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韓国における野菜の生産・流通および加工の現状

調査情報部 調査情報第二課 村野 恵子
野菜業務第一部 予約業務課 矢野麻未子


はじめに
 日本と韓国の間では2003年12月にFTA交渉が開始され、各部門での研究などがなされたが、双方の隔たりは大きく、交渉自体の再開メドが立っていない状況にある。
他方、韓国は日本の農産物市場に対して積極的に輸出振興策を進めており、近年対日輸出が伸びていることから、韓国の農業政策、生産状況、輸出状況等を把握しておくことは、我が国の野菜の国内需給安定上からも重要である。

 このような観点から、韓国における野菜の生産・流通および加工に関する実態調査を平成18年2月6日から2月16日にかけて実施した。本稿では、この調査の概要について報告する。

図1  韓国の地図



─要 約─

1.韓国の農業政策は2004年の「農業・農村総合対策」で大きな転換がなされた。それまでの国際化に対応した戦略的な農業開発により農業構造の改善がある程度図られたが、一方で多数の零細農家と少数の大規模農家という農業者間における格差が生じ、また、施設整備の推進は農家負債を増加させるという問題も生じさせた。そこで今後は、国際化に対応した農業構造への誘導は維持するものの、経営安定、所得補償、農業者の生活の質向上、安全性に重点をおくという農業政策が打ち出された。

2.日本市場は韓国の農産物にとって最大の市場であることは変わらないものの、日本市場のみに依存することの危険回避もあり、日本以外の海外市場開拓も積極的に行われている。対日輸出の問題として、原油価格の高騰による生産コストの上昇(特に施設園芸)、日本市場の価格低迷による輸出単価の停滞、韓国国内の農産物価格の上昇、韓国wonの上昇等為替レートの変動、日本の要求する安全性への対応による労働力の負担増加等が挙げられる。

3.日本への野菜輸出で最も多いパプリカは、夏場の産地が拡大していることから今後も増加する要因はあるが、残留農薬の問題等があり、今後は安全性の確保が重要な鍵となる。

4.いちごは、日本の育成者のロイヤリティ問題(現在協議中)により輸出数量は減少したが、韓国品種が確立されたことから今後韓国品種中心で輸出されるものと思われる。また、生鮮いちごの輸出は減少したが、調製いちごは増加しており、今後調製いちご等の一次加工品は増加すると見込まれる。

5.キムチは、中国産キムチとの競争が鍵となる。また、2005年11月に発覚した寄生虫卵混入問題が輸出数量の減少を招いており、その他の品目と同様に安全性確保が重要になる。それ以外の品目は、日本の気象等の影響による需要補完的な性格が強く、韓国の状況より日本市場のニーズや条件などに影響を強く受けるものとなっている。

6.韓国は、日本市場へ野菜の輸出を進める一方で、中国からの輸入が急増しており、今後もその傾向は続くと考えられる。高品質農産物は輸出に、安価な外国産農産物は国内の外食用にという構造が形成され始めている。

7.FTA交渉は今後も推進されると考えられるが、農林部は例外品目の設定と段階的な関税撤廃といった柔軟な方法により対処するであろう。なお、FTA締結による農業分野の被害に対してはFTA基金の適用を拡大する予定である。


1.自然環境等と農業事情
(1) 自然環境等
 韓国は、南北に1,000kmの長さをもつ朝鮮半島にあり、日本海を東側に黄海を西側に有し、北側は北朝鮮と国境を接している。国土面積は約9万9,620km2で日本の約4分の1、農耕地は1万8,360km2で、うち田1万1,150km2、畑7,210km2、山林6万4,060km2、行政区分は9道、1特別市、6広域市である。

 気象は、大陸性気候と熱帯海洋性気候の中間地帯で、四季のはっきりした冷帯および温帯気候に属し、日本の気象と似ている。夏は暑く降水量が多い反面、冬は寒く降水量が少ない。年平均気温は北側に位置する江原道の10.9度から南に位置する済州島の16.2度であり、最高気温は29~31℃、最低気温は-8~-10℃である。降水量は平年1,309.8mm、2004年1,482.2mmで日本よりやや少ない。

 人口は約4,800万人(2004年)、うち農村人口は900万人(2000年)で、都市へ集中している。

(2) 農業事情
 韓国の農業を2004年の統計でみると、農業生産は国内総生産の4.6%を占め1990年の9.9%と比較すると、近年急激に減少している。農家人口は341万人、124万戸で、総人口の7.1%であり(日本は7.6%(2003年))、1990年の15.5%から減少傾向にある。耕地面積は、183万6千ha(国土の18.4%)、そのうち、田111万5千ha、畑72万1千haである。韓国の農業は米が中心であり、2004年実績で米の生産額は9兆9,600億won、栽培面積100万ha、生産量500万トン、生産農家は91万4千戸、総農家数のおよそ73.7%にあたる。このように韓国の農業は米中心の農業体系ではあるが、所得向上、食の変化等に伴い米生産は減少し、反対に畜産、野菜等の分野が成長している。

表1 韓国における農業生産の地位

 
表2 耕地面積の推移
(単位:ha)

注2)日本:作付面積170万ha、生産量872万トン(平成16年産水稲)

 韓国における農業の地位の低下は1960年代後半からの経済成長を起点として始まり、人口の都市集中による農村地域の過疎化、多数の小規模農家の存在、高齢化、国際競争力の低下等日本と同様の問題が挙げられる。日本と違う点は、ごく短期間で現在の状況になっていることから、現状に対応した生産体系の確立が未成熟であること、専業農家割合が高く農業部門の衰退はそのまま農業従事者の所得減少に繋がること、農家と都市生活者の所得格差が大きいこと等が挙げられる。また、韓国も日本と同様に食料純輸入国であり、WTOやFTA締結により市場開放が急速に進み、中国を始めとする農産物の輸入増大等国際化の波にさらされており、韓国の農業は厳しい状況にあるといえる。

