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需給動向 野菜情報 2025年9月号

2 首都圏の需要を中心とした9月の見通し

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野菜振興部・調査情報部
 前年同様に猛暑の中での生産となっているが、前年との違いは、空梅雨の状態で猛暑が襲ってきたことである。関東地方は7月下旬の夜には涼風があって、人間だけでなく植物も一息ついたに違いない。この干ばつは、雨を多く必要とするえだまめには負担が大きいが、スイートコーンはおいしく仕上がると予想される。東北・北海道の果菜類は、ここ数年、8月に出荷の山谷が生じる展開が続いている。問題は、9月にきちんと回復できるかであるが、生産者はこの猛暑の中でも、熱中症対策をしながら取り組むとの声が多く聞かれた。しかし、8月に高温・干ばつが過度に継続すると、秋冬のキャベツなどの播種(はしゅ)時期に当たるため、年内いっぱいまで影響が広がると警戒する声もあった。
 北関東に雷雨があるといった予報が、7月に入り多かった。しかしながら、同じ群馬県でも、嬬恋村には雷雨があっても、沼田高原の他地区は全く降らないといったまだらな状況であった。広大な北海道においては、道南・道央・道東・道北・十勝と全く気象が異なるわけで、テレビ報道で野菜の生育が大変とされても、すべての品目が被害を受けているわけではない。この猛暑の中、命懸けで農作業に取り組む農家の意欲に応えるため、市場は価格で応援するといった展開が望まれる。
 
タイトル: p018a
 だいこんは、北海道産(道東)は、現状(8月初旬時点)では平年並みと順調な出荷となっている。7月末頃から盆明け頃がピークとなり、10月いっぱいは出荷が継続する。7月までは2Lサイズ中心であったが、8月に入りLサイズ中心になると予想される。高温の影響により、抽苔(ちゅうだい)も見受けられ、収穫物のサイズのばらつきが大きい。しかし、不作であった前年から、さらに出荷量が大きく減少することはない。北海道産(道央)は、作を後ろにずらした影響から当初は少なめの出荷開始となったが、現状は順調に出荷され、8~9月も前年並みの出荷が予想される。サイズはL中心の出荷となっており、高温の影響により軟腐病が散見されている。
 
 にんじんは、北海道産(道央)の出荷は、例年通り8月9日頃からの開始が見込まれる。適度の降雨もあり、現在までの生育は順調である。ピークは9月中旬と予想され、中心サイズはLサイズ寄りのMサイズ中心である。
 
タイトル: p018b
 キャベツは、群馬産は夕立などによる適度な降雨があり、干ばつはなく生育は順調で、例年と同様に大玉傾向である。7月は、計画より出荷量が多かった。8月の盆明けからさらに増え、9月上旬がピークとなり、その後も平年並みの出荷が予想される。岩手産は、7月下旬の前半までは出荷量は順調であったが、干ばつのため7月末頃から例年の80%程度にまで減少してきた。今後降雨があれば、一気に増えると見込まれるが、9月出荷分は、一部の苗が枯れて植え替えをしている。8月に入り適度な降雨があれば、平年並みまで回復すると見込まれる。
 
 はくさいは、長野産は8月の出荷量は少なめで、盆明け頃から増えてくると予想されるが、後ろにずれる可能性もある。ピークは9月下旬から10月上旬となり、量的にまとまっての出荷は11月上旬までで、11月中旬には切り上がると見込まれる。
 
 ほうれんそうは、岩手産は、降雨が少なく、36~37度とかつてない高温により、播種しても枯れてしまうものがある。現在の出荷は、例年の90%と少なめであるが、8月はさらに減り、盆頃が底になると見込まれる。9月中・下旬から盛り返し、10月には2回目のピークが来ると予想される。群馬産は、雨よけ物となるが、高温障害の影響により出荷量が減少している。そのため、9月初め頃までは少なめの出荷が予想され、10月に向けては増加傾向で推移し、ほぼ平年と同様の展開が見込まれる。栃木産は、標高800~1200メートルの圃場からの出荷となるが、7月中旬にかなり減少し、その後戻ったものの、8月に入って暑さのため再び減少してきた。10月まで出荷は継続するものの、9月までは平年を下回ると予想される。
 
