[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

海外情報


中国黒龍江省・山東省・江蘇省における野菜生産・輸出動向

独立行政法人 農畜産業振興機構 調査情報部 調査情報第二課 
課長 河原 壽


はじめに
 平成17年6月18日(土)~29(日)において行った、中国黒龍江省・山東省・江蘇省における、たまねぎなどの生産・輸出動向の調査結果を報告する。


調査結果の概要
1 黒龍江省におけるロシア国境貿易
 黒龍江省では、ロシアへの国境輸出貿易が活発に行われており、ばれいしょ、たばこ、きゅうり、キャベツ、トマト、なす、とうがらしなどが主に輸出されている。また、牡丹江市の卸売市場においては、山東省から2日をかけて陸送されたたまねぎ、ばれいしょ、地元で栽培されたたまねぎ、トマトがロシア市場に向けて輸出されている。
 黒龍江省のたまねぎは、中国東北地域の作付面積の約50%を占めるチチハル市を中心に、ハルピン市、牡丹江市などの地域で、ロシア輸出用の小玉(Mサイズ以下)を主体に栽培されているが、2005年の作付面積は、2004年の作付面積が無秩序な生産により主要輸出国であるロシアの需要量10万トンを大幅に上回るものとなったためロシア輸出価格が大幅に下落し、最大の産地であるチチハル市の作付面積が半減していた。

2 山東省西南部のたまねぎ生産・輸出動向
山東省西南部(済寧市金郷県・魚台県、渮市単県など)で栽培されているたまねぎの作付面積は、2004年の8万ムから2005年10万ムと大幅に増加した模様であるが、昨年の12月から1月の低温と今年5月の低温から玉伸びが悪く、小玉傾向となっている模様である。
 また、日本の市況が悪く輸出量が減少している模様で、原体(皮付き)で輸出する予定であった冷蔵保管をしていないものに、「黒かび」が例年より多く発生しており、また、畑で腐らしているものも出ている模様であった。
 一方、山東省の中部に位置し、主要な日本輸出産地である安丘市が位置する坊(ウエイハン)市全体の作付面積は、2万ムと変化ない模様だが、5月の低温で、収穫量は1割程度減少するとの予測であった。

3 江蘇省東北部のごぼう生産・輸出動向
 江蘇省東北部(徐州市豊県・沛県など)および山東省(臨沂市蒼山県など)の作付面積は、輸出価格の低迷から2003年に大幅に減少した後、2004年に再び増加し、2004年、2005年においては秋蒔4.5万ム、春蒔4.0万ムと安定していた。しかし、公司の農家からの買付価格は、作付面積の増加から2004年、2005年では、再び低迷しており、2006年の作付面積は再び減少するとの予測であった。
 一方、ごぼうの主要産地は、日本ユーザーの求める品質および出荷時期に対応するため、徐州市とその豊県・沛県などにおける作付面積は減少傾向にあり、替わって、山東省臨沂市蒼山県が増加傾向にある。また、2003年第4四半期から2004年第1四半期において、主産地の作付面積の減少および作柄不良により輸出価格が高騰した経験を踏まえ、3月~5月に出荷が出来る新しい産地を開発していた。
 しかし、他方では、2003年第4四半期から2004年第1四半期の輸出価格高騰以降の輸出価格の低迷から、大手や中小のごぼう輸出公司が倒産している。
 産地と輸出公司の再編が始まっている模様であるが、調査公司では、生産調整機能の欠如が最大の問題である、としている。
(注)1ム≒6.667a(15ム≒1ha)、1元≒13.52円(2005年7月11日現在)


1 黒龍江省におけるたまねぎの生産・輸出動向
 黒龍江省のたまねぎは、中国東北地域の作付面積の約50%を占めるチチハル市を中心に、ハルピン市、牡丹江市などの地域で、ロシア輸出用の小玉(Mサイズ以下)を主体に栽培されている。
 栽培されている主な品種は、硬く貯蔵性の良い日本種(カムイ)が主体で、主に吉林省延吉市の産地(2万ム)で栽培・採取されたF2種子が東北地域に販売・栽培されている模様であった。
 2005年の栽培面積は、2004年の作付面積が無秩序な生産により主要輸出国であるロシアの需要量10万トンを大幅に上回るものとなったためロシア輸出価格が大幅に下落し、最大の産地であるチチハル市が2004年の15.0万ムから6.0万ムへと大幅に減少している。
 2005年の種子販売量も、2004年2tから2005年1tと半減していた、とのこと。黒龍江省における作付面積の変動は、安定していない模様である。