表3 農業生産額の品目類別推移
(単位:10億won)

注:生産額は3ヵ年移動平均(2000年基準)、「特作その他」
は特用作物と花きの合計
資料:韓国農村経済研究院「農業展望2006」、原資料:農林
部「農林統計年報」


2.韓国の農業政策
 1960年代後半から経済成長が始まり、工業化に伴う農業部門の地位の低下が進む中、農林部(我が国の農林水産省に該当)は農家所得と都市世帯所得の格差是正が重要であるとし、1986年「農漁村総合対策」、1987年「農漁村負債軽減対策」等の政策を打ち出した。また、1980年代後半から、国際化という大きな波に韓国も巻き込まれ、WTO協定締結を一つの契機として韓国は国際競争を念頭においた農業政策を展開し始めた。

 具体的には、1989年に「農漁村発展総合対策」、1990年に「農漁村発展特別措置法」、さらに1991年には「農漁村構造改善対策」として1992年から2001年の10ヵ年にわたる計画が示された。また、1999年に「農業・農村基本法」を制定し、WTO体制下における農業政策として「農業を産業として認識し、守りの農政から攻めの農政」をスローガンに政策を進めてきた。さらに、2004年には119兆計画として「農業・農村総合対策2004」を発表し、そこで主な政策の方向として、(1)政策の地方分権化、(2)量的生産から品質の向上に転機し消費者の望む農産物生産の実現、(3)農村を生産のみの空間ではなく、都市住民の休養空間としての地位を確立、(4)国際競争力および市場開放に向けた対応策の強化を図るとしている。2006年は、2004年から実施したこの「農業・農村総合対策」の評価を基に、全面的な再検討を行うとしている。主な修正点としては、(1)直接支払制の本格導入と災害保険の対象拡大等による経営の安定措置の強化、(2)「農村政策」として農業と都市の均衡のとれた発展開発、(3)「農業政策」として農業者間における所得や規模の二極化を是正し、それぞれに適した農業政策の施行、(4)「農産物流通と安全性の確保」として流通の改善と消費者の要求、嗜好にあった農産物の開発等を掲げている。

 このような農業政策を推し進めてきた韓国では、農業構造の改善がある程度達成されたが、反面、多数の小規模農家と少数の大規模農家、都市と農業世帯の所得格差、農業者間の所得格差、農業者負債の増加等の問題を生み出した。今後、所得格差の是正に対しては直接支払制による補填、農家負債に対しては2001年に「農漁民借金軽減法」を制定、2004年には「中長期政策資金金利引下げおよび償還期間延長」、2006年は「相互金融低利代替資金(5.9兆won)の償還期間延長」を推進し対応していくことにしている。

表4 119兆計画の投融資状況
(単位:兆won)

資料:「農政3年の評価と政策方向」農林部
 
表5 営農規模別農家戸数
(単位:千戸)


表6 年度別農家負債
表7 農家・都市世帯所得比率
(単位:千won/戸)
資料:「農林業主要統計2005」農林部

資料:「参加政府3年評価と政策方向」農林部


3.国際化における韓国農業
(1) 国際化の流れ
 韓国の農業は、日本と同様にWTO体制下にあって自由貿易という強い圧力下にある。WTO協定の締結は、それに対応した農業政策が求められるようになり大きな変換点となった。また、国際化の流れの一環としてFTA締結が進められ、現在では、チリ、シンガポール、EFTA(欧州自由貿易連合)と締結がなされ、ASEAN、メキシコ、日本とも交渉が進行中である。さらに米国、インド等と本格交渉に向けた準備が行われている。FTA締結は農業部門に大きな影響があるとし、今後の影響および推進状況に対して強い関心を抱いている。

 そのような流れの中で政府は、競争力のある農業を目指した政策を打ち出し、その一つとして、海外市場の開拓が掲げられ、第一有力国として日本市場が挙げられた。すでに周辺諸国から安価な農産物が日本に輸入される中で韓国は、日本が植物防疫法による果菜類の輸入許容地域であること、施設栽培による高品質農産物の生産が可能なこと、地理的優位性による鮮度と流通コストが廉価なことを有利な条件として輸出を伸ばしてきた。その反面、自由化による農産物の輸入、特に中国からの輸入が急増しており、現在は輸出用に高品質の野菜を生産する一方で、安価な輸入農産物が外食向けに利用されるという構造になっている。

(2) FTAについて
 韓国政府は、FTA推進戦略として、(1)既に開拓した海外市場の他国からの侵食防止、(2)海外市場進出機会の拡大、(3)巨大経済圏市場の先行獲得を挙げ、早期にFTA推進を図るとしている。その方針のもとに現在のFTA推進状況は表8で示すとおりであるが、日本との交渉は停滞している状況である。

(3) チリとのFTA締結
 チリとのFTA交渉は2002年10月に交渉が妥結し、2004年4月1日より発効されたが、農業部門においては大きな影響があるとして注目されている。チリとの条約においては農業部門に「農産物譲歩類型」を設定する一方で、センシティブ品目として米、りんご、なし等は関税撤廃のリストから除外した。FTA締結により大きな影響を受けると予想された品目は、ぶどう、キウイ、桃、豚肉、ワイン等であり(農林部「FTA履行支援対策2005.1」)、特に果樹に対しては、「FTA支援特別法」(2004年3月22日制定)によるFTA支援基金を設置し、2004年1,607億won、2005年1,662億won(計画)の予算で支援を行っている。

