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韓国における野菜種子産業の動向(その2)

財団法人アジア農業協同組合振興機関 深町 茂


5 品目別野菜種子の生産と輸出入の現状

(1)白菜

 白菜は、通年栽培が可能で多様な作型で生産されている。秋栽培が主な栽培であるが、最近では春栽培と高冷地での夏栽培も多く行われ、種子市場も春栽培と夏栽培用が徐々に拡大されている。特に夏白菜の場合は、産地が韓国の一部地域に限定されて価格も高い。種子価格も45万ウォン/ha程度で、春と秋作(33~35万ウォン/ha)の1.3倍と高く、韓国の種子市場でも大きな割合を占めている(16表)。


 白菜種子の生産量は1989年の237,200リットルに対し1999年には417,337リットルとなり約1.8倍に増加した。そのうち海外採種は61,549リットルで1999年の総生産量の15%を占めている。海外採種は主に気候条件が良く比較的人件費が安いニュージーランド、イタリア、中国などで行っている。

 白菜種子の輸出入をみると、輸入量は年によって一定しないが、輸出量は1995年以後一定の水準を維持している。


(2)ダイコン

 ダイコンは、白菜とともにキムチの主原料で韓国にとって大切な野菜である。昔は主に生育適期の秋に栽培したが、最近では春栽培や高冷地での夏栽培面積が増加し、種子市場も春栽培と夏栽培へと次第に拡大されてきている。特に春ダイコンはダイコン栽培面積の55%、種子代でも66%を占め、ダイコン種子市場のなかで重要な位置を占めている。


 ダイコン種子の生産量は1989年の1,001,333リットルに対し1999年には1,604,362リットルと1.6倍に増えた。そのうち海外採種は1989年には皆無であったが、1999年には1,080,166リットルで総生産量の67%を占め、急激に増えている。ダイコンの海外採種は気候条件がよく、比較的人件費が安いイタリア、ニュージーランド、オーストラリア、中国などで行っている。

 ダイコン種子の輸出入を見ると、輸入量は年によって一定しないが輸出量は1990年代初めに増加し、1993年から1995年においては減少したが、1996年からは再び増加している。輸入量は1992年に急激に増加したが、1995年以後は減少傾向となっている。


(3)トウガラシ

 トウガラシ種子の輸出金額は、1980年代以後増加傾向となっているが、1995年から急激に増加しており、1999年には3,868千ドルとなっている。

 1999年野菜種子の輸出総額17,335千ドルのうち、トウガラシ種子が3,868千ドルで種子輸出額全体の23%を占め、主要な輸出対象国はインド、インドネシア、中国、タイ、米国である。

 一方、トウガラシ種子の輸入はすべてがパプリカを含むピーマン種子で、輸入額は、1991年の77千ドルから1994年の262千ドルと増加傾向であったが、1995年からは減少傾向となり1998年には57千ドルとなった。しかし、1999年には再び121千ドルと1998年の2.1倍に増加している。これは近年、対日輸出用パプリカ栽培が急増したことが原因と推定される。

 1999年の野菜種子輸入総額12,896千ドルのうち、トウガラシ種子は121千ドルで全体の0.9%であり、日本、オランダから輸入されるピーマンの種子である。

 トウガラシ種子の採種は、国内人件費の上昇による生産費の増加により海外採種の比率が増える状況にある。海外採種は、1992~1993年には20%前後であったが1994年度には採種量全体の70%へと急激に増加し1999年には90.2%になった。


(4)スイカ

 スイカは近年、施設栽培面積の比率が増加し、現在は露地栽培より多く栽培されている。種子価格も露地栽培の98万ウォン/haに比べて1.4倍の136万ウォン/haである。スイカの種子市場規模は年1期作で露地栽培が約140億ウォン、施設栽培が260億ウォンと施設栽培市場が約2倍となっている。


 スイカ種子の生産量は、1991年の26,893リットルに対し1999年は52,095リットルで約2倍に増加している。1991年以前は国内だけで採種が行われていたが、1998年には海外採種が92,757リットルで総生産量の96%、1999年には36,960リットルと総生産量の71%になっている。海外採種は気候条件が良く人件費が安い中国、タイ、インドネシアなどで行われている。

 スイカ種子の輸出は、1990年半ば以後増加しており、1999年には326,318ドルに達している。一方、輸入実績は徐々に減少しており、輸出入の実績を比較しても、1995年以前は輸入額が輸出額の1.5倍程度であったが、輸出が増加したことにより1999年には輸出額が輸入額の14倍となっている。


