過去十数年の11・12月の野菜の出回りを
概括すると、例外的に冬が早く来た年もあったが、全体としては、暖秋・暖冬で生育が前進して採り遅れとなりがちであった。令和7年については、11月初めまで台風が来ず、冬が早く来た。九州の一部では8月の豪雨で被害が出るなど、全国的に定植が後ずれしたものの大きく乱れなかった。最も懸念されたのは、秋冬物の
播種や定植が、夏場の高温下で実施されたことである。また、10月の関東は多雨ではなかったものの、晴れが続かなかった。この時期の直射日光が強すぎたという意見も聞かれたが、この日照が、定植遅れをカバーしてくれた。北海道産のばれいしょとたまねぎは、不作が確定した。関東のかんしょは10月初旬まで干ばつが続いたため細長い形状であるが、食味は良好である。西南暖地のハウス物は定植などが遅れたが、年末には間に合うと予想され、大型の野菜はゆっくり増量し12月も価格の崩れはなく、しっかりした展開が予想される。野菜の生産供給が脆弱化している中にあって、7年の秋は気象などを含め強運の年であったと言える。

だいこんは、千葉産は、現時点(11月初旬)で出荷を開始しており、順調で11月5日過ぎからピークと予想される。ほぼ平年並みのペースで、12月も採り遅れになるような状況になく、クリスマス頃が最大のピークとなり、年明けにかけてやや落ち着いた出荷が見込まれる。中心サイズはL、2Lと平年並みである。神奈川産は、9月5日にようやく降雨があり、11月の段階では生育にやや遅れが見られるが、その後の定植物は順調に生育したため、12月に入り回復が見込まれる。三浦大根は12月24~26日の販売計画であるが、作付面積は若干減少している。徳島産は、現時点でやや遅れ気味で、小ぶりに仕上がっており、12月下旬から1月上・中旬がピークと予想される。
にんじんは、千葉産は、例年より若干遅く11月上旬から出荷が始まった。当面のピークは11月下旬から12月上旬で、その後はやや落ち着き、年明けは2月まで横ばいで推移すると見込まれる。品種は「ベーター441」で、サイズは11月まではM中心となり、その後はLも増えてくると予想される。埼玉産は、高温下での播種となったが、ゲリラ豪雨で流されるなどした前年よりは順調である。ピークは11月10日から年明け1月も続き、サイズは現時点ではM中心であるが、ピーク時はL中心のMと予想される。香川産の金時人参は、10月29日から荷受けを開始し、東京市場では例年と同じ11月1日からの販売となると見込まれる。35度以上の高温下での播種となったが、台風の襲来がなく、かん水の徹底により順調に生育し、出荷のピークは11月中旬と12月後半の2回あると見込まれる。当面Lサイズが中心であるが、今後さらに肥大が進むと予想している。作付けは前年の103%と増えている。

キャベツは、千葉産の生育は天候に恵まれ順調で、11月に入りピークとなり、12月はやや減少しながら推移すると予想される。サイズは、L中心で、品種は春タイプの中間品種である。神奈川産の生育は定植後の天候不順が影響し、現時点で遅れており12月に入っても少なめと予想され、量的に平年に追いついてくるのは、年明け1月からと見込まれる。愛知産は、猛暑と干ばつの影響により現時点の生育は遅れており、やや小ぶりの仕上がりである。11月中旬からは回復してきて、12月には平年並みの出荷が予想される。中心サイズは1箱8玉で、品種は寒玉系である。来年の4月が最大のピークと見込まれる。
はくさいは、茨城産は、定植が遅れたため、出荷の開始が例年より遅れた。現時点で、急激に寒くなったことにより玉伸びがやや停滞し、小ぶりではあるものの、それでもサイズは特別小さいわけでなく、4玉や6玉(L~2L)中心の仕上がりで平年作である。
ほうれんそうは、埼玉産は、現時点では、暑い時期の播種作業が遅れて、例年よりやや少なめの出荷量となっているが、生育そのものは順調で、12月20日頃に例年並みに追いつき、年明けもそのままピークが続くと予想される。
ねぎは、千葉産の秋冬物は12月に入り本格化してくるが、農家の出荷予約をまとめると、夏の猛暑の影響で太りが悪いため、12月は前年に届かない。それでも欠株がある状況ではなく、現時点ではかなり回復し、遅くとも年明けには前年並みまで追いついてくると予想される。