表8 韓国のFTA推進状況(2006.1月末現在)

資料:韓国農村経済研究院「農業展望2006」

表9 韓国におけるチリからの輸入状況
表10 韓国におけるチリからの品目別輸入状況

(単位:千ドル、%)
(単位:千ドル、%)

資料:「農業部門 韓・チリFTA履行2年の評価」韓国農村経済研究院


資料:韓国農林部 報道資料「韓・チリFTA履行2年の評価」



表11 韓国・チリFTA締結内容

(注)DDA:ドーハ開発ラウンド
資料:「農業展望2006」韓国農村経済研究院


4.野菜の位置付けと生産状況
(1) 野菜の位置付け
 韓国農業における野菜の位置づけを生産額からみると、1990年の農業総生産額に占める割合は米36.9%、野菜18.7%、2004年では、米27.6%、野菜21.2%であり、かつての米偏重の農業構造からこの十数年で変化し、農業における野菜の地位は向上したといえる。特に成長率が高いのは施設野菜で、野菜以外では果実、花き、畜産が伸びている。施設野菜や花き類の増加は、1994年のウルグアイ・ラウンド合意を受け、国際競争力のある高品質の農産物生産を促進するとして、施設建設費用の国庫負担を行った結果により施設栽培面積が増加したことに因るところが大きい。

 消費量からみると、韓国の1人当たり年間野菜消費量は世界第1位であり、2004年で160.8kgとなっている。1980年と比較しても約27%の増加をみせている。1日当たりの食品供給量の年別推移をみてみると、穀類が減少傾向にあり、その他の品目が増加している。野菜の中では、だいこん、はくさい等の従来からある野菜類の消費量は減少し、施設野菜であるトマト、非結球レタス、きゅうり、いちご、さらにはキャベツ、結球レタス、ピーマン等に消費が移行している。野菜の消費量の増加もその地位向上を示しているといっていいだろう。

 また、消費者物価指数から野菜類をみると、2000年を100として、2004年の総指数は114.7であるのに対し、野菜類130.3をはじめとして、畜産物、果実は消費者物価の上昇率が高いことが分かる。

表12 農業生産額の推移
(単位:百万won)

資料:農林部「農林統計年報2004」

表13 消費者物価指数(年平均指数)
(2000=100)

資料:統計庁「物価年報」pp98-101、pp312-313、pp356-357、pp360-365


表14 1人1日当たり食品供給量
(単位:g)

資料:「食品需給表2004」韓国農村経済研究院

(2) 野菜の生産状況
 野菜の栽培面積は減少傾向にある。しかし、生産量は2002年には一次的に減少したが、その後また増加に転じており、概ね1,000万トン前後の生産量となっている。施設栽培の増加により集約的な生産がなされてきていること、また単収が増加していることが生産量に反映している。韓国における主な野菜は、だいこん、はくさい、すいか、とうがらし、にんにく等であるが、食生活の変化、経済力の向上、施設園芸の増加等の要因により、成長品目と縮小品目に2分できる。成長品目としては、施設園芸の中心である果菜類であり、特にトマト、青とうがらし、メロンは1990年と比較して大幅に増加している。トマトは、近年健康ブームにより人気が出てきたこと、生産基盤が十分であることや学校給食で使われるようになったこと等が理由である。また果菜類以外では、施設栽培により年間を通じて店頭に並ぶようになったキャベツ、ほうれんそう、最近消費量が増加した品目としてたまねぎ、ねぎ、洋野菜類等があげられる。

 反対に縮小品目としては、だいこん、にんじん、はくさい、にんにく等である。食生活の変化による需要量の減少と中国からの輸入増加に要因があると思われる。韓国では1999年中国産の輸入にんにくに対してセーフガードを発動したが、輸入増の歯止めにはならなかった。

図2 韓国における野菜の栽培面積の推移
図3 韓国における野菜の生産量の推移



表15 野菜の品目別栽培面積および生産量の推移
(単位:ha 、t)

資料:「野菜生産実績2004」農林部


6.野菜の流通および加工
(1) 野菜の流通
 韓国における野菜の流通は、零細多数の生産者が自然発生的な市場、産地流通業者、加工場、販売店に出荷し、零細多数の小売商から多数の消費者へ流れていくのが近年までの主な体系であった。しかし、国際競争力のある農業生産の実現の方策として流通構造の改善も掲げられ、共同出荷、共同ブランド、規格の統一、包装出荷、流通コスト削減のための流通段階の簡素化(産地流通センターの設置、農協流通等)が進められ、現在もその改善途中であるといえる。また、1996年に外資系の量販店参入により大型量販店が急増したことも農産物の流通体系に大きな変革を与えた。

 品目別にみると、野菜類の中で、葉根菜類は総じて流通費が高く、果菜類は低い。これは、葉根菜類のうち、はくさい、だいこん等は布廛取引という取引形態がなされており、この取引は、産地流通業者が生産者と直接売買取引を行うもので、畑ごと収穫前に売買を成立させるものである。収穫作業を流通業者が手伝う場合が多く、また、トラックの積載費用等も加算されることからこれらを導入した結果、流通費が高くなっている。反対に、果菜類では流通費は低くなっているが、これは生産者が各集荷場に出荷する形態であり統一的な規格に基づき選別・包装・出荷がなされていることも影響している。

