調査情報部調査課 課長補佐 平石 康久
野菜需給部需給業務課 係長 伊澤 昌栄
日本の野菜需給への影響が大きい中国産野菜の動向について、安全性をクリアしつつ、今後の中国から日本への輸出量および価格がどのように推移するのかという観点から、輸出用野菜の主要産地である山東省・江蘇省にて6月に独立行政法人農畜産業振興機構として独自に調査を行った。
調査は日本向けの野菜(特に冷凍野菜)輸出を継続して行ってきた公司を中心に、聞き取りにより行った。今回調査を行った山東省および江蘇省北部は、緯度的には日本の埼玉県や栃木県と同程度の緯度であり、冬季の気温が低く、降水量が少ないなどの相違点はあるが、春から秋までの野菜産地として、気候面で類似している。
日本と比べて冬季の気温が低いことから、以前は野菜を栽培できる時期が短く、主な出荷期間が限定されていたが、現在は貯蔵施設、育苗施設や簡易ハウスが普及し、出荷時期が延長傾向にある。
今回の調査地域は山東省青島市、山東半島中央部、安丘市、寿光市、江蘇省連雲港市、徐州市である。
調査は日系の貿易商社の現地事務所や、冷凍野菜の加工公司3社、ねぎを中心とした生鮮野菜の生産公司1社など、日本と野菜貿易を継続的に行っている企業およびその関係先の野菜生産基地などに対して訪問・聞き取りを行った。調査先企業(公司)の概要は以下のとおりである。
(1) 日系貿易商社A社青島事務所
本社は日本の食品商社である。青島事務所は1990年半ばの設立。ただし中国からの野菜輸入はそれ以前から行われており、水産物や野菜をはじめとする農産物の取り扱いの増加もあり事務所が設立された。
(2) 中国系冷凍野菜企業B社
山東省に本社がある食品企業集団であり、農畜産物製品の生産・販売を主とするメーカーであるが、不動産業などにも進出している。
1980年代に中国の地方政府企業として設立されたが、1990年代に民間企業へ転換され、各種グループ企業の設立において、各国、特に日本の資本が導入されている。
(3) 中国系冷凍野菜企業C社
山東省に本社がある食品企業集団であり、主な事業内容は、野菜の加工、畜産物製造加工販売、食用油などの食品製造販売である。
1970年代に郷鎮企業として食品以外の製造業を業務として設立されたのち、1990年代前半に今の企業集団となった。B社と同様にグループ企業への外国資本の投資が見られる。
野菜製品の販売額は約4億元(約56億円:1元=14円で計算)であるが、販売のほとんどが輸出によるもので、日本がそのうち95%を占めている。
(4) 中国系野菜生産出荷企業D社
山東省にある1990年代前半に設立された中国の生鮮・塩蔵野菜の生産・出荷企業である。年間の販売金額が1,100万元(約1億5,400万円)で、主な取扱品目はしょうが、にんにく、たまねぎ、ねぎ、ごぼう、にんじん、さといも、キャベツ、キムチなどである。
(5) 中国系冷凍野菜企業E社
江蘇省にある中国企業および日本企業の合弁企業である。1990年代に合弁企業となったが、資本金の75%が中国、25%が日本の資本である。事業は冷凍野菜の製造・輸出である。
中国における野菜のは種面積は17,329千ヘクタールで、全耕地面積に占める割合は11%程度であるが、日本の野菜作付面積の30倍の規模である。
中国全土の生産量は5.6億トンに上るが、山東省が全体の15%、江蘇省が6%を占め、両省とも野菜の主要産地となっている。輸出量が生産量に占める割合はわずか1.4%に過ぎないが、それでも日本の生産量の3分の2に匹敵する量である。輸出に占める山東省・江蘇省の割合は約半分を占めている。
なお、農家1戸当たりの耕地面積は日本に比較しても小規模である。
中国国内の野菜生産・輸出についての各種データは、野菜情報2009年4月号「中国における品目別野菜産地の概況と生産・出荷動向」および野菜情報2009年5月号「中国東南部における野菜生産および輸出動向」に詳しく掲載しているので参照されたい。
2004年からの日本の野菜輸入動向をみると、生鮮野菜については減少傾向にあったが、冷凍野菜や調製野菜は増加傾向であった。どの形態の輸入も中国が最大の輸入先国である。単価も上昇傾向で推移していた。
