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フィリピンにおける野菜生産・貿易・消費の動向

東京農業大学大学院農学研究科博士課程
ニナ・ノコン(Nina Nocon)


1.はじめに

 フィリピンは約3千万haの国土面積を有する山の多い島国で、気候は乾季(11月~4月)と雨季(5月~10月)に別れ、農業が盛んである。人口は2000年時点で7,650万人、1995年から2000年の間の人口増加率は2.36%であった。国民の約52%が農村に居住しており、1,018万人が農業に従事している。これは就業者総数の36.6%にあたる。(後掲参考文献(1)(2))

 国民経済に関しては、2001年の国民総生産(GNP)が実質で10,511.4億ペソ(基準年次=1985年)、前年比3.4%の増加、国内総生産(GDP)が9,892.6億ペソ、3.2%の増加で、両者とも1998年から4年連続で増加している。この4年間の年間平均成長率はGNPで4%、GDPで3.7%に達した。(表1)

表1 1998年~2001年の国民総生産と国内総生産(基準年=1985年)
(単位:億ペソ、%)

資料:NSCB『2002 Philippine Statistical Yearbook』(後掲参考文献(1))

 また、経済動向を業種別にみると、年間平均成長率は農林水産業4.5%、サービス業4.3%、工業2.4%であった。特に農業と漁業の生産額は、1998年には1,718.3億ペソであったが、2001年に1,968.2億ペソとなり、年間平均成長率は4.6%にのぼった。

 ちなみに、国内総生産の名目額は2001年で36,399.9億ペソであり、そのうち農林水産業が15.1%(5,493.8億ペソ)、工業が31.6%(11,515.3億ペソ)、サービス業が53.3%(19,390億ペソ)であった。農林水産業の総額のほとんどは、農業と漁業によるもので、林業の生産額は非常に少ない。(図1)

図1 産業別国内総生産額構成比(2001年)
(単位:億ペソ、%)

資料:NSCB『2002 Philippine Statistical Yearbook』(後掲参考文献(1))

 農業の中での野菜生産は、後述するように、生産額からみる限り決して高いものではない。しかし、野菜は消費者にとって食生活に必須の食物であり、ミネラル・ビタミン・繊維などの摂取源である。また、生産者にとっても野菜は換金作物という意味での重要性が高い。

 以下では、フィリピン国内での野菜生産の動向、野菜貿易の動向、そして野菜消費の動向を明らかにし、さらに最近の動きである有機農業についても触れることにしたい。

2.国内野菜生産の動向

(1)野菜全体の動向

 フィリピンでは、43種類の野菜(熱帯・温帯野菜を含む)が主要野菜として全国で栽培されており、さらに約250種類のマイナーな野菜が農村部で生産・消費されている。野菜栽培は小作農からプランテーションまでの様々な形態で行われているが、いずれの形態とも野菜栽培は乾季が中心である。ちなみに、通常、乾季には野菜が大量に供給され値段が安くなる一方、雨季には供給が減り値段が高くなる傾向がきわめて強い。この傾向は特に気候によって作期が限定される野菜、例えばトマト、たまねぎ、ニンニクやキャベツといった野菜で顕著である(参考文献(3))。

 野菜の国内総生産額は、1997年時点で25,917百万ペソ、農作物総生産額の約9.4%であった。1990年から1997年までの間、年間生産量は毎年ほぼ0.3%の増加にとどまったものの、野菜価格の上昇によって年間生産額は毎年10.6%もの増加であった。(表2)

表2 野菜の生産額と農産物総生産額に占めるシェアの推移(1990~1997年)
(単位:百万ペソ、%)

資料:フィリピンにおける野菜の国内研究開発ネットワーク(NRDENV)
原資料:脳表統計局(参考文献(3))

 野菜生産額をさらに品目別に見ると、1997年時点で、なす1,558百万ペソ、たまねぎ1,129百万ペソ、トマト1,038百万ペソ、ニンニク902百万ペソ、キャベツ787百万ペソ、緑豆644百万ペソの順であった。

 野菜の生産量は、1997年に4,483千トンで、農作物生産総量の6.6%を占めた。この年の野菜生産量は1990年の4,462千トンとほとんど変わっていないが、これは1997年の野菜生産が台風の影響を強く受け、生産量が前年よりも10.2%も減少したからにほかならない。最近の生産量の変化をみると、小幅ではあるものの、増加傾向にあり、1990年から1997年までの年間平均増加率は0.8%である。また、なすなどの多くの品目でも増加傾向が認められる。(表3)

