3月3日から降雨があり、関東をはじめ全国的に干ばつが解消し、春物は遅れを取り戻して来ると見込まれる。全国的に見ると、春物が遅れて始まると不作傾向となりやすく、引き続き市場では、キャベツを中心に平年を上回る高値の展開が予想される。果菜類については平年に近い水準まで回復し、一時の高値は解消されると予想される。たまねぎやばれいしょ類は北海道産が早めに切り上がり、九州産がやや遅れて谷間になり、一時的に高値となることが予想される。メロンやすいか類は、好天が続いた時期に結実したため、4月末の連休前頃には充実した物が市場に出荷され、年明けから2月まで遅れたいちご類も、全国的に潤沢に出荷されると見込まれる。

だいこんは、千葉産(
海匝)は干ばつで大きさが揃わず遅れているため、若干出荷が少ない状況が続いている。3月に入り降雨が続くと4月上中旬に最大のピークとなり、5月中旬に入り終盤を迎えると予想される。千葉産(鎌ヶ谷)は、乾燥が続いた影響で、出荷開始が3月末か4月初め頃にずれ込み、出荷のピークは5月上中旬と予想される。作付けは前年の95%と減っている。神奈川産は、乾燥の影響により、遅れて小ぶりに仕上がっている。通常は1~2月がピークで、3月は減少する時期であるが、3月初旬時点では3月出荷分が遅れて谷間となっている。3月3日~5日の降雨で肥大は回復し、前年並みの出荷が予想される。
にんじんは、徳島産は3月に入り走り物が始まってきたが、例年と同じタイミングであり、10日頃から本格化し、さらに17日から増えてピークになると予想される。このピークは5月10日まで続き、その後6月上旬までの出荷となると見込まれる。干ばつ気味ではあったが生育に問題はなく、前半はM中心のLで出荷されると見込まれる。静岡産は、ほぼ前年と同じタイミングの4月3日から出荷を開始し、14日頃からピークとなり、4月末から徐々に減ってくると予想される。品種は従来と同様「ベータリッチ」であるが、新品種も入っており、中心サイズはLである。

キャベツは、愛知産は、3月初旬時点で前年の70%程度の出荷となっている。3月上旬の降雨で増えても、同80%程度で大きな山は来ないと予想している。4月までは現状維持で推移し、4月下旬から6月上旬まで夏作となる。夏作の定植は干ばつ下であったものの順調に行われた。千葉産は、年明け頃の降雨の影響により、
菌核病が発生し出荷は減っている。3月後半から増加傾向で推移すると見込まれるが、4月上旬にいったん少なくなり、4月は多少増える程度で推移し、本格的なピークは5月中下旬と予想される。神奈川産は、3月初旬時点では早春キャベツの中盤で、本春キャベツ(三浦地方の春キャベツ)は定植時期の乾燥で遅れている。3月上旬の降雨により3月の下旬に一回ピークが来て、4月に入り本春キャベツが増えて下旬に2回目のピークとなり、4月の出荷は例年並みに盛り返してくると予想される。
はくさいは、茨城産は、秋冬物は3月も残量はあるが少なめで出荷されると見込まれる。春はくさいは3月初旬時点では、生育は順調で例年並みに3月10日頃から始まり、3月下旬から増えて4月がピークとなり、平年並みの出荷が予想される。
ほうれんそうは、埼玉産は、干ばつが続いているが生育は順調である。4月の春作の作付けは若干減っており、さといもやえだまめに品目転換している。露地物となるが
潅水は出来ており、前年並みの出荷と予想される。
ねぎは、茨城産は、3月からの新物は順調に定植が行われたが、1~2月の低温とさらに干ばつが長く続いたことから、大幅に生育が遅れている。現状は細く短めで、出荷の箱数も伸び悩んでいる。前年の3月は寒の戻りから伸び悩んで出荷が減ったが、今年も前年並みの可能性がある。ねぎ坊主(とう立ち)も出やすく、不作傾向で推移すると予想される。埼玉産は、4月に入り春ねぎとなるが、やや遅れている。それでも量的には前年を上回る出荷と予想される。6月は夏ねぎになるが、谷間が生じ急激に減少すると見込まれる。千葉産は、生育は遅れ気味で、3月初めまでは例年の80~90%の出荷となっている。3月20日から春ねぎが開始し、引き続き同程度のペースで出荷されると見込まれる。4月にはピークを迎え、4月末頃から減り始め、その頃から夏ねぎの早物が始まってくると予想される。
レタスは、茨城産は、生育は順調であるが、3月初旬の段階では一雨欲しいところである。それでも3~4月は平年並みの出荷が予想される。大幅に前進して4月の出荷量が少なかった前年を大幅に上回ってピークとなる見込みである。兵庫産は、晴天が続いたため生育は順調で、5月の連休明けまで潤沢な出荷の継続が予想される。作付けの減少もあるため、4月は前年並みかやや減と見込まれる。香川産は、3月4日の時点で降雨があり、出荷のピークは3月で、その後は5月上旬まで安定的に推移するものの、4月の出荷は3月より少ないと見込まれる。切り上がりは、5月末頃と予想される。

