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需給動向 野菜情報 2025年8月号

2 首都圏の需要を中心とした8月の見通し

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野菜振興部・調査情報部
 昨年に続き、日本列島は6月から猛暑に見舞われている。今年は、西日本は早くも梅雨明けするなど梅雨の期間は短く、降雨も少なかった。「干ばつに不作無し」と言われ、作柄が悪いとの報告は聞かれず、おしなべて平年並みとされる。豪雨の影響で作柄が悪いといった報告もなかった。また、現時点(7月初旬時点)の猛暑は農家にとって織り込み済みのリスクとして対処しているものと思われる。果菜類は、盆前に多く出荷され、9月に出荷の谷間となる可能性もある。北海道のばれいしょは収穫が遅れているようだが、遅れると不作になりがちである。青森市の雪解けが珍しくいつもの年より一週間程度遅かったことなど、東北・北海道産が遅れていることにより、市場では、物不足感が強い。
 この時期、猛暑ではあるが、消費者は朝夕いつも通りスーパーなどに来店し、購入意欲は旺盛と報告されている。まずしっかり食べることで、この暑さを乗り切ることができる。東京市場では野菜は売れている。農家も暑さに無理せず、出荷をお願いしたい。


タイトル: p030a
 だいこんは、北海道産(道東)は、出荷開始は7月21日からで、平年より遅らせている。収穫した物の品質が揃ってから出荷を開始する意向であり、8月中旬にはピークを迎える見込みである。現時点の天候は、干ばつ気味でさらに気温は高めである。出荷の中心サイズはLである。北海道産(道央)は、適度な降雨もあり、生育は順調である。やや遅れたものの、出荷は開始したところであり、L、2Lサイズ中心で、仕上がりも問題ない。9月いっぱいまでほぼ一定のペースで出荷される。
 
 にんじんは、北海道産(道南)は春先の低温の影響もあるが、出荷を5日程度後ろにずらしている。作柄としては平年並みである。ピークは7月10日頃で、7月いっぱいで大半は終了するものの、8月も若干残る見込みである。中心サイズはLであるが、2Lも増えてきている。北海道産(道央)は、8月初めから始まり、ピークは9月中旬で、10月いっぱいの出荷と予想される。作付けは前年並みである。北海道産(道東)は、例年どおりの7月22日から出荷が始まると予想される。春先の低温から、高温に転じ、さらに干ばつ気味になっている。サイズはM中心であるが、例年より一回り小さい仕上がりである。8~9月はほぼ一定のペースで出荷される見込みである。

タイトル: p030b
 キャベツは、群馬産は、7月に入り平年並みの出荷が続いている。夕立はあるが、降水量はそれ程多くはない。出荷のピークは8月下旬から9月上旬と予想される。生育は現時点では順調であるが、降雨量が少ないと、問題が発生する可能性もある。岩手産は、春先の低温だけでなく最近続いている干ばつも影響し、7~10日の生育遅れとなっている。それでも生産者が揃う7月15日頃から出荷はピークを迎え、8~9月はそのまま続く見込みである。22年は多雨により、23年は7月の日照不足により不作であった。24年は、気温が高かったものの、この過去2年を上回る出荷となったが、計画には届かなかった。今年については、昨年を上回り平年並みに回復すると予想される。
 
 はくさいは、長野産は、生育順調で大玉傾向に仕上がっている。出荷量は、7~8月は現状のペースで推移し、9~10月には増加すると見込まれる。群馬産は、夏はくさいの出荷量は、6月中旬から7月がピークで、8月に入ると7月の半分以下に減少すると見込まれる。9月後半には秋はくさいとなり、再びピークを迎えると予想される。
 
 ほうれんそうは、岩手産は、現時点は干ばつの影響を受け、伸びが悪くなっている。高温傾向と干ばつが続けば、生育は悪くなると予想される。例年同様、出荷量は7月末頃から8月いっぱいは少なめで推移すると見込まれる。群馬産は、雨除け物であるが、高温の影響により出荷量は減ってきており、7月下旬にはさらに減り、8月はそのまま少ない状況が続く見込みである。出荷量としては平年並みである。栃木産は、日照不足を克服する(ばん)(ちゅう)(せい)の品種が中心で、梅雨がなく急に暑くなったことから、現時点では出荷量は前年を下回って推移している。今後は、耐暑性品種が登場し、7月中旬から8月は前年並みに追いついて来ると予想される。
 