(2) 野菜の加工
 韓国における加工食品の利用は年々増加している。主な加工食品はキムチ類で、主原料ははくさいが圧倒的に多い。韓国におけるキムチの1人当たりの年間消費量は33.23kg、国家全体消費量は1,543千トン(2003韓国食品研究開発院)である。家庭で漬けられていたキムチは、女性の社会進出、都市への人口集中、核家族化、外食産業の振興などにより出来合いのキムチを購入する形態へと変化をみせている。また、中国からの輸入が増加しており、国内生産量を輸入量が上回ったと言われている。中国からの輸入形態は、当初は原料である生鮮はくさいの輸入から始まり、近年は加工されたキムチの形態での輸入が多くなっている。輸入キムチはほとんどが外食産業等で消費され、家庭内消費用にはあまり利用されていないとのことである。

 一方、キムチは輸出農産物において重要な品目であり、ソウルオリンピックを機に輸出が本格化し、2004年まで継続的に増加している。主な輸出市場は日本であり、その外、各国の在住韓国人をターゲットとして輸出されている。日本の輸入量は年々増加傾向であったが、2005年はキムチの寄生虫騒動の影響により減少した。

図4 韓国の青果物の流通実態



表16 消費者価格に占める流用費用の割合
(単位:%)

資料:「2004主要農産物流通実態」農水産物流通公社

表17 韓国における加工製品の生産量の推移
(単位:千t)

資料:「2004野菜加工現況」農林部

表18 主要品目における加工量、原料量および加工製品
(単位:千t)

資料:「2004野菜加工現況」農林部

表19  キムチ加工業の製造状況

資料:「食品産業総合統計」2005.9農林部

表20 韓国におけるはくさいおよびキムチの輸入量の推移
(単位:t、千ドル)

(注)2005年は暫定値。
資料:韓国貿易協会総合貿易情報(Kita.net)(単位:t、千ドル)


表21 韓国のキムチの輸出推移
(単位:百万ドル)

(注)2005年は予測値
資料:「農業展望2006」韓国農村経済研究院



7.野菜の輸出入状況と植物検疫
(1) 野菜の輸出入
 韓国における農産物の輸出入は年々活発化している。農林畜産物の収支をみると輸入が超過しており、純輸入国であることがわかる。野菜類の輸出は年々増加しているものの、同時に輸入量の急増も目立っており、国産の高品質野菜は輸出され、安価な外国産野菜が国内に流入するといった状況になっている。

 農産物の主な輸出先は、日本、米国、中国、ロシア、香港である。輸出額でみると、日本市場の割合は35.6%と高い。日本市場への高い依存率は日本経済に左右されやすいことから危険回避のために輸出先の多角化を図っており、1999年の40.7%と比較すると日本向けは若干減少している。

(2) 対日輸出の状況
 日本における韓国産野菜の輸入数量の推移をみてみると、2001年まで急激な増加をみせていたが、残留農薬問題、原産地表示の問題等によりその後減少に転じた。2004年はまた増加しているが、これは日本が天候不順による野菜の高騰に合わせて緊急輸入を行ったことによるものである。昨年は過去最高の74,200トンを記録したが、2005年は日本の生産が順調で市場価格が低迷したことなどにより68,275トンとやや減少した。

 品目別にみると、韓国からの主な輸入野菜は、ジャンボピーマン(パプリカ)、キャベツ等あぶらな属、トマト、メロン、いちご等である。また、「その他の調整野菜」としてキムチ(大宗はキムチと考えられる)が相当量輸出されている。

 日本への輸出野菜のうち数量、金額とも多いのはパプリカであり、かつてオランダが日本市場占有率1位であったが、韓国が台頭し2005年では68.6%を占めている。韓国産パプリカ輸出増加の要因の一つとして、従来11月~翌年7月までが主な輸入期間で、特に冬場が中心であったが、夏場にも出荷ができる作型が高冷地に形成され、安定した生産が可能になったことがある。

 韓国の輸出農産物生産者にとって、国際的な原油高騰が加温のための燃料コストの上昇につながり大きな問題となっている。日本に輸出される野菜のほとんどは端境期をねらったもの、もしくは高品質が求められるもので、いずれも施設による栽培がされており、日本市場の野菜価格の低迷が、燃料コスト上昇と合わせて輸出に厳しい影響を与えている。
 また、もう一つの問題として韓国のwon高、円安が挙げられる。契約において円建による決済を行う業者が多く、為替レートの決済による韓国側の減収は、調査時点において2割から3割あるとの意見も聞かれた。

図5 韓国からの野菜類の輸入

 

表22 韓国輸出入実績
(単位:百万ドル、%)

資料:「農林業主要統計2005」農林部

図6 パプリカの国別輸入数量の推移


図7 韓国からの月別ミニトマト輸入数量



表23 わが国の韓国からの主な輸入野菜
(単位:t、千円)

資料:農畜産業振興機構「VINAS」、原資料:財務省「貿易統計」


表24 石油価格の推移
(単位:won/l)

資料:韓国農村経済研究院「農業観測」、原資料:農協中央会

表25 主要施設野菜の生産コストにおける光熱動力費比重
(単位:%)

注:施設きゅうり、施設トマト、施設いちごは促成基準値
資料:韓国農村経済研究院「農業観測」、原資料:農村振興庁「農畜産物所得資料集」


表26 為替レート
(単位:won(期末基準)