しかし、2008年に入って中国製冷凍ギョーザ事件などの影響により全輸入量は減少し、加えて景気後退などの影響を受け単価も下落した。2009年も引き続き中国産野菜の輸入動向に大きな変更は見られないが、今後、消費者の低価格指向や輸入野菜に対するイメージの回復などによる輸入量の増加について注意する必要がある。
景気後退による食品の販売価格の低迷が続いている中で、特に冷凍食品や漬物は値が上ると、購買を控えるとされる代表的な商材であるといわれており、納入業者へのコスト削減圧力は高い。
一般に、中国産をはじめとする輸入野菜にはマイナスのイメージが強く、消費者が直接消費する生鮮野菜や小売用冷凍野菜などは国産志向が強く働いているが、製品の販売価格が頭打ちの中、外食や食品製造者の価格・品質への要望に応えられる冷凍野菜や各種加工・調理済み野菜(特に業務用途)に中国産が利用されているものとみられる。
また、2009年7月に日本政策金融公庫によって実施された消費者動向等調査によると、「価格が高くても国産を優先する」「輸入食品に対するイメージで安全性に問題がある」と考える消費者がそれぞれ減少しており、輸入野菜の販売環境について一定の改善が進んでいることをうかがわせる状況となっている。
労働環境などの問題から、他の製造業より労働吸引力の弱い野菜加工企業にとって、労働者確保は重要で困難な問題であり、労働者を引き付けるための賃金が急激に上昇傾向にある。
JETRO(日本貿易振興機構)の調べによる青島市名目賃金上昇率(対前年比データ)についても、2006年に18.3%、2007年16.1%、2008年9.2%と伸び率が減少しながらも上昇が続いている。今回の調査先の山東省の野菜加工工場においても月給が2007年1,000元(1万4,000円)から2008年に1,200元(1万6,800円)、2009年1,300元(1万8,200円)と上昇するとともに、各種保険などの費用も増加しているということであった。
さらに為替の問題があり、決済通貨であるドルに対する元の為替レートが年々強くなっていることから、日本側の調達コストは上昇傾向にある。
(1) 調査先における日本向け野菜の品種や作型
品種は日本の品種が多いが、ほうれんそうなど一部は現地品種や他国の品種を利用しているということであった。
ねぎ:長宝、長越、元蔵
たまねぎ:OP黄、ターボ、アースなど
ごぼう:柳川理想
冷凍野菜公司からの聞き取りによれば、種の購入先については、主として中国国内における日本やオランダなどの欧州系種苗会社の事務所から購入している。育苗については自社で行っているが、育苗会社も存在し、緊急時には購入することは可能であるという回答であった。
訪問先での野菜生産産地は基本的に山東省の公司は山東省、江蘇省の公司は江蘇省の産地であった。生産適地や季節性、リスクヘッジといった問題から他省の産地も確保されていたが、遠隔産地の場合は、輸送に耐えうる品目に限定されていた。
(2) 野菜の国内輸送について
山東省・江蘇省の両省とも道路網はよく発達している。ただし有料道路が多く、燃料費も中国の平均的な物価水準と比較すると高い。
一般に、生鮮・原料野菜の輸送は段ボール箱などに詰めず、トラックの荷台にそのまま、あるいはネットに入れて積み重ねる形で輸送されている。このため、野菜の損失や品質の劣化が大きく、輸送段階だけで2割から3割の減耗が生じているとの推計もされている。
保冷車の台数も少なく、運送企業についても十分発達していないため、現地の公司は自社運送を整備する必要に迫られるなどコスト高の要因となっている。
「緑色通道」という認定を受けた農産物輸送トラックについては、有料道路の費用が免除される制度も存在するが、対象となるトラックの台数が限られており効果は限定的である。
また、上記のように燃料コストや有料道路により輸送コストがかかることから、運搬は過積載での運搬が頻繁に行われていた。罰金や通行料金の割増を支払うことによって過積載が認められるような実態もあると言われている。
