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海外情報(野菜情報 2015年2月号)


メキシコ産かぼちゃの生産および対日輸出状況

調査情報部


【要約】

 メキシコは、わが国からかぼちゃの種子を導入した後、その生産地として順調に発展を遂げてきた。日・メキシコ経済連携協定(以下、「日・メキシコEPA」という。)なども追い風となり、近年では、わが国のかぼちゃ市場でニュージーランド(以下、「NZ」という。)に並ぶ2大輸出国となっている。輸入かぼちゃは、国産ものの端境期を補完し、周年供給を可能としていることから、メキシコの生産動向は、今後とも注目する必要がある。

1 はじめに

 世界のかぼちゃ類(ウリ類含む)の生産量は、国際連合食糧農業機関(FAO)によると、2012年で2461万トン、そのうち、メキシコは56万トンと、全体の約2%となっている(図1)。また、世界のかぼちゃ類輸出量は、国際貿易センター(ITC)によると、2012年で約85万トン、そのうち、メキシコは、全体の16%に当たる14万トンである(図2)。

 このように、世界においてメキシコは、生産面では他の主産国よりシェアが低いものの、輸出面では高いシェアを誇っている。

 メキシコ産かぼちゃの対日輸出は、2006年頃より増加傾向を見せ、2013年には、わが国のかぼちゃ総輸入量に占める割合が45%に達した。本稿では、拡大を続けるメキシコのかぼちゃ生産および輸出動向について紹介する。

 なお、本稿中の為替レートは、1米ドル=121.55円、1ペソ=9.16円(平成26年12月末TTS相場)を使用した。

2 生産状況

(1)栽培状況

 メキシコ農牧食料省(SAGARPA)によれば、現在、メキシコでは5種類のかぼちゃが栽培されている。皮が軟らかいうちに食されるズッキーニなどのペポかぼちゃ(cucurbita pepo)、製菓用に実と種が用いられる東洋種であるカスティーリャかぼちゃ(cucurbita moschata)(写真1)、種子を中心に食されるミクスタ種(東洋種と西洋種の種間雑種)であるピピアナかぼちゃ(cucurbita argyosperma)、実が軟らかい間は野菜として、硬くなると製菓用や家畜の飼料に用いられるチラカヨテ(cucurbita ficifolia:わが国において、きゅうり苗の台木として用いられる黒種かぼちゃ)、そして主に実を用い、わが国にも輸出される西洋かぼちゃ(cucurbita maxima:西洋種)(写真2)がある。種子は搾油用に加工されるが、花や実は主に生鮮で流通している。上記5種類の中で、メキシコ国内で最も流通している種類はペポかぼちゃであり、1年を通して販売されている。

 なお、メキシコの統計上、かぼちゃとして扱われるのは、わが国向けの西洋かぼちゃをはじめ、カスティーリャおよびミクスタであり、ペポかぼちゃ、チラカヨテおよびピピアナは、かぼちゃに含まれない。

 メキシコにおけるかぼちゃの栽培面積は、2008年に約4000ヘクタールであったが、2013年には8670ヘクタールへと倍増した(図3)。栽培および収穫面積は、年率平均20%の成長を遂げている。とりわけ、北西部のソノラ州で特に大きな伸びが見られた1)(図4)。

 わが国向けのかぼちゃ生産は、1980年代にわが国のかぼちゃ輸入業者が、シナロア州クリアカン(Culiacan)地区の農家に生産を依頼したことが始まりと言われている。その後、かぼちゃの栽培に、より適した気候条件や土壌をもつソノラ州エルモシージョ(Hermosillo)地区などに主要産地が移っていった2)。野菜の生産および輸出が盛んなソノラ州は多収技術をいち早く導入するなど、かぼちゃ生産を拡大させていったことから、現在では、栽培面積の75%を占める最大の産地となった。他には、太平洋側に面しているナヤリト州、ゲレロ州、ハリスコ州および中部のプエブラ州があり、これら上位5州でわが国向けかぼちゃ生産の9割を占める。

 また、1ヘクタール当たりの平均単収は、2004年の11.5トンから2013年には約18トンと、この10年で1.5倍になった(図5)。

 この背景には、生産性の高い品種の採用や栽培技術の開発のほか、近年天候に恵まれたことなどがある。

 メキシコ北西部におけるかぼちゃの栽培期間は、春から夏、もしくは夏から秋となっている3)。主な輸出先であるわが国向けの栽培は、冬至に合わせた年末に需要が高まることから、夏から秋にかけて行われることが多い。また、この時期は、わが国のかぼちゃ市場において、国産および他の輸入ものとの競争が比較的少ないこともあって、2000年代以降、メキシコの大企業は、輸出産品であるかぼちゃの生産を強化した4)

(2)生産形態

 かぼちゃの生産は、ほぼ4社による寡占状態となっている。これは、かぼちゃなどの野菜生産が、他産業よりも低収益であること、わが国の需要量が一定であることから、先行した4社で利益を分け合う状況となっていることなど、対日輸出用かぼちゃ生産に新規参入するメリットが低いためである。かぼちゃ生産は、大規模なかんがい施設を活用した近代的な形態で行われている。ソノラ州に拠点を置くAgrocir社では、かんがいを整備し、「味平」をはじめとした品種のかぼちゃを栽培している5)(写真3、4)。米国系企業であるOmega社は、2000ヘクタールのほ場で生産を行っている6)