(5)ウリ

 ウリの種子価格は露地栽培では43万ウォン/haであるが、施設栽培は露地栽培種子に比べ1.8倍と高く、76万ウォン/ha程度である。ウリ種子の市場規模は年1期作基準で露地栽培は約5億ウォン、施設栽培は70億ウォンで、施設栽培用品種の規模が大きい。


 ウリ種子の生産量は、1994年に32,550リットルの最高値に達した後、増減を繰り返し、1999年には8,548リットルとなっている。1991年以前は国内だけで採種が行われていたが、1992年から海外採種が始まり、1999年には総生産量の46%は中国、タイ、インドネシアなどで採種された。

(6)トマト

 トマト種子は1990年代初めには国内採種が主であったが、1990年代半ばから海外採種が急激に増加し、1999年には89.8%が海外で採種され、採種費には179,981ドルが支払われている。これは、国内の人件費上昇と梅雨時季の採種条件が主な原因である。



 1999年をみると、トマト種子の輸出額は43,005ドルに過ぎないが、輸入額は2,137,150ドルである。野菜種子輸入総額24,402千ドルのうちトマト種子は8.8%を占めており、輸入した種子は完熟型品種とミニトマト品種となっている。


(7)キュウリ

 キュウリ種子の生産をみると、1999年の生産量は1991年の3分の1水準の9,350リットルと大幅に減少している。一方、採種地域は、1991年には100%国内だったのが次第に海外採種の割合が大きくなり、現在は全体の60%が海外採種となっている。


(8)カボチャ

 カボチャ種子の生産状況をみると、1992年から始まった海外採種の比率が次第に増加し、1999年には50%以上が海外で採種されている。


(9)タマネギ

タマネギ種子は91年までは国内採種であったが、97年から海外採種量が増えている。これは韓国タマネギの開花期が梅雨時季と一致し、採種条件が悪いからである。99年には国内採種量が35,388リットルであったが、海外採種は93,090リットルで海外採種が3倍になっている。


 輸出入の動向をみると、輸出量に比べて輸入量が急激に増えている。タマネギの栽培面積の増加で種子の需要量が増加したのに伴って輸入量が増加したが、現在は、生産者が韓国種子会社の育種した品種よりも外国種子会社、特に日本の品種が優秀であると考え、済州道や南部地域で外国種子である極早生種タマネギの需要が増えてきているのが原因である。95年の輸入量は19,403リットルだったが、99年には56,742リットルに増加した。


(10)ネギ

 ネギの種子生産は、1993年までは国内採種が大部分であったが、1994年から海外採種量が増えている。1999年には国内採種量の17,775リットルに対し海外採種は288,247リットルで海外採種が全体採種量の94%を占めるに至った。原因は国内が梅雨時季にあたり、採種条件がよくないためである。


 ネギ種子は1994年に78,982リットル、1996年に50,355リットル、1999年には46,328リットル輸入された。ネギは前年の生産量と価格によって栽培面積の変動が比較的大きい品目で、主に小規模農家で栽培されているため、年々の輸入量に差がある。


6 野菜種子会社の現状

 現在、韓国で種子業に携わり韓国種子協会に登録されている会社は56社である。56社が育種対象として申告した作物を分類してみると、16社が野菜全般を対象とし、17社は2~3科に属する野菜を対象にし、残り17社は単に1科だけの作物を対象に育種している。

 野菜種子会社56を従業員数別に見ると、300名以上の従業員を雇用している会社は1社だけで、200~300人が2社、100~200人が2社で、残りの会社は100人以下である。従業員10人未満の会社も28社ある。

 各種子会社は、新しい品種を育成すると政府機関に登録する。1998年1月現在で2,432品種が登録されている。そのうち、韓国会社によって育成されたものが2,031品種、外国の会社が育成して韓国に輸入を許可された品種が401であった。固定種の品種数と登録数が著しく異なる理由は、固定種でも特定の会社が育種したものは、一定期間独占権が許可されているものの、一つの固定種がいろいろな会社に販売され、各々が登録されていることによる。

 国内種の場合、登録総数2,031品種のうち75%が1代雑種である。レタスを除いたほとんどの主要野菜は1代雑種を利用しており、この比率は外国のどの国よりも高い水準である。

 登録数を作物別にみると、ダイコンが457でもっとも多く、次に白菜、トウガラシ、キュウリ、スイカ、レタスとなっている。





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