[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

海外情報(野菜情報 2014年10月号)


中国の野菜生産に関する安全確保施策について

調査情報部


【要約】

 中国国内でも食の安全への関心は高く、政府は、食の安全と消費者の信頼確保に向けた施策を行っており、平成26年4月に発表された「2014年食品安全重点工作安排的通知」には、野菜などの食品を対象に、禁止農薬の取締強化やトレーサビリティ体系の構築などが盛り込まれた。
 また、同年8月に施行された「食品中農薬最大残留限量」では、農薬の残留基準について、国際食品規格委員会(コーデックス委員会)よりも厳しい基準が定められた。

はじめに

 中国農業は、野菜の対日輸出を進める一方、残留農薬などさまざまな課題を抱えている。対日輸出用野菜については、輸出野菜栽培基地(輸出専用ほ場)で生産され、残留農薬などについては、CIQ(中国国家質量監督検査検疫総局)の検査などを経たが、中国国内で流通する野菜は、輸出用のような厳重な検査は行われず、各地の野菜主食品質監視センターによるサンプリング検査にとどまっていた。このような中、政府は最近、消費者からの食の安全への関心の高まりを背景に、食の安全に関わる施策を相次いで打ち出したので、本稿ではその概要を紹介する。

1 食品安全に係る施策

 国務院弁公庁(内閣に相当する国家最高行政機関の事務局)は、平成26年4月29日に2014年食品安全重点工作安排的通知(以下、「通知」という。)を発表した。過去5年間に、農薬残留標準の作成(2010年)、農薬の使用安全の指導強化(2011年)、農薬残留監督測定の強化(2012年)、農業生産経営への監督管理の強化(2013年)など、近年問題となっている農薬残留への対応などが行われてきたが、今回の通知では、中国国内における食品安全に係る事件および事故を教訓に、管理監督体系の強化や企業責任の明確化、食品安全に係る犯罪への厳罰化などについて記述している(表1)。

 野菜栽培については、毒性が高い農薬の販売拠点の指定、農薬購入時の購入者記名、禁止農薬使用の取締強化、土壌汚染防止対策の徹底などが記載されている。

 野菜や食品の安全については、学校給食における細菌由来の食中毒防止に向けた製造工程の管理や、インターネットにおける食品取引などに対する規制強化などが記載されている。また、農産物栽培から食品製造、販売までのトレーサビリティ体系の構築や、農産物および食品検査の徹底なども記載されている。

 一方で、違反した生産者、企業などに対する厳罰化、監督関係機関の連携強化なども盛り込まれている。

2 食品中の残留農薬基準の強化

 農業部(農林水産省に相当)と衛生部(厚生労働省に相当)国家衛生・計画生育委員会は、食品中農薬最大残留限量(GB2763-2014)を発表し、平成26年8月1日より施行された。これにより、中国の残留農薬の上限基準は、現行の2293項目から1357項目増え、3650項目となった。

 新基準には、以下の4つの特徴がある。

①生鮮野菜(115種類)および生鮮果実(85種類)において、野菜が431項目、果実が473項目追加され、合計で2495項目について残留農薬上限基準が定められた。

②対象品目が増加した結果、野菜を含む12大分類作物および製品が網羅されることとなった。注目されるのは、新基準が果汁、シロップ漬け果実、ドライフルーツなど、一次加工品に初めて適用され、日常的に消費される食品がほぼすべて網羅されたことである。

③多くの使用農薬が網羅された。中国国内で使用される約350種類を上回る387種類の農薬について、残留上限基準を定めている。今後、対象となる農薬は増加するとみられている。

④国際食品規格委員会(コーデックス委員会)がすでに定めている制限量基準(1999項目)の90.6%に当たる1811項目について、同委員会の基準同等もしくはそれ以上に厳格化されている。

 現地報道はこの新基準について、中国産農産物の国際競争力の向上と、持続可能な農業生産につながると、伝えている。

3 残留農薬基準違反者への対処厳格化

 最高人民法院および最高人民検察院は、「関於弁理危害食品安全刑事案件適用法律若干問題的解釈」(以下、「解釈」という。)を定め、平成25年5月2日から施行している。
解釈の第1条では、基準(食品中の最大農薬残留限量)を著しく超えた場合、中華人民共和国刑法第143条に規定される「深刻な食物中毒事故またはその他の深刻な食品媒介疾患を十分にもたらすもの」とみなしている。また、同第8条では、農産物の生産段階において、使用禁止農薬を使用した場合、処罰を科す、と定めている。

4 残留農薬分析の実施時期と対象成分

 地方政府は、農産物検査の品質および安全性を強化し、食の安全と消費者の信頼を確保するため、「2014年第二次蔬菜質量安全監督抽査工作方案」(以下、「工作方案」という。)を策定している。

 この工作方案により、主要な農業生産拠点、卸売市場および量販店では、モニタリングおよびサンプリング検査が行われている。

 野菜に関するサンプリング検査は、葉茎菜類や果菜類などを対象に春から秋にかけて年4回実施され、有機リン系のメタミドホスなど58種類の成分について残留分析が行われている(表2)。

参考資料
中華人民共和国国務院弁公庁 「2014年食品安全工作安排的通知」
(平成26年4月29日)
新華網 「農薬残留国家新標準発布 将于8月1日起施行」(平成26年3月29日)
中華人民共和国最高人民法院 「関於弁理危害食品安全刑事案件適用法律若干問題的解釈」
(平成25年5月6日)
徳州新聞「新版《食品中農薬最大残留限量》標準8月1日即将実施 指標增加到3650項」
(平成26年7月17日)



元のページへ戻る


このページのトップへ