(3)生産品種と価格

 1960年代以降、わが国では、甘みが強くほくほくした粉質系の西洋かぼちゃが多く取引されるようになった。西洋かぼちゃは、海外で生産、消費されていなかったため、1980年前後より、わが国の青果物専門商社や卸売業者が、種苗メーカーとともに海外の産地開発に乗り出した。メキシコでも、わが国からかぼちゃの種子を導入し、味平をはじめ、「えびす」「くりじまん」「みやこ」「ほっこり」「こふき」などの品種を栽培している。なお、東日本はみやこなどの粉質系が好まれ、西日本はえびすなど水分を含む粘質系が好まれる傾向があるといわれており、メキシコは前者を多く出荷する傾向にある7)

 SAGARPAによれば、生産者側が第一購入者に対して庭先で販売するかぼちゃの売渡価格は、2013年に1トン当たり4150ペソ(3万8014円)であった。過去10年の推移を見ると、3000ペソ(2万7480円)台で推移していたが、2012年は、生産量の減少により、価格が大きく上昇した。生産量が回復した2013年は、わが国が不作傾向で、特にメキシコ産の輸入時期である12月の価格が高騰したことから、売渡価格も4000ペソを上回り、高止まりしたままである(図6)。

3 輸出入の動向

(1)輸出

ア 概況

 メキシコは、かぼちゃを主に米国とわが国に対して輸出している。

 対日輸出は、上述の通りわが国の消費者ニーズに合う品種を導入していることに加え、2005年の日・メキシコEPA発効に伴い、関税が撤廃されたことから、2004年と2013年を比べると金額ベースで約2.4倍、数量ベースで約2.3倍とおおむね順調に拡大してきた。(図7)。

 わが国の生鮮かぼちゃ輸入において、メキシコはNZに次いで第2位となっている。日・メキシコEPA発効以降、メキシコ産かぼちゃの輸入量は、NZ産かぼちゃに迫る勢いで増加しており、2013年のシェアは45%となっている(図8)。

 年平均の輸入価格を見ると、メキシコ産かぼちゃはNZ産かぼちゃよりも一貫して高くなっている(図9)。この価格差は、両国の輸入時期の違いに由来している。東京都中央卸売市場における、2013年の両国の月別入荷量および価格を見ると、メキシコ産は、国産との競合が少ない端境期で、かつ冬至などの需要期に当たり市場価格の高い11~2月の入荷が多いことに対し、NZ産は同時期の輸入が少なく、九州および沖縄産の入荷が始まり価格が落ち着く2~4月の入荷が多い(図10)。

イ 物流

 かぼちゃは保存性に優れており、適切に保管すれば数カ月は品質が保持できる。衝撃に強く、収穫、運搬時の管理も比較的容易であるため、長距離輸送にも対応しやすい8)。このため、メキシコ産生鮮かぼちゃは、ほぼ全量が海上コンテナ貨物で輸出される。メキシコ国内では太平洋岸の港から積み出されるほか、陸路で米国ロサンゼルスまで陸送された後、日本全国各地の港へ運ばれるものもある9)。輸送先は神戸が5割強と多く、横浜が2割、名古屋が1割弱で、以下、川崎、東京と続く10)。収穫後、メキシコから国内の倉庫に到着までに要する期間は、約1カ月である11)

(2)輸入

 メキシコは、米国からかぼちゃ類を輸入しており、輸入量は2013年に約1500トンであった12)。米国からのかぼちゃ輸入は、メキシコ産かぼちゃの端境期に当たる9月に多いことから、メキシコ産を補完し、国内周年供給体制を維持するための輸入と考えられる。
また、メキシコは、かぼちゃの種子をわが国から輸入しており、2011年の輸入量は6.2トン、輸入額は166万ドル(2億177万円)であった。輸入額は、わが国からの農水産物、食品輸入額の約1割を占めた。わが国から輸入された種子は、対日輸出向けとして、ソノラ州などで栽培されている13)

4 さいごに

 わが国においてかぼちゃは、輸入によって周年供給が可能となったことに伴い、冬期の需要も増加し、現在では、国産ものと輸入ものの比率は安定的に推移している。

 メキシコにとってかぼちゃは、アボカドや食肉などと並び、重要な対日輸出農産物であり、その対日輸出量は、首位のNZに肉薄するまでに伸びてきたが、国産ものと競合する時期ではない冬期の輸入となることから、国産ものとのすみ分けが行われている。

 国産ものの端境期を補完し、わが国におけるかぼちゃの周年供給を可能としていることから、メキシコ産かぼちゃの生産動向については、今後も注目する必要がある。

注釈

1)SIAP-SAGARPA

2)伊藤貴啓(2001)「日本における食の国際化と農業の発展戦略」(国立大学法人愛知教育大学)

3)Productores de Hortalizas(2010)Característicasy producción del cultivo de calabaza kabocha
http://www.hortalizas.com/cultivos/cucurbitaceas/caracteristicas-y-produccion-del-cultivo-de-calabazakabocha/

4)大呂興平(2013)[研究ノート]「日本のカボチャ市場をめぐる産地間競争の変動」(国立大学法人大分大学)

5)大呂(2013)

6)Agrocir http://www.agrocir.com/2012/esp/index.php、株式会社ユニオン http://www.unionwill.jp/will/lineup/pumpkin.html
その他、米国資本の入った企業について、次のウェブサイトより確認できる。Fresh Produce Associationof the Americas
http://www.freshfrommexico.com/suppliers.php?pg=12&pref=Variety&VarietyID=76&MemberID=101

7)伊藤(2001)

8)大呂(2013)

9)Productores de Hortalizas(2010)

10)財務省関税局

11)株式会社ユニオン

12)国際貿易センター

13)独立行政法人日本貿易振興機構



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