調査情報部
わが国の野菜輸入は、輸入数量の約50%を占める中国産の輸入が、残留農薬などの安全性の問題から2006年以降減少傾向であったが、2010年に春先の低温・多雨、夏季の高温・少雨などの天候不順による国内産の作柄不良から大幅な増加に転じ、2011年においても、生育期の高温・少雨、日照不足などの天候不順により前年を上回る輸入量となり、輸入数量全体で220,166トン増(前年比108.8%)の2,718,490トンと2年連続して増加した。類別で見ると、生鮮野菜が94,388トン増(同111.5%)の914,982トン、冷凍野菜が69,971トン増(同108.2%)の922,518トンなど、塩蔵等野菜を除き増加となった。
大幅に増加した主な品目は、生鮮野菜では、2010年産が不作であったたまねぎが33,646トン増(同109.9%)の373,123トン、2010年と同様に天候不順による不作からにんじん及びかぶが14,872トン増(同122.8%)の80,059トン、生育期の天候不順により不作であった、ごぼうが8,703トン増(同123.6%)の45,569トン、かぼちゃが8,263トン増(同107.8%)の114,574トン、ばれいしょが6,306トン増(同427.1%)の8,234トン、さといもが4,221トン増(同153.7%)の12,079トン、結球キャベツが3,657トン増(同115.6%)の27,025トンと増加した。
2009年産、2010年産が不作であったばれいしょは、ポテトチップス用として2月~7月においてシストセンチュウの検疫など条件付きで輸入が許可されている米国産が、2009年328トン、2010年1,899トン、2011年8,013トンと大幅に増加した(注)。また、シストセンチュウの汚染国に指定されていない中国産も、2009年0トン、2010年29トン、2011年221トンと大幅に増加した。輸入価格(2011年CIF)は、米国産55円/㎏に対し、皮むき、芽取りされ、カット野菜用などで消費される中国産は84円/㎏と高くなっている。
生鮮野菜増加数量に対する品目別増加量の割合(寄与率)では、たまねぎ35.6%、にんじん及びかぶ15.8%と、2010年と同様に天候不順による国内産の不作が、生産野菜輸入増加の大きな要因であった。
冷凍野菜は、69,971トン増(同108.2%)の922,518トンと初めて90万トンを超えた。品目別では、ばれいしょが13,760トン増(同104.0%)の361,205トン、ほうれんそう等が6,355トン増(同123.5%)の33,443トン、ブロッコリーが4,783トン増(同118.0%)の31,360トン、スイートコーンが4,438トン増(同110.5%)の46,858トン、混合冷凍野菜が3,501トン増(同114.9%)の26,937トン、えだまめが3,404トン増(同105.1%)の70,222トン、さといもが2,484トン増(同106.8%)の38,781トンと増加した。
さらに、輸入が増加した要因には、外国為替レートのさらなる円高傾向と、最大の輸入先国である中国における国内野菜価格の下落があげられる。
外国為替レート(円/ドル)が歴史的な円高水準で推移したことにより、2011年の輸入価格(CIF)は下落した。中国においては、生産資材価格の上昇や労働者賃金の上昇などの生産コストの上昇、国内需要の増加などにより野菜の国内価格および輸出価格(FOB)は上昇傾向にあったが、円高の進行によりドルベースの輸出価格上昇が相殺され、輸入価格は安定して推移した。
一方、経済発展による所得向上、健康志向の強まりから野菜の需要が拡大し、2008年~2010年の野菜の消費者物価指数は対前年比10%以上の上昇が継続していたが、この国内価格の上昇から野菜作付面積は増加し、2011年においては過剰基調となり、一転して国内価格は下落した。
以上のことから、輸入価格は大幅に低下することとなった。これを、たまねぎにより示したものが図1である。
2010年および2011年の野菜輸入は、基本的には国内の天候不順による作柄不良により大幅な増加となったが、円高による国内産価格と輸入価格の乖離拡大、2011年では、中国国内価格の下落による輸出価格の下落も、輸入増加の大きな要因であった。
この結果、輸入数量全体に占める中国の割合は51.9%と若干上昇し、輸入金額全体に占める中国の割合は50.5%と上昇した。
生鮮野菜および冷凍野菜の対前年増加率は、中国の増加率が全体の増加率を上回っている。天候不順による生鮮野菜の価格高騰や低価格志向の強まりなどから、中国産への需要が高まりつつある。2011年においては、東京都中央卸売市場におけるたまねぎの日本国内産価格が前年に比べ大幅に下落する中、輸入数量は増加した。加工・業務用需要が増加する中、安定供給の重要性が見て取れる。
注:シストセンチュウにより米国からの輸入が禁止されていたばれいしょは、2006年2月1日、栽培地域の指定などの検疫条件を満たしたうえで、ポテトチップ用が2月1日~6月30日(2011年7月1日、2月1日~7月31日)の期間で解禁された。