茨城産は、8月は確かに暑かったが、雨が少なかったことでとろけの発生がなく特別なダメージはなく、令和5年や6年よりも作柄は良好である。12月の出荷量は平年並みで、サイズはL中心と見込まれる。群馬産の「下仁田ねぎ」は暑さの影響により病気が助長されるなど、生育はやや不良で、現時点の出荷量は例年の半分程度と少なくなっている。12月のピーク時には前年並みまで回復するが、年明けは急減すると予想される。
レタスは、兵庫産は若干遅れて10月末から出荷開始し、11月10日過ぎから12月末までピークとなり、年明け1月に入り若干減少してくることが予想される。作柄は平年並みである。静岡産は、定植を遅らせたため例年より7日程度遅い10月29日から出荷が始まった。12月にはピークを迎え、量的にも平年並みと予想される。中心サイズは19玉と15玉が半々となり、通常の年のサイズに仕上がっている。長崎産は、やや遅い感があるものの、それでも平年並みの10月13日から始まった。生育は順調で11月に入って増え始め、12月としては前年並みと見込まれる。

きゅうりは、宮崎産は例年通りで、生育順調である。この促成作の12月は、11月よりも増えてピークになり、出荷は1月いっぱいまでと予想されるが、強い寒波があれば一時的に出荷が減少することも予想される。高知産は、生育については平年並みの状況であるが、定植を後ろにずらす農家があったため、当初の出荷は少なかったが、11月に入りそろってきた。当面12月上旬がピークと見込まれる。埼玉産の12月も引き続き抑制物となるが、11月に入り夜温の低い日が続き、前年を下回る出荷量となっている。12月も現状より増えず、クリスマス頃に切り上がると見込まれる。年明け1月の出荷物はなく、2月から促成物が始まる。
なすは、高知産は、夏季の高温はあったものの、定植については10月の夜温が高かった前年よりも影響がなく、生育は順調で年内の出荷量は前年を上回り、11月末頃からピークになると予想される。福岡産は、天候に恵まれ、さらに気温高で推移したため、実の成長が早まっており、例年よりも4~5日前進している。11月初旬の段階では出荷量は減っているが、年内のピークは11月から12月上旬になると予想される。
トマトは、熊本産は、猛暑の影響に加え8月の豪雨で冠水した
圃場が多く、定植をやり直すなどスタートが2週間程度遅れた。現時点では花芽の量も問題なく、11月下旬には前年並みに追いつき、12月は少なかった前年並みの出荷量となり、年明け1月はさらに増えると予想される。愛知産は越冬物となり、出荷開始時期には順調であったが、猛暑の影響により11月初め頃の出荷物がもたついている。中旬には平年並みに回復し、12月は当面のピークとなり、年明けには寒さからやや落ち着いた展開になると予想される。品種は「桃太郎ヨーク」で、サイズはM中心となると見込まれる。福岡産は、猛暑の影響で例年よりやや遅れて11月15日頃からのスタートとなるが、ピークは12月末頃から1月にかけてと予想される。一段目は若干着果不良が見られるが、それ以降は問題なく順調である。品種は「桃太郎ホープ」で、中心サイズはLである。
ミニトマトは、熊本産は9月下旬から始まり、年内出荷分は作付けの15%程度で、12月出荷分については前年よりも順調に生育している。最大のピークは、年が明けて4~5月となると予想される。品種は「
千果」、「cf
小鈴」である。千葉産は、定植は遅れたがその後の生育は順調で、12月は平年並みの出荷が予想される。品種は「cf小鈴」が中心である。
ピーマンは、茨城産の秋ピーマンは12月中頃で切り上がり、12月はハウス物となり年明けまで続く。寒い時期のため、特別なピークは無く、平準の出荷ペースが予想される。宮崎産は、現時点では遅れずに出荷を開始した。今後の天候次第であるが、花が咲いて25日後に収穫でき、現在は樹の状態も問題なく、安定して収穫されている。