(3) 調査先公司による出荷の安定化に対する工夫
出荷の安定化のため、貿易商社や日本の実需者は中国側出荷公司を複数確保している。日本へ野菜を輸出する公司(特に冷凍野菜加工公司)も複数の調達先(野菜の生産公司)を持ち、リスクヘッジを行っている。野菜の加工公司は自社農場とともに、契約により生産公司と提携を行って数量を確保している。
また、大規模な冷蔵庫・冷凍庫を所有することによって、原料野菜や冷凍野菜を貯蔵し出荷調整を行っている。
これらの工夫により出荷の安定化を図っている。
聞き取り先企業によれば、なんらかの原因で納入数量が手当てできない場合は、無理に納入するのではなく、手当できるだけの数量を納入するということであった。過剰分については、若干は国内市場に回せるという意見と、市場への過剰供給になるため国内への販売はできないという意見があった。冷凍野菜公司は過剰分の国内販売は否定的であった。
公司による野菜の購入価格の決定方法については、①現地の集荷業者の類似品目の価格に輸出用野菜栽培のためのコスト上昇分や需給状況を加味して決定、②最低保証価格を定め、状況により価格上乗せ、③シーズン開始時に取り決めのいくつかのやり方があるということであった。
ただし、現地での野菜の農家庭先価格動向が、シーズン中の価格決定、量の確保、来年度の再生産に影響を与えているとの複数の指摘があった。
(4) 国内および第三国市場向けとの競合(調査先聞き取りによる)
生鮮野菜においては、先の価格決定の仕組みでも述べたとおり、国内市場との価格面での競合は存在するが、第三国市場と競合する品目は、今のところ国際貿易品目であるにんにくやしょうが、たまねぎなどに限られている。なお、一部の事例として、現地での生産が難しい野菜を第三国の野菜工場へ輸出し、当地でさらに加工を行ってから日本に輸出するというケースがあった。
その他、近年の穀物価格の高騰およびそれに対応する形での政府による穀物への生産誘導措置により、野菜作から穀物生産への転換を心配する声があった。
冷凍野菜については、国内市場および他国向けとの競合が起きているという事実は聞かれることはなかった。
(5) 安全対策
CIQ(中国国家質量監督検査検疫総局)による輸出用野菜に対する安全性の規制内容は、輸出野菜産地の指定と、出荷時の検査が主なものとなっている。関連の規則と主な内容については表5のとおりである。
検査については、生鮮野菜は出荷時の検査、冷凍野菜は製品出荷時の検査であるが、山東省のハイリスク野菜(ほうれんそうや豆類)および江蘇省では冷凍原料用野菜に対する検査も行われていた。
また、輸出用野菜産地の規模も管理細則では300ムー(約20ヘクタール:1ムー=15分の1ヘクタール)以上と定められており、聞き取り先ではGPS(衛星から電波を受信し測位するシステム)によるほ場の緯度の登録まで行われているということであった。一方でこの面積要件については、青島市や煙台市のCIQの指導では100ムー(約6.7ヘクタール)以上、安丘市CIQの指導では、残留農薬が心配される白ねぎは1,000ムー(約66.7ヘクタール)以上とし、栽培期間が短い青ねぎは100ムー以上とするなど、中央政府の通達以外に地方による独自の要件設定が行われているケースが見られた。また山東省や江蘇省の調査先で、リスクの高い野菜(ほうれんそう、豆類)は自社農場(契約農場は不可)の生産を要求されていた。
農薬の散布は会社担当部署の許可が必要であり、希釈は植保員が行うこととなっている。
(山東省冷凍野菜B社事例)
原料や半製品についてはCIQの検査はなく、独自検査で対応し、製品段階で出荷時にCIQが検査する。生産基地はすべてCIQに登録を行っている。登録要件は青島では100ムー(約6.7ヘクタール)が最低の基準である。登録に当たっては水や土壌の検査などが行われた。違う作物の間にはドリフト(飛散による付着)を防ぐため6メートルの間隔があけてある。
(山東省冷凍野菜C社事例)