表3 野菜の生産量と農産物総生産量に占めるにシェアの推移(1990~1997年)
(単位:千トン、%)

資料:フィリピン農業統計局(参考文献(4)(5))

 野菜の生産面積は、1997年時点で611千ha、農作物総生産面積の4.7%であった。1990年には592千ha、4.5%であったことから、微増傾向にあるといえる。実際、1990年から1997年の野菜生産面積の増加率を算出すると0.9%ほどである。もちろん、品目別にみてもその多くが増加傾向にあるが、特になすの生産面積の増加が目立っている。(表4)

表4 野菜の生産面積と農産物総生産面積に占めるシェアの推移(1990~1997年)
(単位:千ha, %)

資料:フィリピン農業統計局(参考文献(4)(5))
資料:フィリピンにおける野菜の国内研究開発ネットワーク(NRDENV)、
原資料:農業統計局(参考文献(3))

(2)主要品目の動向

 主な品目(アスパラガスなどの17品目)については、生産量などのデータが2002年まで公表されている。ここでは特に4品目を取り上げ、さらに幾分詳しくみることにしたい。(表5、図2)

表5 野菜品目別生産量、生産面積および1ha当たり収穫量

資料:フィリピン農業統計局(参考文献(4)(5))

 まず、なすは主要品目の中で増加傾向が最も明白で、その生産量は1990年の113千トンと2002年の180千トンとで比較すると1.6倍も増加した。同じ年の比較で生産面積は1.27倍、1ha当たり収穫量は1.25倍であった。主な産地はパンガシナン州、イサベラ州、ケーゾン州である。

 キャベツはなすとは逆に減少が著しい。生産量は1990年が117千トン(1991年がこれまでで最も多く、171千トンであった)、これに対し2002年が91千トンで、22%の減少、生産面積も1990年の8.6千haから2002年の7.8千haへ、9%の減少、さらに1ha当たり収穫量も13.6トンから11.7トンへ、14%の減少であった。主な産地はベンゲット州である。

 トマトはなすともキャベツとも異なって、横這い傾向が強いが、10年以上の期間でみると減少傾向にある。1990年と2002年とを比較すると、生産量は184千トンから149千トンへ、19%の減少、生産面積は20.0千haから16.7haへ、16%の減少、さらに1ha当たり収穫量は9.2トンから8.9トンへ、3%の減少であった。また、トマトの主要産地はイロコスノノルテ州、パンガシナン州、ブキドノン州である。

 じゃがいもは野菜生産の中での重要度が上記の3品目に比べると少し低いものの、生産量は増加傾向にある。1990年の58.3千トンに対し、2002年が67.5千トンで、16%の増加であり、生産面積も4.2千haから5.4千haへ、29%の増加であった。ただし、1ha当たり収穫量は13.8トンから12.6トンへ、9%減少した。なお、じゃがいもの主要産地はベンゲット州、ダバオ州、ブーキッドノン州である。

図2 野菜品目別生産量の推移
(単位:千t)

資料:フィリピン農業統計局(参考文献(4)(5))

3.野菜貿易の動向

(1)輸出入の全体的動向

 フィリピンが輸出する野菜は、1996年に総額で3,292万米ドル(FOB)にのぼったが、その後は減少傾向で推移し、1999年(2,583万米ドル)または2001年(2,550万米ドル)を底として再び増加傾向に転じ、2003年に3,262万米ドルにまで回復した。輸出野菜には生鮮品と加工品とがあるが、生鮮品が80%以上を占めている。(表6)

表6 野菜の輸出入額の推移(1996から2003年)

資 料:貿易省Bureau of Export Trade Promotionウェブサイト(参考文献(8))
原資料:National Statistics Office (NSO)

 この野菜輸出の担い手はこれまで小作農が中心であったが、近年、企業、特に多国籍企業が重要度を高めつつある(参考文献(6))。その代表例がDF社であるが、同社は野菜、花および熱帯果物の生産・輸出のための会社を設立し、1987年にアスパラガスの栽培実験を始め、1990年からは商業生産を行っている(参考文献(7))。

 一方、フィリピンの野菜輸入総額は1996年が8,239万米ドル(CIF)で、年々の変動が大きいものの、どちらかというと減少傾向で推移し、2003年には7,324万米ドルとなった。ただし、減少傾向にあるのは加工野菜で、生鮮野菜は2003年で814万米ドルと少ないものの、増加傾向にあるといえる。