黒龍江省たまねぎ主要産地の作付面積・単位収量

 調査を行った牡丹江市の村では、栽培面積3000ムが栽培されており、黒龍江省における通常の単位収量3t/ムを大幅に超える6~7t/ムの高い単位収量をあげており、生産量の95%が輸出されていた。主な輸出先国は、生産量の60%以上(Mサイズ)がロシア、20%程度(一番大きいサイズ)が日本、10%程度(Lサイズ)が韓国であり、東南アジア諸国にも輸出されていた。
 ロシアへの輸出は、地元公司や国境の町(芬河市)の貿易公司による地元農家からの買付により芬河市の市場を経由して、ロシア・ハバロフスク市場に出荷されている。
 その輸出に係る経費は、輸送費、通関係費、検査費など、輸出に係る経費の全ての経費を含めて、0.8元~1.0元/kgであった。

【ロシアへの輸出経路】
 地元農家→地元公司・国境貿易公司→芬河市の市場→ハバロフスク市場
 また、牡丹江市の卸売市場においては、山東省から2日かけて陸送された たまねぎ、ばれいしょ、地元で栽培されたトマトがロシア市場に向けて輸出されている。
 市場関係者によれば、中国からロシアへは、ばれいしょ、たばこ、きゅうり、キャベツ、トマト、なす、とうがらしなどが、毎年17万t輸出されている。



【牡丹江市の村のたまねぎほ場】




【牡丹江卸売市場】
山東省魚台(山東省西部地域)たまねぎ6.8元/kg(2004年8.0元/kg)選別され、小玉はロシアへ輸出される





ロシアへ輸出される山東省ばれいしょ
ロシアへ輸出される山東省にんにく




選別されロシアに輸出される地元産トマト:1万元/25t(トラック1台)

2 山東省西南部および江蘇省徐州市近郊 たまねぎ・ごぼうの生産・輸出動向
山東省西南部(市金郷県・魚台県・渮市単県など)とそれに隣接する江蘇省東北部(徐州市豊県・沛県など)は、5月に収穫されるたまねぎ、にんにく、ごぼうの産地で、その多くが日本に輸出されている地域である。

(1) たまねぎ
ア 山東省西南部および江蘇省東北部(徐州市豊県・沛県など)
 山東省西南部(済寧市金郷県・魚台県、渮市単県など)とそれに隣接する江蘇省東北部(徐州市豊県・沛県など)の作付面積は、2004年10万ムから2005年15万ムと大幅に増加したとのことであるが、昨年12月以降の生育期および収穫期の5月の低温により小玉傾向となり、単位収量は3t/ム(通常4~5t/ム)に減少した模様である。
 調査地域の農民の場合は、作柄が小玉傾向であったことから、ほ場に灌水し収量確保を図った模様で、収穫後に適切な冷蔵貯蔵をしていない場合は、例年より多く「黒かび」が発生していた。
 近年の中国におけるたまねぎの輸出は、剥き玉・冷蔵・輸出が主体であるものの、調査時点(2005年6月27日)は原体での輸出も多い時期であることから、日本の市況が軟調に推移しており、輸出価格も低迷(CIF:$190/t)し輸出量も減少したため、冷蔵されていない原体での輸出用たまねぎ において、例年より多く「黒かび」が発生するとともに、畑で腐らしているものも出ている模様であった。
 このようなことから、原体で輸出する輸出公司では、品質良いものを厳選して買付けていることから、原体での輸出用たまねぎ買付価格が輸出用剥き玉の買い付け価格を上回る状況となっていた。



【江蘇省沛県の輸出用剥きたまねぎ】

(2) ごぼう
 江蘇省東北部(徐州市豊県・沛県など)および山東省(臨沂市蒼山県など)の作付面積は、輸出価格の低迷から2003年に大幅に減少した後、2004年に再び増加し、2004年、2005年においては秋蒔4.5万ム、春蒔4.0万ムと安定しており、また、単位収量も、秋蒔1t/ム、春蒔1.5t/ムと作柄も安定している。
 しかし、公司の農家からの買付価格は、作付面積の増加から2004年、2005年において0.7元/kgと、農家の損益分岐点価格1.0元/kgを下回っており、2006年の作付面積は再び減少するとの予測であった。
 一方、ごぼうの主要産地は、日本ユーザーの求める品質および出荷時期に対応するため、再編成される過程にあり、徐州市とその沛などにおける作付面積は減少傾向にあり、替わって、山東省臨沂市蒼山県が増加傾向にあった。また、2003年第4四半期から2004年第1四半期において、主産地の作付面積の減少および作柄不良により輸出価格が高騰した経験を踏まえ、3月~5月に出荷が出来る新しい産地を開発していた。
 しかし、他方では、2003年第4四半期から2004年第1四半期の輸出価格高騰はあったものの、以降の輸出価格は再び低迷しており、2004年には大手や中小のごぼう輸出公司が倒産している。
 産地と輸出公司の再編が始まっている模様であるが、調査公司では、生産調整機能の欠如が最大の問題である、としている。