最近の輸出に影響を与える安全性検査に関する変化としては、品目をハイリスク(ほうれんそう)とローリスク(いも、たまねぎ)などに分けて、ハイリスク品目は原料野菜に対してもCIQの検査が行われるようになったことである。一方でCIQの検査能力の限界もあり、C社の施設が検査指定センターとなっている。これはC社の検査センターにCIQから匿名のサンプルが送られ、その分析結果がそのままCIQによる検査となるということである。
また、昨年日本国内で残留農薬が発見された品目に対し、全国の輸出野菜に対して一斉の検査が行われたため、輸出が滞った。同様の処置について、繰り返し行われているものとみられる。
(山東省生鮮・塩蔵野菜D社事例)
CIQによる輸出野菜に対する検査は工場からの積み出し時に行われる。さらに積出港では税関の検査が行われるが、これはCIQシールが製品に貼ってあるか、書類とコンテナの内容が一致しているかの簡単な確認である。
(江蘇省冷凍野菜E社事例)
CIQの検査は収穫前の原料および冷凍された製品の2回ある。新しく残留農薬が検出した場合など、輸出時に行う場合もある。昨年も同様の事情により、輸出する品目すべてのロットが検査された。この検査が行われた時には、顧客が要望する日時につかなくなるといった出荷の遅れが見られた。
毎年工場やほ場の検査がCIQによって行われる。規則によれば工場は四半期ごと、ほ場は数が多いため、抜き打ちでランダムに検査が行われる。CIQはコンテナに野菜を積み込む時、税関は積み込まれたあとを検査している。
訪問先の野菜生産基地においては、種子供給から収穫までの一連の流れが本社の決裁により進められ、各工程の記録化が行われていた。製造工場では、徹底した選別・洗浄とゾーンニング、検査の徹底による安全対策、工場内監視体制と福利厚生などの労働者対策などが取られていた。また、独自にISOやHACCP、GAPなどの認証を導入し、トレーサビリティの体制を確立していた。(GAPやHACCPの導入については、中国国家認証認可管理委員会が管轄している。)
これらの安全対策からCIQの検査で基準違反となることは起こらないようになったが、コスト上昇の要因となっている。
図5 山東半島中央部の冷凍原料用野菜生産ほ場および工場における管理体制事例(煙台CIQ管轄)
(6) 環境に関連する配慮や懸念
野菜生産基地のかんがい方法については、一部にスプリンクラーを利用していた基地もあったが、その他の基地ではホースにより土手で囲まれた凹形の畝に水を流し込む方法によってかんがいが施されていた。この方法では凹形の畝の内部全体が水につかる必要があり、効率的なものとは言い難い。
また、有機質の投入不足の懸念も存在する。特に輸出用野菜は付着している菌数が重要な検査項目であり、有機質の投入をためらう遠因となっているものと推察される。
一方で、一部の公司では使用農薬を減少させるための、耕種的防除の取り組みの導入も進められている。
(7) 生産コストや価格
聞き取りによる冷凍野菜のコスト内訳については、図7のとおりである。
グラフのとおり原料費および加工経費で6割のコストを占めることになるが、過去の調査による機構の推計では少なくとも半分(全体の3割)は労働コストであるとみられる。
このことから、労働コストが1割上昇するごとに生産コストは3%以上上昇することになり、現在の利幅を圧迫することになるとみられる。
生鮮野菜の原体を取引する方法から、加工を行い付加価値を高めた野菜を取引する方法にシフトしている。
この結果、たまねぎであれば皮や芯を除去したむきたまねぎへ、にんじんなどもカットを行った冷凍や水煮の状態で輸出されるものがでてきている。また、下処理を行った上、使われる料理に合わせて混合された野菜パックや、調理済みの具を冷凍した焼きなすや野菜天ぷら、味付けまで行われたきんぴらごぼうやえだまめのような多様な形態の野菜が輸出されるようになっている。
また、真空パックによる包装なども一部で行われている。
中国の輸出野菜の生産流通といっても、各地でさまざまな違いがあると思われるため、以下はあくまで山東省および江蘇省の一部(優秀であると思われる)調査先事例の聞き取りに限られた推察である。