資料:韓国農村経済研究院「農業観測」、原資料:農協中央会

(2) 国境措置
1)関税割当(TRQ)制度
 韓国は、UR農業交渉の結果、譲許表を作成し米、麦、とうがらし、にんにく等67品目に対して、ミニマム・アクセスまたはカレント・アクセスを設定した。2000年に牛肉、鶏肉、豚肉、2004年にオレンジジュースが完全開放になり、2005年度は63品目(HS10桁単位では190品目)に対して関税割当(TRQ)を設定している。これらは、「農水産物流通および価格安定に関する法」により管理され、韓国の農業分野において多大な影響があるとする特定品目の保護を行っている。管理方式は、(1)政府が指定した機関にのみTRQ枠を与えて販売による利益を政府に納付する方式、(2)公開競争入札方式(オークション)を通してTRQ輸入権を販売する方式で、落札した輸入業者が相当数量を輸入できる方式、(3)実需者配分方式として、該当品目のTRQ輸入権を輸入管理機関への申請に基づき配分をする方式である。

表27 韓国のTRQ管理方式

資料:農林部農業交渉課、「WTO農業交渉業務資料2004」


2)植物防疫
 1969年に「植物防疫法」を制定し、輸入制限品を設定している。また、それら輸入制限品を輸入する場合は、空港および港において申告を行い、定められた検査を受けなければならない。生の果実、生の野菜、マメ科植物のえだまめ類は輸入制限品目であるが、日本は、精米、柿、さくらんぼ、ぶどう、キウイフルーツ、いちご、メロン、かぼちゃ、かんきつ類(九州以南で生産および同地域から輸出する場合は禁止)、トマト(かんきつ類と同)について輸入許容地域に指定されている。また、りんご、なしは現在交渉中である。


8.野菜の安全性
 韓国では、農産物の安全性に高い関心が持たれている。これは、輸出農産物の残留農薬問題、BSE問題、キムチの寄生虫問題等に端を発したものであり、農林部では2006年1月31日にGAP(優秀農産物認証制度)とトレーサビリティ(農産物履歴追跡管理基準)を告示として公表した。当該告示によると、対象品目は96品目(野菜28品目)であり、両告示とも「農産物品質管理法」に根拠をおいている。また、農産物および食品の安全性強化のための支援対策として、2005年度に206億won、2006年度に257億wonの予算措置を行っている。輸出農産物の一部については、既にGAP、トレサービリティが確立されており、国立品質管理院の規定を満たした農産物に対しては韓国輸出ブランドである「フィモリ」の認証を与えている。


9.調査先の概要
(1) 野菜産地
 図1に示したように、韓国の大きな野菜の産地(図の点線部分)としては、(1)南部の全羅北道、全羅南道、慶尚北道、慶尚南道など輸出団地が多く点在する地域、(2)北部の江原道など夏場の野菜産地があげられる。今回の調査においては、(1)の地域で「パプリカ」、「ミニトマト」を中心とした韓国の生産状況についてヒアリングしたので概況を報告する。

1)パプリカ
(1) A生産法人
ア 生産概要
 全羅南道唐津郡にあるA生産法人は、ガラス温室を1996年に建設し、設立当初からパプリカを栽培している。生産者12名で、作付面積5,000坪、出荷量300トンである。
 生育ステージは、播種が7月27日、定植8月26日、収穫は11月から7月末。
 栽培品種および割合は、赤色はフィラリー(55%),黄色はフィエスタ(30%)、オレンジは、プレジデント(15%)である。苗は、自家育苗で、種はオランダから輸入している。規格は、XL(220g以上)、L(190~210g)、M(160~180g)、S(150~160g)、SS(150g以下)の5種類、輸出用には、主にMで、XL,SSは、国内の外食用として出荷している。
 輸出の比率は85%で、輸出の契約先としては2社だが、取引はほとんど1社とのことである。契約方法は播種前に色ごとに数量を決定し、収穫量を月ごとに報告して調整する。契約価格は、月ごとに市場価格を反映させて決定する。収穫物は光陽農産物物流センターに搬入し、同センターで選別を行い、日本に輸出している。
イ 最近の動向
 石油高で生産コストがあがり、さらにwon高、円安の為替レートの影響により、単価減となった。収量を増加させ、面積当たりの所得を維持することが輸出を維持できるかどうかの境界である。また、生産地の増加により出荷量が増え単価が下落しているが、今は飽和状態でこれ以上の増加はないと考えている。
 GAPは2年前に試験的に導入し、昨年から本格的にシステムを導入して行っている。すでにISOを取得済みであったので、スムーズに対応できたとのことであった。

(2) B社
ア 企業概要
 全羅北道金堤市にあるB社は、1999年に設立、主にパプリカの生産から選別、出荷までの管理を行っている。職員60人、パートはなく、全員正規雇用である。
 選別施設の規模は3,000坪で、そのうち選別・包装作業場が500坪、作業場全体を冷房システムで管理している。そのほかに入庫場低温倉庫166坪、一般倉庫および職員休憩施設400坪がある。処理能力としては、自動選別ライン1式、1日最大作業量400トンである。
 現在生産組合19カ所と契約していて、延べ栽培面積10万坪、年間出荷量は5,000トンである。生育ステージは、播種7月、定植8~9月、収穫11~7月で、栽培品種は、赤色がスペシャル、黄色がフィエスタ、チェルシー、オレンジはプーリーである。スペシャルは、形が日本に好まれるので栽培しているが、収量はおちるとのこと。チェルシーは試験栽培である。種は、オランダエンザ社より購入している。栽培の技術指導は、ベルギー人の指導者が1ヵ月のうちの15日間行っている。
 規格は、SL、L、M、S、SSの5種類で、SLとSSは、国内用、日本向けには、Mサイズを1箱に30個詰めで出荷している。輸出の比率は、80%(2003年は90%)で、あとの20%は、国内向けである。輸出契約先は1カ所で、2004年の輸出実績4,000トンである。
イ 最近の動向
 2004年10月に生産履歴管理、生産状況把握のため、電算化システムを導入した。初期投資3億wonで運営に6名を要している。農薬、資材、配送トラック等すべての管理を行い、また、毎日の着果数、落果数、出荷量を各生産者が送信することで、全体の状況把握ができ、計画的な出荷を可能としている。また、ここでは、フィモリ認証を得ているが、それを上回る生産者履歴の管理を行っている。
 won高円安による為替レートの影響により輸出単価が低下していることと、韓国国内の需要が高まっていることにより、今後は国内向けの出荷にも力を入れていく予定である。



