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需給動向 野菜情報 2025年10月号

2 首都圏の需要を中心とした10月の見通し

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野菜振興部・調査情報部
 高温・干ばつの影響で、米だけでなく野菜も高いと報道されている。8月の野菜の価格を見ると、上旬は、数量的に中心となるキャベツは、順調に入荷して価格は安定しており、トマトは前倒しで出荷が多く、価格が安値であったことから、当初は顕著な高値ではなかった。しかし、中・下旬には、にんじんとレタスの価格が上昇し、トマトの入荷量が盆明けから急減したことにより価格が急騰し、一気に市場価格を押し上げた。9月に入っても高値は続くと予想され、10月まで尾を引きそうである。農家が、猛暑により作業を後ろ倒ししていることも、高値が長引く理由の一つである。かん(すい)ができる圃場(ほじょう)か否かで、ばらつきが生じている。
 例年、この時期は台風被害などもあり、入荷が減り高値となりやすい。しかし、今年はかつてない気温高と干ばつが生育の前進や停滞をもたらした。この重要な秋冬作の播種(はしゅ)の時期に、農家は本当に苦労しただろうと、頭の下がる思いである。一つの吉報は、嬬恋高原から供給されるキャベツが潤沢で、野菜価格の高騰が抑えられている点である。9月に入っても、東京から西日本各地の高温が報告されているが、東北・北海道は気温が下がり、千葉の海匝(かいそう)地域も朝晩は気温が低くなってきたと報告される。10月の後半には、各野菜とも盛り返して入荷が増え、消費者が安心して購入できる値になってくると予想される。
 
タイトル: p016a
 だいこんは、北海道産(道東)は、序盤のものは高温・干ばつの影響で障害があった。また、8月初めの降雨により、播種したものが流された。現状(9月初旬時点)では、一部に抽苔(ちゅうだい)が見られるものの、生育はおおむね順調である。もともと、作を後ろ倒しにしたこともあるが、例年の90%ペースできており、9月以降は増えてきて例年並みに追いつき、10月18日頃には終盤となりかなり少なくなるが、出荷は10月いっぱいまでと予想される。青森産は前年と同様に、9月下旬から出荷が開始すると見込まれる。播種はできているが、発芽がやや遅れた。10月上旬には追いついて出荷のピークを迎え、11月上旬で切り上がると予想される。中心サイズはLで、作付けは前年並みである。千葉産は、3日程度播種作業が遅れているが、盆前後に播種したものが10月10~15日には出荷が開始されると予想している。産地は海洋性気候で、日中の気温はやや高いが夜温は下がる。また、かん水できるため、干ばつの影響はなく、10月20日頃には数量がまとまって増えてくると見込まれる。
 
 にんじんは、北海道産(道東・斜里)は、出荷の前半は高温と干ばつの影響を受けたが、7月末頃から盛り返してきて、現状では平年作である。9・10月についても平年並みの出荷と予想され、10月いっぱいまでで切り上がると見込まれる。品種は「天翔5寸」で、サイズはL・M中心である。北海道産(道東・美幌)は、高温・干ばつの影響で、収穫は平年を大幅に下回ると見込まれる。出荷のピークは8月下旬で、9~10月はピーク時の半分程度と予想される。出荷は10月末まで、サイズはM中心で品種は「向陽2号」である。天候は現在は良くなり、にんじんの傷みは少なく品質は良好である。青森産は、10月中旬から出荷が始まる見込みである。直播であるが、発芽不良が顕著に見られ、場合によっては欠株も生じており、現状では10月下旬が出荷のピークと予想されるが、やや後ろにずれる可能性もある。切り上がりは11月20日頃と見込まれる。品種は「紅吉」で、シーダーテープやコート種子も用いず、間引きしながら育てる栽培方法である。
 
タイトル: p016b
 キャベツは、群馬産は、猛暑や干ばつの影響をそれほど受けず、生育は順調である。9月上旬が最大のピークで、その後は徐々に減っていくが、昨年のような急減はないと予想され、引き続き10月も潤沢で、10月いっぱいで切り上がると見込まれる。8玉サイズ中心の出荷が予想される。岩手産は、7月までは遅れて少なかったが、8月に入り降雨もあり回復してきた。圃場では玉の肥大にばらつきが出ているが、サイズはL中心となっている。今年は計画を下回っているものの、少なかった前年を上回っており、今年は11月初旬までとやや長めに収穫・出荷されると見込まれる。千葉産は、高温の影響により播種作業が遅れている。前年は10月初めから早い圃場のものが出荷開始されたが、今年は5~10日後ろにずれ込むと予想している。10月下旬には出荷する農家が揃い、日量出荷数が何万ケースかに達すると見込まれる。
 