ばれいしょは、長崎産は、11月下旬から受け入れ開始し、12月初め頃からの出荷が開始し、年明け1月には終了すると見込まれる。植え付け時期の高温により、当初の生育はばらつきがあったが、その後は適度の降雨などにより回復し、ここ2~3年の中では比較的順調に仕上がった。サイズは2Lサイズ寄りのLで、品種は「ニシユタカ」である。北海道産(道央)の産地では現時点で「男爵」の収穫作業をほぼ終えているが、作付けの減少もあり前年の80%程度の収量である。年明け3月まで計画的に販売していく。サイズはL中心と小玉傾向である。北海道産(道東)の「メークイン」の収穫量は、小ぶりに仕上がったことが影響し前年の70%となった。12月としては前年の75%程度で、ほぼ平準ペースで出荷が続き、例年より1カ月早く、1月いっぱいで出荷を終了すると見込まれる。玉着きが良かった割には、サイズはM以上の割合が低い。
たまねぎは、北海道産(道北)は、現時点で収穫作業を終えているが、年内の出荷は例年通りクリスマス前頃で終える。今年は不作で、年明け5月まで計画的に販売していく。サイズはLが中心である。北海道産(道央)は、収穫作業をほぼ終えたが、高温・干ばつの影響により前年の60%に近い水準である。年明け2月まで計画的に販売していくが、サイズはM中心とやや小ぶりの物が多くなっている。
さといもは、新潟産の「五泉のさといも」は例年と同様に出荷が始まり、現時点で収穫作業のピークを迎えている。4月の定植時期の天候が悪く、定植が順調に進まなかったため、9月の早出し物は少なかった。その後の雨不足もあり、生育は半月から20日程度の遅れになっている。今後降霜となれば生育は止まり、小玉に仕上がると予想される。サイズは、3Lや2Lが少なく、LとMが中心になろうが、品質そのものは問題ない。出荷のピークは11月中旬と12月後半の2回と予想されるが、収量は平年を下回ると見込まれる。埼玉産の令和7年産は平年並みである。全般に小ぶりで、サイズはLが中心である。高温干ばつの影響は特別ないが、やや長めの形状である。12月の出荷は前年並みが予想される。愛媛産は、7年産は干ばつにより、平野の水持ちの良い畑の状況は良いが、かん水が十分でなかった畑は作柄が悪かった。総じて70%の農家が前年より良く、30%の農家が悪かったという状況である。12月は出荷のピークで不作であった前年を上回るが、1月にはかなり減ってくると予想される。品種は、地域特産の「女早生」で、サイズはL中心である。
千葉産の
八頭は、十数戸の農家が栽培しているが、12月14日から一週間連日の販売となる。

ごぼうは、熊本産は、前作(牛のホールクロップサイレージ用の稲)の収穫が遅れたため、播種作業の開始が遅れた。そのため、出荷は例年より一週間遅れの12月中旬からの開始が見込まれる。さらに、夏の猛暑や秋の冷え込みが早まったことにより昨年より生育が遅れ、年内の出荷量は少なくなる可能性がある。鹿児島産の出荷は例年通り12月に入ってからで、ピークは年明け1~2月と予想される。2本と3本のパック(200グラム)で、すべて洗いで出荷される。播種時期の8~9月の猛暑により、一部で発芽不良が発生したが、出荷には問題ないと見込まれる。
れんこんは、茨城産は、12月は前年比でやや少なめであるが、平年並みと予想される。12月下旬にピークがあり、年明けについては60~70%まで減少することが見込まれる。サイズの中心はMである。
ブロッコリーは、愛知産は12月に入り増え、天候に恵まれ、12月としては前年を上回り、1~2月が最大のピークとなることが見込まれる。サイズはL中心で、大箱の20玉入りである。香川産は、例年通り10月下旬から出荷を開始したが、ピークは12月に入ってからと予想され、天気に問題がなければ、平年作が予想される。熊本産は、周年で作付けが増えている。年内物については、8月11日の水害により一部まき直しをしたため、春ブロッコリーとして、後ろにずらすことにした。一回目のピークは11月下旬に来て、年末に向けて減っていくと予想される。今年の厳冬の予報を踏まえて栽培しているが、ブロッコリーは栽培環境が終始良くないと、良い物に仕上がらない。
カリフラワーは、福岡産は、例年10月末から出荷が始まるが、定植時期の高温に加え、盆前の大雨によるまき直しも行われたため、今年は2週間遅れて11月中旬から開始した。このため、ピークは年明け1月中旬からとなる。生育は適度の降雨で持ち直してきているが、12月としては平年の70%程度の出荷量になると見込まれる。
