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2010年輸入野菜の動向

調査情報部 審査役 河原 壽


 わが国の野菜輸入は、輸入数量の約50パーセント(以下、「%」という。)を占める中国産の輸入が、残留農薬などの安全性の問題から2007年以降減少傾向であったが、2010年は、春先の低温・多雨、夏季の高温・少雨などの天候不順の影響による作柄不良から増加した。特にたまねぎは、府県産および北海道産が2年連続の不作となるなどにより、2010年の輸入数量全体は313,426トン増の2,498,324トン(前年比114.3%)と急増した。
 類別で見ると、生鮮野菜が205,323トン増の820,594トン(前年比133.4%)、冷凍野菜が68,375トン増の852,547トン(同108.7%)と大幅の増加となった。

表1 類別輸入数量・金額の推移

 大幅に増加した主な品目は、生鮮野菜では、たまねぎが131,902トン増の339,477トン(前年比163.5%)、にんじん及びかぶが23,369トン増の65,187トン(同155.9%)、ねぎが17,625トン増の50,188トン(同154.1%)、結球キャベツが10,313トン増の23,368トン(同179.0%)、ブロッコリーが6,143トン増の35,683トン(同120.8%)であった。生鮮野菜の増加数量に対する品目別増加量の割合(寄与率)を見ると、たまねぎ64.2%、にんじん及びかぶ11.4%、ねぎ8.6%、結球キャベツ5.0%、ブロッコリー3.0%と、天候不順によるたまねぎの国内産の不作による輸入増加が、生鮮野菜輸入量増加の大きな要因であった。
 また、冷凍野菜では、ばれいしょが27,436トン増の347,445トン(前年比108.6%)、えだまめが7,889トン増の66,818トン(同113.4%)、ほうれんそう等が5,004トン増の27,088トン(同122.7%)、いんげん豆等が4,393トン増の24,491トン(同121.9%)、ブロッコリーが3,461トン増の26,577トン(同115.0%)、その他冷凍野菜が19,938トン増の199,556トン(同111.1%)であった。同様に各品目の寄与率は、ばれいしょ40.1%、その他冷凍野菜29.2%、えだまめ11.5%、ほうれんそう等7.3%、いんげん豆等6.4%、ブロッコリー5.1%と、天候不順によるばれいしょの国内産の不作による輸入増加が、冷凍野菜輸入増加の大きな要因であった。
 一方、輸入先国を見ると、生鮮野菜では、たまねぎは中国、米国が、にんじん及びかぶ、ねぎ、結球キャベツは中国、ブロッコリーは米国からの輸入が増加し、冷凍野菜では、ばれいしょは米国、えだまめは台湾、タイ、中国、ほうれんそう等は中国、いんげん豆等は中国、タイ、ブロッコリーは中国、エクアドルなどからの輸入が増加した。
 さらに、輸入が大幅に増加した要因として為替レート(円高)の影響が挙げられる。
 最大の輸入先国である中国においては、生産資材価格の上昇や労働者賃金の上昇などの生産コストの上昇、国内需要の増加などにより野菜の中国国内価格および輸出価格(FOB)は上昇傾向にあるが(詳しくは、野菜情報平成22年11月号「中国における野菜輸出企業の動向」を参照されたい。)、円高の進行によりドルベースの輸出価格上昇が緩和され、輸入価格(CIF)は安定して推移した。これを、たまねぎにより示したものが図である。
 中国FOB価格は右上がりのトレンドを示しているが、円/ドルの為替レートが円高にシフトすることにより、中国CIF価格の上昇は抑制され、緩やかな価格変動となっている。
 2010年の野菜輸入は、基本的には国内の天候不順による作柄不良により大幅な増加となったが、円高による国内産価格と輸入価格の乖離拡大も、輸入増加の大きな要因であった。
 この結果、輸入数量全体に占める中国産の割合は51.4%と若干上昇し、輸入金額全体に占める中国産の割合は、円高の状況下ではあったが、にんにく、しょうがなどの作柄不良による中国国内価格および輸出価格の大幅な上昇により49.6%と上昇した。



図 たまねぎ 東京都中央卸売市場価格・輸入価格・中国輸出価格など

注:中国のたまねぎは、山東省西南・江蘇省西北地域では4月~5月に収穫され、一部は原体により輸出されるが、多くは剥き玉加工・冷蔵貯蔵され、11月頃まで輸出される。また、9月頃には甘粛省、1月頃には雲南省から剥き玉加工・冷蔵貯蔵により輸出される。6月の中国FOB価格が大きく低下し、その後上昇傾向となるのは、6月は剥き玉とともに収穫間もないたまねぎが原体で輸出されるためであり、その後上昇傾向となるのは、冷蔵貯蔵経費が加算されることや甘粛省および雲南省産の輸出価格は山東省産価格をベースに決まることによる。



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