性があることから、加工企業はえだまめ以外にもさまざまな野菜や果物の冷凍加工、輸出を手掛けている。

 

2 米国

 米国からは、日本への輸出が多いブロッコリー、レタス、セルリー(セロリ)(以下「セルリー」という)について、それらの主産地であるカリフォルニア州を中心とした生産動向等とともに、拡大する米国のオーガニック市場において、わが国の関心の高いこれら3品目とたまねぎの生産、貿易状況等を紹介する。

(1)ブロッコリー、レタスおよびセルリーの

生産動向

ア ブロッコリー

(ア)作況および作付面積

 カリフォルニア州のブロッコリーの作況は、引き続き概ね良好である。2015年5月末時点では、主にモントレー郡、スタニスラウス郡が収穫地であり、品質はおおむね良質と報告されている(図1)。しかし、今年のカリフォルニア州の気候は、平年より冬場が温暖で、かつ、涼しい春を迎えたことから、今後の作況を懸念する声も上がっている。モントレー郡サリナスの野菜生産・出荷大手であるCoastline社は、現在、同郡で作付けが始まったブロッコリーは、温暖な気候に適した品種であり、今後、気温が上昇しない場合、作況が不良となる可能性を指摘している(表1)。

 サンタバーバラ郡が5月に公表した「Agri-cultural Production Report 2014」によれば、2014年、同郡で生産された野菜の中で最も収穫面積が大きかったのはブロッコリー(1万1077ヘクタール)であり、10アール当たりの収量は約154.1カートン(1541キログラム:1カートン=約10キロ)であった。

(イ)生産者価格

 2015年4月のブロッコリー生産者価格は、春先からの需要の増加に伴い1キログラム当たり1.12米ドル(138円)となった(表2)。現地報告によると、5月の同価格は引き続き上昇傾向にあったものの、6月に入りサリナス、サンタマリアでの収穫が開始したことで供給量が増加し、落ち着きを見せている。また、他州での収穫も開始したことから、今後、さらに下落圧力がかかるとみられている。

 なお、本稿中の為替レートは、1米ドル=123円(2015年6月末日TTS相場:123.45円)を使用した。

(ウ)対日輸出動向

 2015年4月の対日輸出量は3667トンであった。これは前年同月(3815トン)を3.9%下回るものの、米国西海岸での港湾ストライキの影響下にあった前月の3倍以上となる。米国産ブロッコリーは一年を通して日本向けに輸出されているが、例年、日本の生産量が減少する春から夏にかけての輸出が目立つ。また、同月の輸出単価は1キログラム当たり1.1米ドル(135円)であった(表3)。

(エ)東京都中央卸売市場の入荷量および平均卸売価格

 2015年4月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前月比64%増の166トンであった(表4)。なお、4月時点で同市場に最も入荷量が多かったのは埼玉県産(479トン)であり、平均価格は米国産(438円)を上回る550円であった。

イ レタス

(ア)作況および作付面積

 2015年5月下旬時点では、モントレー郡の収穫が引き続き行われており、現地報告によると、5月下旬から6月中旬にかけて出荷されたロメインレタス、結球(アイスバーグ)レタス、その他レタス(グリーンリーフなど)の品質はおおむね良好であった。5月末のサリナスの生育状況は良好であったが、ブロッコリー同様、今後の天候が品質や収量を左右するとみられている。

 サンタバーバラ郡が5月に公表した「Agricultural Production Report 2014」によれば、2014年、ブロッコリーに次いで収穫面積が大きかったのは結球(アイスバーグ)レタス(4127ヘクタール)であり、10アール当たりの収量は180.9カートン(4161キログラム:1カートン=23キログラム)であった。また、リーフレタスは、収穫面積が約1637ヘクタール、10アール当たりの収量は147.7カートン(3397キログラム)であった。

(イ)生産者価格

 平年より収穫時期が早まったことで春先からの品薄感が強まり、結球(アイスバーグ)レタスの生産者価格は引き続き高値で推移し、2015年4月末時点で1キログラム当たり51セント(63円)に達した(表5)。

