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海外情報(野菜情報 2015年7月号)


主要国の野菜の生産動向等

調査情報部


1 中国

 中国では近年、いちごの生産量が増加している。また、主に冷凍いちごがEU、日本、ロシアなどに輸出されていることから、今号ではいちごの生産動向等を紹介する。

いちごの生産・価格・輸出動向

(1)生産動向

 中国におけるいちごの生産量は、近年、栽培面積の増加に加え、栽培技術の向上や品種改良などにより単収が向上し、増加傾向で推移している。

 中国農業年鑑によると、2013年については、栽培面積11万ヘクタール(前年比9.4%増)、生産量300万トン(同8.6%増)、10アール当たり収量2.7トン(前年同)であった(表1)。

 主ないちごの生産地は、遼寧りょうねい省、河北かほく省、山東省、江蘇こうそ省、上海市、浙江せっこう省など東部沿岸地域に集中しており、特に、山東省、遼寧省、河北省は、生産量や単収が他の地域を大きく上回っている(図1、表1)。

 また、最近では、四川省、 安徽あんき省、新疆しんきょうウイグル自治区、北京市などにも栽培が広がっている。

 2014年のいちごの生産量は、2013年秋に江蘇省、浙江省、上海市を襲った台風と、冬に山東省を襲った大雪と低温により被害を受け、前年に比べ15~20%減少したとされる。特に、上海市においては、例年の6割ほどの生産量となった。

 中国におけるいちごの生産は、8割が施設栽培、2割が露地栽培で行われている。生育ステージは、山東省を例に見ると、施設栽培の場合、9月中下旬に定植、12月下旬に収穫開始となり、1月には収穫の最盛期を迎え、果実も大きくなり収穫量が増えるが、その後、徐々に果実が小さくなるなどで収穫量が減り、5月上旬に収穫が終了となる(図2)。露地栽培の場合は、10月上中旬に定植、5月中下旬に収穫開始、6月下旬に収穫終了となり、施設栽培に比べ収穫期間は短期間である。

 なお、南方地域では北方地域に比べ、1カ月程度前倒しで、定植および収穫が行われる。

 いちごの主要な品種は、国内向けとして、豊香ほうこう紅顔べにがお甜宝てんほうがあり、冷凍輸出向けとして、甜查理てんちゃーりー、米国十三号および法兰地ほうらんちなどがある。

(2)価格動向

 中国では、全般的に毎年1月から2月の春節(旧正月)需要により物価が高騰するが、いちごについても、例年1月をピークに、2月下旬から下落、3月以降は安定的に推移する(図3)。

 しかし、2015年4月の「残留農薬検査でいちごから発がん性物質のアセトクロールが検出された」との報道により、遼寧省、河北省、山東省などでは売れ行きが鈍り、5月以降、卸売価格が下落しているとされる。このため、農家の出荷価格は、4月中旬には1キログラム当たり8~16元(160~320円)だったものが、同2~8元(40~160円)まで下落し、一部には同2元以下(40円)に暴落している地域もあるといわれている。生産コストは、同12元(240円)程度と推計されることから、農家にとっては厳しい状況となっている。

 なお、本稿中の為替レートは、1元=20円(2015年5月末日TTS相場:20.25円)を使用した。

(3)輸出動向

 収穫されたいちごは、ほとんどが国内で消費されており、輸出量は生産量全体の3~5%とそれほど多くはない。

 輸出は冷凍品が主であり、形状としては、果実丸ごとのもの、さいの目にカットされたもの、薄くスライスされたもの、いちごソースなどがある。

 主要輸出先としては、オランダ、ドイツなどのEU、日本、ロシアなどであるが、オランダおよびドイツ向けは2012年をピークに減少傾向で推移している(図4)。これは、2012年秋にドイツで起こった1万人以上のノロウイルスによる大規模食中毒の原因が、中国産冷凍いちごの可能性が高いとされた報道によると考えられる。結局、この食中毒事件の原因が中国産冷凍いちごであるという確証は得られなかったが、いまだEUでの需要は回復していない。また、円安が進み輸出価格が上昇したことにより、日本向けの輸出についても減少傾向で推移している。