 はくさいは、長野産は盛夏期でも出荷が続いており、9月下旬から増え始め、10月がピークと例年並みの展開であるが、農家は作業を遅らせている。8月16日以降、9月初めの段階においても、雨が全く降っていない。降雨があれば、生育のスピードが速まる可能性もある。
 
 ほうれんそうは、岩手産は、8月末時点で猛暑の影響により少なめの出荷となっている。お盆が過ぎて降雨もあり、朝晩が冷えてきて、9月に入り出荷は増えてくると見込まれる。ただし10月に入ると、稲刈りが本格化してその作業に追われるため、ほうれんそうの出荷増は期待できないと予想される。11月中旬までは、まとまった数量が出るが、気温が高めのまま冬を迎えると、農家によっては1・2作と長めに収穫すると見込まれる。栃木産は、現状では、出荷は前年を上回っている。例年と同様の出荷の場合は、9月末頃が一番の底になり、再度10月には増えてくると予想されるが、今年は前年と同様に10月も少なめの出荷となる可能性があり、11月いっぱいで切り上がると予想される。埼玉産は、9月に入り播種したものが10月から少しずつ始まってくるが、本格的には10月に播種したものが11月から出荷開始する。群馬産は、現在出荷されている雨よけ物はかん水出来ており、9月いっぱいは問題ない。露地物は、発芽不良や生育遅れで9月末頃か10月に入ってから出荷が開始されるが、品質不良が予想され、量的には少なめと予想される。
 
 ねぎは、北海道産は、出荷を開始しているが、生育は遅れ気味でやや肥りは悪いものの10月には改善し、ピークは10月となり、12月中旬に切り上がると見込まれる。5キログラム箱での出荷である。青森(県南)産は、ピークは9月の中旬で、10月に入り減少しながら推移すると見込まれる。出始めのものはLサイズ中心であったが、8月後半には降雨もあり2Lサイズ中心になってきた。9月に続き10月も前年並みで、11月末までの出荷と予想される。青森(県北)産は、7月までは干ばつや高温が続き、8月に入ると降雨があり、軟腐病も散見された。7月末から出荷を開始し、9月中旬にはいったん減り、10月に再び増え、11月いっぱいの出荷と予想される。当初はLサイズ中心であったが、その後の肥大が良く2Lサイズも増えたため、量的には平年並みと予想される。茨城産は、高温が続き出遅れている。根が切れることから、土寄せが遅れている。当面は、細めのものが中心となる出荷と予想される。徐々に増えるものの、本格的に増えるのは11月からと見込まれる。
 
 レタスは、茨城産は、9月中旬から少なめではあるが出荷が始まり、10月初旬から増えて13日の週からは量的にまとまってくると予想される。猛暑の影響により、かん水作業が難しく、定植が遅れた。ピークは10月になるが、例年より出荷期間は短くなると予想される。長野産(川上・高冷地)は、現在までは平年並みの出荷となっているが、猛暑の影響で9月の出荷が少なくなると予想している。干ばつの影響が大きく、結球が遅れ気味である。出荷は10月中旬までとなるが、量的には例年の90%程度と予想される。長野産(洗馬・準高冷地)は、猛暑・干ばつにより作業が遅れている。かん水作業にも注力しているが、定植のタイミングを後ろ倒しにする農家が多くなっている。当面のピークは9月中下旬から10月いっぱいで、最終出荷は11月中旬と予想される。群馬産は、例年であれば、9月に入ると増え始めるが、今年は9月全体が出荷の底となる可能性もある。10月出荷分についても定植はしているものの、例年に及ばず、日によって出荷の振幅があると予想される。10月いっぱいで切り上がると見込まれる。
 
タイトル: p018
 きゅうりは、福島産の露地物は、現在までは順調で平年並みとなっており、9月いっぱいの出荷と予想される。10月は抑制物が中心となるが、7月に定植し、8月上旬から出荷が開始し、9月上旬がピークとなり、10月には変動しながら徐々に減り、11月いっぱいの出荷と見込まれる。群馬産は、9月10~15日に出荷が始まり、10月初め頃にピークを抑える見込みである。気温も徐々に下がってくるため、中旬から減少傾向で推移して出荷は11月までと、ほぼ例年と同様の展開となると予想される。
 