 ちなみに、野菜の輸出額と輸入額を比較すると、輸入額の方が輸出額よりも2倍から3倍と大きいが、この傾向は少なくとも7年間以上も続いている。(図3)

図3 野菜貿易額の推移
(単位:千t)

資 料:貿易省のBureau of Export Trade Promotionウェブサイト(参考文献(8))
原資料:National Statistics Office (NSO)
注)輸入額はCIFで、輸出額はFOBで算出した。

(2)輸出主要品目の動向

 品目別輸出量が明らかな野菜のうちニンニク、アスパラガス、たまねぎ、およびトマトの主要4品目について、1996年から2003年までの動向をより詳しくみることにしたい。(図4)。

図4 野菜主要品目の輸出量の推移
(単位:千t)

資 料:貿易省Bureau of Export Trade Promotionウェブサイト(参考文献(8))
原資料:National Statistics Office (NSO)

 ニンニクは生鮮、乾燥およびパウダーの形態で輸出されている。1996年の輸出量は3形態の合計で267トン、輸出額は約21万米ドルであったが、2003年には4,632トン(17倍)、271万米ドル(13倍)強に増加した。この2003年の輸出量・輸出額のうち、生鮮ニンニク(In Quota)は4,594トン(1996年の18倍)、265万米ドル(同14倍)を占めた。2003年の生鮮物輸出量のうち4282トン、93%がカナダ向けであった。他の輸出先相手国は台湾、南アフリカ、インドなどである(表7)。

表7 野菜主要品目別輸出量と主要輸出先相手国(2003年)
(単位:トン、万米ドル、米ドル/kg)

資 料:貿易省Bureau of Export Trade Promotionウェブサイト(参考文献(8))
原資料:National Statistics Office (NSO)

 アスパラガスは輸出量のほとんどが生鮮物である。1990年代中ごろの輸出量が4,000トンを超えるほど多かったことから、当時に比べると最近は幾分か減少したといえる。しかし、輸出量は比較的安定した状況にある。2003年の輸出量は3,646トン(このうち加工品は2トン)、輸出額は788万米ドル(FOB)で、野菜輸出総額のほぼ25%を占めた。フィリピンにおいてアスパラガス、特に生鮮アスパラガスは重要な輸出野菜の一つといえる。主な輸出先相手国は日本で、2003年の生鮮物輸出量3,644トンのうち3,501トン、96%が日本向けであった。他の輸出先相手国は韓国や中国などである(表7)。

 たまねぎは輸出量の多い品目であるが、年による変動が大きい。1996年の輸出量は7,307トンで、最大の輸出品目であったが、1999年には2,084トン、2002年にはたったの350トンにも達しなかった。2003年のたまねぎ総輸出量2,920トン(FOB 価格で93万米ドル)のうち2,893トン、99%が生鮮たまねぎ(In Quota)だった。生鮮たまねぎの輸出先相手国の第1位は韓国で、1,745トンが韓国向けであった。なお、日本向けは870トンで、韓国に次ぐ第2位であったが、輸出額で見ると、日本向けが40万米ドルで第1位を占めた。

 最後に、トマトは生鮮からソースまで様々な形態で輸出されているが、中心はトマトケチャップで、7年間に平均輸出量の75%を占めている。国内供給が不足しているため輸出量は決して多くはないが、トマト輸出総量は1996年の70トン(CIF価格で8万米ドル)から2003年に256トン(CIF価格で17万米ドル)と、7年ほどの間に3.7倍に増加した。トマトケチャップの場合には、1996年に37トンから2003年に210トンと5.7倍に増えた。輸出先相手国は20カ国にのぼるが、台湾向けが最も多く、2003年に141トンが台湾に輸出された。次いで中国(35トン)、日本(7トン)が主な輸出先である。

(3)輸入主要品目の動向

 フィリピンの野菜輸入高は、既述のように輸入高の2~3倍にのぼるほど多いが、その主な輸入品目はじゃがいも、トマト、たまねぎ、ニンニク、カリフラワー・ブロッコリー、レタスといったところである。それらの品目の動向を幾分か詳しくみることにしたい。(図5)

図5 野菜主要品目の輸入量の推移

資 料:貿易省Bureau of Export Trade Promotionウェブサイト(参考文献(8))
原資料:National Statistics Office (NSO)

