11月は、夏秋物から秋冬物への切り替わり時期を迎える。関東では、今年の秋雨は長く続かなかった印象があるが、一方で突発的な豪雨に見舞われ、東京都内で川の氾濫が報道された。各産地に取材すると、9年ぶりに秋の雨量が多かったという情報もあった。現時点(10月初め)では、台風が日本列島をそれたため、ハウス損壊などの被害はなかった。各産地からは、猛暑を避けて、定植や
播種作業を後ろにずらす対策を講じたと聞いている。西南暖地産の各野菜は全般に遅れるが、雨で流れた分の植え替えは完了している。北日本の産地は、切り上がりが早まる方向にあり、北海道のだいこんやねぎなど終盤時期の雨がこれに拍車をかけた。果菜類は、主力産地の猛暑が8月上旬後半から和らぎ、9月後半から盛り返すかと期待されたところ、ピーマンの出荷は9月にピークが来たが、トマトは横ばいで、さらに終盤に向けて気温が下がり過ぎ、農家は着色に苦労した。きゅうりは暑さから出荷の伸びを欠き、9月いっぱいまでとなった。9月下旬時点の長期予報では、11月までは暖秋、12月は厳冬、1月以降は暖冬とされ、寒暖の変化が激しいと予想される。また、北暖西冷の傾向があることなど、農家にとって気の抜けない気象展開が予想される。市場では10月いっぱいは物不足が続き、高値で推移することが見込まれるが、11月には全国的に物が揃い、価格は徐々に落ち着いてくると予想される。

だいこんは、千葉産(東葛)は生育は順調で、例年通り10月中旬から出荷が始まると見込まれる。ピークは11月上旬から中旬となり、引き続き12月まで継続すると予想される。適度な降雨と晴天が続き、サイズはL中心の入荷が予想される。作付けは前年よりも増えている。千葉(海匝)の初出荷は10月5日前後からと見込まれ、10日頃から増量し、23日頃にピークとなり、11月についても順調な入荷が予想される。神奈川産は、出荷の早い農家が10月下旬に開始するが、量はそれほど多くない。高温の影響により発芽不良が見られ、まき直しも行われた。それでも特別大きな影響はなく、今のところ順調で、本格的な出荷は11月後半からと予想している。青森産は、10月10日前後に出荷のピークとなり、20日過ぎにかなり減少し、11月もそのまま継続し、中旬いっぱいで切り上がると見込まれる。全体的に、発芽不良が発生し、生育などが遅れたため、9月まではばらついた収穫が続いたが、10月にはかなり回復した。トータルでは秋だいこんは平年の70%作と予想される。大分産は、播種作業は順調に行われているが、雨が多く、標高の低い
圃場は作業が遅れている。10~12月は、遅れることなく、順調に出荷できると予想している。
にんじんは、北海道産は、現時点で全体の60%程度収穫を終えたところである。8月は不作で収量も少なかったが、9月に入り肥りも順調で、前年と同程度の水準まで回復してきた。サイズはMとLが中心で、それぞれの割合は同程度である。例年と同様、出荷は11月5日までと予想される。千葉産は、例年通り早い農家が10月終わり頃から出荷を開始するが、出荷量が増えてくるのは一回目が11月下旬、二回目が12月中旬、三回目が年明けと見込まれる。全体として遅れており、その点からは収量的にはやや少なくなる可能性もある。品種は「ベーター441」である。青森産は、10月中旬から出荷が開始するが、発芽不良で欠株が多く、半作程度で終盤の回復もないであろう。そのため、出荷のピークはない。切り上がりの時期は見通せないが、例年の11月20日頃より早まる可能性もある。埼玉産の本格的な出荷は11月に入ってからで、最大のピークは12月から翌1月である。台風による豪雨などの被害もなく、生育は順調である。

キャベツは、千葉産は、早い農家が9月26日から出荷を開始したが、量的にまとまり始めるのは10月20日頃からと見込まれる。暑さの影響から、播種のタイミングが例年より遅かったため、増量は10月末から11月5日にかけてと予想される。台風もなく、前年よりも順調な滑り出しである。神奈川産は、早めに播種を始めた農家では、発芽しないなどの問題はあったが、それでも例年と変わらず、11月に入ってからの出荷が見込まれ、当面のピークは12月から1月後半と予想される。作付けは前年並みである。愛知産は、前年より7日早めの、令和5年と同じ10月5日前後から集荷開始となるが、生育は今のところ前進はなく、干ばつが続いているため、かん水作業を続けている。現時点でもまだ水が不足しており、圃場によりばらつきが出ている。10~11月は増えながら推移するものの、例年ほどのボリュームに達するのは12月に入ってからと予想される。茨城産は10月下旬から始まるが、高温の影響によりやや遅いスタートである。例年であれば、定植を盆前後に終えるべきところ、今年は9月初めまでずれ込んだためである。生育は順調で、11月中下旬が出荷のピークとなると予想される。