 なすは、高知産は8月上旬に定植したものが9月上旬から出荷が始まってくると見込まれるが、8月下旬に定植したものが出荷の主力であるため、ピークは10月に入ってからとなる。猛暑ではあるが、特別な問題はなく、作付けは前年並みで、品種は「PCお竜」である。栃木産の露地物は、干ばつの中、徹底したかん水により平年並みで、10月いっぱいの出荷が見込まれる。ハウス物は8月10日から開始し、翌6月まで続く。この作は10月に増え、その後、年内は一定のペースで出荷が続くと見込まれる。福岡産は、9月下旬から出荷が開始されるが、ほぼ平年並みである。8月9~10日にかけて記録的短時間大雨情報が発表されたが、この時点ではまだ定植していなかった。10月に徐々に増え、最初のピークは11月と予想される。作付けは前年並みで、現在は順調に生育している。
 
 トマトは、北海道産は、現在までの出荷実績は前年の94%となっているが、これは作付けの減少や、暑さによる花落ち、小玉傾向であることが影響している。9月に入り、花落ちした段の出荷時期を迎えるため、出荷量はやや減ると見込まれる。9月後半に入り増えてくるものの、10月に入ってもそれほど大きなピークはないと予想される。選果の終了は11月20日頃で、平準的に推移すると見込まれる。中心品種は、桃太郎系の「ブライト」や「みなみ」である。群馬産は、現状は例年より前倒しの出荷となっており、前年比108%の実績となっている。7月の高温の影響により9月に入ると減少するが、下旬には回復して入荷は増え、出荷は11月中旬までと予想される。高温の影響により、Mサイズが中心で品質は例年を下回っている。青森産は、猛暑・干ばつの影響で前進しており、作付けの減少も影響し、9~10月は例年より少なめの出荷と見込まれる。出荷は11月いっぱいまでで、それまでは一定のペースで推移すると見込まれる。Sサイズ中心の見込みである。茨城産の抑制物は、9月に入ってから出荷のピークとなる。10月はピークはなく減少しながら推移し、11月いっぱいまでの出荷となり、出荷量は前年並みかやや減が予想される。品種は「りんか」で、ミニトマトは「サンチェリーピュア」である。千葉産の抑制物は8月29日から出荷が始まり、猛暑の影響はなく、生育は順調で、ピークは9月10日頃から10月中旬、最終出荷は12月中旬までと見込まれる。サイズはM中心で、品種は「りんか」が50%を占める。
 
 ピーマンは、岩手産は、高温が続いた影響により、現状では平年の70%と少なめの出荷となっている。例年は8~9月にかけてがピークとなるため、9月はこのまま横ばいで推移すると予想される。前年は9月に暑さが和らぎ、出荷量が盛り返したことから、10月にかけてもう一回ピークがある可能性もある。ハウス物もあるため、11月中旬頃までの出荷が予想される。福島産の露地物は、暑さと干ばつの影響により、現状までの出荷は例年の80%弱となっている。10月いっぱいまでの出荷が見込まれ、今後の降雨次第で数量が回復してくる余地がある。ハウス物もあるため、11月も出荷が継続する見込みである。茨城産は、9月に入り抑制物は例年並みに出荷を開始しているが、暑さのため数量が増えていない。今後気温が下がれば9月中旬には増えて来ると予想される。ピークは10月下旬から11月上旬までで、今後の天候によるが、概して品質はそれ程良くない。作付けは前年並みである。高知産は、現在は定植中であるが、早い農家は、9月中旬から出荷を始め、10月に入ると本格化し、中下旬には出荷する農家が揃い、11月上旬に一回目のピークが来ると予想される。作付けは前年並みである。
 
タイトル: p019a
 ばれいしょは、北海道産(道北)の加工向け産地では、「男爵」は、現状では作業が遅れ入庫が少ない。「きたあかり」もまだ入庫しておらず、全体的に小玉傾向で、不作気味と報告されている。北海道産(空知南・道央)は、食用と種芋用と加工向けの三つのタイプがある。市場出荷の「洞爺(とうや)」は収穫が終わったが、平年並みかやや減である。種芋用は収穫が始まったばかりで、作業としては7~10日遅れており、つぼ掘り調査では前年の10%減の予想である。加工用は「さやか」「きたかむい」であるが、これは平年作と予想される。北海道産(留寿都・道央)の「きたあかり」は平年作であり、前年よりやや少ない。当初は小玉傾向と心配されたが、それほどでもない。北海道産(十勝・道東)は、現在収穫中で、食用の収穫見通しは平年の20~30%減である。小玉傾向もあるが、二次成長して変形や奇形果が多く、出荷に適さないものがある。ほぼ年内の出荷となるが、貯蔵しても甘みが増さない可能性がある。
 