きゅうりは、埼玉産は3月初旬時点で、加温の春きゅうりの出荷が開始したところで、生育は順調である。ピークは5月の連休明け頃で、4~5月は潤沢な出荷が見込まれる。千葉産は、春きゅうりのピークとなっており、生育は順調で3月下旬から4月がピークとなり、引き続き5月も多く6月上旬まで出荷が見込まれる。生産者によっては、加温から無加温に移行している人もおり、前年比はやや減となることが見込まれる。
なすは、高知産は、3月初旬時点までの出荷は例年よりやや少なめとなっている。3月に入り平年並みに追いつき、4月にはピークとなることが予想される。引き続き5月も多い見込みである。福岡産の生育は順調で、3月に入り徐々に増え始めると予想される。2月までは横ばいで推移したものの、樹勢も問題はなく、3月初旬時点は花盛りとなっており、3月の増量期を経て4月下旬にピークを迎えると予想される。
トマトは、熊本産は3月中旬に微増し、その後は現状推移で例年の80~90%ペースとなり、6月20日までの出荷と予想される。大玉もしっかり木についており、5月のどこかの時点で急増しピークとなる場面が予想される。佐賀産は、「光樹とまと」が3月に入り増えているが、まだ平年に届いていない。4月にピークとなり、5月に入り少なかった前年を上回り、5月下旬から徐々に減っていくと予想される。Mサイズ中心の4キログラム箱で出荷される。愛知産は、3月までは前年の90%と少なめの出荷が続いたが、4月には前年並みに回復しピークとなる見込みである。出荷は6月中旬までで、Mサイズ中心と予想される。
ミニトマトは、和歌山産は、「キャロル7」は前年8月の定植で11月から出荷が始まり、現状は中盤である。2月までは干ばつと寒さにより、例年の80~90%ペースで推移してきた。今後3~5月は増量しながら推移するものの、前年は上回らないと予想され、例年同様に6月末の切り上がりが見込まれる。熊本産は、2月まで前年比80%程度で推移してきたが、3月に入り増量期を迎え、最大のピークは4~5月と予想される。それでも前年比で90%台までの回復と見込まれる。最終出荷は7月までと予想される。
ピーマンは、茨城産は、2月までは好天続きで安定的な出荷であった。3月に入り初旬に降雨が続くため、一時的に出荷が減ると予想される。4月に入り無加温物が始まってくることや、加温物も木がしっかりしていることから前年並みかやや多めに出荷されると予想される。高知産は、干ばつや低温の影響もなく、順調に出荷されており、全体のピークは4~5月で、例年並みと予想される。

ばれいしょは、鹿児島産(出水)の春ばれいしょは、4月5日前後から出荷開始となる。寒波の影響もあり生育は遅れているものの雪や霜による寒害は報告されていない。小ぶりで早めに出荷すればメリットはあるが、圃場で大きくなってから出荷すれば大きな減収とはならないと予想される。鹿児島産(大隅)の春ばれいしょは、2月28日から出荷が始まり、生育は順調である。一部
圃場では寒害を受けており、生産量が若干減少すると予想される。3月は増量傾向で推移し、4月初め頃にピークを迎え4月後半には減少してくると予想される。品種は「ニシユタカ」である。長崎産は、3月初旬時点で生育が遅れ、降雪による寒害もあった。今後の降雨で盛り返すものの、不作傾向になると予想される。ピークは5月となる見込みである。
たまねぎは、佐賀産は、3月に入り少量ずつ出荷が始まってきた。
極早生物が本格出荷を迎えるのは4月上旬からとなるが、生育が2週間近く遅れており、4月は前年を下回ると予想される。3月初旬時点の草丈から判断して、3月の降雨で肥大し過ぎることはないと予想される。香川産は、定植量は前年並みであり、早生物の出荷の開始は4月末頃からで、ピークは6月上旬となり、7月上中旬に切り上がると見込まれ、例年並みの収穫が予想される。