 ねぎは、青森産(県北)は、例年と同様に8月20日過ぎから本格的な出荷が始まる見込みである。9月中旬には稲刈りが忙しくなるため、ねぎの出荷がいったん減り、その後増えるといった展開が予想される。作付けは前年並みであるが、雨不足から肥大不足が心配である。青森産(県南)は、7月20日頃から出荷開始が見込まれるが、7日程度遅れている。11月いっぱいまでの出荷となるが、早()きの生産者が増え、8~9月に多く出荷され、10月以降は減少する傾向にある。7月に入り天候が昨年に似てきて、細めに仕上がる傾向が見られる。昨年は猛暑の影響により、不作であった。北海道産は、ハウス物は開始しているが、主力の作型も始まり、7月10日過ぎから出荷量が増えてくると見込まれる。露地物は7月20日以降に出荷が始まり、生育は順調で、ピークは9~10月である。春の低温の影響もあって遅れ気味で、やや細めの仕上がりが予想される。
 
 こねぎは、福岡産の「博多万能ねぎ」は、今後暑さの影響により葉の色が薄くなり、枯れ葉も散見されるようになると予想される。前年の出荷量は、平年の80%と減少し、今年についてはそこまで悪くないと見込まれるが、8月の出荷は7月よりやや少なくなると予想される。
 
 レタスは、長野産は、現時点では豊作で前進しており、7月上旬にピークとなった。今後、干ばつが強くなりすぎると、(しお)れや腐れも出てくることが予想される。例年と同様に、8月に入ると出荷量は少なくなり、9月いっぱいで切り上がると見込まれる。群馬産は、高温の影響により、出荷量はいったん減少したが、現時点では再度盛り返してきている。夕立はそれ程多くないため、レタスにとっては安定しやすく、7~8月は増減を繰り返しながら推移し、ほぼ平年並みと見込まれる。

タイトル: p031
 きゅうりは、福島産は例年と同様、露地物の出荷も開始した。8月も引き続きハウス物と露地物の併売になるが、6月は当初の遅れが回復し前年を上回ってきた。8月上旬に出荷のピークを迎え、その後落ち着く見込みである。7~8月も前年を上回る出荷が予想される。岩手産は、6月下旬から露地物の出荷も始まり、生育は順調である。当面のピークは7月中・下旬となり、8月は天候次第となる。盆前後に落ち着き、その後再び増加すると見込まれる。作付けは前年並みである。
 
 なすは、栃木産は、現時点で7日程度遅れて出荷を開始した。出荷のピークは7月24・25日頃で、出荷量は8月に入り7月の80%まで減少すると予想される。10年前までの天候であれば、8月も7月と同程度の出荷ペースを維持できたが、近年の高温により、前年については暑さによる花落ちと、カメムシの大量発生により規格外品が多くなってしまった。
 
 トマトは、群馬産は夏秋トマトとなるが、現時点は色付き始めたところである。出荷開始はほぼ例年並みの7月下旬からで、当面のピークは8月上・中旬と見込まれる。作付けは、前年をやや上回っており、品種は「りんか409」が90%以上を占め、サイズはL・M中心の出荷となることが予想される。青森産は、現時点の気温高から、7月下旬に出荷のピークを迎えると予想される。前年も盆前に出荷量が減少したが、今年も同様の展開が予想される。北海道産(道央)は、生育は順調で、出荷量は7月末頃から8月上旬にピークとなり、盆明けに少なくなると予想される。北海道産(道南)は、春トマトの出荷は7月20日で終了し、盆明けから抑制トマトの出荷が開始され、出荷のピークは9~10月の見込みである。現時点では、定植は終わっていない。前年は猛暑の影響により減収となったことから、今年は対策を実施している。福島産は、ほぼ平年並みの7月中旬から開始し、ピークは盆前後で、10月いっぱいまで出荷が続くと予想される。作付けは前年と比べると若干減少しており、品種は桃太郎系である。
 