まず、日本への供給の安定性については、輸出できる量は各種リスク分散により一定の安定性があるが、中国国内の生産コスト上昇や為替レートの変動により、輸出価格は下方硬直的であるとみられる。
一部でいわれているような「買い負け」に代表される第三国や国内市場需要の影響については、国際貿易品目(にんにく、しょうが、たまねぎなど)を除き、あまり聞かれることはなかった。中国の産地といえども、日本の品種を使い、日本のニーズに合わせて、もっぱら日本へ出荷しており、一種の日本の産地ということもできるとの印象を受けた。ただし、価格面では中国国内市況の影響が存在する。
現在ある山東省産地以外への産地の移動は、輸送面などの課題を克服する必要がある。
安全性についての取り組みは進んでおり、取引が長期にわたる企業は極めて真剣に対策を講じている。ただし、相場の高騰によるアウトサイダーの参入や不測の事態等による違反が起きる可能性は排除できないことは事実であり、中国産野菜を評価する時には、輸出企業による管理体制の違いというものを考慮する必要がある。
日本の需要者にとっては、日本国内での価格低迷の中、中国国内のコスト上昇への対応が迫られるとともに、安全性については引き続き厳格に対応する必要があるものと思われる。
(1) 日系輸出企業A社青島事務所
青島事務所は、本社との連絡機能、現地からの提案や、検品、監視、指導を行っている。具体的には日本の顧客のニーズに商品を生産できる企業を探しだして提案を行う、工場や商品の検査検品を行うなどが主な仕事内容となる。事務所から営業に対して提案を行うこともある。「どこの会社が何をどんな管理方法で生産しているか」を把握しておき、そういった企業を紹介できるかが重要であるとしている。
主な取り扱いアイテムとしては、水産物、畜産物、野菜、果物などであり、それぞれの中の得意な商品でチャンネルリーダーになれるよう目指している。野菜は生鮮野菜、冷凍野菜、漬物原料野菜になる。
近年では数は絞り込まれているが、中国で冷凍野菜、生鮮野菜とも数社ずつ取引をおこなっている。取引に当たって一番重要なのは、品目をすでに生産しているかどうかより安全面などの管理体制が充実している企業を選定している。
仕入れる野菜の産地は山東省を中心に、江蘇省、安徽省、河北省、河南省、内モンゴル自治区などである。港までの輸送は現地企業が責任を持って手配を行う。利用する船は「不定期便」を利用している。
野菜については、カットしてから2週間程度の鮮度を保つことができる品目であればなんでも取り扱いができると考えている。品目はそのままの野菜から、付加価値を高めた商品に取り扱いがシフトしており、たとえば、むきたまねぎ、カットやパックを行った加工済みの野菜などである。
主力商品は、フライした野菜の冷凍品や味付(冷凍)野菜であり、特に味付野菜の取り扱いが伸びていたが、中国製冷凍ギョーザ事件後輸出が減少し、今後のどういった商品がよいのか検討中である。
野菜については、買い負けによる第三国への輸出増加という認識は特にない。水産物については、加工労賃の上昇によりベトナムなどへの加工拠点の移転がある。
生産や貯蔵が行われている野菜であれば、月曜日注文を受ければ金曜日に船積みでき、船積みしてからは東京の物流拠点に3日間で到着する。代金決済には問題は生じたことはない。
今後の中国から日本への野菜輸出の見通しとしては、中国にはまだ内陸部を含めて労働力は豊富であること、気候が多様であり四季を通じた生産が可能であること、地理的にも日本と近いことから、取引は20~30年間は続くであろうと予想している。一方で消費者が直接口にする生鮮野菜で中国産の野菜が取って代わるとは思えず、特に流通期間の差による鮮度の問題はいかんともし難い面があると考えている。
一方で、安全性の問題については、問題が生じるたびに中国企業はさらに努力を重ねており、野菜を扱っている企業は自信を持っている企業であることから、克服することは可能であると見ている。
(2) 山東省冷凍野菜企業B社
グループ販売額の10~15%程度が冷凍野菜による売り上げとなっている。