かぼちゃは、北海道産は12月の出荷はあるものの、傷みの発生が予想され、全体としては出荷を早めている。12月の出荷としては、前年を下回ると予想される。鹿児島産は、抑制かぼちゃとなるが、交配時期の9月下旬から10月上旬は降雨が続き、生育が順調ではなかった。それでも12月は、台風で不作となった前年を上回る出荷が予想され、販売は年内で終わる。品種は「えびす」がほとんどである。輸入のメキシコ産は、現時点の輸入計画は前年並みと予想されるが、作柄次第では計画変更もあり得る。産地はメキシコのソノラ州エルモシーヨで、標高300メートル地帯の圃場である。日本の品種であるが、例年通り5~6玉サイズが中心である。このメキシコ産については12月~翌1月、さらに5~6月の2回ピークがある。
かんしょは、徳島産の年末に向けた出荷は12月上・中旬がピークで、25日売りで終わる出荷体制である。令和7年産については雨が少ないことでむしろ肥大が進み、大ぶりで品質も良好の豊作傾向であった。中心サイズはLで、次に2Lとなる。茨城産は7年産の特徴として、10月初めまで干ばつ傾向であった影響で長細く仕上がっている。現時点でも収穫作業は続いており、直近の雨の影響などにより11月いっぱいかかる見込みである。中心サイズはLで、平年作が見込まれる。品種は「
紅優甘」が中心で、一部「ベニアズマ」である。
ながいもは、青森産は11月9日に収穫作業が始まり、作業は積雪する12月中旬頃まで続く見込みである。その後は、冷蔵貯蔵した物を来年の10月まで販売していく。今年については4~5月に強い干ばつがあったが、6~8月は適度に降雨があったため肥大は良好で、2Lサイズ中心の出荷が予想される。
いちごは、熊本産は「ゆうべに」、「恋みのり」の二本立ての販売である。前年は1番果の花芽が飛ぶといった報告が多かったが、今年は順調である。定植作業も9月末頃に問題なく終了し、量的には前年を上回ると予想される。「ゆうべに」は12月上旬から始まり、1番果のピークはクリスマス前の中旬からと見込まれる。「恋みのり」は早生性はそれほど強くないため、年明けの1月中旬がピークと見込まれる。佐賀産の「いちごさん」は、前年と似た展開となることが予想される。走りの部分は早くから出るが、まとまってくるのは12月中旬過ぎからとなり、当面のピークは1月で、2月にはやや減少し、3月にかけて最大のピークが来ると見込まれる。「いちごさん」は収量性に優れるものの、早生性については特に優れているわけではなく、さらに9月中下旬の花芽の分化時期が猛暑で遅れたことで、理想の時期にピークが来なかった。
くわいは、広島産は11月10日から全国へ出荷が始まるが、東京市場では11日か12日から販売開始と見込まれる。最大のピークは12月上旬で、次に下旬も多い。10月に入っても気温が下がらないため、農家に水の管理をしっかりしてもらう必要がある。現状としては例年並みの出荷で、やや小ぶりに仕上がると予想される。出荷の最終日は12月20日で、東京市場では22日か23日で販売が終了する。
ナバナは、千葉産は播種作業が遅く始まったため、例年より遅い11月5日からの出荷となり、12月としては前年を下回ると予想される。出荷の荷姿は、パックが100グラム、人形巻き(ナバナの束を紙で包む)200グラムの二つのタイプで出荷されると見込まれる。
せりは、宮城産は例年と同様8月27日から出荷開始したが、量的には例年の30%程度と少なかった。9月には増えてきて、10月は稲刈り作業の影響で出荷量の回復が遅れたが、10月末頃には日量200ケースまで回復した。12月には平年並みまで回復し、下旬にピークとなることが見込まれる。
七草は、佐賀産は12月26・27日から出荷が始まり、止市(年末最後の取引日)の日も休日(年末年始)の対応も含め、年明けの4・5日には到着し、初市の初荷に間に合うよう計画されている。7種類の野菜のパック(100グラム弱)で出荷される。今のところ気象の問題はなく、作付けは前年並みの3ヘクタールである。
豆野菜(グリーンピースとスナップえんどう)は、鹿児島産は例年より若干遅れて11月下旬から出荷を開始し、12月は前年並みと予想される。当面は、隔日で出荷される見込みである。
糸みつばは、茨城産は11月20日~12月10日の天候に問題がなければ、12月は平年並みの出荷が予想される。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)