ブロッコリーは、愛知産は、12月から2月までは出荷量が少なかったが、3月に入り平年並みとなっており、3月3日からの降雨により増量し、4月いっぱいまで前年並みの出荷が予想される。熊本産は、2月末頃から3月初めの気温の上昇によりピークを迎えている。3月いっぱいは一定のペースで推移し、4~5月は潤沢ペースを維持できると予想される。埼玉産は、春ブロッコリーは3月5日の降雪・積雪の影響はそれ程ないものの、例年のピークは4月10日頃であるが、若干後ろにずれるといった生育の遅れが見込まれる。
カリフラワーは、福岡産は、11月の大雨被害や、その後の乾燥で木が出来ていない。ヒヨドリによる食害も発生するなど、例年の半分程度の出荷になっている。それでも3月に入り暖かくなって出荷が増えてきているが、一定程度のペースが続く見込みである。
かぼちゃは、ニュージーランド産は、年内は干ばつで推移し年末に降雨があったが、年明け後は低温となるなど天候の振れ幅は大きいようである。生育は後半に盛り返し、ほぼ平年作となることが見込まれる。3~5月上旬までがニュージーランド産の入荷量としてはピークで、6月はかなり減少すると予想される。入荷量は前年並みで、価格は昨年よりやや高めであり、サイズはMが中心である。
ごぼうは、熊本産の新ごぼうは12月から出荷が開始し、6月いっぱいまでと予想される。8月の播種時からの高温の影響により枯れるなど、例年の70%作と不作である。4月末頃から5月の連休明け頃までがピークとなり、1箱に2Lサイズの200グラム袋10袋入りで出荷されると見込まれる。
たけのこは、熊本産は、九州の中で唯一表年であるが、3月初旬時点の出荷は干ばつの影響で裏年と同程度の出荷量である。それでも3月中旬に回復し、ピークは3月25日から4月20日の見込みである。当面は4キログラム箱で出荷し、終盤には10キログラム箱での出荷も予想される。静岡産は出荷が開始しているが、寒波による低温で遅れており、さらに裏年ということもあり、4月としては前年の50%程度と予想している。ピークは4月上旬で、下旬には切り上がると見込まれる。石川産は、例年同様4月中旬から出荷開始となる見込みである。裏年であり、5月の連休明け頃には切り上がると見込まれる。
そらまめは、鹿児島産が3月上中旬にピークとなり4月中旬まで出荷されると見込まれ、寒波の影響は特にない。
スナップえんどうは、愛知産は昨年の11月から出荷を開始したが、11月の降雨や12月に入っての乾燥で花が飛ぶなど年内は遅れて半分程度の出荷に
留まった。年明けも低温で出荷は伸びず、引き続き2月も停滞した。3月に入り急回復しており、4月にかけてピークになり、5月中旬で切り上がると見込まれる。出荷量は前年の80%程度になると予想される。
グリーンピースは、鹿児島産が始まっているが、2月上旬の霜害で下の段の花が傷んだ。4月上中旬にピークが来るが、出荷量は前年の90%に届かないと見込まれ、5月10日過ぎには切り上がる見込みである。
いちごは、福岡産は「あまおう」となり、2月までは少なかったが3月に入り増えてきて、平年並みに追いつくと予想される。3月初旬時点で花数は問題なく、2Lサイズの出荷も増えており、3月いっぱいピークが続き、4月が平年並みの天候であれば前年を上回る出荷が予想される。佐賀産は「いちごさん」となり、2月までは例年の70%程度と少なかったが、3月から4月前半までがピークとなる。4月後半には減少してくるが、3~4月は前年を上回ると予想される。
メロンは、茨城産は、作付けはほぼ前年並みで「オトメメロン」は4月上旬から、「アンデスメロン」は4月中旬から、「クインシーメロン」は4月下旬からと、ほぼ例年並みの展開と予想され、5月の連休明けから増えて、最大のピークは5月中旬となると見込まれる。着果を含め、生育は良好であるが、当初の物はやや小玉傾向と予想される。
すいかは、熊本産は、本格的に出荷が開始している。作付けは前年の98%と微減である。当面はMサイズ中心となるが、例年と同様のペースで、4月後半から増え始め5月がピークになると予想される。
こだますいかは、茨城産は、定植後の降雨が少なく活着の悪さを心配したが、その後持ち直し、交配は順調に始まった。3月は前年並みだが、4月に入ると前年を上回る出荷が予想される。
(執筆者:千葉県立農業大学校 講師 加藤 宏一)