パプリカ栽培ガラス温室(A生産法人)
4,800坪(80m×200m)高さ5m

着帽し温度管理された選果場にて、パプリ
カを箱詰めしている。(B社)

2)ミニトマト
(1) C生産法人
ア 生産概要
 全羅南道羅州市にあるC生産法人は、1994年7月に設立、会員数13人、作付面積2万7千坪である。施設は、1994年から95年にかけて建設し、輸出は、95年から始めた。会員全員がミニトマトを栽培しているが、ミニトマト以外に米を栽培している生産者もいる。
 当初からミニトマトを栽培していて、トマトは、2000年から栽培開始し、以前はミニトマトを80%作っていたが、現在は、ミニトマトとトマトを半分づつ栽培していて、生産量は、それぞれ650トンである。
 生育ステージは、播種が6~7月、定植7~8月(播種後40日)、収穫10~6月。栽培品種は、ミニトマトが、サンチェリー250およびココ、トマトが、トテラ(当期)、ラプソディ(夏期)、桃太郎である。ミニトマトの規格は、2L(22g以上)、L(17~22g)、M(12~16g)、S(8~12g)、2S(8g未満)で、輸出はL、M、Sで、輸出の比率は10~20%(2002年は70~80%)である。種は海外に出向き、耐病性、糖度、硬さ、耐低温性に優れているものを自ら選び、貿易会社を通じて購入している。苗は育苗会社への委託である。
輸出の契約先は1社、作付前の7月に年間数量と規格等を決める。国内出荷は70%が大手スーパー、30%が地方市場への出荷である。
 輸出スケジュールは、1日目の朝収穫し、昼までに選果場に運び選果、その後、冷蔵トラックにて釜山港に輸送、2日目の朝にコンテナに積載、夜釜山港を発って、3日目の朝、下関港着である。
イ 最近の動向
 石油価格の高騰で、1,000won/kgから1,500won/kgに生産コストが上昇している。
 また、国内のトマト需要の増加および栽培の容易さから、ミニトマトからトマトへの作目転換が進んでいる。今年の作柄は、曇天による日照不足のためやや不良とのことである。
 GAPはすでに導入済み。輸出生産団地は、90年から生産番号が配布され、農協に認証システムが導入済みである。包装パックに個人番号が入るので、個人ごとの荷の行き先がわかる。また、契約している輸出業者が厳しいので栽培周辺の環境、栽培品目や農薬管理体制等の情報を事前に報告している。

(2) D生産法人
ア 生産概要
 全羅南道宝城郡にあるD生産法人は、1981年設立、生産者数120人、作付面積12万4千坪、生産量3,000トンである。ミニトマトを中心に栽培しているが、キウィを栽培している農家もある。12年前に輸出品目としてきゅうりの栽培を開始し、その翌年からミニトマトを栽培している。
 生育ステージは、夏型は播種が5~6月、定植7月、収穫9~11月、抑制は播種が6月、定植9月、収穫1~5月である。栽培品種は、ココ、ヨーヨー、スイートだが、ココが70%を占める。日本の品種を栽培していて、日本から種子を購入し、苗は親環境栽培で農薬を使用できないので自家育苗しているが、それ以外は購入している。
 規格は、L、M、Sの3種類で、日本向けにはMで3kg/箱を使い、国内用は 5kg/箱である。輸出の比率は30%で、契約先は3社。契約方法は、播種前に年間数量と価格等を決めるが、日本の状況により数量は大幅に変動し、一方価格は変動幅を設定し、その範囲内で行っている。国内の出荷先は、ソウル可楽洞市場30%,流通センター70%である。流通センターに全量出荷したいが、流通量の上限があるので、残りを可楽洞市場へ出荷している。
イ 最近の動向
 石油価格の高騰で生産コストが50%も上昇した。国内トマトの価格の上昇により国内出荷を希望する生産者もいるが、今はミニトマトの栽培と輸出の維持を考えており、品目転換は想定していない。
 GAPは現在導入していないが、韓国の農林部からも要請があるので、いずれは導入する予定である。


ミニトマト栽培ハウス、700坪、養液栽培で、
親環境栽培を行っている。(D生産法人)


(3) E農協のミニトマト作目班
ア 生産概要
 慶尚南道金海市近郊にあるE農協のミニトマトの作目班は、24名でミニトマトの栽培面積 2万4千坪である。
 調査生産者は、施設を1995年~98年に建設し、現在ミニトマトを1人で5千400坪栽培している。以前は、カーネーションを栽培していたが、日本に中国産のものが入るようになったことから、2年前からミニトマトに品目転換した。アルバイトを雇って生産、収穫等の作業を行っている。
 生育ステージは、9月25日定植して12月10日以降収穫と、11月下旬定植、1月24日~8月末収穫の2通りで、栽培品種はサンチェリーである。輸出の比率は50%で、輸出契約はしているが明文化しているものはなく、輸出量は15日単位で国内と日本の両方の市況状況を判断して決めている。輸出単価は750円/3kg箱である。国内出荷は、契約しているマーケットに農協の共同選果場から出荷している。
イ 最近の動向
 今年は、石油価格の上昇と人件費の上昇で、生産コストが40%上昇した。今年の作柄は、栽培を始めて2年目なのでよく分からないが、並であると思われると話していた。