(ウ)対日輸出動向

 2015年4月の結球(アイスバーグ)レタスの対日輸出量は、米国西海岸の港湾機能の回復に伴い、前年同月とほぼ同水準の105トンとなった。また、結球(アイスバーグ)レタスの輸出価格も1キロ当たり1.2米ドル(148円)と、昨年の水準に戻っている(表6)。なお、その他のレタスの輸出量は17.8トンと、前年同月を19%上回った(表7)。

(エ)東京都中央卸市場の入荷量および平均卸売価格

 2015年4月の東京都中央卸売市場の米国産レタス(結球レタスを除くロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は、1トン(前年同月比150%増)となった(表8)。また、卸売価格は1キログラム当たり322円となった。なお、同市場では、2015年に入り米国産結球レタスは入荷されていない。

ウ セルリー

(ア)作況および作付面積

 主産地の一つであるモントレー郡では、6月中旬から収穫期を迎えている。一方、5月にベンチュラ郡で収穫されたセルリーは、気温などの問題から米国農務省が設けている出荷基準を満たせなかったため、供給量が減少した。しかし、6月に入り生育環境が改善に向かったことで、今後の供給量は回復が見込まれている。

 ベンチュラ郡では、モザイク病が流行するのを防ぐ目的で、毎年7月15日からの約20日間、セルリー栽培のモラトリアム(一時禁止)が義務付けられているため、大半の出荷は6月末までに終了する。このため、この時期の産地は、モントレー郡サリナスへと切り替わる。

 なお、野菜生産大手Duda Farm Fresh Foods によれば、今年はサリナスでのセルリーを含む作物の作付け開始時期は、予定より遅れているとしている。

 サンタバーバラ郡が5月に公表した「Agricultural Production Report 2014」によれば、昨年の同郡のセルリーの10アール当たりの収量は264.3カートン(7136キログラム:1カートン=27キログラム)であった(表9)。

(イ)生産者価格

 2015年4月のセルリーの生産者価格は、需要は安定する中で、品薄感が漂ったことから1キログラム当たり41セント(50円)となった(表10)。現地の報告によると、5月以降も生産者価格は上昇傾向が続き、6月1日の時点では1カートン(1カートン=茎24本)当たり約15ドル(1845円)としている。6月中旬以降は、生産量が増加したことで、同価格は1カートン当たり9ドル台(1107円)に下落し、4月の水準に戻っている。

(ウ)対日輸出動向

 2015年4月の対日輸出量は、前年同月比32%減の587トンであり、輸出単価は前月と同じく1キロ当たり70セント(86円)であった(表11)。

(エ)東京都中央卸市場の入荷量および平均卸売価格

 2015年4月の東京都中央卸売市場の米国産セルリーの入荷量は、前年同月比57%減の35トンであった(表12)。なお、4月の時点で最も入荷量が多かったセルリーは静岡県産(448トン)で、平均価格は米国産(183円)を大幅に上回る402円であった。

(2)トピックス~オーガニック生産および貿易の状況~

 2002年10月にUSDAがオーガニックに関するガイドラインを定めて以降、米国のオーガニック市場は拡大傾向にある。オーガニックの認証を行う機関はUSDAに属する全米オーガニック・プログラム(NOP(注))である。ここでは、ブロッコリー、レタス、セルリーおよびたまねぎに関するオーガニック生産および貿易の状況を報告する。

(注)NOPではオーガニックの定義を以下のように定めている。
「オーガニックとは、認可された手法で生産された食品、あるいはその他農業製品のことを指す、表示用の用語である。認可された手法とは、資源の循環を育み、生態系のバランスを整え、生物多様性を保護することが可能な、文化的かつ生物学的な、機械を使用して行う農法を取り入れたものである。なお、合成肥料や下水汚泥の使用および放射線照射や遺伝子操作の実施は禁止である。」
また、農作物がUSDAオーガニック認証を受けるには、下記の基準を満たさなければならない。

①オーガニック作物の収穫時点から逆算して、少なくとも3年間は、その土地で禁止物質を使用していないこと。

②耕うん・耕作、輪作、被覆作物の栽培および、動植物性廃棄物や認可された合成物質による栄養の補てんといった方法を用いて、土地の肥沃度や作物の栄養素を管理すること。

③害虫、雑草、疫病管理には、主に物理的、機械的、生物学的な防除方法を用いること。こうした手法では不十分な時のみ、国が認めている生物物質、植物由来の物質や合成物質を使用してもよい。