【江蘇省沛の輸出用ごぼう】


農民による収穫
出荷調整作業

3 山東省坊(ウエイハン)市における たまねぎ、白ねぎの生産・輸出動向
 山東省坊市は、山東省安丘市が位置する輸出用野菜産地であり、山東省西部地域とともに、たまねぎ、白ねぎ、にんにく、しょうがなどの産地で、その多くが日本に輸出されている地域である。
 山東省坊市におけるたまねぎの作付面積は、2004年および2005年において2万ムと安定した生産が行われている模様であるが、山東省西部地域と同様に、作柄は、冬季および5月の低温などにより小玉傾向となっており、収穫量は1割程度減少すると予測されていた。2005年の買付価格は、0.6~0.7元/kgであったが、運賃と包装資材の価格上昇により、買付価格は0.4/kg程度上昇している、とのこと。
 一方、山東省坊市における白ねぎ(ハウス育苗、春期出荷)の作付面積は、2004年および2005年において3万ムと安定した生産が行われている模様であり、山東省全域の作付面積も、2004年および2005年において8万ムと安定した栽培がなされている模様であった。また、作柄は、5月の低温などによる生育遅れにより、収穫量は1割程度減少すると予測されていた(坊市白ねぎ生産量:2005年9万t 2004年10万t)。

4 その他
(1) 山東省安丘市における環境対策
 輸出野菜の主要産地である安丘市では、山東省衛生局から環境重点地域に指定されたことから、職員の健康管理(検便の実施、宿舎のシャワーなどの衛生設備など)、廃液の塩水などの処理施設などに対する要求が出され、衛生、環境の整備に対応できない公司は営業許可が取り消されることもあり、安丘市の公司では、職員の衛生管理および環境対策に対するための投資を増加している模様である。

(2) 電力対策
 近年、中国の多くの地域では、経済発展により電力需要が急増し、不安定な電力供給が公司の経営に大きな影響を与えているが、山東省の一部の公司では、比較的電力需要の少ない土曜・日曜に営業をシフトし平日に休業するところも出ている模様である。調査を行った輸出冷凍野菜公司では、日本到着曜日が決まっており、平日営業の形態を変更することが不可能であることから、安丘市が属する上級市(坊市)の関係当局と協議し、電力供給量の確保を図っていた。
 一方、黒龍江省のハルピン市の輸出冷凍公司では、現在のところ、電力供給は安定している模様であった。また、将来的に中国国内での電力供給量が不足した場合には、原子力発電により供給力が豊富なロシアから、中国価格の1/3~1/10で購入が可能であり不安はない、としていた。

(3) 労賃の動向
 ア 江蘇省徐州市沛県地域
 江蘇省徐州市沛県地域における出荷調整などの工場労働者賃金は、通常20元/日であるが、たまねぎ、にんにくの収穫・出荷調整期であった6月時点では30元/日であった。
 近年の労働者賃金は、上海市や広東省深市における出稼ぎ労働者の手取り賃金が45元/日(生活費を除いた金額)になることから、労働者の確保が難しくなっている、としていた。
 一方、調査公司では、労働者賃金上昇への対策として、従来行ってきた圧搾空気によるたまねぎの皮むき作業を手作業に戻すことで対応していた。白ねぎの例であるが、上海市の輸出公司では労働者人数の削減のため圧搾空気による皮むき機を導入し、賃金コストの抑制に努めていた事例の正反対の対応であった。
 これは、圧搾空気によるたまねぎの皮むきが、手むきに比べ歩留まりが低いこと、また、調査地点の電力供給力が不安定であることから作業効率が落ちるリスクが大きいこと、労働者賃金と同様に電力料金も上昇していることによる。
 イ 山東省坊市安丘
 2004年の工場労働者賃金は、600~700元/月であったが、2005年では800~900元/月と30%程度上昇している。
 また、公司は、賃金の37%を社会保険などで負担することから、賃金上昇は社会保険などの経費上昇の要因ともなっている。




元のページへ戻る


このページのトップへ