 ねぎは、北海道産(道南)は6月から出荷を開始し、盆明けから増加して9~10月がピークとなる見込みである。雨が少なすぎるため、肥大が悪い。作付けが若干増えているため、8~9月は目立った減少はせず、12月初め頃まで出荷が継続される見込みである。青森産(県北)は、雨が少なく主力の地域に潅水(かんすい)設備がないため、肥大不足となっており、一部枯れるといった被害も見られている。今後、適度な降雨があれば、9月の出荷は80%程度まで回復すると予想されるが、秀品率は低いと見込まれる。青森産(県南)は、現状では平年並みに出荷を開始し、ピークは8月下旬から9月初め頃となることが予想される。高温・干ばつの影響は、果菜類ほどではでないものの、生育は遅延しており、これ以上干ばつが継続すると、かなりの減収が見込まれる。
 
 こねぎは、福岡産は前年比微減ペースで推移している。40度近い気温の中で9月に入っても量的に回復することが見込まれず、前年を下回る出荷が予想される。本格的な回復は、10月中旬頃からと予想される。
 
 レタスは、長野産は順調であるが、今後8月上旬前半まで降雨が無ければ、干ばつの影響が出るであろう。現状の出荷のピークは盆頃まで続き、その後は減少しながら推移し、9月も一定のペースで出荷され、平年並みが予想される。群馬産は、6月はほぼ空梅雨で、山間部への夕立はあるが高原部には降雨がない。7月までの出荷は少なめで、結球障害も見られている状況である。盆前頃から増え、9月には平年並みに回復する見込みである。
 
タイトル: p019
 きゅうりは、福島産の露地物は順調で、若干前倒し気味の出荷となっている。8月上旬がピークで中旬から徐々に減り、干ばつが続くようであれば、下旬には切り上がると見込まれる。抑制物は、早い物が8月初め頃から始まり、8月下旬には本格化すると予想される。9月は抑制物のみの出荷となれば、量的には平年を下回ると見込まれる。宮城産の露地物は、例年より出荷量は少なく、干ばつが続き、圃場が著しく乾いている。ハウスの抑制物は盆頃から始まり、8月下旬から9月がピークと予想され、ハウス物は潅水できるため出荷量減の心配はない。作付けは前年並みである。群馬産の抑制物の定植は盆前から始まり、8月末頃から出荷が開始するが、例年通りの展開と予想される。8月の暑さによっては、生育遅れやダメージが発生する可能性もある。
 
 なすは、栃木産は、現状では平年並みの出荷となっている。潅水できているため、盆前まで現状のペースとなり、その後も極端な減収はないと見込まれる。9月も継続して平年並みの出荷ができるよう、生産者は熱中症対策などを心掛けながら圃場管理をする予定である。茨城産は、県西の産地からの出荷となり、現状では例年通りの出荷となっている。8月は若干数量が減るが出荷は続き、9月には再び増加が見込まれる。降雨がなく心配ではあるが、潅水できるためあまり問題はなく、ほぼ平年並みの出荷が予想される。
 
 トマトは、群馬産は、夏秋トマトが本格化し、ほぼ例年並みの出荷となっている。ただし、例年と一点だけ違うのは6月の猛暑であり、出荷のピークは7月末頃から盆明けまでとなるが、その後どこかの時点で端境が出ることが心配される。それでも、9月には平年並みに出荷できるよう肥培管理し、11月中旬まで選果する計画が見込まれる。青森産(県南)は、今年はかつて経験したことがない暑さが続いているため、盆前後がピークとなる例年のパターンが変化することが予想される。果実がまだ小さい状態で色が回ってしまい、柔らかくなるのも早い。8~9月は盛り返すこともなく、減少傾向で推移することが見込まれる。青森産(県北)は、前倒しで出荷されており、2段一気に収穫されるなどの影響により、盆前に減少することが見込まれる。8月下旬から9月にかけて盛り返した前年に近い展開が予想される。サイズは、盆前まではL中心で、9月に入るとM中心となることが見込まれる。北海道産は、引き続き順調で、8~9月も平年並みと予想される。
 岐阜産は、6月下旬から気温が高い異例の天候であるものの、夕立があり、あまり干ばつの影響を受けておらず、現状では順調である。出荷量は前年と同様、平年の90%程度で、8月も引き続き横ばいと見込まれ、9月は今後の天候次第である。茨城産の抑制物は、例年どおり8月中旬から出荷開始し、当面のピークは9月上旬で、11月上旬まで続くと見込まれる。作付けは前年並みで、暑さの中での栽培は難しいが、農家は耐暑法も見つけながら管理している。
 