ミニトマト栽培連棟ビニールハウス、土耕
栽培寒い時は、夕方4時から朝8時まで加
温、夜は15℃に設定。(E農協)

3)メロン生産法人(F連合会)
ア 生産概況
 全羅南道羅州市細枝面にあるF連合会は農協の作目班で、1986年からメロンを栽培している。会員は120戸で、それぞれ夫婦でやっているので約240人である。メロンの栽培面積は55ヘクタールで、生産量は300トンで、メロンが主だが、米や梨も栽培している。
 生育ステージは、定植8月で収穫11月、定植11月で収穫2月、定植2月で収穫6月の3期作で、いずれも播種から60日後に出荷している。1苗から1玉収穫、受粉日時を苗ごとに記録し、収穫日を決めている。
 栽培品種はスーパー、苗は専門育苗業者から購入している。規格は5kgの箱に3個、4個、5個詰めで、4個、5個詰めで上等なものを日本に輸出している。輸出の比率は10%で、輸出契約先は1社である。国内は、市場を通じて大手マーケットに出荷しており、選果場は、E連合会で共同選果場を保有し、会員で運営しており、1日の処理能力は、3,000箱である。
 栽培技術の指導は特になく、経験に基づいて行っている。
イ 最近の動向
 石油高騰で生産コストが1.5倍に上昇した。昨年の年末の大雪の被害はなかったが、日照不足により着果率が不良で生産量が低下している。メロンの価格は20年前と同じなので生産量の増加は見込めなく、またメロンは高いので、韓国国内の消費は少ない。
 GAPはまだ未導入。今後はID番号により生産者を個々に管理するので、それに合わせて導入する予定であるが、ここでは低農薬栽培を以前から行っているとの話であった。


メロン栽培ハウス 450坪、施設は7年前に建設(F連合会)


4)いちご産地(慶尚北道普州市)
 普州市は、韓国のいちごの大きな産地である。農協会員数120名、生産者数は240人。生産者の平均栽培面積2,000~2,500坪である。基本的には夫婦で作業を行い、収穫時はアルバイトを雇う。
 共同選果場は市が建設し、経営は生産組合が行っている。手数料は販売価格の10%である。
 生育ステージは、定植9月上旬、収穫11~5月末。栽培品種はメイヒャン、章姫。メイヒャンの栽培面積は50haだが、収量は章姫と比べやや少ない。
 輸出品種はメイヒャンで、輸出の比率は4.5%である。普州市の生鮮いちご輸出量は177トンで、韓国全体の98%を占める(2005年実績、普州市資料)。輸出先は日本、香港、シンガポール、マレーシア、グァムである。輸出契約先は5社で、播種の前に契約をするが、特に量は決めていない。生鮮だけでなく、ダイス型にカットして加糖した調製いちごや、スライスして冷凍した冷凍いちごなども輸出している。加工品は安いときにまとめて処理できるメリットがあるとのことである。
 韓国の輸出業者からみた場合、日本はいちごの生産国なので、植物防疫等での取り締まりが厳しく、また、日本と韓国の気候はほとんど同じなので、両国の需要期が重なってしまう。だが、日本より一戸当たりの栽培面積が広い韓国は、日本の高齢化がさらに進んだ10年先を見据えてやっていると話していた。昨年末の雪の被害は、この辺は雪が比較的少ないので被害はなく、また加温をしていないので、石油の高騰の影響はない。GAPは、すでに導入済みである。



いちご選別場
白衣を着た女性が丁寧に選別している

いちご栽培ビニールハウス(100m×80m)


(2) 輸出物流センター
 生産法人等が個々にバラバラに野菜等を輸出しているので、輸出窓口を一つにするために野菜等を中心に取扱う輸出物流センターが光陽、馬山等に建設された。センターが輸出団地と契約を行うことで、運送、予冷、共同選別、包装、低温保存、検疫、通関などについて一括処理することができ、また輸送時間の短縮と生産コストの低減も図ることができると、期待されて施設が建設された。ここでは、光陽農産物輸出センターと馬山農産物輸出物流センターについて概要を報告する。

(1) 光陽農産物流通センター(全羅南道光陽市)
ア 施設概要
 2004年5月に施設が竣工し、2004年8月から稼働している。パプリカ、ミニトマト、甘柿の選別、輸出を行っている。経営母体は、A貿易会社、光陽園芸農業協同組合である。
 施設面積3,000坪、建物1,600坪で職員4名、パート30名で運営に当たっている。センターを作り輸送に港を利用することが、光陽市の活性化につながることから施設が建設された。事業費63億wonは、全額市道費の負担である。
イ 稼働状況
 作業能力は、パプリカ20トン/日、ミニトマト10トン/日である、輸出先はパプリカ、ミニトマトは日本、甘柿は東南アジアへ輸出である。
 現在の稼働は週2~3回、12月が多く、1~2月は減少、3月から再び増加し、4~5月がピークとなる。契約生産法人は唐津、長城、長興の3箇所で、数量はまだ少ない。
 生産法人との契約方法は、播種前に1年間の数量を決めて行っている。契約に当たっては、基本価格を設定しているが、為替レートとの関係上変動がある。農薬の管理等基本マニュアルをセンター側から提示し、生産履歴を生産者から提出させているが、1月に残留農薬がでたのでこの点は特に強化している。
 当センターを利用した場合、輸送費の支援を受けられ、市道費から販売価格の2%が生産者または輸出業者に支払われる。この輸送費の支援費も当センター利用のメリットである。箱はセンター共通となっているが、箱代は生産者負担で1,000won/箱である。今後は厳しい機械選別を行っているパプリカとしてのブランドを確立したいと考えているとのこと。
 輸出比率は、パプリカ、ミニトマトとも95~96%である。国内に回るのは選別時に出た規格外品で、釜山市場にセンターから出荷するか、または生産者が市場に出荷できるよう生産者に戻している。現在、取引のある輸出業者は、4社である。
 輸出スケジュールは、1日目が荷物の集荷、2日目にセンターで選別し、選別後トラックで釜山に運搬、夜11時に釜山港出港、3日目の朝下関港着である。
ウ 問題点
 当センターは、開設当初は光陽港発の航路が確保できる予定であったが、諸事情によりこれが困難となった。釜山港まで陸上輸送しなくてはいけないことから、利用数量が当初の予定に達せず、生産者及び数量を確保することが課題である。今後、施設を12万坪に増やす予定もあり、2%の輸送費の支援をPRして利用する生産者を増やしていきたいとのことである。