 ミニトマトは、北海道産は、平年並みの6月末頃から出荷が始まり、7~8月は一定のペースで続くと見込まれる。品種はほとんどが「キャロル10」である。一部、害虫の被害が見られるが、全般的には生育は順調である。

 ピーマンは、岩手産はハウス物の出荷が始まった。露地物の出荷は7月10日前頃から開始し、生育は順調でほぼ前年並みとなっている。当初の遅れを回復し、ピークは8月上旬と予想される。露地物の作付けは5%程度増えている。福島産は、ハウス物の出荷は、6月末から始まり、露地物は7月10日頃から始まった。現時点で、生育は順調で8月の盆前後に出荷のピークが来ると予想される。前年は猛暑の影響により減収に見舞われたが、単価高でカバーできた。


タイトル: p032a
 ばれいしょは、北海道産(道東)の「メークイン」は例年並みの9月上旬から出荷が始まる見込みで、生育は順調である。作付けは若干減少している。その他「洞爺(とうや)」は盆明けから、「マチルダ」は10月に入ってからの出荷が見込まれる。北海道産(道央)の「男爵」は例年どおり8月下旬からの出荷開始が見込まれる。春先の天気が悪かった影響により、早い物の収穫は一週間後ろにずれ、出荷のピークは9~10月と予想される。北海道産(道南)の「男爵」の収穫は、現時点で、近年では経験のない10日程度の遅れとなっている。促成物は、東京市場では盆明けから出荷を開始する。秋いも(露地物)は、9月15日頃から開始する。()(しゅ)の時点では2週間遅れていたが、適度の降雨もあり、現時点は10日遅れまで回復してきた。この時期に起こりがちな干ばつの心配は特にない。
 
 たまねぎは、北海道産(道東)は、生育順調で、出荷開始は若干早まって7月下旬からとなり、出荷のピークは8月10日前後からと予想される。24年産については平年の90%とやや不作であったが、今年については平年並みと見込まれる。北海道産(道央)は、7月20日前後から出荷が始まるが、定植の遅れもあり、全体としてはゆっくりしたペースで、8月の盆明けから多くなると予想される。現時点までは順調に来たものの、今後高温と干ばつ傾向が長引けば、小ぶりに仕上がる可能性が見込まれる。兵庫産は、25年産の収量としては、前年の110%と上回っており、10月までは乾燥・貯蔵物を出荷する。11~12月は冷蔵品で、すでに契約した取引先へ販売していく。

タイトル: p032b
 ブロッコリーは、北海道産(道東)は、生育順調で、現時点は平年並みに出荷を開始し、当面のピークは7月中・下旬となると予想される。8月に入り減少するが、盆明けから再び2週間程度ピークとなることが予想される。9月に入り落ち着いてくるが、出荷は継続すると見込まれる。作付けは前年の70%強と減少している。長野産は、7~8月の出荷量は6月の半分に届かない程度まで減少するものの、9月中旬から再びピークとなると予想される。
 
 セルリー(セロリ)は、長野産は生育順調で、7月の出荷数量と同程度のまま8~9月は横ばいで推移すると見込まれる。11月のハウス物まで出荷が継続すると予想される。
 
 かぼちゃは、北海道産(道北)は、9月に入ってから出荷を開始する。地域の個選の農家からは、8月中から出荷開始されると見込まれる。前年は不作で平年を下回ったが、今年については今のところ順調である。品種は「くりゆたか」である。北海道産(道南)は、若干早めに7月20日から出荷を開始し、ピークは盆前となり、8月いっぱいで切り上がると予想される。生育は順調で、品種は「みやこ」である。
 
 かぶは、青森産は、現時点は例年どおりの出荷となっている。天候の影響もなく、品質も良好である。7月に高温が続きすぎると、8月の出荷量が減少する可能性があるが、今のところ7月のペースを維持できると予想される。
 
