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中国における品目別野菜産地の概況と生産・出荷動向

調査情報部調査課 課長補佐 平石 康久



 日本にとって、主要な野菜供給国である中国における日本向けに輸出が行われている野菜の品目別の産地の概況と生産・出荷状況を把握するため、過去の調査結果や公開されている情報などを踏まえてとりまとめを行った。

第1 中国における品目別産地別出荷時期

 日本へ野菜輸出を行っている省の主な出荷時期については、図1のとおりである。山東省が夏場の主要な産地となっているとともに、それ以外にも出荷時期に応じて生産に適した気候を持つ省からの出荷がリレー的につながっており、ほぼ周年的に出荷が行える体制となっている。

図1 品目別省別の主な出荷時期の事例

資料:
機構作成




作型の工夫による出荷の前進化や、冷蔵施設等の整備により出荷期間はこれより延長されていることも多い

産地の出荷時期が変化したり、産地自身が移動している可能性もある

すべての主産地を網羅しているわけではない

第2 主要野菜生産省の概要

 上記の主要な野菜生産省について、かんがい面積や野菜の作付面積、農業労働力1人当たりの耕地面積などの指標をまとめたのが表1である。たまねぎの産地である甘粛省や雲南省以外は、かんがい面積は中国の平均を上回っている。

 また、播種面積全体に占める野菜作付面積の割合も上回っていることが多い。一方で農業労働力1人当たりの耕地面積は、内モンゴル自治区を除いて中国平均と比べ同程度である。

 内モンゴル自治区や、雲南省のように現在の野菜作付面積の割合は少なくても、野菜生産にとって優れた気候条件を持つ省については、インフラの整備などが誘因となって野菜生産を発展させることができるポテンシャルを持っている。

表1 主要な野菜生産・輸出省の野菜生産の構造(2005年)

  資料:平成19年度輸入野菜情報収集事業に係る海外調査(中国)報告書による
原資料:中国統計年鑑など

第3 主要野菜生産省の気象状況

 以上のような野菜生産省のうち、とくに野菜生産の盛んな地域における気象データをグラフにしたものが、図2-1および図2-2のグラフである。

 1年を通して野菜生産に最適な気象条件が続くという産地はあまりないが、夏秋ものあるいは冬春ものの産地としてみたときに、日本の主産地と同等の気象条件をもっていることが分かる。

図2-1 主要野菜産地における気象状況
資料:
輸入野菜情報収集事業に係る海外調査報告書による
図2-2 主要野菜産地における気象状況
資料:
輸入野菜情報収集事業に係る海外調査報告書による

第4 品目別の状況

1.キャベツ

(1) 省別生産量
 平均的な単収を比較すると日本の方が多いが、一部で1.5倍の単収が報告されている省がある。

 山東省や河北省は単収が高いが、北部から南部へ省が移るに従って、単収は減少している。山東省単独で日本のキャベツの生産面積を上回っている。

表2 キャベツの省別生産状況
(単位:千ha、千トン、トン/10a)

資料:中国農業部栽培管理司
  注:1haを15ムーで換算した
    :2006年の数字

(2) 栽培品種
 調査先事例(福建省および上海市の中の2例)によると、国内用と輸出用は違う品種が利用されている。国内出荷と輸出用の割合は、生産量のうち8割~9割が国内出荷用とのことである。

(3) 卸売価格
 北京の八里橋卸売市場におけるキャベツの卸売価格をみると、季節あるいは年による傾向的な変動よりも入荷月によって、キログラム当たり0.8元を中心に上下0.4元程度の大きな幅を持って変動している。

 産地の供給状況の他にも、市場までの輸送等の要因も大きく影響していると思われる。

 2008年8月の北京オリンピックについての影響はあまりみられていないが、2008年当初の寒波による産地の作柄悪化や、荷物の滞留などによる価格高騰は顕著であった。

図3 北京八里橋卸売市場におけるキャベ ツの卸売価格

資料:中国蔬菜網「北京八里橋農産品中心卸売市場価格行情一覧」より機構作成
注:価格は気配値の単純平均

(4) コスト分析
 冬春ものの調査先事例(福建省および上海市の2事例)における代表的なコストの割合は下表のとおりである。生産コストでは土地借料、肥料代、労働費で生産コストの大部分を占めているとのことである。出荷コストでは包装資材費および出荷に係る労賃が大半で、輸出コストでは国内輸送費の割合が大きい。

 なお、割合の数値は、平成19年度輸入野菜情報収集事業に係る海外調査(中国)報告書による。

 注:生産コストは種苗、肥料、農薬、農機具、水利、土地、労働費、その他管理費
出荷コストは、包装資材、光熱水道費、輸出税、減価償却、出荷労賃、その他
輸出コストは、ほ場段階の土壌・残留農薬検査、港湾での検査、中国国内横持ち運賃など。
(以下の各品目のコスト事例同じ。)