はくさいは、茨城産は、9月初めの豪雨の後に、定植を始めたことから、この被害はなかったものの、暑さから定植を遅らせたため、7~10日遅れで10月下旬頃から出荷開始が予想され、この間の台風の襲来はなく、順調な始動となる見込みである。11月下旬にピークを迎えるが、当初の物は小ぶりに仕上がる可能性が高い。長野産は、夏の高温の影響により、現時点の出荷量は例年を下回っている。ここ数年は生産のばらつきなどの問題から、平年作という概念が崩れ気味で予想が難しいが、10月下旬にピークが来て、11月はかなり少なくなると予想される。
ほうれんそうは、岩手産はピークの終盤となっており、今後稲刈りに注力するため、いったん出荷の減少が見込まれる。10月中旬には再び増え、11月には一定の水準で減りながら推移すると予想される。現時点(10月初め)では暖かい日が続いていることから、意欲的な農家は一作多めに播種しているため、12月まで収穫・出荷が続くことが見込まれる。栃木産(標高800~1200メートルの準高冷地)は、9月末の段階でもまだ例年の80~90%と出荷量が伸びてこない。10月中旬には回復してほしいが、まだ大きくならない短い状態で収穫・出荷しているため量的な回復が遅れている。出荷は11月いっぱいまでと予想される。栃木産は高温下では発芽不良を起こしやすいため、播種作業は例年よりも7日程度遅らせた。出荷は10月20日前後から始まり、11月上中旬がピークと予想される。埼玉産は、気温高による発芽不良を警戒し、播種を例年より10日程度遅らせたため、本格出荷は10月末頃からで、11月は前年を下回る出荷が予想される。群馬産は、現時点で遅れており、10月中旬から量的にまとまり、11月後半から12月がピークとなる見込みである。
ねぎは、千葉産は、例年は11月上・中旬から増え始めるが、今年は一カ月後ろ倒しとなり12月に入ってからと予想される。年内の出荷物は猛暑の夏越しが厳しく、今年も技術ではどうにもならない状況である。年明けまで出荷が続く秋冬ねぎは、95%程度の作付けであるが、それでも昨年より圃場に残っている。青森産は、出荷のピークは10~11月であるが、10月は稲刈りなどの作業があることから急増はなく、12月中旬まで出荷が続くと見込まれる。作柄は、当初は細めの物が多かったが、現時点は平年並みの太さに回復してきた。茨城産は、10月までは夏ねぎの残量として出荷してきたが、前年および一昨年よりも良好であった。11月から秋冬ねぎの出荷が開始されるが、生育は順調で、前年を上回る出荷が予想される。北海道産は、干ばつに加え、直近の風雨で圃場でダメージを受け、10月の出荷は例年の60~70%と減っている。10月いっぱいでほぼ切り上がり、11月前半まで若干の出荷はあるが、例年より約1カ月前倒しして終了すると予想される。
レタスは、静岡産は、一番早い農家が例年とほぼ同じ10月末頃から出荷を開始すると見込まれるが、今年は早い作型をやめる人もおり、11月としては前年を下回る可能性がある。生育は順調である。兵庫産は例年と同様の10月5日頃から開始し、東京市場への出荷は11月に入ってから開始し、11月の終わり頃から最大のピークとなる見込みである。12月上旬にやや減少し、クリスマス前頃から、再度本格的に増えてくると予想される。茨城産は、猛暑の影響により定植し直したため、10月15~20日頃まで少なめであるが、10月下旬から11月いっぱいは潤沢で例年と同程度の出荷が予想される。