生鮮野菜の取り扱いはほとんどなく、冷凍野菜の取り扱いが13,000トン、水煮野菜が1500トン、味付野菜(主に真空パック製品)が5,000トン、乾燥野菜が150トンとなっている。貿易相手国は日本が95%のシェアを占めている。
取扱品目は、にら、ねぎ、にんじん、たまねぎ、ばれいしょ、キャベツ、小松菜、ちんげんさい、はくさい、ほうれんそう、いんげん、だいこん、ながいも、ピーマン、なすなどである。
野菜生産については、B社からは種、農薬、肥料の提供、栽培指導を行っている。遠隔地の指導は地元の農業大学出身者などを雇用している。品種はたまねぎ、にんじん、ねぎは日本の品種、ほうれんそうは国内の品種である。苗は自分たちで栽培しているが、専門の苗業者もあり緊急時には種を供給して苗を供給してもらうことは可能である。種の仕入れ先は中国国内にある日本やオランダの種苗会社の事務所から購入している。
内陸部の産地はあるが、輸送に耐えうる野菜を生産する産地に限られている。
野菜生産は、自社生産基地で行う場合と生産公司に契約で委託する場合があるが、委託の場合は数量契約であり、価格はその時の地元の相場の価格による買い取りとなる。高騰時の対策としては1産地と複数の品目について契約しており、1品目が高くても他の品目の取引を材料に価格を抑えてもらうという工夫を行っている。なるべく長期的な関係を結ぶようにしている。
契約の単位は、出荷1ロットであり、トラック1台40トン積載可能であることから、それが契約の単位となっている。支払は原料が工場に到着し品質確認などを終えてから行う。40トン程度であれば農場1つで供給可能な量であり、例えば黒竜江省の冷凍用かぼちゃの場合、仕入れ先は地元の1生産公司(もしくは1名)との付き合いである。河北省や内モンゴル自治区も少ない時は1生産公司(もしくは1名)である。
産地については省内の産地が主力であるが、近郊産地といえども転用規制がかかっており、容易に改廃が起きるとは見ていない。しかし、もし産地移転という状況になれば、工場も一緒に移転する必要があるだろう。
中国国内における冷凍野菜の販売見通しについては、中国国内では食感の問題から、ばれいしょやブロッコリーのように冷凍後も歯ごたえの残るものは別として、中華料理の代表的な調理方法である炒め物に対して適していないことから急速に拡大するとの見通しは持っていない。
生鮮の野菜を地元市場に流すとあっというまにパンクしてしまうので難しい。
(3) 山東省冷凍野菜企業C社
年間売上額は50億元(約700億円)を超えており、2008年の販売高の内訳は、70%が中国国内、30%が輸出によるものであった。国内販売を重視したため、2006年と比較すると売り上げの比率が逆転している。主な輸出先は、日本、韓国、米国、ドイツなど10数カ国であった。
野菜製品の販売額は約4億元(約56億円)に達しており、販売のほとんどが輸出で、日本が95%を占めている。野菜製品の製造工場は4工場あり、うち1工場が生鮮野菜用の工場、3社が冷凍野菜工場である。
野菜の生産基地は、グループ全体で4万ムー(約2,700ヘクタール)を所有しており、山東省を中心に河北省、河南省、内モンゴル自治区、黒竜江省などである。2002年以降自社農場中心の供給に切り替え、自社農場が3.3万ムー(約2,200ヘクタール)を占めている。山東省以外の産地としては、ほうれんそう、かぼちゃなどが黒竜江省で生産されている。
にんじん、ごぼうなど日持ちのする野菜は倉庫に保管しておく。葉物は加工工場から30分以内のほ場で栽培している。貯蔵庫は4工場の製品ベースの合計で2万5千から3万トン、原料ベースで3,000トンとなっている。
他国向け冷凍野菜の輸出は考えておらず、日本向けの規格に合わせて製造を行っている。他に可能性のある国はEUであるが、一部日本の規格に合わないものが流れるだけである。ASEAN諸国にはまだ冷凍野菜を消費する習慣はない。