表3 キャベツのコスト事例(FOB価格に占める割合)

(5) 荷姿
 代表的な荷姿としては、10キログラム詰め段ボール箱(6~8玉)あるいは15キログラム段ボール箱(6~12玉)である。

2.ねぎ

(1) 省別生産量
 南部の省を除いて日本より単収が高く、また、面積も山東省だけで日本の3倍近くある。

 ただしこれらのほとんどは中国の在来種の栽培データであり、日本のねぎの品種とは異なったものである。

表4 ねぎの省別生産状況
(単位:千ha、千トン、トン/10a)

資料:中国農業部栽培管理司
  注:1haを15ムーで換算した

(2) 栽培品種
 輸出産地における栽培においては、輸出向け生産がメインであるため、国内市場向け及び輸出向け両方とも日本の品種が栽培されている。

 調査先事例(山東省および福建省の中の2例)によれば、生産量のうち、国内向けが3~4割、輸出向けが6~7割となっている。

(3) 卸売価格および輸出統計
 平均的な価格は、キログラム当たり1元程度であるが、2008年の年初の寒波により、価格は大暴騰した。

図4 北京八里橋卸売市場におけるねぎの卸売価格

資料:中国蔬菜網「北京八里橋農産品中心卸売市場価格行情一覧」より機構作成
注:価格は気配値の単純平均

(4) コスト分析
 調査先事例(山東省および福建省の中の2事例)におけるコストの割合は下記のとおりである。生産コストでは土地借料、肥料代、労働費の割合が高いとのことである。出荷コストでは剥皮などの作業を伴うねぎの特性もあり、出荷に係る労賃や包装資材費が高い割合を占めている。

 このため、人件費の高騰などによる影響を強く受けるものと思われる。

図5 ねぎの輸出数量と輸出価格

資料:GTI社“Global Trade Atlas”
表5 ねぎのコスト事例(FOB価格に占める割合)

(5) 荷姿
 5キログラムケース(サイズごとに1ケース35本以下、35~40本、40~45本)であるが、3本結束で15束詰めが行われることもある。また軟白部の直径(1.8センチ以上、1.0センチ以上)や軟白部の長さ(35センチ以上、30センチ以上)といった規格もある。

3.たまねぎ

(1) 省別生産量
 農業部による統計では、たまねぎに関する省別のデータは存在しない。

 ただし聞き取りによる2000年のデータで、山東省の作付データは21,300ヘクタール、生産量は1,100千トンとなっている。

(2) 栽培品種
 調査先事例(江蘇省および山東省の中の2例)によれば、国内向け及び輸出向けの品種を分けているところと、同じ品種を使っている産地の両方があった。

 生産量のうち、国内向けが2~3割、輸出向けが7~8割となっている。

(3) 卸売価格および輸出統計
 2008年は、キログラム当たり0.8元程度、2009年に入ってからは同1.0元程度で推移している。

図6 北京八里橋卸売市場におけるたまねぎの卸売価格

資料:中国蔬菜網「北京八里橋農産品中心卸売市場価格行情一覧」より機構作成
注:価格は気配値の単純平均

表6 中国のたまねぎ生産状況
(単位:千ha、トン/10a、千トン)

資料:FAOSTAT

(4) コスト分析
 調査先事例(山東省および江蘇省の2事例)における代表的なコストの割合は、下記のとおりである。生産コストでは労働費、肥料、土地借料が大きな割合を占めているとのことである。

 出荷費用では包装資材費や出荷に係る労賃が高い割合を占めているとのことである。

 輸出コストは、比率の高い産地と安い産地があり、比率の高い産地では残留農薬の検査費がかなりの割合を占めているもようである。

図7 たまねぎの輸出数量と輸出価格

資料:GTI社“Global Trade Atlas”
表7 たまねぎのコスト事例(FOB価格に占める割合)

(5) 荷姿
 たとえば、直径で10~11センチ、 9~10センチ、8~9センチなどの規格がある。また、包装は20キログラムのネットもしくは段ボール箱である。また、1パレットでおよそ60~65袋で、1コンテナ20パレット(2.4トン)を積み込むことができる。

4.ごぼう

(1) 省別生産量
 ごぼうの生産に関する統計はないが、以前の調査によれば、山東省の蒼山、莱陽、莱西、江蘇省の豊県などが日本向けの主な輸出産地であるとのことである。

(2) 栽培品種
 国内向けおよび輸出向け両方とも日本の品種を利用している。

 生産量のうち、3割が国内向け、7割が輸出向けとなっている。

(3) コスト分析
 ごぼうについては、他の品目よりもやや生産コストが占める割合が高い。生産コストの中では、土地代や労働費の他、種苗費も比較的高くなっている。

 出荷費用では包装資材費や出荷に係る労賃が高い割合を占めている。

 輸出コストでは、土壌検査費や残留農薬の検査費などが高い割合を占めている。

表8 ごぼうのコスト事例(FOB価格に占める割合)