きゅうりは、高知産は現時点で越冬物の出荷が始まっている。猛暑の影響などにより、定植が7日程度遅れたため、最初のピークは10月末頃に来て、11月に入っても引き続き多いと見込まれる。12月に入り例年通り減り、中・下旬に再び盛り返すと予想される。群馬産は、抑制物となるが、9月は暑く、夜温も下がらず生育は緩慢であった。10月に入り生育スピードが戻り、平年並みの数量と予想される。促成物の定植は12月15日頃から始まるため、11月10日過ぎから徐々に切り上がり、出荷は11月いっぱいまでと予想される。今後、暖秋が予想されるため、きゅうりの生育にとっては好都合であるが、抑制物のために急増はないと予想される。
なすは、高知産は、生育は例年通りで推移し、10月下旬のピークを目指して増量している。11月上旬に入り減少し、再び増えるのは正月頃から1月中旬と予想される。10月に入り、夜温も低下して、順調に実がなっており、秋雨や台風、さらに夏の猛暑の被害は報告されていない。福岡産は、定植が一部で豪雨の影響を受けたが、ほぼ順調に終了した。生育も順調で、例年通りに当面の出荷のピークは11月となり、12月にはやや減ってくると予想される。岡山産は、現状では生産者の80%が出揃ってきたところで、出荷のピークは10月20日過ぎから11月10日にかけてと予想される。その後は寒くなり、少なめで出荷が続くが、再び増えるのは2月の終わりから3月初め頃と予想される。今年の秋雨は、短時間に量が多く降り、すぐにやむといった状況であったため、なすの生育に影響はなかった。猛暑対策として、暑い時期をずらして定植したり、寒冷紗の活用などを行った。
トマトは、北海道産は9~10月もほぼ平年並みの出荷となり、11月20日頃までは例年通りと予想されるが、ここ数年の9月の出荷は少なくなる傾向にある。サイズはSが中心になると見込まれる。愛知産は、9月末の段階では、抑制物の出荷は例年通りに始まり、年明け1月いっぱいまでと予想される。平年通り越冬物の作業が始まるところである。猛暑の影響は、9月上旬に着果不良があり、10月10日頃の物がやや減ると見込まれる。11月下旬が当面のピークとなり、12月に入りやや減ってくると予想される。熊本産は、10月1日から選果を開始した。今年は8月の大雨で苗を植え替えた圃場もあり、10月としては遅れているため、11月に入り増えてくるものの、本格的に増加するのは年明け以降であると見込まれる。年内は前年より大玉の物が多いと予想され、今年から新品種が増えてきている。青森産は、現時点の出荷実績は前年の80%と少ない。10月に入り気温が低くなり、着色が進まないため、土耕栽培の農家の出荷は10月いっぱいで切り上がり、水耕栽培の農家は、例年通りの11月いっぱいとなる見込みである。前年より小ぶりで、サイズはM・Sが中心である。群馬産(標高400メートルの地帯の産地)は、現時点まではほぼ前年に近い水準を維持しながら出荷してきた。今後、10~11月は大きな山はなく横ばいで推移し、選果は11月14日で終了すると予想される。さらに標高の高い地帯では、例年より早めに切り上がる見込みである。主力の「りんか」は、Sサイズが中心に出荷されると見込まれる。
ピーマンは、岩手産は高温や干ばつの影響により8月いっぱいまでは少なかったが、9月には前年に近い水準まで回復してきた。10月には特段の問題なく出荷があるが、霜の降りるタイミングで切り上がり、出荷は11月20日頃までと予想される。茨城産は、秋ピーマンは猛暑の影響もあり当初やや少なめに推移したが、10月中旬以降増え、ピークは11月中旬までと予想される。宮崎産は、11月10日頃から増えるが、猛暑により、1番果、2番果が収穫できないケースも見られ、例年よりやや遅れ気味となっているが、今後順調に推移すると見込まれる。秋雨は、前年のように特別多かったという印象はなく、年内のピークは11月20日頃から12月中旬までと見込まれる。

ばれいしょは、北海道産(道央)の「男爵」は、現時点で収穫作業の終盤を迎えている。今年の10月は、倒伏が例年より早く、干ばつの影響を受けて小ぶりに仕上がっているため平年の20%の減収が予想される。前年も不作気味であったため、前年並みかやや少なめと予想されるが、食味は良好である。
たまねぎは、北海道産(道北)は、現時点で収穫作業の終盤を迎えている。例年より進捗ペースは早いが、収量は少なく、前年の90%、平年の80%と予想している。例年はL大中心であるが、干ばつの影響により、今年はL中心とやや小ぶりとなっている。