 たまねぎは、北海道産(道北)は、干ばつ・気温高で小玉に仕上がっており、8月末頃にはかなり降雨もあったが、あまり回復の兆しは見られず、平年の70%作と予想される。例年のサイズは、前半がL大、後半はLサイズが中心になるが、今年は期間を通してMが中心となると見込まれる。北海道産(道央)は、現在収穫中であるが、7~8月の高温・干ばつの影響と、春先の降雨で定植作業が遅れたため、作柄については平年の70%程度とやや不作と予想される。8月後半に適度の降雨はあったものの、あまり好転はしなかった。出荷は年明けの3月まで計画的に行われ、中心サイズはMと見込まれる。
 
 さといもは、静岡産の品種は石川早生で、例年と変わらず8月25日から出荷開始し、ピークは9月20日頃から10月いっぱいである。作柄は例年並みで、仕上がりは大玉傾向となっており、猛暑・干ばつについては、かん水ができているため問題ない。埼玉産は、9月1日から出荷開始したが、2Lサイズもあり豊作年である。10月はかん水のできる圃場か否かで出荷量が全く異なり、全体で見ると平年並みの出荷と予想される。
 
タイトル: p019b
 ごぼうは、現状では宮崎産、鹿児島産、群馬産が終盤となっている。この3県は農家数が減り、出荷も少なくなってきており、さらに今年は品質も良くなかった。青森産は、早生物が中心になり、降雨により今まで細かったもののどの程度回復するかが注目される。9~10月に徐々に増えてくると予想されるが、農家は稲刈りの作業もあって、そちらに注力するため、出荷量は前年を下回ると見込まれる。茨城産の春まきごぼうは、9月上旬から始まり、ピークは11月下旬から12月までと予想される。気温高と干ばつで肥りが足らず、作柄はあまり良くない。作付けは前年並みだが、出荷量は前年を下回る可能性がある。
 
 かぶは、千葉産は、夏は暑さで少なかったが、9月に入り増え、10月まで一定のペースで例年並みの出荷が予想される。その後、徐々に増えて12月が当面のピークと見込まれる。
 
 れんこんは、茨城産の生育は順調であるが、猛暑・干ばつの影響はゼロではない。昨年は傷みが早かったが、今年についても同様の傾向で、特に春先からの高温が影響している。9~10月は前年並みの出荷と予想され、中心サイズはMである。
 
 ブロッコリーは、青森産は9月中旬から出荷が始まり、10月いっぱいか11月初め頃までと予想される。作付けは前年並みであるが、春ブロッコリーほどの面積はない。埼玉産は、9月下旬から早いものが出荷開始しているが、かん水できない畑のものは植え直しが必要になるなど苦戦している。このため、例年であれば、10月上旬に早いもののピークが来て、次に11月に再びピークとなり、年末に向けて終盤を迎えるが、今年は特に前半の出荷量は少なめになると予想される。
 
 かぼちゃは、北海道産(北はるか・道北)は、9月3日から共選を開始するが、8月後半からの多雨傾向で作業が遅れている。出荷のピークは、9月20日過ぎから10月上旬である。今のところ収穫見通しははっきりしないが、小玉傾向の仕上がりとされる。北海道産(名寄・道北)は、出荷のピークが9月から10月の2週目までとなっており、作柄としては豊作である。
 
 えだまめは、千葉産の品種は「小糸在来」となり、出荷は例年通り10月10日前後からで、販売期間は2~3週間と短く、10月末頃には切り上がる見込みである。猛暑により、作柄は悪くなる可能性があるが、今後の降雨で盛り返すことを期待している。前年のような花落ちは見られず、出荷量は前年を上回ると予想される。
 
 かんしょは、千葉産は平年作で、猛暑の影響により果形の乱れが出ている。当面の主力品種は「紅あずま」と「シルクスイート」で、中心サイズはLである。10月は量的に前年並みで、ピークは11月である。
 
 にんにくは、青森産は、現在は冷蔵庫に保管されており、11月から市場出荷を開始し、年明けの3月まで継続出荷する。干ばつが続いた影響で小ぶりに仕上がり、サイズは、2L・Lともに少なくMSが中心である。そのため、生産量は平年の80~90%と少ない見込みである。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)