 じゃがいもは先に記したように国内でも生産が行われているが、品質の点で国際的な基準より劣り、量も国内需要に対応できていない。そのため、じゃがいもの輸入量は年々増加する傾向にある(参考文献(6))。1996年の輸入量は約24,975トン(CIF価格で2501万米ドル)であったが、2003年には47,036トン(同2650万米ドル)と1.9倍に増加した。輸入の際の製品形態は多様で、2003年には加工冷凍品(29,316トン)、じゃがいもでん粉(6,153トン)、生鮮品(2,144トン)などであった。また、輸入先相手国も多様で2003年には20カ国を超えたが、加工冷凍じゃがいもの場合、米国(2003年8,928トン)、ニュージーランド(同7,394トン)、カナダ(同5,968トン)が中心であり、じゃがいもでん粉の場合はドイツ(同2,755トン)、オランダ(同2,238トン)、フランス(同703トン)などが中心であった(表8)。

 トマトはフィリピン料理において様々な形で利用されることから、大きな国内需要が存在する。このため、国内生産量が多い品目であるにもかかわらず、不足量も多く、それゆえ輸入量も多い(参考文献(6))。最近では年間輸入量が15,000トンから20,000トンの間で推移しているほどである。製品形態(生鮮トマト、トマトピューレ、トマトペースト等)をみると比較的多様であるが、そのうち最大の輸入量はトマトペーストである。2003年にはトマトペーストがトマト輸入量全体の85%を占めた。その主な輸入先相手国は中国(2003年6,620トン)と米国(同5,368トン)である。

 たまねぎは輸出量も多かったが、輸入量も多い。生鮮物が中心であるが、乾燥物などの加工物も少なくない。特に国内産が不作の年には輸入量が多く、2001年には27,150トンに達した。主な輸入先相手国は中国である。

 ニンニクも年によって輸入量が異なるが、ここ4年ほどは増加傾向にある。2003年には21,219トンに達し、これまでで最大の輸入量を記録した。そのうちの18,785トンが生鮮ニンニク(In Quota)である。輸入量のほとんどは中国からの輸入で、輸入量全体に占める中国産のシェアは、生鮮物だけに限れば2003年では98%を占めた。

 カリフラワー・ブロックリーおよびレタスは、外食産業で人気があるため、少量ではあるが、継続した輸入が行われている。輸入先相手国としてはオーストラリアが大きな位置を占めている。例えば2003年の場合、生鮮カリフラワー・ブロッコリーの全輸入量のうち91%はオーストラリアからの輸入であり、生鮮ヘッドレタスについても全輸入量の99%はオーストラリアからの輸入である。

表8 野菜主要品目別輸入量と輸入相手先国(2003年)
(単位:トン、CIF米万ドル、米ドル/kg)

資 料:貿易省Bureau of Export Trade Promotionウェブサイト(参考文献(8))
原資料:National Statistics Office (NSO)

4.野菜消費の動向

 食料栄養研究所(FNRI)の調査結果によると、野菜の1人当たりの年間消費量は、1978年の53kgから1993年に39kgへと、15年間に30%近くも減少した(表9)。しかも、1993年の野菜消費量は政府が示している推奨消費量に比べても30kgも不足しているような状況である。

 こうしたことの原因はいくつか考えられるが、その一つは価格が1988年から10年の間に2倍から3倍に上昇していることである(参考文献(9))。というのは、人口が急増しているにもかかわらず、野菜の生産量はほとんど増加していないし(表3参照)、それどころか時には台風や気候の影響を受けて供給量が急減するからである。

 もうひとつの原因は、人口増加の著しい都市部を中心とする食生活の変化である。都市部では外食店舗が年々増加し、また現在ではファーストフードの利用が一種の流行になっているほどである。このため、どうしても野菜の摂取機会が減少する傾向が強まっているのである。

 しかし、近年、一方において健康意識の強い消費者が多くなるとともに、食の安全性や環境問題に関心を持つ人々が増えている。このため、健康に良いといわれる野菜の消費量を増やそうと宣伝するNGOなどが出現すると同時に、環境問題の解決に寄与し、かつ安全性の高い食料ということで、野菜を含む有機農産物に注目する人々や企業(ホテルやレストランなど)が増えつつある。

表9 食品種類別1人当たり年間消費量の変化(1978年、1982年、1987年、1993年)

資料:DOST-FNRI『Philippine Nutrition: Facts & Figures』(参考文献(10))

5.有機農業の出現と動向

 1980年代以降、緑の革命による農業改革の中で、環境的・社会的な問題点を意識した人々(NGOを含む)は、「代替農業」を促進してきた。その「代替農業」の一つとして、米と野菜を中心に広がってきたのが有機農業である。