④入手可能な場合は、オーガニックの種子や苗木を使用すること。

⑤遺伝子操作や、電離放射線および下水汚泥の使用は行わないこと。

ア 生産

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2010年にまとめた「2008 Organic Production Survey」によると、オーガニック生産に利用されている農地面積は408万エーカー(165万1117ヘクタール)であり、2007年時の調査に比べ約150万エーカー(60万7028ヘクタール)増加した。このうち、耕作地が160万エーカー(64万7497ヘクタール)を占め、残りは放牧地であった。また、2014年末時点において、全米でオーガニックの認証を受けている農場や施設は1万9474カ所であり、2002年時調査の2.5倍以上に増加している。前述の4品目で見ると、レタスの栽培面積が最も大きく、生産量全体の11%を占めている(表13)。

 オーガニック食品の中でも野菜と果物は特に人気があり、2012年のオーガニック食品の販売額のうち、43%は野菜と果物が占めていた。またその中でも、サラダなどで生鮮として食されることが多いレタスの需要が高い。

イ 流通

 オーガニック食品の市場規模は2014年に350億米ドル(4兆3050億円)に達し、食品市場全体の4%に相当するとみられている。主要な販売ルートを大別すると、①スーパーマーケットなど通常の生鮮食品店、②自然食品店、③生産者の直接販売(ファーマーズ・マーケット)である。特に、近年は生産者の直接販売が人気であり、全米で大きく増えている(1994年の1755カ所から2013年には8144カ所まで増加)。また、地産地消を好む消費者も増えており、オーガニック食品の44%は生産地から160キロメートル以内の範囲で消費されている。

 2009年にUSDAが行った調査によれば、オーガニックレタスの小売価格は通常のレタスより70%高く、ブロッコリー、セルリーおよびたまねぎのいずれの価格も通常商品に比べて10~25%高かった。生産者にとって、付加価値の付くオーガニック生産は魅力的とされ、USDAの統計によれば、オーガニック認証を申請する農場者数が増えている。

ウ 貿易

 米国オーガニック貿易協会(OTA)によれば、2014年の米国産オーガニック製品の輸出額は5.5億米ドル(677億円)に達し、調査が始まった2011年から34%増加した。最も多く輸出されている品目はりんごで以下、レタス(結球以外)、ぶどう、ほうれんそうおよびいちごであった(表14)。

 また、輸入も大きく増えており、2014年には12.8億米ドル(1574億円)と、2011年比で91%の伸びを示している。

 レタス、ブロッコリー、セルリーおよびたまねぎは、いずれも輸出額上位24位以内に入っており、結球以外のレタスを除いて、増加傾向にある。また、総輸出額に占めるオーガニック製品の割合を見ると、たまねぎの割合の高さが際立っている(表15)。

 たまねぎのほとんどはメキシコに輸出されており、台湾およびカナダにも少量輸出されている。レタス(結球以外)については、そのほとんどがカナダとメキシコに輸出されている。

エ 対日輸出動向

 オーガニック製品は、カナダとメキシコ向けを主な輸出先としており、対日輸出はブロッコリーを除き、それほど多くない(表16)。2014年にはオーガニックのセルリーが輸出されたが、2015年(1~4月期)は実績がないことから、スポット的なものであったとみられる。

オ 今後の見通し

 USDAは、2014年から2015年前半にかけてオーガニック生産調査を実施しており、この結果は、2015年8月以降に発表される予定である。また、オーガニック市場は、すでに350億米ドル(4兆3050億円)規模に達しているが、消費者のさらなる信頼を高めるため、USDAは2012年から、オーガニック食品に対する残留農薬検査体制を強化し、オーガニック認証を受けている農場数の5%以上を毎年検査している。米国民は、オーガニック食材に対する関心および消費意欲が高く、今後もオーガニック生産は増加するとみられている。
日本への輸出実績は小さいものの、米国では今後、より多くの生産者がオーガニック栽培に転換するとされることから、ブロッコリーなどの品目では、オーガニック製品の輸出割合が高まる可能性がある。



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