 ミニトマトは、北海道産は6月後半から高温となり、大幅に前倒して出荷された。現在までの進捗率は、前年の140~150%となっている。9月中旬以降に品薄が予想されるが、農家は生産量が落ち込まないように努力している。
 
 ピーマンは、茨城産は8月10日からは秋ピーマンになるが、現在までの生育は順調である。高温下での生産となっているが、夜温がそれほど高くないことが助けとなっている。ピークは、9月中旬から10月いっぱいと予想される。福島産は、8月は降雨があり、暑さが収まれば平年並みに出荷されるが、このまま暑さが続くと、例年の70~80%程度となることが予想される。昨年も猛暑で出荷量が少なかったことから、前年に近い水準が予想され、9月は徐々に出荷は増えてくると見込まれる。岩手産は、雨が降らない影響もあり、前年より少なめの出荷となっている。ハウス物は潅水できるが暑さ対策が課題となり、露地物は潅水が課題である。これについては水田に優先的に水を回しているため、畑地では自由にならないこともある。当面のピークは7月から盆前で、その後11月まで出荷が継続すると見込まれる。9月についても、やや平年を下回る程度と予想される。
 
タイトル: p020
 ばれいしょは、北海道産(道東)の「メークイン」の収穫は例年と同様8月中旬から開始し、東京市場への出荷は8月下旬から9月上旬にかけて開始すると見込まれる。ピークは10~11月であるが、事前調査では過去最悪の作柄ではないかと報告されている。玉数は問題ないが、肥大が進んでいない。北海道産(道央・留寿都)の「きたあかり」は出荷が開始しているが、本格的な収穫作業はこれからである。北海道全域では、高温・干ばつにより作柄はあまり良くないが、留寿都地域は適度の降雨があり、平年作が予想される。北海道産(道央・ようてい)の「男爵」は、天候不順で定植が10日程度遅れた影響が残り、収穫開始は8月に入ってからとなっている。出荷開始は8月6日からであるが、干ばつの他定植後の日数が短かったため、試し掘りでは小ぶりであった。出荷のピークは9月に入ってからと見込まれる。
 
 たまねぎは、北海道産(道央)は、現在すでに出荷を開始しており、高温と干ばつの影響により倒伏も見られるところである。7月末には降雨もあり、状況は改善されるだろうが、8~9月の出荷物についてはやや小ぶりと予想され、収穫作業が後半にずれていることから、出荷は平年を下回ると予想される。北海道産(道北)の収穫は、例年より若干早い7月20日前後から始まった。7月末の段階では出荷は始まっており、ピークは9月に入ってからと見込まれる。今年の北海道は高温・干ばつ傾向であるが、管内の圃場は広域にあり、降雨のあった地域や、潅水設備の整った地域もあり、それなりに肥大しており、悪くても平年よりやや減で、ほぼ平年作と予想される。北海道産(道東)の収穫は、例年よりやや早めの7月20日前後から開始した。ピークは9月に入ってからとなり、高温・干ばつではあるが、圃場は広域にあり、降雨のあった地域や、潅水ができる地域もあるため平年並みの出荷が予想される。
 
タイトル: p021
 ごぼうは、青森産は、8月下旬から9月上旬にかけて出荷が開始されるが、干ばつの影響で肥大が良くない。出荷のピークは9月下旬から10月にかけてと見込まれるが、水分不足から奇形根の発生も予想される。作付けは前年並みである。
 
 れんこんは、茨城産の新れんこんは、現状では例年よりやや早く出荷が始まった。例年は7月中旬に花が咲くが、前年と似た状況で今年は6月下旬に花のピークが来た。前年は23年比で10%の減収であった。開花が早く、施肥のタイミングがずれると効果が低下してしまい、傷みの出るタイミングが早まることから、出荷が前倒しされる傾向がある。結果として、年末は問題なく出荷できるが、年明けから4月までは少なくなる可能性がある。台風の影響がなければ、生育は順調に推移すると見込まれる。
 