 輸出向けの冷凍いちご加工企業は、山東省に集中しており、同地域に100社ほどあるが、そのうち8割程度は中小企業で、年間輸出量が1000トンに満たない。

 これら中小企業は、自社で生産基地を有し、「生産、加工、輸出」を一体的に行う大企業と異なり、自社生産と外部生産者からの仕入れを併用し、原料を確保している。

 なお、冷凍いちごの加工、輸出は主に5月から6月に行われ、季節性が強いことから、冷凍いちご加工企業は、いちごの他にもさまざまな野菜や果実の冷凍加工、輸出を手掛けるケースが多い。

2 米国

 日本に輸出されるブロッコリーとレタスの主産地であるカリフォルニア州の生産動向を紹介する。

ブロッコリー、レタスの生産動向

(1)ブロッコリー

ア 作況および作付面積

 米国では複数の品種が土壌や利用形態などに合わせて栽培されている。このうちカリフォルニア州の生産量は、全米の9割以上のシェアを占めている。2015年の同州のブロッコリーの作況は良好を維持している。4月に出荷が増加した主産地である同州中部のモントレー郡のブロッコリーはいずれも良質であった。また、一部地域ではオーガニックブロッコリーの収穫も行われており、品質および収穫量は共に良好と報告されている。5月初旬の時点では同州のブロッコリーは豊作が続いており、中部のスタニスラウス郡では作付けが開始された。

イ 生産者価格

 2015年は季節外れの暖かさにより、ブロッコリーの収穫時期が早まったため、2月の生産者価格は下落傾向にあった(表2)が、ブロッコリー需要が高まった春先の3月には上昇に転じている。出荷量は平年並みとなったものの、例年に比べて各地の気温が上昇傾向にあることでサラダなどの需要が増しており、3月時点では、1キログラム当たりの生産者価格は1.05米ドル(131円)となった。

 なお、本稿中の為替レートは、1米ドル=125円(2015年5月末日TTS相場:124.73円)を使用した。

ウ 対日輸出動向

 米国西海岸の港湾機能がストの影響からまだ完全に回復していないことなどを背景に、2015年3月の対日輸出量は前年同月比72%減の1042トンであった。また、同月の輸出単価は1キログラム当たり約1.2米ドル(150円)となった(表3)。

エ 東京都中央卸市場の入荷量および平均卸売価格

 例年、春には日本国内ブロッコリーの出荷が減るにつれ、米国産の取り扱いが目立つようになるが、2015年3月の東京都中央卸売市場の米国産ブロッコリーの入荷量は、前月比2倍以上の101トンであった(表4)。なお、3月時点で、東京中央卸売市場で最も入荷量が多かったブロッコリーは愛知県産(896トン)であり、平均価格は米国産を下回る、1キログラム当たり360円であった。

(2)レタス

ア 作況および作付面積

 米国では主に、結球(アイスバーグ)レタス、リーフレタスおよびロメインレタスが栽培されており、2014年に米国で生産された中で、結球レタスはたまねぎに次いで生産量が多い野菜であった。このうちカリフォルニア州は、全米の生産量の7割以上のシェアを占めている。

 2015年は4月から5月にかけて、同州の主要生産地である中部のモントレー郡で収穫期を迎えた。同州では乾燥地域のレタス収穫期が終わる頃、高原地域がレタスの主要出荷地となる。2015年のレタスの収穫は、平年より7日から10日早く始まったが、ロメインレタスやその他のレタスの出荷量および品質は共に良好で豊作が続いており、出荷は9月まで続く見込みである。

イ 生産者価格

 平年より収穫時期が早まったため、4月末から5月にかけて品薄傾向にあり、価格も高騰している。3月末の時点で結球(アイスバーグ)レタスの価格は、1キログラム当たり0.42米ドル(53円)に達し、上昇傾向にある(表5)。

ウ 対日輸出動向

 2015年3月の対日輸出量は、前年同月比82%減の6トンとなったが、これは米国西海岸の港湾機能がストの影響からまだ完全に回復していないことが背景にあるとみられている。また、2015年3月の結球レタスの輸出単価は、1キログラム当たり3.9米ドル(488円)(表6)、その他のレタスの輸出単価は同4.8米ドル(600円)であった(表7)。

エ 東京都中央卸市場の入荷量および平均卸売価格

 2015年3月の東京都中央卸売市場の結球レタス以外の米国産レタス(ロメインレタス、フリルレタスなど)の入荷量は0.7トン(前年同月比75%増)となった。卸売価格は2月に比べてわずかに下落し、1キログラム当たり292円となった(表8)。同市場では、2015年に入り米国産結球レタスの入荷は行われていない。




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