 これまで、たくさんの農業者、研究者、NGOなどが参加し、有機農業の発展のために様々なネットワークが形成され、また団体が設立され、活動や会議も積極的に行われてきた。その結果、有機農業の理念と実践を守りながら、生産者や消費者に有機農業・農産物を広めるために、国内認証制度を作成することになり、フィリピン有機農業基準の案が1996年にでき、スイスの有機農業機関のサポートを受けて政府・研究者・農業者などが協議を重ねた結果、2001年にフィリピンの認証基準が正式に発表され、同時にフィリピンの有機認証機関(OCCP)が設立された。そして、昨年、フィリピンの農林水産省は有機農産物の安全性および公正さを認証する企業を認可する行政命令を下した。有機農業の推進にとって画期的な出来事であった。

 FAOの報告書によれば、フィリピンにおける有機農産物のマーケットサイズは、国際貿易も含めて約6百万米ドルで、2010年までには10~15%の成長率によっておおよそ16~24百万米ドルに拡大するとのことである(参考文献(11))。現在、有機農産物の国内マーケットは健康及び環境に関心を持っている都市部の人々(外国人を含む)に限られているが、有機農産物関係者は近い将来、有機農産物の需要が供給を追い越すだろうと期待を語っていた。

 Abunyawanのレポート(参考文献(12))によれば、2000年には、5つの州で696人の農業者が71haの農地に有機農産物を栽培し、1週間の平均収穫量が約7.7トンであった。主な産地はベンゲット州とカビテ州であった。有機農産物のうち、葉菜類、特にレタスは人気があり、スーパーや高級ホテルおよびレストランで扱われている。しかし最近は、一般消費者を客層とするマーケット(ウィークエンド市場、クリニックを含む)での供給が増え、有機野菜の種類も増加傾向にある。

 しかしながら、現在、有機農業を行っているのはその多くが小規模農家で、収穫量にも限りがあり、またレベルの高い認証制度を受ける余裕もない。そのため、マーケットでの取引は認証制度に基づくものよりも、お互いの信頼関係に基づくものが多い。したがって、フィリピンにおける今後の有機農業の発展のためには、こうした認証制度にかかわる問題や、有機農業のための生産技術の開発など、まだまだ少なからぬ課題が存在しているといえる。

参考文献(含ウェブサイト)

(1) National Statistical Coordination Board (NSCB).2002. Philippine Statistical Yearbook. Metro Manila.

(2) National Statistics Office. 2000. Census of Population and Housing. Metro Manila.

(3) The National RDE Network for Vegetables. 2002. Vegetables: The National Integrated Research, Development and Extension Agenda and Program for Vegetables. Bureau of Agricultural Research. Quezon City.

(4) Bureau of Agricultural Statistics File (フィリピンの農業統計局の資料)

(5) Bureau of Agricultural Statistics (BAS). http://www.bas.gov.ph

(6) Lantican, F. 1998. Vegetables: Promising Opportunities, pp 50-54. In R. Dy (ed.). The Food and Agriculture Centennial Book. University of Asia and the Pacific. Manila.

(7) Jensen, Peter. 1996. Commercial production of asparagus in the Philippines. In M. Nichols and D. Swain (eds). Acta Horticulturae. Vol. 415:25-28.

(8) Bureau of Export Trade Promotion (BETP). http://tradelinephil.dti.gov.ph/

(9) Millendez, Ratelieta, Susan Mia and Nellie Castro. Trends in Prices for Selected Vegetables in the Philippines 1988-1998. Bureau of Agricultural Statistics. Quezon City.

(10) Food and Nutrition Research Institute (FNRI). Philippine Nutrition: Facts & Figures. Department of Science and Technology. Metro Manila.(http://www.fnri.dost.gov.ph/facts/mainpn.html)

(11) Wynen, Els and David Vanzetti. 2002. Certified Organic Agriculture-Situation and Outlook. In N. Scialabba and C. Hattam(eds). Organic Agriculture, Environment and Food Security. Food and Agriculture Organization (FAO). Rome.

(12) Abunyawan, J. 2000. A Report on the Inventory of Existing Organic Producers. Unpublished Paper. Center for International Trade Exhibits Mission(CITEM). Manila.

参考:平成17年1月13日現在1ペソ=1.84円

REPUBLIC OF THE PHILIPPINES


フィリピン:地域区分と県名




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