さといもは、埼玉産は、例年通りに9月1日から始まった。降雨が少なく、作全体として遅れている。かん水できる圃場では懸命に作業が続いたが、できない圃場は小玉に仕上がった。やや豊作であった前年の90%作で、総じて平年並みと見込まれる。

ごぼうは、青森産は10月に入り出荷が始まり、10月10日から11月初め頃までがピークと予想される。11月はながいもの収穫作業が始まるため、いったんは出荷の減少が見込まれる。生産予想量は平年並みで、前年比でやや多い程度である。10月上旬までは掘り上げた物を出荷しているが、その後は貯蔵物の出荷となる見込みである。例年よりやや細めの物が多く、サイズはL中心と予想される。
れんこんは、茨城産は前年並みの見込みである。親のれんこんの生育は問題なかったが、実際に出荷する子のれんこんはそれほど数量が多くなかった。高温の影響により、泥の中での寿命が確実に短くなっており、現時点(10月初め)で外に出ている葉が枯れ始め、傷みが早まると予想される。11~12月に徐々に増えてくると見込まれる。
ブロッコリーは、愛知産は10月末か11月に入ってから出荷が開始されると見込まれる。猛暑の影響により、一部で定植を遅らせた品種もあるが、ほぼ平年通り順調に行われた。11月下旬には出荷のピークとなり、12月も引き続き多く出荷できると予想される。長野産は、秋ブロッコリーのピークは10月10日前後で、11月には少なくなり、11月いっぱいまでの出荷となる見込みである。7月末に定植した物は、枯れるなどの高温の影響があり、やや後ろに出荷のウエイトがかかっている。例年と同様に、終盤まで氷詰めでの出荷である。熊本産は、2週間程度遅れて10月に入って出荷が始まっている。9月に入り秋雨が9年ぶりに長く続き、その影響が残り11月も少なく、12月下旬になりようやく増量すると見込まれる。埼玉産は、例年と変わらない9月30日から出荷が始まったが、一番早い早生の品種は干ばつと高温で植え直したため、10月までは後ろ倒しとなり出荷が伸びなかった。
花蕾の形状や乱れが見られると予想される。11月は少なかった前年を上回ると見込まれる。
セルリー(セロリ)は、静岡産は前年が猛暑で苗が大きくならず、定植後の乾燥もあり11月の出荷物は小さく仕上がるなど作柄が悪かった。今年もやはり猛暑の中での育苗となったものの、苗は前年よりしっかりしている。11月は露地物で、11月10日前後か、早ければ6~7日頃から出荷が開始されると見込まれるが、今年は適度の降雨があり、前年を上回って出荷できると予想される。12月初めにハウス作に切り替わると見込まれる。
カリフラワーは、新潟産は平年並みの状況で10月中旬がピークとなり、11月は降雪のタイミングまで出荷できると予想される。
かんしょは、徳島産は平年作で、肥大も問題なく、11月は増えながら推移し、12月に出荷のピークとなる見込みである。現時点では2Lサイズの出荷が多くなっている。千葉産は、令和7年産の収穫作業がまだ始まったばかりであるが、平年作が予想される。猛暑・干ばつの影響として多少の変形果が見られるところである。年内いっぱいは「シルクスイート」と「ベニアズマ」を中心に出荷し、サイズはL中心である。
ながいもは、青森産は、高温と干ばつの影響を多少受けているものの、ほぼ平年作である。市場出荷は、11月10日以降開始の秋の掘り取り物で全体の60~70%を占め、これは新物である。貯蔵物が通年出荷されているが、通常は厳冬期に減少する。夏までの干ばつで若干長めに仕上がっているが、3年前ほど細くはない。
いちごは、福岡産は例年より7日程度遅い11月20日過ぎから出荷が始まる見込みである。ここ3年ほどの傾向として、定植が遅れる傾向にある。前年は暖秋であったため、12月上旬にピークが来たが、今年は12月中・下旬と予想される。作付けは前年並みである。栃木産は、猛暑であったが、定植も遅れもなく順調に完了し、出荷は10月20日前後からとなる見込みである。当初は花芽形成が遅れるかと心配されたが、問題はなかった。一方、現時点で例年より早く病気の発生が見られているが、12月の需要期をピークとする出荷については問題ないと予想される。年明けの
腋果房が遅れて、出荷の谷間が広がることが懸念される。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)