光陽農産物流通センターでの選別の風景


(2) 馬山農産物輸出物流センター(慶尚南道馬山市)
ア 施設概要
 2004年9月竣工、11月稼働。施設面積1,015坪、建物面積865坪、地上4階建、事業費は74億wonで(国費49億won、道費12億won、市費13億won)である。
イ 稼働状況
 B貿易会社が5年契約で受託運営を行っている。取扱品目は、パプリカ、ミニトマト、洋ラン、菊である。作業能力は、パプリカ50トン/日、ミニトマト20トン/日で、現在取引している契約生産法人は2組、ほかに生産者が18名である。センターからトラックを仕立てて荷をとりにいく。輸送費は21won/kgから80won/kgで、距離により差がある。パプリカは鮮度が大事なので、週4回稼働させているが取扱量は少ない。選別料は200won/kgである。
 ここでの輸出品目はパプリカで、100%輸出している。輸出方法は、センターを利用しB貿易会社から輸出する方法およびセンターを利用しその他の輸出業者から輸出する方法の二つである。日本の輸入業者とは以前は12社と取引があったが、現在は6社である。契約方法は、おおまかな数量を決め、価格は変動制で日本の輸入業者と交渉しながら決めていく。
 当センターにおいては、現在輸送費の支援はしていない。箱代は、生産者負担で、今後はブランドを形成するために箱を作り、箱代を支援していきたい。
 輸出のスケジュールは、1日目収穫、2日目選別後船積みし、夜馬山港から出港、3日目の朝下関港着である。
ウ 問題点
 当センター利用率が増加すれば、日本側の希望する数量や規格などを揃えやすくなり、利用率が上がると思われるが、輸送の問題、農薬の管理の問題もあるので、取扱いを生産状況が把握しやすい近郊に限定しているのが現状である。だが、今後は施設を拡張して国内向けも扱いたいとのことである。
 GAPは、現在未導入である。2007年までには導入したいがマニュアルがないので、現在検討中である。


パプリカを入れて日本に運ぶコンテナ

(3) キムチ工場(A工場)
(1) 会社の概要
 京畿道漣川郡にあるA工場は、農協系の工場である。1991年に工場が竣工し、同年より日本および米国へキムチ、たくあんの輸出を行っている。96年には、アトランタオリンピックのキムチ業者に選定され、キムチの供給を行った。製造工程の管理としては、97年に、品質認証システム ISO 9001を獲得、2001年に、京畿道知事認証 Gマーク、04年に、HACCP認証を獲得している。敷地は、14,242m2(4,308坪)、そのうち建物が4,988m2(1,509坪)で、原料処理能力 45トン、製品生産能力30トンである。
 職員は、148名(総務管理職10名、生産職132名、その他6名)で、製造品目は、ポギキムチ、チョンガ-キムチ、ペチュキムチ、カクテキなどのキムチ類である。


キムチ工場にて(キムチを漬けこむ様子)


(2) 原料の入手方法・契約方法
 原料の入手先および入手方法は、季節により産地が変わるため、約1,000の農協とそれぞれ契約している。
 前年の播種時期にそれぞれの農協と契約する。季節ごと産地が変動する。主原料のはくさいについては、3~4月の場合、前年の9月に交渉を行い、8割は契約単価どおりで行い、約2割は市場価格に連動して変動することがある。
 原料入手時の輸送費は、農協との契約の場合、農協がトラックを仕立て農協が負担、個人との契約の場合は、工場が負担することもある。品種は、工場が指定したものを栽培している。
 生産動向は、年間を通して生産を行っているが、11月と6月に生産が多くなる。これは、11月が韓国のキムチを漬ける時期であることから量が多くなり、また、6月は暖かくなり自家銘のものがなくなることから、消費量が増加するのが理由である。
 納入先は、国内は直売所、ハナロマート、輸出はサイカ(キユーピー系列)等で、千趣会でも販売を行っている。
 契約が反故にされた場合のペナルティはない。基本的に農協との契約なので、農協が契約数量を確保する。仮に数量確保が困難であっても、野菜生産は天候の影響を受けやすいのでペナルティは課していない。
 国からの輸送支援費は、110won/1kgで、施設建設には支援費はなかった。また、輸出の場合生産コストは、1kgのうち65%が経費である。
 日本への輸出は厳しい状況にあり、現在もすでに赤字であるが、農協が輸出促進の方針であるので、続けている。中国産との価格競争力は弱く、日本人には、韓国産と中国産キムチの違いがわからないので、価格のみの競争となると韓国産は厳しいとの話であった。




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