(4) 荷姿
 10キログラムの段ボールケースなどが代表的な荷姿である。

5.にんじん

(1) 省別生産量
 中国の平均的な単収は日本と同じである。河南省や山東省、河北省の単収は高くなっている。それらの省の作付面積は日本全体の面積よりさらに多い。

表9 にんじんの省別生産状況
(単位:千ha、千トン、トン/10a)

資料:中国農業部栽培管理司
 注:1haを15ムーで換算した

(2) 栽培品種
 調査先事例(山東省の中の1例)によれば、国内向け及び輸出向けとも同じ品種を利用している。

 生産量のうち、3割が国内向け、7割が輸出向けである。

(3) 卸売価格および輸出統計
 2007年前半、キログラム当たり0.5元の価格水準であったが、2007年後半から2008年にかけて価格は大幅に上昇した。

図8 北京八里橋卸売市場におけるにんじんの卸売価格

資料:中国蔬菜網「北京八里橋農産品中心卸売市場価格行情一覧」より機構作成
注:価格は気配値の単純平均

図9 にんじんの輸出数量と輸出価格

資料:GTI社“Global Trade Atlas”

(4) コスト分析

 生産コストでは土地、労働費、肥料に係るコストが大部分を占めているもようである。

 出荷コストは包装費や出荷に係る労賃である。

 輸出コストは横持ち運賃より土壌検査や残留農薬の検査コストが大幅にかかっている。

(5) 荷姿
 代表的な荷姿は10kgの段ボール(ビニール袋梱包)である。規格の一例としては、 300~350グラム、250~300グラム、200~250グラム、150~200グラムなどの分け方がある。

表10 にんじんのコスト事例(FOB価格に占める割合)

6.にんにく

(1) 省別生産量
 中国が世界における大産地である。山東省、河南省、江蘇省で中国の生産量の3分の2を占めている。

表11 にんにくの省別生産状況
(単位:千ha、千トン、トン/10a)

資料:中国農業部栽培管理司
 注:1haを15ムーで換算した

(2) 栽培品種
 品種については、国内向けおよび輸出向けとも同じ地元品種を利用している。

 調査先では生産量のうち、3割が国内向け、7割が輸出向けであった。

(3) 卸売価格および輸出統計
 2006年~2007年当初はにんにくの価格が堅調であったことから、その影響により2007年度や2008年度のにんにくの生産や取扱業者の数が大幅に増加したことにより供給過剰となり、価格は低迷している。

 2008年からは、キログラム当たり1元程度の価格水準となっている。

図10 北京八里橋卸売市場におけるにんにくの卸売価格

資料:中国蔬菜網「北京八里橋農産品中心卸売市場価格行情一覧」より機構作成
注:価格は気配値の単純平均

図11 にんにくの輸出数量と輸出価格

資料:GTI社“Global Trade Atlas”

(4) コスト分析
 他の野菜品目に比較して生産コストの割合が高くなっており、生産コストのうち、種苗費が一番大きなコストを占めている。その他は土地、労賃、肥料に係るコストが大きい。出荷コストは出荷に係る労賃や包装資材費、輸出コストは横持ち運賃の割合が大きい。

表12 にんにくのコスト事例(FOB価格に占める割合)

7.ブロッコリー

(1) 省別生産量
 ブロッコリーに関する統計は公表されていないが、2000年の聞き取りによるデータでは、山東省の作付面積は3,800ヘクタール、生産量は53千トンとなっている。淅江省の作付面積は2,300ヘクタール、生産量は35千トンとなっている。

(2) 栽培品種
 調査先の事例(上海市の中の1例)では、品種について輸出向けは輸出用の品種、国内向けは輸出向け品種および国内品種を利用している。

 生産量のうち、5割が国内向け、5割が輸出向けとなっていた。

(3) 卸売価格
 ブロッコリーの価格では、おおむねキログラム当たり3~4元の範囲で推移しているが、市場の入荷状況などによっては、大きく値が動くことがある。

図12 北京八里橋卸売市場におけるブロッコリーの卸売価格

資料:中国蔬菜網「北京八里橋農産品中心卸売市場価格行情一覧」より機構作成
注:価格は気配値の単純平均

表13 ブロッコリーのコスト事例(FOB価格に占める割合)

(4) コスト分析
 調査先の事例によるコスト比較では、下表のとおり出荷コストが極めて高い割合を示している。出荷コストは出荷に係る労賃や包装資材費だけでなく、減価償却費や管理経費の割合が大きくなっている。これは氷詰めの出荷を行うための設備費やランニングコストがかかっているためと見られる。輸出コストは国内の横持ち運賃が大半である。

(5) 荷姿
 荷姿は10キログラム詰め(38玉)ではっ水性の段ボール箱または発泡スチロールなど。発泡スチロールであれば、40フィートコンテナで1,000箱程度積み込むことができる。日本まで1週間程度で到着する。



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