 ブロッコリーは、長野産の圃場は標高1000メートル地帯からの出荷となるが、9月には再び増量して、秋のピークを迎えると見込まれる。生育は特段の問題はないが、雨不足により定植した根の活着が悪く、生育遅れが予想される。北海道産は、現状では出荷のピークが過ぎ、落ち込んでいる。盆前頃から再び増え9月前半まで多いが、9月中旬からばれいしょの収穫に忙しくなるため、後半には減少し始めると予想される。作付けは、前年の80%程度である。
 
 カリフラワーは、新潟産は、例年通り9月上旬から出荷を開始し、ピークは10月中旬と見込まれる。作付けは前年比で減少している。
 
 セルリー(セロリ)は、長野産は、8~9月は横ばいで推移し、ほぼ平年並みの出荷が見込まれるが、猛暑・干ばつの影響により、全体的に小ぶりの仕上がりも予想される。北海道産は、8月中・下旬にかけてピークで、9月いっぱいまで出荷が継続する。作付けは前年並みであるが、高温の影響により、出荷量は前年を下回る見込みである。
 
 かぼちゃは、北海道産は9月上旬から出荷が始まるが、8月下旬から地域の個選物の出荷を開始している。気温が高く干ばつで前進傾向であるが、現在は降雨があり、干ばつは解消されている。貯蔵物が12月も出荷されるが、状況に応じて11月に出荷されることも予想される。
 
 かぶは、青森産は、現状では天候の影響もなく、品質も良好で例年通りの出荷となっている。7月に高温が継続しすぎると、8月の出荷量の減少が見込まれるが、今のところ7月と同様のペースで推移すると予想される。
 
 スイートコーンは、北海道産(道央)は、例年並みの7月31日から出荷を開始し、ピークは盆前後で、その後9月も出荷は多く、20日頃に切り上がると見込まれる。作付けは前年並みで、品種は「恵味」である。
 
 さやいんげんは、岩手産は8月上旬に出荷のピークが来て、その後10月まで継続するが、出荷量はピーク時の半分程度と予想される。福島産は、現状では花落ちするなど、高温・干ばつの影響を受けており、2週間後の盆前頃の出荷が少なくなると見込まれる。例年は9月上旬がピークであり、盆前後の花の状況によるが、今後は雨が欲しいところである。
 
 えだまめは、山形産の「だだちゃ豆」は、やや前倒し気味の出荷となっている。暑さの影響はあるが、今のところ圃場でのダメージは報告されていない。当面のピークは盆前頃となり、9月に入り再び増える時期があり、生産量は平年並みと予想される。青森産は、現在まで一カ月以上降雨がなく、豆が膨らんでこない。圃場で枯死する木もある。それでも盆明けにピークとなり、8月下旬には少なくなると見込まれる。現状は例年の70%程度の出荷となっているが、9月の初め頃には終わる可能性もあり、8月の末頃から前倒しして稲刈りが開始されると、そちらの作業が優先されるため、豆が回復しても収穫されないことも見込まれる。岩手産は、8月下旬がピークとなり、9月に入り減少しながら推移し、9月下旬に終盤となると見込まれる。高温と干ばつで、やや小さめの仕上がりが予想される。群馬産は、高温と干ばつで、かなり減少する可能性がある。中山間地の沼田市では雷雨がなく、被害が目立ってきている。今後降雨があれば8~9月は回復の可能性もあるが、このまま干ばつが続くと甚大な被害となることが予想される。
 
 かんしょは、徳島産の「鳴門金時」の出荷は例年並みの7月3日から開始した。今のところ天候による影響はなく、例年通りの品質のものが出荷されている。盆頃からピークとなり、Lサイズ中心の出荷が予想される。
 
 にんにくは、青森産は、干ばつで小ぶりのMサイズが中心の仕上がりである。そのため収穫量は平年を下回ると予想される。収穫後90日で発根するため、収穫後に冷蔵貯蔵し、10月以降に販売する。冷蔵貯蔵しないものについては8月20日から出荷を開始し、9月いっぱいの販売が見込まれる。
 
 メロンは、茨城産のアールスメロンの出荷は7月1日から開始した。作付けは微増であり、ピークは需要の多い盆前頃となり、その後9~10月と一定のペースで出荷されると見込まれる。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)