 スイートコーンは、北海道産(道東)は7月下旬から出荷が始まるが、出荷開始時期や作付時期も前年並みである。出荷は盆前後のピークが見込まれるが、今後の天候によってはピークが8月上旬に早まる可能性もある。品種は「ゴールドラッシュ」である。北海道産(道央)は、8月初め頃から出荷が始まり、盆前がピークとなり、9月中旬から下旬に終盤に向かうと予想される。生育は順調で、品種は「恵味」「味来」である。千葉産は、定植の遅れが影響し、作型のやや後半の8月5日まで出荷量が多くなる見込みで、切り上がりは8月10日頃となると予想される。定植時期の低温が影響し、樹が小さめであり、そのため7月20日頃まで仕上がりが小さめとなると見込まれる。24年産は豊作傾向であった。
 
 えだまめは、山形産は「だだちゃ豆」となるが、生育は順調で、平年並みの7月下旬から出荷を開始し、ピークは8月中旬にあり、さらに9月上旬に再度ピークとなる展開が予想される。青森産は、播種のタイミングが3日程度遅かったため、7月10日頃から出荷を開始し、9月10日頃までと予想される。現状までは順調であったが、今後も続くと思われる高温・干ばつが心配である。作付けは微減である。秋田産は、田んぼの()(じょう)整備に入ったり水田に戻されたりと、往時に比べると栽培面積は大幅に減少した。出荷は例年通りであれば7月21日頃から開始となるが、春先の天候不順でやや遅く始まると見込まれ、ピークは盆前後となり、その後は9月までで切り上がると予想される。群馬産は、現時点は降雨もあり平年並みの作柄であり、7~8月は同じペースで出荷されると見込まれる。前年は猛暑で7月に激減したが、今年は現時点までは良好である。ただし33℃以上が7日続けば、花落ちや空(さや)となり、8月になると出荷量が少なくなる可能性もあり、今年も7月の天候を注視する必要がある。
 
 かんしょは、香川産は「坂出金時」が、例年より10日遅れの7月6日から出荷を開始し、出荷のピークは7月20日から盆頃までと見込まれる。今年は育苗から定植が10日遅れ、また、梅雨入りまでは気温が低い日もあるなど、生育の遅れを回復できなかった。
 
 にんにくは、青森産の収穫は6月13日から開始し、現時点では終盤となっている。今後貯蔵して、市場への出荷開始は9月に入ってからとなる。今年の生産量について、単収は平年並みであったが、品質は例年より悪く加工向けが多くなるため、収穫量は前年比では2~3%の減と見込まれる。サイズは平年並みのL中心のMで、生果については、青森県南の道の駅などで販売されている。
 
 メロンは、北海道産(道央)は、7月10日前の「ティアラ」(赤肉)から出荷が始まる。「レッド01」は盆明けの8月中・下旬から、「レッド113」が9月初めから出荷開始し、11月初め頃まで販売される。青肉の「クラウン」は7月12日頃から出荷を開始し、10月までの販売が見込まれる。現状生育の遅れはあるが、着果は問題なく順調である。作付けは前年比で3へクタール程減少した。
 
 すいかは、北海道産のハウス物が7月10日過ぎから出荷を開始する。露地物は8月10日から開始し、右肩上がりに増え、盆明けから一週間がピークとなる。より手をかけて、大玉に仕上げた方が市場で評価が高い。作付けは5へクタール程減少した。
 
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)

【コラム】昨年のキャベツとレタスの高騰から思うこと

2024年のキャベツの高騰を振りかえって

 今日的話題ということで、2024年はキャベツ一玉の店頭販売価格が1000円を超えたなどの報道が連日のようになされた。キャベツは雨が育てる野菜であるが、24年8~9月からの異常とも言える高温、その後の年明けまで続いた干ばつにより、地温が上がらなかったことが影響した。特に1~3月は、時期的に生育が難しい時期であるが、24年の秋冬キャベツは全体的に小ぶりに仕上がったため、2キログラムに近い大玉の物であれば、一玉1000円もけっして高くはなかったのである。
 2018年1月にも、キャベツが店頭では一玉500円前後で販売され、メディアをにぎわせたことがあった。この時の東京都のキャベツ卸売価格は、1キログラム当たりで1月が198円、2月が253円であった。25年は、1月が235円、2月が196円と7年ぶりの高値となったが、メディアでは一様に、スーパーの野菜コーナーで客が「とても買えません」と驚く(さま)を伝えた。コメンテーターの論評は総じて消費者目線であり、その裏では農家が資材の高騰などで苦闘していることが語られることは少なかった。