一方で、国内向け冷凍野菜の販売に対する潜在的な希望は持っている。これは野菜の価格が徐々に高くなってきているため、その調整弁として利用される可能性があるからである。しかしコールドチェーンはまだ整備されておらず、企業が物流まで責任を負わされることがネックであり、上海、北京などへの大消費地への輸送は非常に難しい。また、日本向けの規格で作っているので、中国で販売することは難しいと考えている。できることなら日本向け輸出を増やしたいとしている。
(4) 山東省野菜生産出荷企業D社
輸出用の野菜生産基地が2,000ムー(約133ヘクタール)あり、年間の野菜加工能力が30,000トンの工場を所有している。
オーダーは前週の火曜日までに行われ、翌週の土曜日出港の便に乗せることになる。
数量は、最大で週に40フィートコンテナ5本が限度である。コンテナ1本で5キログラム箱なら18トン、3キログラム箱なら15~16トンのねぎを輸送できる。
予冷は12時間行う必要があり、税関の検査が行われることも想定して金曜日には港に到着しておく必要があることから、木曜日には出荷する準備が整っていなければならない。
現在中国では物価が上昇しており、農産物が高く売れるようになっていることから、土地を貸してくれなくなる心配がある。農家はすでにノウハウを持っているため、自分で作って国内向けに販売することが可能である。
公司が、種、農薬、肥料の提供、栽培指導を行っている。ほかの売り先に販売した場合、提供した資材のコストは支払ってもらうようにしている。
1コンテナに見合う数量がなければたまねぎや青ねぎの混載をして運送費を節約している。
5キログラムで600ドル近くのねぎであれば国産のB品やC品と同じ価格になってしまうため、コスト高による輸出価格の高値傾向には憂慮している。
注文数量に応じることができない場合は、納入量を減らして対応となる。
コンテナの積み込み時には、積み込み後コンテナが冷却されるまで待ち、その後1時間待ってから出発している。
支払いは、通関して品物が問題ないと判明すれば支払われる。農家への支払いは、相場が高い時は納品時に、悪い時は後払いとなる。
生鮮ねぎの需要者はラーメン業者と弁当製造企業とみている。関東は「バラ」、関西は「結束」の荷姿による出荷が多い。
(5) 江蘇省冷凍野菜企業E社
生産基地の規模は5,000ムー(約333ヘクタール)でそのうち3,000ムー(約200ヘクタール)はCIQによる輸出用野菜生産基地の認定がされている。
会社は5,000トンの冷凍野菜の生産能力を持っているが、販売先は95%が日本で残りは豪州などである。中国にける冷凍野菜市場は成長しておらず、加工コストがかかり高価なことから、日本の需要者と連携する必要がある。そのためには大規模化が必要である。
取扱い品目は、ごぼう、アスパラ、いんげん、きぬさや、たまねぎ、にんじん、ばれいしょ、れんこん、さといも、パプリカ、ねぎ、やまいも、ほうれんそう、にんにくの芽、えだまめ、いちごである。
生産基地は、江蘇省が中心であるが、山東省や内モンゴル自治区にもある。
安定した生産基地の確保には難しさがある。食糧生産振興のための補助金や最低価格保証などによる穀物生産の影響を心配している。野菜生産農家の利益を守らないと、野菜は手間がかかる一方、穀物は手間がかからないことから、転用を希望する農家もある。都市化の影響もある。
品種は、日本の品種が多い。
年間の注文は1年に1度、12月か1月ごろに、どのような品質のものをいつ、どのくらい必要か知らされる。
価格は、農家の利益を考えて原料価格を設定している。
販売先の製品の価格は安定しており、原料が急騰、暴落した場合は相談する。
労賃は月900元(1万2,600円)(日30元)、技術のある職員は1,050元(1万4,700円)である。技術のある職員を中心に昨年25%の賃上げを行った。工場周辺地域の人を職員として雇っているが、若い人を雇うことが難しくなってきており、雇用できる労働者の年齢が高くなってきている。アパレルや電機メーカーとの競合で、労働条件の悪い野菜加工には若い人が来なくなってきている。年齢のばらつきは技術を教えて移転することを難しくしている。ほかのコストも上昇しているが、製品価格でいうと上げる余地はない。加工業の利益率は低下し、競争も激しい。