年間を通して野菜が手に入るのは、何十年もの積み重ねられた関係者の努力のたまもの

 わが国では、年間を通して国内の新鮮な野菜が潤沢に供給され、主要な野菜がほぼ一年中近くのスーパーなどに並び、おいしい野菜を毎日いただくことができる。しかしながら、日本は周囲を海に囲まれた島国であり、モンスーン気候帯にあるため、絶えず湿潤に支配されやすく、品目によっては、米国のカリフォルニア州や西ヨーロッパのような野菜栽培の最適地ではないものもある。
 24年は、レタスも年明けの時期に一玉300円超で販売され続けた。レタス産地に取材したが、これはキャベツの高値に引っ張られたものだと冷静に受け止めていた。レタス農家にとっては、できるだけ出荷期間が長いことが望ましい。作型によっては、気象災害を受けやすいリスクがあるため、特に平場産地では時期によってはトンネルなどの資材を使い、栽培を安定させている。また、国内種苗各社は、この冬場の栽培が難しい時期への対応のため、長年をかけ、抽苔しにくく在圃性の高い品種を育成した。寒さの時期に長く圃場にあれば、味は充実し、栄養価が極めて高く、価値そのものが高くなる。
 また、夏秋期を見ると、ここ数年、台風による強風に遭遇しない年はない。それでも普段通り出荷できるのは、台風前に生産者によって被覆資材を用いるなどの対策がなされているためである。さまざまな農業関係者の努力による産地リレーにより、一年中切れ間なく野菜が供給され続けている。
 24年は7年ぶりの野菜価格高騰とはなったものの、その他の年では、天候の影響を受けたり品薄になったりするはずのこの時期の価格が、例年落ち着いた展開となっているのは、その裏に野菜関係者による何十年も積み重ねられたもろもろの努力と経験があるからである。この努力によって、一年中、野菜が店頭に並び消費者が手に取れるのである。
 

消費者へ現場の実態を伝えることが必要

 米も含めて国産農畜産物は、長年の間、あって当たり前、野菜についても、価格は安くて当たり前といった風潮があり、供給してもらうことへの有りがたさが薄れていた。しかしながら、現実には農業を取りまく生産構造は激変している。農業者の減少に加え、市場まで荷物を運ぶ人さえいなくなっているのである。そして、資材費の高騰をはじめとする生産コストの上昇や、気候変動による農作物の安定供給の難しさも加わっている。
 私の幼少期の朝食のおかずは、キャベツの醤油味の炒め物であった。昭和32年に幼稚園に持参した弁当の菜入れは、冬は毎日そのキャベツのみであった。その時代からキャベツが、全国の国民の健康を支えてきた。
 現在でも、キャベツはお好み焼きに不可欠な食材であり、キャベツがなければ始まらず、特に関西市場では、こだわりの味を追求し「松波」という品種を指名買いするケースがある。レタスの入ったサンドウィッチはコンビニの売れ筋であり、多層にした美しいレタスは欠かせない。ホテルや温泉旅館の朝食のサラダでは、キャベツやレタスなどの価格が高くても、毎日お客様に提供できなければならない。
 長きにわたり、農畜産物は低価格であるべきという社会全体の考え方により、農家は苦闘している。われわれ農業関係者は売るための努力のほかに、消費者へ現場の実態を理解してもらう努力が欠かせなくなっている。
 今後、気候変動により、大型の強い台風の割合が増加し、猛暑日や熱帯夜も増加するという将来予測があるようだ。天候に左右されやすく、栽培が難しいキャベツやレタス、ひいては野菜全般を、さまざまな季節や環境下においても周年市場に出荷してくれている農家への感謝を忘れてはならない。

 
タイトル: p042

 

(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)